旅限無(りょげむ)

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毎日新聞、大丈夫? 其の壱

2008-11-20 14:00:22 | マスメディア
■大阪府で雨の日曜日に起こった新聞配達員の轢き逃げ・引き摺り殺人事件。被害者は毎日新聞富田林東販売所のアルバイトで、まだ16歳だった東川達也クンでした。毎朝、定時に朝刊が届くのは当たり前と思われていますが、その当たり前な事を持続させているのは印刷・輸送・配達の業務に従事している人達の努力と勤勉さです。梯子酒で泥酔した馬鹿者が運転するワンボックス車に命を奪われたのは雨が降る早朝3時半ごろのことでした。そんな時間まで酒を飲んでいる人がいる一方で、黙々と新聞を配っている人もいるのであります。

■新聞配達は代表的な学生のアルバイトで、自立して大学・専門学校・予備校に通えるように学費を貸与して住み込みで仕事をする奨学制度も定着しています。某大手新聞などは「インテリが書いてヤクザが売る」などと悪口を言われるような販売促進戦略を採っていたこともあったものですが……。毎朝、前日に起こった出来事を知り、各種の特集記事で知識を増やしてくれるのが新聞で、切り抜きファイルをすれば最も身近なデータ・ベースにもなりますし、リサイクルして木材資源の節約にも役立ち、包装紙としても重宝します。

■いろいろと役立つ新聞ですが、要は中身が問題で、巨大な報道機関としての責務は重く、一国の命運を危うくすることさえありますから、間違った報道をしては行けません。


元厚生事務次官の吉原健二さん妻、靖子さんが刺されて重傷を負った事件で、毎日新聞は19日、事件の約6時間前にインターネット上に犯行を示唆する書き込みがあったと報じた19日付朝刊の報道が誤りだったとして、同社のウェブサイト「毎日jP」におわびを掲載した。19日付夕刊でおわびと経緯を掲載する。

■「他人の不幸は蜜の味」という訳でもないのでしょうが、競合紙は他社の失敗を実に丁寧に速報してくれます。料金値上げの時や休刊日を作る時などは驚くほど仲良く足並みが揃うのに……。さてさて、この誤報は速報性において新聞社が素直に敗北を認めざるを得ないインターネットに新聞社が振り回された例として大きな意味があるニュースだと思われます。


19日付記事では、18日正午ごろ、ネットの「フリー百科事典・ウィキペディア」の「社会保険庁長官」のページの中で、吉原さんの名前の前に「×」がつけられ、その下に「暗殺された人物」というただし書きがあったと報道。だが、実際の書き込みは事件から3時間ほど経過した後だったとみられることが、後になって判明した。

■速報性が高まれば、タイムラグの存在が非常に重要になります。1分1秒の違いでも大きな意味を持ちますからなあ。ミステリー小説などでもアリバイ作りのトリックに愛用される手法でもありますから、プロのジャーナリストが墓穴を掘るような間違いを犯しては行けませんなあ。


毎日新聞社長室広報担当によると、取材を担当した記者が同サイトに掲載されていた、日本標準時より9時間遅い「協定世界時」による編集時刻を、日本時間と誤認したことが原因。


■うっかり「時差」を忘れてしまったとは、国際化・グローバル化の時代に適応し切れていないのでしょうか?担当した記者さんは「スクープだあ!」と糠喜びしたと想像出来ますから、誤報と分かった時には天国から地獄へという気分だったことでしょう。どこのメディアも息を潜めて「犯行声明」が出るのを待ち構えている時ですから、こうした勇み足も起こりがちなのは分かりますが、まだ、テレビなどでも専門家を招集して事件の「解明」に努めている振りをして視聴率を上げようと必死の様子ですが、結局は「犯行声明」が出なければ、何も分からないのが実情で、視聴者は引っ張られるだけ引っ張られて落胆したり腹を立てたり。


……書き込みの内容は、参考情報として、捜査当局にも伝えていたという。記事は東京、大阪で発行された最終版にそれぞれ掲載されたほか、一時「毎日jp」にも掲載されたが、間もなく削除した。ネット上では、ウィキペディアに問題の書き込みをしたとする人物が名乗り出て、「書き込みは事件後」と弁明するなどしたことから、誤報の可能性を指摘する声が噴出し、大きな騒ぎとなっていた。
2008年11月19日 産経ニュース

■たった一つの「×」印でも、犯行前に書き込まれれば大きな手掛かりになるわけですが、第一報が流れた後となれば几帳面な利用者がネットの速報性を高めようと協力しただけの事です。ウィキペディアの更新編集システムを熟しないまま、ネットの速報性に負けまいと頑張ってしまったのかも知れませんなあ。でも、目の付けどころとしては良かったのではないでしょうか?

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