旅限無(りょげむ)

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小泉さんに暑中見舞い 其の参

2006-07-14 10:49:42 | 外交・情勢(アジア)
■既にパレスチナ自治政府内の武装勢力の拠点のほとんどは制圧しているようですから、ヒズボラが当面の敵とされたことになります。自衛行動が何処まで広がるかは、シリアとイランの出方次第ということになりそうです。

さらにイスラエルは国連に対して、ヒズボラによる攻撃を「明らかな宣戦布告」とし、攻撃の責任はレバノン政府にあると訴えた。その後、イスラエルはレバノンに侵攻して空爆を開始。この空爆により、多くの橋が破壊され、市民2人が死亡した。イスラエル国連大使は記者団に対し、レバノンに加え、ヒズボラを支援しているとされるイランとシリアも非難した。
ロイター - 7月13日

■事態は「第5次中東戦争」の入り口です。その現場に我らが小泉プレスリー首相が滞在しているのですぞ!今こそ「言葉」が必要なのですが、ワン・フレーズ・ポリティクスなど通じる相手ではありませんからなあ……。


小泉純一郎首相は13日昼(日本時間同日夕)、パレスチナ自治政府のアッバス議長とラマラの議長府で会談し、パレスチナに対する総額約3000万ドルの医療・雇用支援を表明した。同時に、パレスチナ・ヨルダン渓谷の農業、産業開発を進める「平和と繁栄の回廊」構想を提示した。同構想は、中東和平実現に向けた信頼醸成が目的。小泉首相は12日のオルメルト・イスラエル首相との会談で、具体化に向け日本、イスラエル、パレスチナにヨルダンを加えた4者による協議機関の設置を提案し、賛同を得た。小泉首相はアッバス議長にも協力を呼び掛け、初会合を日本で開催することを提案。アッバス議長は協議機関設置に同意した。
共同通信 - 7月13日

■日本で準備した「平和と繁栄の回廊」構想にはレバノンが入っていません。更に「4者会合」にはハマスが入るのか入らないのかも言及していません。でも、ハマスの要人とは会談していないことでハマスを排除した提案であるかのようなイメージを作ってしまいますが、それは外務省の目論見通りの展開なのでしょうか?中東と言う場所は、玉虫色の約束事をすると後で大きな問題が起こる場所ですぞ!具体的な計画も無いまま「3000万ドル」などと金額ばかり明言して大丈夫でしょうか?ラマラの議長府を訪れたのなら、ヨルダン渓谷の開発よりもラマラ周辺の復興が急がれる事情は分かったはずですが、「復興支援」という文言は一切報道されていません。何処か大きくズレているような印象が強いですなあ。


小泉純一郎首相は13日夜(日本時間14日未明)、ヨルダンのアブドラ国王とアカバの国王離宮で会談した。首相は中東情勢の緊迫化に関し「難しい時期だからこそ、中長期的な地域発展の希望を与えることが大切だ」と指摘。パレスチナ・ヨルダン渓谷の農業、産業開発をイスラエル、パレスチナとヨルダン、日本が協力して進める「平和と繁栄の回廊」構想を提案した。これに対し、アブドラ国王は「全面的に協力する」と表明。両首脳は、構想具体化へ4者の協議機関を早期に発足させることで合意した。
共同通信 - 7月14日

■一滴の石油も出ず、アカバ港以外に海への出口を持たないヨルダンは、ムハンマドの直系と言われる血統を伝える王様だけが頼りのイスラム国です。常に周辺のアラブ諸国に意地悪されたり苛められる苦しい立場に置かれているので、先代のフセイン国王はPLOを国外に追放し、イスラエルと手打ちをして米国と手を結んだのでした。産油国のアラブ諸国からろくな経済支援も得られないのに、PLOの保護者の役を押し付けられ、イスラエルの敵に仕立て上げられた苦い経験を持っていますから、何処の国からでも「資金援助」は大歓迎なのです。小泉さんは悪気が有って「中長期的な」話をして歩いているのではないと思いますが、中東では常に「明日のこと」が最優先なのです。約束は常に破られ、仲間は裏切られ、信頼など決して長持ちしない、何でも起こるのが中東です。

■誰が小泉さんに中東の「中長期的」発展計画などを持たせたのでしょう?米国が国威信を懸けて作った『ロード・マップ』がどうなったのかを知らない人達が鉛筆舐め舐め作文したのでしょうか?幼児のように素朴で世間知らずな提案は、時には愛らしく周囲をほっとさせるくらいの役には立つでしょうが、小泉さんが間抜けな計画案を喋り回っている間に、戦火はどんどん広がっているのです。思い込んだら同じ事を意地になって繰り返す、悪い癖が出てしまいましたなあ。小泉さんの暑気当たりという一席、そういう事にしておいた方が良さそうです。暑中見舞いを申し上げる次第です。

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