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極楽飯店.60

※初めての方はこちら「プロローグ」「このblogの趣旨」からお読みください。

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「え?なんスか、『個』を超えた『全』の動きって……」

藪内がそう訊くと、閻魔はおもむろに右手を差し出し、何かを求めるようにキョトンとしている藪内の前で、ひょいひょいと上下に動かす。

「え?なに?握手?」

藪内が手を握りかえすと、閻魔はまた「難しく考えないで」と微笑みながら握手を続け、「ほら、これが『個を超える』ってことだよ」と付け加えた。

それでもまだ、藪内は納得することなく小首をかしげている。

「あ、いや、なんつーか……、つまり『個を超える』ってのは、『仲良くする』ってことっスか?」

藪内が自信なさげに訊くと、閻魔はデカイ顔をふるふると横に震わせ、そうじゃないと告げる。

「個を超えるっていうのはね、『関係の消失』のことを言うんだよ」

「関係の消失?」

「そう、関係の消失、もしくは変化。『関係』っていうのはさ、二つ以上の物事が互いにかかわり合うことを言うでしょ。つまり、そこには『自他』という概念があるってこと。分離のないところに『関係』は生まれない。分離がなくなると、同時に『関わり』の意味が覆ってしまうんだ」

藪内は「余計にわからない」と、眉間に皺を寄せて肩をすくめる。

「難しい話をされても、俺にはさっぱり……。それに、それと握手になんの繋がりがあるんスか?」

「ねぇ翔ちゃん。君は今、手を握られている?それとも握っている?どっち?」

「え?どっちって……。どっちも……」

「うん、そうだよね。どっちも、なんだ。握手には「握られているのみ」も「握っているのみ」も存在しない。能動と受動が同居しているでしょ。その時、与える者は与えられる者になる。「他」がなくなることによって、全てがダイレクトに自分に返るんだ。君たちは壁を取り去り、文字通り一つになることによって「神」となり、互いに与え合うことを選択したんだ。ほら、これを見て」

そしてまた、あの風船が宙を舞う。見ると、いつの間にか中の氷が消えていた。



「君たちの間に壁がなくなったとき、あらゆる願いはスムーズに叶えられる。皆がみな、神として、与える者として動きだす。翔ちゃんの願いが源(ソース)に届くと、源(ソース)が司令塔となって、その願いを具現化してくれるものの所へと運ばれる」



「翔ちゃんの願いが、一つとなったタクちゃんやムネッち、坂もっちゃんにトモちゃんの元に届く。そして、翔ちゃんの願いを受け入れたみんなが、翔ちゃんの願いを叶えてくれる。『個』から発せられた願いは『個』を超えて、『全』の力によって叶えられるんだ」

「あの……。僕が『藪内君の願いなど叶えたくない』と思っていたら、どうなるんです?」

あくまで仮の話、本心ではないと前置きして田嶋が訊いた。

「簡単な話だよ。トモちゃんが拒否するなら、そこに壁ができて源(ソース)からの流れは遮断される。エネルギーは、受け入れてくれるところにいくだけだよ。ただその場合、壁があるワケだから、当然のことながらトモちゃんの願いは源(ソース)に届かない状態になっているからね。自分で作った壁によってできた、分離という錯覚の中で生きる事になる」



「握手は、仲直りや協力、信頼や友好、喜びを表す挨拶でしょ。心を開いて一つになる意思表示。そこにはもう、恐れも思考もいらない。互いに与え合うことができるということを知れば、欠乏を恐れることもない。そこではじめて『個』を超える扉を見いだせる。その象徴が、君たちが来たこの極楽飯店なんだ」


……つづく。



【トークライブ・インフォメーション】

やっぱりブログってのは、言葉に詰まりますね。^^;

文章で見て「?」となっている部分も、ライブで聞くことで「!」となることも多いと思います。

ご興味・関心がありましたら、ぜひ会場に遊びに来てください。


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