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極楽飯店.59

※初めての方はこちら「プロローグ」「このblogの趣旨」からお読みください。

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閻魔の説明は、白井の婆さんが教えてくれたもう一つの言葉とも綺麗に符合した。

「婆さんが教えてくれた《願いは、願いを捨てた時に叶う》っていうのは、こういうことだったんだな。願いを捨てると、その実現を妨げるエネルギーも捨てることになる」

「いや、でも……。やっぱり分からない。それじゃあ『実現を妨げるエネルギー』と一緒に、願いそのものも捨てちゃってるじゃないっスか。それでなぜ願いが叶うんです?」

俺の言葉を遮るように、藪内が頭を掻き毟りながら訊く。

その問いに、「だから!」と力強く返したのは白井だった。

「願いを叶えるのは分離した意識じゃなくて、神の意識の方なんだよ!氷が溶けるってことはつまり、恐怖を抱えていた『錯覚の自分』が消えて、『創造主、神としての自分』が目覚めるってことなんだ」

その言葉は、藪内の質問に答えるというよりも、白井が自分自身に言い聞かせているように見えた。

白井はおもむろに藪内の手を取ると、両の手でしっかりと握り、じっと目を見つめて言葉を続ける。

「僕たちは極楽飯店で、文字通り「ひとつ」になることができたんです。ひとつになることで生まれた『神としての自分』が、願いを叶えたんですよ!それはつまり、僕の願いを、君が叶えてくれたってことなんだ!ありがとう、ありがとう藪内君!!」

「ちょ、ちょっ…。白井さん!」

白井は、互いの鼻がぶつかるのではと思えるほど藪内に顔を近づけて力説したが、藪内は勘弁してくれと言わんばかりに身をよじらせ、俺たちに暗黙の助けを求めている。

それを見た閻魔が、笑いながら暴走気味の白井をなだめてフォローに入った。

「そう、ムネッちの言う通り。君たちは『ひとつ』になることで願望を実現したんだ」

閻魔の前には、五つの突起がある風船。その突起の一つ一つを氷の壁が塞いでいる。

「ねぇ翔ちゃん。ちょっと、これまでの話を踏まえて考えてみてね。もし翔ちゃんが願いを叶えたいと思ったら、その願いを源(ソース)に送らなきゃいけない。そのためには何が必要?」

「えっと……、だから、源(ソース)と俺の間にある氷を溶かさなきゃいけないんスよね」

「そう。つまり、思考と恐れから離れなきゃいけないってこと。君たちはここへ来る前に、すでにその答えを見つけたよね。『天国にあって地獄にないもの』っていう話、極楽飯店に入る直前に話してたでしょ?」

「え?」

「思考と恐れの対局にあるもの。それは、君たちが気付いた通り『信頼』なんだ。それは、大いなる力に委ねるということ。分離感が錯覚であることを受け入れる姿勢。奪い合うことではなく、与え合うことによって開かれる道。『個』という錯覚を手放した時、君たちは源(ソース)のエネルギーと一体となって動き出すんだ。いいかい?」

すると、目の前に浮かぶ風船の突起の一つから、氷が消えた。

「この風船の中にある星を翔ちゃんの『願い』だとするね。もし、その願いが源(ソース)に届いているとしたら、ほら。願いはすでに、翔ちゃん(小さい風船)から離れているでしょ?逆に言えば、翔ちゃんの中に願いがあるとするなら、それはまだ源(ソース)に届いていないってことなんだ」



「『願いは願いを捨てた時に叶う』って言われると矛盾しているように思えるけど、こうしてみると矛盾していないでしょ?」

「はぁ…。なるほど」

「そしてね、もし源(ソース)に願いが届いたとしたら、そこからは神の仕事。『個』を超えた『全』の動きになっていくんだ」



……つづく。



【お知らせ】

今年も早いモノで、いよいよ折り返し地点を超えましたね。

7月に入りましたので、今月のライブ予定を再度告知させていただきます。( ̄Д ̄)ゞ

今月は24日、福岡にお伺いいたします。詳細は→《こちら》

また、その他の地域についても、ただいま開催準備を進めております。

受付準備が整い次第告知いたしますので、よろしくどうぞ。

それから…

5周年記念プレゼント企画へのご応募もありがとうございました。今年も沢山のご参加をいただきました。

こちらも、まもなく抽選に入ります。当選発表まで、今しばらくお待ちを。



←ええ。勿論皆様のことを信頼していますとも!(ひときわ意味深な表情で)
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