信州山事情・・・その1 伐採搬出ガイドライン 信州は宮崎から何を学ぶか

2008年03月15日 | 信州の木材
 昨日上田市で開かれた「原木安定供給システム研究会」は、信州は宮崎から何を学ぶか、をテーマに信州の林業・素材生産業のゆくえを探った。

 昨年の今頃、NHKのクローズアップ現代で取り上げた、九州熊本の禿山の様子がこの1年間私の脳裏から離れなかった。離れないどころか、信州の山事情もしだいに予断を許さない方向に転換するのではないかという予兆が見え始めてきた。そしてこれは信州だけではなく、日本全国の悩みでもあるだろう。

 戦後植林された木が伐期を迎えつつある。信州は今、森林税を導入して、遅れている山の手入れをしょうとしている。しかし温暖な九州では唐松ではなく杉であり、その成長は唐松の比ではないので、もう間伐の時期ではなく、皆伐である。
 
 皆伐をしたら植林をするというのがかっては常識であったが、今は収穫をしても次世代の為にという気になれないほどの金額にしかならない。宮崎は公表で2000haが、再造林放棄地だそうだ。これを宮崎の有名な知事さんが、3年でなくすと言っている、という頼もしい話もあるようだが。

 それについて、造林までに税金を使うことに県民の反応はという質問もあったが、森林に限れば、個人のもののようでありながらも、大きな自然という観点から言えば、その環境については共有物であるかもしれないと感じる。一概の判断はできない。

 今、木を伐るのに、大型の機械が山に入る。だから山はそれなりに荒れる。それをそのままにしていたら、表層は流れ、岩がむき出しになってしまう。そうなると山は再生しない。本当の禿山になる。大雨が降れば貯水能力もなくなり災害の源となる。

 話の中で昨年の台風では、山に残された端材が海に流れ出し、養殖場の網を大量に傷つけた事例もうかがったが。

 今回、その宮崎の山の現実を憂いて、仲間とともにNPO法人「ひむか維森の会」を立ち上げられた代表理事の松岡明彦さんに、宮崎の実態と山を守るための「伐採搬出ガイドライン」の内容をお聞きした。

 ここ何十年も見向きもされなかった山が、資源の奪い合いの中で、急に注目をあびるようになった。そんな中で、この山全部という買い方までが出現する時代になりつつある。それは山の救世主かハゲタカのどちらかにちがいない。

 「伐採搬出ガイドライン」の内容はすばらしいものである。是非こうあってほしいと思う。しかしこれは植林を前提とした地ごしらえまでであって、それ以上ではない。そしてガイドラインにのっとるというのは、確実なコストアップであることは間違いない。

 だから、認証制度をとりいれたり、公的な山の入札の条件にしてもらったり、製材工場にも優先的に高く購入してもらったりという方向にもっていきたいとのことであった。

 価格競争の中でそぐわないという意見もあろうが、世の中がスピードアップしている今、その判断を躊躇している時間はあるまい。一歩間違えばここ5年から10年で、いたるところに禿山を見ることだろう。

 ここ3年の間に山事情は激変している。私はこの変化の後、残される事象をものすごく恐れている。

 続きはまた。

                          依田 美恵子


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