「心の免疫力」がどんどん高まる5つの習慣

2017年07月12日 07時04分04秒 | Weblog
http://toyokeizai.net/articles/print/164985
「心の免疫力」がどんどん高まる5つの習慣

折れない心をつくる簡単な方法、教えます

ガイ・ウィンチ :心理学者 2017年4月3日

自分に自信が持てず、心理学で言うところの「自己肯定感が低い」人の周囲には、批判的な人々が多いという場合があります。彼らからの批判やダメ出し、否定にさらされ続けることで、「自分はやっぱりダメな人間なんだ」と自己批判を繰り返してしまい、自己肯定感が下がってしまうのです。

「自分に批判的な人々からは、まず離れなさい」と忠告するのは、NYの人気セラピストであるガイ・ウィンチ氏。彼のTEDトーク「感情にも応急手当が必要な理由」は「2015年で最も人気のトーク」にランクインし、著書『NYの人気セラピストが教える 自分で心を手当てする方法』も反響を呼んでいます。今回は、“自分を嫌いになってしまったとき”の対処についてお聞きしました。

自分自身への過度な批判やダメ出しは悪影響

「自己肯定感(セルフエスティーム)」とは心理学の言葉で、自分を肯定し、価値あるものとして受け入れることをいいます。失敗をしてしまったり、心が傷ついたとき、一時的に「自分はダメなヤツなんだ」と自己肯定感が低くなることがありますが、これは誰にでもあることで、時間が経てばまた元に戻ることがほとんどです。

ところが、必要以上に繰り返し繰り返し自分自身を責めてしまう“自己批判”の強いタイプの人がいます。

こうした強い自己批判は、自己肯定感の慢性的な低下につながります。これは、心の健康を考えると危険な状態です。自己肯定感が低いと、心の免疫力が大きく下がってしまうからです。

免疫力が弱くなると、私たちの心はちょっとしたことでも傷つきやすくなり、「打たれ弱い」状態になります。なんとなく気分が沈み、悲観的で消極的な態度になりがちです。憂鬱や不安が高まり、過食症や拒食症になる危険もあります。さらには人間関係の満足度が下がることもわかっています。

一方、自己肯定感を高めれば、心の免疫力が強化されて多少のことではへこたれなくなります。

このような説明を聞かなくても、「自分を好きになれるのであれば、そのほうがいい」と多くの人は感覚で知っているでしょう。「自分を好きになりたいのになれない」、自己肯定感の低い人はつねにその気持ちの中で揺れ動いているのではないでしょうか。

人は誰でも、自分を厳しく見てしまいがちです。時には自分の行動を省みて反省することも大切ですが、罵声が人に悪影響を与えるのと同じように、自分自身への過度な批判やダメ出しを行うことは、自分に悪影響をもたらすだけです。

私は人種のるつぼであるニューヨークでクリニックを開いています。実に多種多様な患者がクリニックを訪れますが、上記の話をすると、「自分を甘やかしてしまえば、さらにダメな人間になるのでは?」と不安げに聞く人がいます。しかし、自分に批判的であることは自分を律していることにはなりませんし、自分に優しくすることと甘やかしは違います。さまざまな研究により、自分に優しくしたほうが心の免疫力が高まり、物事がうまくいくことは明らかになっているのです。

また、「自己肯定感を高く持ちすぎれば、自己愛の強い人間になってしまうのでは?」という質問をする人もいますが、その心配は無用でしょう。自己愛が過度に強い人は、そもそもそんな心配などしないタイプの人間だからです。

ネガティブフィードバックの多い環境から逃れる

自己批判の強い人がなぜそのような状態になったのか、人によって実にさまざまな要因が考えられます。数々の環境や性格などが複雑に絡み合っているため、要因をひとつに絞るのは難しいところです。

ただ、私が診療する患者に多く見られるのは、周囲からの“ネガティブフィードバック”が非常に多い環境にいるというパターンです。

それは、家族や配偶者、友人、ボスだったりしますが、サポートをしてくれる支援型の人々がいる一方、非常に批判的でネガティブな言葉をぶつける人々もいます。

そういう人たちの中でつねに批判されたり叱責され続けていると、自分自身も「私はダメなヤツなんだ」と思ってしまうのです。

先日も、「私の友人はみんな、私に対して非常に批判的だということに気づいた」という患者がいました。私が「では、なぜそんなことを許すのですか?『やめて』と言わないのですか?」と聞いたら、「私自身も『彼らの言うとおり、自分はだめなヤツだ』と思っているから」と言うのです。

彼は自己評価が低いばかりに、ネガティブな言葉を投げつけられたり、不当な扱いを受けるのは当然のことなのだと思い込んでしまっているのです。

しかし、相手に尊重してもらうためには、自分を尊重してほしいと伝える必要があります。人というものは、必要以上の努力をしないものですから、雑に扱っても許されるなら、つい行動が雑になります。「やめて」と言わない相手には「やめなくていい」のだと思ってしまうのです。

ただし、そんな言葉に耳を傾けてもらえない、関係性をさらに悪化させてしまうというような状況であれば、無理に伝えようとする必要はないでしょう。ただ、そんな人々からそっと離れればいいだけです。

彼らから逃げることは、決しておかしなこと、悪いことではありません。たとえば、足を骨折したときに、つねにその足を踏みつけてくる人がいたら、当然そこから逃げますよね? そこにとどまる理由はありません。それと同じことです。

自己肯定感を高めるべく努力しても、周りからつねに攻撃をされているような状態ではそれは無理ですから、そこから離れることは必須なのです。

このように、体に置き換えてみるとわかるように、私たちは体の不調には適切に対処できても、心の不調となると急にお手上げ状態になります。

足を骨折した人に「歩いてみなよ。そんなの足の持ちようさ」とは決して言わないのに、落ち込んでいる人に対しては「気にするな。そんなの気の持ちようさ」と言ってしまう。体に比べて、心はないがしろにされがちです。それは、心の手当ての方法をこれまで学んでこなかったからにほかなりません。

ケアの仕方どころか、私たちは自分の心の痛みにすら鈍感です。まずは、自分の心が踏みつけられて傷んでいることを自覚することが必要です。

ここで、私がリサーチしてきたさまざまな心の問題に関する研究の中から、実際に自分や患者に施してみて効果があった“自分を嫌いになってしまったとき”に有効な方法のうち、ひとつをご紹介します。

折れない心をつくるエクササイズ

<手当て 自分の強みを確認する>

ポジティブな言葉や体験は、自己肯定感を高めるために必要な要素です。しかし、自己肯定感が低い人は、人に褒められるのが苦手です。肯定的な言葉をもらっても素直に受け取ることができず、余計に混乱してしまいます。

ですからまずは、自分で認識できる長所を探すところから始めましょう。どんな人にも、少しくらいはいいところがあります。たとえば、うそをつかない、人を裏切らない、仕事をさぼらない、などは立派な長所です。すてきな家族に恵まれていたり、得意なスキルがあることも強みになります。

「自分にはこんな強みがある」という気づきは、いろいろな場面で心を強くしてくれます。たとえば上司にひどく怒られたとき、仕事のことで自信を持つのは難しいかもしれませんが、「すてきな友達がいる」「子どもに優しい」「キルトを縫うのが得意」などの強みを思い出すだけで気分の落ち込みを軽減できます。

折れない心をつくるために、次の1~5のエクササイズを定期的に実行しましょう。毎日できるとベストですが、週1回でも効果があります。ストレスの多い時期や、自分に自信がなくなりそうなときにも、あらかじめ実行しておくと効果的です。用意するのはまっさらな紙2枚です。

自分のいいところを書き並べる

<自分の強みを確認するエクササイズ>

(1)まず1枚目の紙に、自分のいいところを書き並べましょう。性格や特徴、やりとげたことなど、何でもかまいません。少なくとも10個以上見つけられるように頑張りましょう。

(2)よいところを考えているときに、ネガティブな考えや批判的な言葉が心に浮かんできた場合は、それを2枚目の紙にすべて書きとめましょう。

(3)1枚目の紙に書いた中から、自分がいちばん大事だと思うものをひとつ選んでください。そのことについて、短い文章を書いてみましょう。なぜあなたは、この特徴やスキルや経験が大事だと思うのでしょうか。あなたの人生にとって、それはどんな意味を持ちますか?

(4)次に2枚目の紙を手に取って、くしゃくしゃに丸めてゴミ箱に捨てましょう。こんなものはただのゴミだからです。

(5)翌日(または数日後・1週間後)、1枚目のリストの中から別の特徴をひとつ選んで、それについて短い文章を書きましょう。1日にひとつずつ、定期的に(できれば毎日)実行し、リストのすべての項目が終わるまで続けてください。

途中で自分のよいところを思いついたら、それもリストに追加しましょう。

このエクササイズの主な効果は、無力感や傷つきやすさを軽減し、嫌なことがあっても折れない心をつくること。また、自己否定を減らし、ポジティブな言葉を受け入れやすくすることです。


『NYの人気セラピストが教える 自分で心を手当てする方法』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします) 

自己肯定感を高めるには、時間がかかります。すぐに効果が出ないと思っても焦らず、今回紹介したエクササイズや前回記事(「心の免疫力」が高い人が実践する地道な習慣)で紹介した「手当てA(自分にやさしい言葉をかける)」などを一つひとつ着実に実行しましょう。

なかなかエクササイズが実行できなかったり、いくらやっても効果が上がらないときは、医師やカウンセラーに相談してみることをおすすめします。自己肯定感が低いあまりに、自分や他人を傷つけたい気持ちになっているときは、すぐに助けが必要です。まずは最寄りの病院に行き、今後の対処について相談しましょう。

ただ、批判的な人々の輪から離れるなど環境を変えたり、自分でできる手当てを続けていれば、多くの場合、状況は改善していくでしょう。ぜひ、体のケアと同じように、心のケアも日常的なものとして取り入れ、心の免疫力を高めるために役立ててください。

(構成:山岸美夕紀)

最新の画像もっと見る

コメントを投稿