As You Like It

2005年02月27日 19時16分16秒 | Weblog
As You Like It
主な登場人物

兄公爵 弟により国を追放され森で暮らしている Duke Senior フレデリック公爵 兄の領地を纂奪した弟 Duke Frederick
ジェイクイーズ 追放された公爵に仕える貴族 Jaques チャールズ フレデリック公爵に仕えるレスラー Charles
オリヴァー サー・ローランド・ドゥ・ボイスの息子 Oliver オーランド サー・ローランド・ドゥ・ボイスの息子 Orlando
アダム オリヴァーの召使 Adam タッチストーン 道化 Touchstone
コリン 羊飼い Corin ウィリアム オードリーに恋する田舎の若者 William
ロザリンド 追放された公爵の娘 Rosalind シーリア フレデリック公爵の娘 Celia
フィービー 羊飼いの娘 Phebe オードリー 田舎の娘 Audrey

あらすじ

オーランドは兄から貴族にふさわしい扱いをされず不満を募らせていた。うっぷんばらしに公爵の御前で行なわれたレスリングの試合に参加し、お抱えの闘士を打ち負かすが、却って公爵の不興を買ってしまう。たまたま、その試合を見物していたロザリンドとことばを交わし、互いに一目惚れしてしまった。

そのロザリンドが突然宮廷からの追放を申し渡される。実は父親の前公爵も弟の現公爵に領地を奪われ、追放されているのだ。途方に暮れたロザリンドは男装しギャニミードと名乗り、公爵の娘シーリアと道化タッチストーンと共に父を求めてアーデンの森へと向かう。

オーランドも、家に帰ると兄が命を狙っていると知らせを受け、身の安全を図るためにアーデンの森に逃げる。

アーデンの森では追放された公爵と貴族たちが歌を歌ったり、狩りをしてロビン・フッドさながらの気ままな生活を送っていた。

オーランドは公爵の好意で一行の仲間入りがかない、恋の歌を書いては森の木々に貼り付けたり、刻みつけたりして恋の憂さを紛らわせていた。一方、ロザリンドは牧場を買い取り、羊飼いの生活を始めるが、同じ森に住む二人が出会わないはずがない。一瞬ロザリンドはあわてるが、男装に隠れてギャニミードとしてオーランドに話しかける。そして、遊び心からオーランドの恋患いの治療を提案する。

その提案とは、オーランドがギャニミードをロザリンドその人と思って恋い慕い、ギャニミードも自分がロザリンドその人のつもりでその恋に応じる、そういうお芝居をする、というものだった。「ロザリンド」という名を口にできるというただその理由から、オーランドはその提案に応じる。

二人の恋愛ごっこは楽しくも切なく、つづけられていくが、深刻な問題も起こっていた。羊飼いの娘フィービーがギャニミードを本当の男と思って恋してしまったのだ。そのフィービーに片思いのシルヴィアスはますます辛くなる。そんな他人の苦しみなど知らぬげに、ロザリンドとオーランドは結婚式ごっこまでする酔狂ぶり。

遊びは真剣にやらなければ遊びにならないが、遊びに本気は禁物。恋の遊園地に一大変化が起こったのは、オーランドを捜しに来た兄オリヴァーとシーリアが出会い、互いに一目惚れし、気の早いことに、すぐにも結婚すると言う。本気の恋に闖入されてしまって、オーランドはもうお芝居をつづける元気もない。それを聞いたロザリンドは恋のディズニーランドにそれらしい終わり方をさせてあげようと思い、みんなに魔法を約束する。

こうして、ギャニミードはロザリンドに生まれ変わり、ロザリンド本人としてオーランドと再会し、同時に、公爵と親子の再会をする。森は何組ものカップルが誕生した喜びに沸き立っていた。そこへ弟公爵が前非を悔い改め、奪ったものすべてを兄に返すとの知らせが届き、森の生活に幕が下りる。

みどころ

ロザリンドの男装がこの作品では二重三重に働く。エリザベス朝では女優が舞台に乗ることが禁じられていたので、女役はすべて少年俳優によって演じられていた。この制約がシェイクスピアにこの趣向を思いつかせたと言ってよい。つまり、男の子がロザリンドを演じ、そのロザリンドがギャニミードを演じ、そのギャニミードが「ロザリンド」を演じる、という趣向である。この何重にも重ねられた演戯の層に、シェイクスピアたちがなりわいとしていた舞台世界の「技術=知恵」の質の高さと、彼の時代の「この世は舞台、人はみな役者である」という思想の根の深さを見いだすことができよう。

さらに、この趣向には二重の楽屋受けがある。つまり、男装したロザリンドの性は、そのままロザリンドを演じる少年の性であり、また、ギャニミードが演じる「ロザリンド」は、そのままロザリンド本人であるという、舞台世界では隠されていて、楽屋や客席にはつつぬけの秘密がこの劇のひそかな喜び(通の味)になっている。当然のことながら、ロザリンドを女優が演じる現代のやり方ではこの趣向は活かされない。

もっと突っ込んで言ってしまえば、要するに、この劇の楽しみの(しかも重要な楽しみの)ひとつは、ホモセクシャルなくすぐりにある、ということである。映画やTVで写実的な女性の魅力になじんでいる私たちにとって少年が演じるクレオパトラを想像することはなかなか難しいが、ヘテロな美では代替不能なシェイクスピアの魅力もあるということか・・・。

そういう記号論的遊戯がこの劇の持ち味なので、上演するには役者にかなり洗練された趣味と知識と技術が必要になる。俳優座(?)が上演した『お気に召すまま』を観たことがあるが、演じていたのがおじさんたち(失礼)だったためか、あるいは、駄洒落合戦に終始した「おもしろい」演出だったせいか、ロザリンドたち女役にホモセクシャルなあやしい魅力は毛ほどもなかった。

では、キムタクとか、竹之内とか、反町とか、当世随一の花をもった役者がロザリンドを演じればグローブ座に咲いた花の再現は可能なのだろうか?そうとも言えるし、絶望的とも言える。こればっかりはやってみなければ分らない。

ヴィデオではオリヴィエ主演のモノクロのものと、BBCのシェイクスピア・シリーズとがあるが、音の悪さを我慢すればモノクロのがアーデンの森の気分を出していて、結構楽しめる。制作者が意図したわけではないが、カラーよりかえって森のリアリティが増すのが不思議だ。BBCのはウォリックシャーの森で撮ったらしいが、森の迫力に人間が負けて、台詞も貧弱に聞こえる。かのリチャード・パスコがジェイクイーズを演じているのがせめてもの見所(聞き所)位か?

あらすじには出てこないが、この劇には渋い味の登場人物がいる。羊飼いコリンだ。彼のことばはまるで禅僧のようでもあり、こういう頭抜けた人物を前にすると道化タッチストーンも影がかすむ。次の台詞を味わって欲しい。

コリン:わしが知ってることといやァ、雨の本性は濡れること、火は燃えること、夜の一大原因は太陽が見えなくなること、まァそれくらいだね。 

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