「滝」の俳句~私の心に見えたもの

220728 佐々木博子(「滝」瀬音集・渓流集・瀑声集 推薦作品より)

をちこちに貫乳の音や養花天 石母田星人

2020-05-09 04:16:46 | 日記
あちらこちらで貫乳の音が聞こえるという。陶芸窯の中で焼成された後の冷却の時間が詠まれている。1000℃を超える熱で焼かれる器は、水分がなくなり収縮するが素地と釉薬の収縮は異なり、その違いによって釉薬には細かなヒビが入る。その時、囁くような鐘のような音がするのです。陶芸は土が産出される場所に窯を築く。辺りはきっと緑の多い所でしょう、桜も咲いていたのでしょう。「養花天」は「花曇」と少し違って、花が咲く頃、急に冷え込んだり曇ったり熱くなったりする天気を言い、そんな天気が花を育ててくれるので「花を養う空」と書くのだそうだ。「貫乳」と「養花天」の両方に熱と冷えを置く巧みな詠み。季語の熟知なくしてこの句は詠めないですね。耳にも目にも美しい句でありました。(博子)