占守島はアメリカ軍に対峙していたが、ソ連の参戦、玉音放送後は、ソ連軍が敵国となった。
占守島を守る杉野巌旅団長は、
小説では杉原巌旅団長として登場する。
池上司書「八月十五日の開戦」角川書店 平成12年発刊より部分抜粋転記する。
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昭和20年8月16日
「司令官!来ました!」
『即時戦闘行為を停止すべし、但し停戦交渉成立に至る間、敵の来攻にあたりては、止むを得ざる自衛のための戦闘は妨げず』
桧山は文面の空虚さに呆れ果てるしかなかった。
昭和20年8月17日
略。
昭和20年8月18日
深夜0時の竹田浜は静まり返っていた。
時折、金属的な音が聞こえた。
村尾少佐は起きていた、旅団司令部からは相反する二つの命令を受けていた。
敵が、降伏と武装解除はそれに従う。
しかし、交渉を経ずして戦端が開かれた場合、迎撃する。
初動の方針を誤ると、作戦全体を崩壊させる危険がある。
敵より先に発砲すれば、国際法違反と、命令に反することになる。
竹田浜正面に国籍及び種別不明の戦艦が接近中である。
占守島の竹田浜は、間断なく火柱を立てていた。
0時55分、いよいよ敵の上陸だ。
幌莚の師団司令部では、竹田浜の単独作戦に切り替えた。
杉原旅団長を乗せた兵員輸送車は暗夜の道を時速35kmで戦場を目指していた。
鬼瓦のような風貌に加え、長身で厚い胸板の杉原は、まるで阿修羅のようであった。
午前2時40分、杉原巌少将は四嶺山に到着した。「状況を聞こう」
「支えきれそうか?」
旅団長は状況を聞きたいのである。
兵力、火力は一点に集中しなくてはならない!
杉原は豁然と目を見開いた。
占守島の朝は早い。特に夏のこの時期は、午前3時ともなると夜明けと言っていい。
旅団の司令部は情報の統制が整いつつあった。
ソビエト軍機は出ていない。
「大いなる朗報だ」杉原は感嘆の声をあげた。
「師団司令部、方面軍司令部にも転電しろ。各陣地、各部隊の航空管制官にもだ、急げ!」
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