”バレンタインデー”という言葉も行事も30才ころまで、まったく知らなかった。
ある時、他業種の独身女性から
「上司(妻帯者)にチョコレートをあげたら、顔を紅くして喜んだ」
という会話を耳にした。
彼女はその上司を、いくらかおちょくるような言い方だった。
それで、”バレンタインデー”という日があることは知った。
その日は、女性から男性へ愛の告白をしてもいい日、だそうだ。
だが自分にも、自分の勤務先にも縁のない行事だった。
それから数年してから、急にその行事は有名になった。
スーパーに行けば、いちばんいい置き場に、チョコレートが山と積まれるようになった。
そして自分にもチョコレートが届くようになった。
自分に届くようになった時は、すでに”義理チョコ”全盛の時代で、
おまけに”ホワイトデー”があり、同等または倍相当のお返しチョコが必要とのことだった。
チョコレート菓子の業界が仕組んで、それに日本人が乗ったイベントとしか思えなかった。
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地方の民俗や行事の本を、何冊か調べてみた。
”バレンタインデー”は記載されているだろうか、と。
予想通り、まったく出てこなかった。
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1970年頃、生活の本のベストセラーで知られた「自由国民社」の本を手にしてひろげた。
すると、この本にはバレンタインデーが載っていた!!!
「365日べんり手帳」 自由国民社 昭和46年発行
「聖バレンタインデー」
2月14日
バレンタイン聖人の殉教の日。
鳥が春情をおぼえる日とされ、
お化粧した卵の贈答が行われ、
若い男女が公然と愛をささやいてよい日とされている。
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「バレンタインデー」ではなくて、「聖バレンタインデー」であり、
チョコレートは、まったく関係ない。
そうしているうち、
自然と、ではなくて、社命のような感じで職場からは消えていった。
行事の内容が時に変遷したり、ところにより違うのは当然だろうが、
「義理チョコ」と「ホワイトデー」の時代は・・・ほんま、どうでもよかったな。