櫓を漕ぐ唄には、海の香りがする。
手拭を、鉢巻か、ほおかぶりに頭に巻いた姿。
顔には、海に生きる厳しさが漂っていた。
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「瀬戸内の民俗史」 沖浦和光 岩波新書 1998年発行
1946年にスペインのマドリード市の歴史アカデミアの書庫で、
ルイス・フロイスの『日欧文化比較』が自筆のまま発見された。
第一級の貴重な資料である。
34年間も日本に滞在したフロイスは何回か瀬戸内海を航行している。
日本の船は、
「肋骨材と甲板がない」
「布製の帆がない(藁の帆である)」
「漕ぐ必要がある」
「碇は鉄でない(木である)」
「昼だけ航行する(夜間はできない)」
「天気晴朗でないと航行しない」
「水夫はほとんど、いつも歌っている」
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広島県「広島県の民謡」 中国放送 第一法規出版 昭和46年発行
櫓歌
船を漕ぐ場合を考えると、川と海がある。
川の場合は「船頭歌」とし、海の場合を「櫓歌」とする。
海の場合も、
漁師が漕ぐ時の歌、
農家が漕ぐ時の歌、
物を運ぶ人の歌、がある。
尾道市吉和
エー可愛がられて寝た夜もござる ヨードッコイショドッコイショ
泣いて別れた夜もござる
鞆にゃトがない田島にゃタがない
広い尾道にゃハトがないヨー
豊田郡大崎町
ヤーレ船頭可愛や音戸の瀬戸はヨーイ
一丈五尺のヨー櫓がヤレしはるヨーイ
わしが山行きゃ山桃ほしや
御手洗沖とおりゃ女郎ほしや
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撮影日・2008年4月29日 (広島県大崎上島・木江港)