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「カノン」中原清一郎著(河出書房新社刊)を読んで(上)

2014年07月03日 | 小説・映画等に出てくる「たばこ」

私が読んだ本は、恒例に従い「たばこ」の登場する記述を抜き書きしてきました。中原清一郎さんは、こだわりを持っているかのように、「たばこ」のほとんどを「煙草」と書いています。というわけで、今回も3回にわたり紹介します。とはいっても、「たばこ」の部分は2回です。3回目は物語終盤、私が「いいなぁ!」と思った記述です。

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山形県出身で帝山大経営学を卒業し、入社後はニューヨークや香港、北京に駐在しました。飲酒、喫煙歴、ともになしです。趣味は歴史と園芸、読書。

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カノンは、歌音と書きます。32歳。都内の電子出版社「アイ・ピー・フォー」で編集者をしています。札幌の生まれで京都の立志社大を卒業後、都内のいくつかのプロダクションでファッションやデザインの編集をしてきました。飲酒、喫煙歴あり。

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拓郎は、しばらく歌音の顔を見守った。その視線に気づき、歌音は箸をやすめ、テーブルの上に置いた。ビールを飲み干し、「ちょっと一服するね」と言って、ベランダに出て煙草を吸った。ミント味の細巻きで、煙草を吸わない拓郎も、匂いは気に入っていた。ーーー
拓郎が黙っていると、歌音は棚の上にあった灰皿を取り出し、煙草を揉み消した。卓郎を見上げる両眼から涙が溢れている。いきなり、抱きついてきた胸がが、小刻みに震えている。

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ある夜のことだ。柔らかな大気に、かすかな温もりが立ちこめるのを感じながら、ベランダで歌音が煙草を吸っていると、拓郎が出てきて、手すりに体をもたせかけた。母の和子のおかげで、最近の歌音はすっかり落ち着いてきた。記憶は相変わらず、砂時計の粒のように刻々と消えていくが、それで歌音が動揺することはめったになくなった。

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「私、その手術を受けてみようかって、思うんだ」
えっ、と短く声をあげて、歌音を振り返った。歌音は煙草を揉み消し、話を続けた。

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「鴨下エリさま(職場の編集者)
同僚として、よきライバルとしてお互い頑張ったわね。戻ってくる私は、あなたとまたお酒を飲むかしら。飲みすぎに注意。新しい私、きっと禁煙するでしょう」
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