息をするように本を読む

初めて読んだ本も、読み返した本も、
ジャンルも著者もおかまいなしの私的読書記録
と、なんだかだらだら日常のことなども

闇色のソプラノ

2013-05-01 10:27:21 | 北森鴻
北森鴻 著

しゃぼろん しゃぼろん。
不思議な擬音が使われた詩に心をひかれ、大学生・桂城真夜子は
夭折した童話詩人・樹来たか子を卒論のテーマに選ぶ。

彼女が住むのは東京の架空の街・遠誉野。
唐突に歴史上に現れたといわれるこの地で、樹来たか子の息子・静弥は
美術教師をしているという。

たか子の詩をめぐり、次々と事件が起こり、死者が出る。
そこに秘められているのは、25年前に起こった悲劇の秘密だった。

全く関係なさそうな事件の数々が、少しずつ重なり絡み合って
全貌を表していく過程は魅力的だ。
遠誉野と山口という遠く離れた土地を舞台に選んだのも効果的で、
神秘的であり、事件の鍵としての役割を果たす。

たか子のモデルは金子みすず。
無垢で率直でそれでいて真相を見通す彼女の魅力を、うまく切り取っている。

救いのない話と言われればそれまでの結末だが、美しい言葉と美しい国を
堪能した満足感は残る。

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