息をするように本を読む

初めて読んだ本も、読み返した本も、
ジャンルも著者もおかまいなしの私的読書記録
と、なんだかだらだら日常のことなども

碁石を呑んだ八っちゃん

2013-09-02 10:29:54 | 著者名 あ行
有島武郎 著

幼い兄弟の日常で起こった誤飲事故を、兄の視点で描き出す。

小さい子どもって本当に何をするかわからない。
おとなしいから今のうちにと家事をしていたら、その間にとんでもないことが
行われているというのはデフォルトである。
誤飲はその中でももっとも怖いもののひとつである。

兄は八っちゃんのことが可愛いのだけれど、いつも損をする立場に苛立ってもいる。
お母さんは“八っちゃんは弟だから可愛がるんだと仰有”るし、
婆やは“兄さん悪いじゃありませんか年かさのくせに”などという。

こんな複雑な心理描写が美しい言葉でなされる。
そして、八っちゃんへのはがゆさがピークに達したところで誤飲がおこる。
兄は婆やに異常を告げ、母の元へと走り、台所で水を汲もうとする。
弟への愛情がわかる八面六臂の活躍だ。

大騒ぎの末に碁石は飲み込まれ、翌日までには体外へと出る。
それまでの不安な心と、母の優しいながらも強い姿の描写は愛情に満ちている。

目が覚めたとき、すべてが解決しており、きちんと身支度を整えた母の姿に
安堵する場面は、本当にあたたかい。
幼年時代の無条件の幸せというものを思い出させてくれる。

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