息をするように本を読む

初めて読んだ本も、読み返した本も、
ジャンルも著者もおかまいなしの私的読書記録
と、なんだかだらだら日常のことなども

うさぎ幻化行

2014-09-02 10:31:45 | 北森鴻


北森鴻 著

急逝した著者の遺作。

主人公・リツ子は、飛行機事故で死んだ義兄・最上圭一が遺した音に
心を奪われる。
それは日本全国の音の風景を録音したもので、音響技術者だった圭一らしい
遺品だった。
彼に「うさぎ」と呼ばれていたリツ子だが、この音のメッセージのあて名である
「うさぎ」はほかにいるのではないかと思い始めた。

音を追いかけて、リツ子の旅が始まる。

一章読み進めるごとに、謎が謎を呼んでさらに複雑さを増したり、
はっと解ける瞬間を感じたらまた幻のように逃げていったり。
それが積み重ねられていき、物語が紡がれていく。

その旅先の風景はとても魅力的で、ああこの国はこんなに美しかったのか、と
改めて感じさせてくれる。
そしてそのみちゆきがまた素晴らしい。列車の旅の描写は、鉄道ファンでなくても
うっとりしてしまう。

謎を探っているはずだったのに、いつしかその旅自体にどっぷりとはまり込み、
自分が何をしているのかわからなくなる、迷宮にはまり込んだような感覚。

ラストはあまり好みとは言えなかったけれど、でもやっぱり著者らしさがあって、
もっと読みたかったなあとしみじみしてしまった。

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