息をするように本を読む

初めて読んだ本も、読み返した本も、
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と、なんだかだらだら日常のことなども

邪馬台―蓮丈那智フィールドファイルIV

2014-06-04 10:12:54 | 北森鴻
北森鴻 浅野里沙子 著

2010年1月に急逝した北森鴻の遺作。
未完成のまま残された原稿を、公私ともにパートナーであった
浅野里沙子が引き継いだ。

だから、北森鴻が好きでずっと読んでいた人にとっては
後半は微妙な違いが気になるかもしれない。
そしてこれはシリーズ初の長編である。
これまでの集大成ともいえる作品で、読み応えも構成も素晴らしい。

読んでいる途中で高円宮家の典子女王殿下と、出雲大社・千家国麿氏の
婚約内定の発表があった。
出雲の歴史と、それを今に受け継ぐ家。
天皇の血をいまに伝える家。
個人的にはとてもタイムリーで、歴史の重みへ思いをはせた。

出雲と卑弥呼、鉄と米、長い歴史をテーマにした物語は、
謎の文書の解読とともに進む。
そこには富と権力、それをめぐる争い、そして敗れたものへの恐れが
絡み合う。

製鉄民族の話というのは、民話や伝承などには必ずといっていいほどに
ついてくる。
特別な力を持ち、山野を駆け巡り、仕事ゆえに不具になりやすい人々。
突然その姿を見た者が、おそれおののいたのは想像できる。

言い伝えや神話をもとに調査をし、小さなかけらを組み合わせて
結論を導いていく過程は、時に危険に満ち、時に息づまるような
緊張を伴う。民俗学を追求し、突き進む那智は実に魅力的だ。

大好きだったこのシリーズが最後になるのは本当に悲しい。

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