息をするように本を読む

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農場の少年

2012-07-23 10:02:03 | ローラ・インガルス・ワイルダー
ローラ・インガルス・ワイルダー

昨日にひきつづき大草原シリーズ。
これは一冊だけローラの夫・アルマンゾを主人公にした作品だ。

ニューヨーク近郊のマローンに住む富裕な農家の末子として生まれたアルマンゾ。
厳しい寒さの中、学校へ向かうところから話がスタートする。

当時この地区は回り持ちで先生の宿をつとめていたらしい。そういえばローラも教師に
なったとき校区の家に下宿していた。そうでもしないと宿舎もないからなあ。
その日きょうだい4人と泊まる先生はワイルダー家へ帰宅する。
しかし、すぐに待っているのは家畜の世話や家事。
子どもたちは手分けして精いっぱい働く。
貧しくてもお金持ちでも当時は子どもが大切な働き手であったことがよくわかる。
豊かな暮らしぶりを実感するのはその食事だ。

香ばしく焼けた豚の脂身がのった「ベークド・ビーンズ」、塩漬けの豚、
ハムのグレービーをかけた粉ふきいも、ハム、やわらかいパン、
蕪のマッシュ、やわらかく煮込んだカボチャ、プラムのプリザーブ、
いちごジャム、ぶどうのジェリー、スイカの皮のピクルス、パンプキンパイ。

これでもかと登場する豊富なメニュー。量も“おなかがはちきれんばかり”。
塩漬け豚とパン、じゃがいもでどうにか食べつなぐ開拓地の生活とは
大きな違いがある。
この話はローラの夢の子ども時代を描いたものでもあるという説があるが
それもうなずける。

大家族を余裕をもって養い、貯蓄もしている父は、周囲からも尊敬される人物だ。
宿泊している先生が手を焼く悪童たちを追い払うアイディアも彼が出した。
そして誰よりも労働に価値を見出し、子どもたちにもそれを教えていた。

母も父に並ぶ驚くほどの働き者。羊の毛を染めるところからはじめ、布を織り裁断し、
家族の服をつくる。靴下を編み、保存食をつくり、合間につくるバターは高価で取引される。
姉たちも母に習った手仕事の達人。後にローラを教師として教えたイライザ・ジェインの
強引なお姉さんぶりや、男の子のようなところがあるアリスのキャラクターも
魅力的で楽しい。

兄ローヤルは教育を受けた結果、農業よりも商売をしたいと願うようになる。
両親としては複雑な思いだったようだ。
のちにアルマンゾとともに西部に行き、飼料店を営んだ彼だが、その糸口を
ここでつかんだのだろう。
農業や馬をとことん好きだった弟とは大きく違う。

豊かな暮らしを営むことは、それだけ仕事も多くなる。特に当時はそうだったんだなあ。
夜明けから日暮れまで休みなしの労働なんて私にはできそうにない。
砂糖と油脂がたっぷりの食事をたくさん食べていたのは理由があるのだ。
そしてそれすら十分用意できず働く人たちはもっと大変だったということ。

何より違うのは衛生観念かもしれない。
お金持ちのワイルダー家でも浴室はなく、冬でも行水、それも週一回。
洗濯だってこれだけ女手があって、しかもフル稼働でも週一回。
無理だ~。
っていうか、結婚ひとつとっても今とは意味が全く違うよね。
この時代の男一人暮らしなんて命の危機を感じるわ。

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