息をするように本を読む

初めて読んだ本も、読み返した本も、
ジャンルも著者もおかまいなしの私的読書記録
と、なんだかだらだら日常のことなども

切れた鎖

2012-05-30 10:49:07 | 著者名 た行
田中慎弥 著

ゆるやかな絶望とあきらめと。
物語の底辺に流れるのはある意味達観である。
この世にそんなにいいことがあるはずない、という確信。
そしてそれなのに、代々と続く命への憐み。

表題作ではさびれつつある地方の、さらにこわれつつある旧家と
その裏に寄り添うようにある新興宗教の教会という
なんとも心が寒くなるような舞台が用意されている。

次世代を担うべき幼い少女はいるけれど、この子が家を
再興するとはだれも考えていない。
食べるのには全く困らない程度に裕福ながら、能動的に何かを
することには欠けている女たち。

地方の繁栄を期待された埋立地に放置された古いバス。
そこだけが不夜城のように輝くファミリーレストラン。

心地よいとはいいがたいが、独特の物語は面白い。
だが、センテンスの長い文章と、特有の読点の打ち方には
違和感が大きくまいってしまった。

独自のポリシーがあるのだと思うが、ここで引っかかってしまうと
物語の世界に入り込めない。
たぶんこの著者の作品はあまり読めないかも。

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