哲学とワインと・・ 池田晶子ファンのブログ

文筆家池田晶子さんの連載もの等を中心に、興味あるテーマについて、まじめに書いていきたいと思います。

『ぼくらの頭脳の鍛え方 必読の教養書400冊』(文春新書)

2010-10-03 11:15:51 | 
 “知の巨人”立花隆氏と“インテリジェンス”佐藤優氏によるブックガイドだ。両者とも日本を代表する知識人であり、膨大な読書量を誇ると思われるが、読んでみて面白いのは、立花氏と佐藤氏の意見の違いが至る所にあるところだ。最新科学を最も敬愛する立花氏に対し、神学部出身で共産圏で仕事をした佐藤氏の方が古典をより重視しているようだ。立花氏と佐藤氏に共通するのは現代日本政治に深く関わった点だろう(関わり方が正反対だが)。しかも佐藤氏が形而上学を重視する言い方をしたところ、立花氏が形而上学を否定するくだりがある。立花氏はどこまでも科学好きなのだ。


 そんな立花氏について、池田晶子さんも幾度か言及している。

「立花隆さんという人はおっちょこちょいな人だなあ。・・政治や経済、せいぜいインターネットくらいまでなら、調査とデータとデータ分析で、わかりたいことはわかるだろうが、こと、「死」、生きているというまさにそのことにおいて誰ひとりわかるわけのない死について、調査とデータとデータ分析でわかるだろうと思って頑張っている立花さんは、ちょっと気の毒みたいだ。」(『残酷人生論』「生死とは論理である」より)



 ところで、表題の本の中でひとつ気になったのは、プラトンの『国家』を「社会改造思想の間違いの源泉」として紹介していることだ。プラトンの『国家』は、ナチスなどのファシズムを肯定する根拠となる思想として利用されたそうだ。そして、その「プラトンの『国家』への解毒剤」として佐々木毅氏の『プラトンの呪縛』を挙げている。

 小ブログとしては、解毒剤よりも強力な劇薬として池田晶子さんの著作を挙げたいところだが、もう少し安価なジェネリックとして藤沢令夫著『プラトンの哲学』(岩波新書)を付け加えておきたい。