哲学とワインと・・ 池田晶子ファンのブログ

文筆家池田晶子さんの連載もの等を中心に、興味あるテーマについて、まじめに書いていきたいと思います。

辻井伸行さん

2009-12-26 05:40:50 | 音楽
 最近、辻井伸行さんのドキュメンタリーを2本見た。1つはNHKのETV特集で、優勝したコンクールの密着取材であった。もう1つは民放のドキュメンタリーで、小さい頃からコンクール優勝までの11年くらいの期間を取材したものであった。

 感動的だったのは、やはりNHKの方であった。常々ドキュメンタリーものはNHKの制作がすばらしいと思う。池田晶子さんは晩年にNHK批判をしていたが、池田さん自身もともとNHKくらいしか見ない性質だったと思うし、個人的にもテレビを見るならNHK優先である。

 さて、NHKのドキュメンタリーでは、ヴァン・クライバーン・ピアノコンクールの優勝までのリハーサルなどのやりとりが大半であったが、そこでは、目が見えないことにより、アンサンブルや協奏曲でいかに他の奏者やオーケストラと合わせるかが大きな課題となっていた。

 例えば、協奏曲のリハーサルで指揮者が、ピアノから始まる章でのタイミングを計るのに苦労し、前章終了から4拍数えてスタートするなどいろいろ提案していた。すると、通訳が言うには「辻井さんのマネージャーによると、彼は指揮者の息遣いでタイミングを計っているそうです」と。そこで、指揮者が指揮棒を振るタイミング通り強めの息遣いをすると、ピッタリのタイミングで辻井さんが演奏を始めたのである。指揮者が最良の解決策を見つけて、喜んで辻井さんの肩を叩いていた。

 誰もが息をしているし、何か新しい動作をする時、強い息使いをするものなのだろう。普段は気づかないようななんでもない事が、困難な事態の解決策になることに大きな感動を覚えた。上杉鷹山の「なせば成る」どころではない。「不可能を可能にする」ことができてしまうのだ。

 NHKのETV特集は再放送をすると思うので、是非視聴をお薦めしたい。