哲学とワインと・・ 池田晶子ファンのブログ

文筆家池田晶子さんの連載もの等を中心に、興味あるテーマについて、まじめに書いていきたいと思います。

レディー・ガガさん

2011-07-02 03:25:00 | 音楽
 先日来日したレディー・ガガというポップスシンガーの話題が随分聞かれる。以前から、音楽より奇抜なファッションで話題が多かったと記憶しているが、最近は『Born this way』というニューアルバムがトップランキングという。

 以前たまたま、そのBorn this wayという曲のプロモーションビデオを見てしまったが、そのグロテスクな映像世界には大変驚いた。こういう映像が果たして人気なのか少々疑問ではあったが、その異常さゆえに大衆受けしているのだろうか。天才好きな池田晶子さんは、このような音楽には何の興味もないだろうが、ややアングラなイメージのレディー・ガガさんを天才に含めてくれるだろうか。少し躊躇しそうだ。商業的には相当成功しているようなのだが。


 このBorn this wayという曲の歌詞を見てみると、随分映像とギャップのあるシンプルな内容だった。この歌詞を哲学的だという人もいるようだが、果たしてどうだろうか。題名からして、自分はこのように生まれたといい、歌詞の内容は基本的には、私は私でいいんだ、という徹底的な自己肯定の内容である。


 歌詞の中には、少し池田晶子さんの謂いに似ている部分もある。「人種や民族は関係ない」とか「自分の人生を生きるしかない」という趣旨のところだ。しかし、歌詞全般はやはり全面的自己肯定でしかないようである。この歌詞のメッセージで、安心し癒される人も多いのかも知れないが、そこで終わっては哲学的とは言い難い。


 自分は自分のままでいいんだと、自分は完璧だと思ってしまい、その先を考えないとすれば、それは思考停止としか言いようがない。そもそも、その存在が信じられている「自己」とは何か、というのが池田晶子さんのよく取り上げる問いである。考えることは無限大に広がるのであり、我々は未だ考えることの出発点にいるのだと思ったほうがよい。池田晶子さんのよく言う“振り出し”だ。この曲を、自己というものを振り出しから考えるきっかけにするならば、まさに“哲学的”である。