哲学とワインと・・ 池田晶子ファンのブログ

文筆家池田晶子さんの連載もの等を中心に、興味あるテーマについて、まじめに書いていきたいと思います。

『8 はじける知恵』(あすなろ書房)

2012-07-10 06:38:00 | 哲学
前回紹介した本と同じシリーズの掲題書籍にも、池田晶子さんの文章が載っている。『考える日々』からの文章だ。今回は、若い人からの手紙を紹介し、お勉強としての「哲学」ではなく、自ら「考える」ことを実践している若人が増えていることを素直に喜んでいる。
また、同じようなことを考えている人は少なくないとしながら、表現には個性が出るはずとも書いている。確かに、有名な哲学者も含め、池田晶子さんの言う通り、人間の言語と文法によって存在を考える限り、そんなに違ったことにはならないはずだが、逆に表現が様々な中から正しい哲学原理を把握することは、むしろ情報量が増えるほど物理的には困難になるかもしれない。本屋の膨大な書籍の中から、池田晶子さんのような文章に出会えるのも偶然な邂逅である。真っ当な表現に確実に出会うには、やはり古典に回帰することなのだろう。
それにしても、今回池田晶子さんらしい文章だと思うところは、人類の進化について言及している点である。池田晶子さんはよく、「賢く」なっていない人類の行為を指摘することも多いが、今回は、後の人類ほど賢くなっているはずという知恵の進化論みたいなものを仮説として書いている。池田晶子さんがいくつか提唱している仮説の一つである。この仮説がいずれ証明されるかどうか、は「考える」若人に期待するところだ。