哲学とワインと・・ 池田晶子ファンのブログ

文筆家池田晶子さんの連載もの等を中心に、興味あるテーマについて、まじめに書いていきたいと思います。

『ローマ人の物語』35-37(新潮文庫)

2009-10-03 19:11:11 | 
巻のタイトルは「最後の努力」だ。ローマ帝国が生き延びようとする最後の努力の時期となる。外敵から国境を守るため、皇帝を4人として、それぞれエリアを担当させて、責任をもって防衛線を守る任務に着かせるという四頭政になった。一時的にこれはよく機能したという。しかしトップの地位にいた皇帝が退位すると、皇帝同士の争いも発生して混乱してしまう。それを武力で勝ち抜いたのが、キリスト教を初めて積極的に認めた皇帝コンスタンティヌスだ。

今回の巻で印象的な点は2つある。1つは、効率的な国境防衛のため四頭政としたことが、かえって組織の肥大化を起こし、短期間のうちに公務員数が大幅増となって、国家財政を逼迫させてしまったこと。もう1つは、皇帝の正統性を人民による信任ではなく、一神教(キリスト教)の神の絶対的至高性によるとしたことである。

前者は、現代でも教訓にできる内容なのかもしれない。行政における省庁の増減は同じ問題なのであろう。また後者は、その後の長い停滞の中世を形作ったという。元老院や市民の選択によって信任されるはずの皇帝の地位が不安定となり、気まぐれな民の意思に頼ることを捨て、神という権威に頼ったのがきっかけだったが、人類がその一神教の呪縛から信教の自由を取り戻すまで1千数百年を要すことになった。