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京の夏を彩る祇園祭は、千百年の伝統を持つ八坂神社の祭礼です。
山鉾巡行は、平成26年に7月17日の前祭(さきまつり)と7月24日の後祭(あとまつり)の
2度の巡行が49年ぶりに復活し、前祭は23基、後祭は10基の山鉾が巡行します。
後祭の中には、『平家物語』と縁の深い山が二基あります。
一つは六角通に建つ浄妙山、もう一つは蛸薬師通に建つ橋弁慶山です。
浄妙山は宇治川の橋合戦で、三井寺の僧兵一来法師(いちらいほうし)が
筒井浄妙の頭上を飛び越える様子が躍動感あふれる御神体(人形)であらわされ、
山鉾巡行においても人気を博しています。
橋弁慶山は謡曲『橋弁慶』を題材にして作られ、義経伝説の中でも
特によく知られている弁慶と牛若丸が五条橋で戦う姿をあらわしています
牛若丸と弁慶との出会いを描いた作品には『義経記』や
『弁慶物語』、『御伽草子』などがありますが、
それらには千本の太刀を集めるために辻斬りをしているのは弁慶で、
その弁慶を降参させるのが牛若丸となっています。
一方、謡曲『橋弁慶』では、牛若丸が辻斬りとして登場します。
比叡山の僧、武蔵坊弁慶が天神へ丑の刻詣に行こうとすると、
従者から五条橋辺で、化け物のような人斬りの少年が出没するので、
参詣を思いとどまるよう言われました。いったんは参詣を断念しましたが、
思いかえして長刀を担いで五条橋に向かいました。五条橋では、
牛若丸が明日は鞍馬山に帰るので辻斬りも今夜が最後と待ち構えていました。
そこに弁慶がやってきて斬り合いになりますが、人間とは思えない技を持つ
牛若丸に弁慶は歯が立たず、ついにうち負かされました。
そして牛若は身分を明かし、二人は主従の契りを結ぶのでした。
古くはこのように牛若丸が悪行をするという物語もあったようです。
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後祭の山鉾は、7月18日頃の鉾建てから24日の山鉾巡行まで、
1週間ほど京の町に風雅で勇壮な姿を見せてくれます。
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橋弁慶山会所 京都市中京区蛸薬師通室町東入ル橋弁慶町231
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橋弁慶山の会所には、山を飾る金色の擬宝珠(ぎぼし)をあしらった五条橋や前掛、
銅掛、巡行時の写真パネルなどが展示してあります。
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御神体の弁慶と牛若丸が置かれている会所の2階へは上れませんが、
蛸薬師通からその豪壮な姿を見上げることができます。
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巡行に出発します。
後祭の巡行マップは、KYOTOdesignよりお借りしました。
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銅掛に描かれた「賀茂葵祭図」は、円山応挙の下絵です。
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前掛と後掛は、中国明頃の雲龍波涛文(はとうもん)の綴錦です。
20数基ある山の中でも、橋弁慶山は古い形を残し、
山には神霊が宿る神籬(かみまがき)も真松(しんまつ)もありません。
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牛若丸の人形は、天文6年(1537)平安大仏師康運(こううん)の銘、
弁慶の人形も同じ作者で、永禄6年(1563)の古い銘が刻まれていて貴重です。
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武蔵坊弁慶は鎧姿に大長刀を斜めにかまえ、牛若丸は五条橋の
擬宝珠の上に前歯一枚の高下駄で立ち、金具1本でこれを支えています。
片足を曲げ、右手には太刀を持ち、まさに今飛び跳ねたという
臨場感あふれる姿が表現されています。
昔は人間が「山」に乗って演技をしていたという。
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宵山の期間中には、屏風祭(びょうぶまつり)が催され、
民家の家々の格子戸が取り外され、
家宝の屏風などが公開されて祭気分を盛り上げています。
六角館 (新町通六角下ル)では、『平家物語』の屏風を見ることができます。
極彩色の二双の屏風に描かれているのは、屋島合戦と鵯越の逆落しです。
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牛若丸・弁慶像(五条大橋) 祇園祭浄妙山(筒井浄妙と一来法師)
祇園祭保昌山(平井保昌と和泉式部)
『参考資料』
「平成21年度祇園祭山鉾参観案内書」(財)祇園祭山鉾連合会
天野文雄「能楽名作選(下)」角川書店、2017年