風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

人(6)アマチュア

2009-12-31 10:34:09 | 日々の生活
 良くも悪くも今年の顔となった鳩山さんですが、100日のハネムーンを経て、最後は私が決めますと指導力をアピールして来たつもりの決めゼリフが、最近はすっかり色褪せてしまい、支持率も5割程度まで落ちてきました。幸い自民党がパッとしないので、まだ5割に踏みとどまっているといったところでしょうか。本来は手段であるはずの「政権交代。」が目的となって衆議院選を戦うために、自民党へのアンチテーゼを掲げざるを得なかったのは止むを得ないにしても、その後、「政策運営」にあたっては、前政権の政策を踏襲しながら変えるべきところは変えて行く穏健路線にアウフヘーベンできれば良かったのですが、全否定のまま突っ走っているものですから、どうも危うさが付きまとう一方、違法献金疑惑で居直る旧態依然とした政治家風情が不釣合いで、チグハグ感は否めません。ポスターに書かれた「政権交代。」の句点は何を意味するのか訝しがられたことがありましたが、今となっては「政権交代。」で止まって先に進めない現状を象徴しているかのようです(句点をつけることをアドバイスしたのはデーブ・スペクター氏だったという説がありますが、軽はずみなことをしたものです)。
 これまでのところ、新政権で評価されているのは事業仕分けだけかも知れません。科学技術関係や芸術・音楽関係の予算削減ではちょっとミソをつけましたが、予算プロセスが白日の下に晒されたという点での評価を貶めるものではありません。自民党議員の中からも、なかなか面白いと評価されたこの手法は、カナダ政府での事例を下敷きにしたものだと言われていますが、実は二年半前、自民党・福田政権の時に政務調査会に設置された「無駄遣い撲滅プロジェクトチーム(PT)」で、(そもそもの趣旨は若干違うように思いますが)事実上、着手されていました。ただこのPTは、公共事業などの巨額予算を扱う分野にメスを入れることが許されず、予算権限の少ない文部科学省、環境省、財務省、外務省といった文教・科学技術等の分野に限られていたこと(それでも2.7兆円の内、約14%に相当する3500億円を無駄と断じたと言う意味では、仕分けチームよりも格段に成績が良い)と、結局、このPTは、党が決めたことに盾つく反乱分子として扱われて孤立して行ったところが、今回の事業仕分けチームとは異なります。いつの時代にも既得権益を守る動きはあるもので、予算編成を真面目にやろうとすると利害がぶつかって難しいものですが、自民党にあっては抵抗勢力が強過ぎた、その自民党の体質に問題があったと言う意味で、事業仕分けの問題は、自民党と民主党の体質の差、正確に言うとこのたびの一連の立場の差を象徴する出来事だったと言えます。因みにこのPTを率いたのは、自民党総裁選で年寄りに引退を迫った河野太郎さんでした。自民党の内からの改革に期待しましょう。
 ところで、タイトルにアマチュアと書いたのは、良くも悪くもという意味であって、事業仕分けも含めて、手法が従来の自民党と違って新鮮だったという好意的な評価も含みます。勿論、普天間基地移設問題で見せた鳩山さんのやり方が未熟だ(Hatoyama's amateurish handling of the issue)とワシントンポスト紙に酷評されたことにも因みます(つい昨日のワシントンポストには“気紛れ(a mercurial leader)”とも書かれてしまいました)。この点に関してちょっとだけ弁護すると、普天間問題は相手(アメリカ)あってのことで、相手の評価を真に受けることはありません(だからと言って、鳩山・民主党の対応を評価するものではないのは、これまでもブログに書いて来た通りです)。しかし、温室効果ガスを2020年までに1990年比で25%削減するとぶち上げたにも関わらず、COP15ではなすすべもなく全く存在感を示せなかったのは、最初から手の内をさらけだし、他には何ら交渉のカードを持たず、他国の善意に期待した「友愛」外交が、国際政治の冷徹な現実の前に既に破綻していたことを示すものであり、Hatoyama's amateurish handling of the issueの悪しき方の事例、アマチュアとしての心もとなさを示すものと言えましょう。
 こうして見ると、今の政局は、便宜的、暫定的、過渡的であって欲しいと願うばかりです。アマチュアに任せていられるほど、その立ち上がりを待っていられるほど、甘く悠長な時代ではないはずだからです。自民党ばかりでなく、民主党も寄合い所帯に過ぎないことは明白なのですから、自民・民主という枠に囚われない政界再編によって、もっとプロフェッショナルに切り盛りして欲しいと思わざるを得ません。実はこうした思いは、政界や日本経済に限らず、私の身近な会社生活においても(さらには日本の社会あまねく)妥当するのであって、自戒を込めて書いて来ました。暦が12月31日から1月1日に変わるだけでリフレッシュすることを期待し、新年と呼んではオメデタがる日本人の習性にならって、波乱含みの2010年の荒波を、前向きに乗り切って行きたいと思います。先ずは2009年はお疲れ様でした!
 上の写真は、ちょうど一年前のシドニー・ハーバーブリッジのカウント・ダウン花火です。
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人(5)華人実業家

2009-12-30 10:46:21 | 日々の生活
 景気を多少なりとも反映するのか、面白そうなビジネス書を余り見かけないので、最近はすっかりご無沙汰していて、今年一年で特筆すべきビジネスマンの名前と言ってもすぐには浮かびません。そんな中で、久しぶりに邱永漢さんの名前を見つけたので読んだところ、いつ読んでも面白いなあと、それこそ10数年振りでしたが、あらためてある種の爽快感と感動を覚えました。
 ご存知、「金儲けの神様」で、株式投資関係の著作が多いことで知られますが、その周辺分野も含めて出版した本は400冊、85歳になられる現在も、ご本人のHPによれば年間120回も飛行機に乗って、中国大陸との間を飛び回っているのだそうです。
 読んだのは「邱永漢の『予見力』」(集英社新書)、注目するのは中国人のこれからの食糧のことだと言い切る目のつけどころのユニークさと、それを支える、常に何かを追い求めて止まない好奇心と、結果としての、その年齢を感じさせないバイタリティにはあらためて驚かされます。株のことではないからこそ手に取ったこの本ですが、流儀は株と変わるところはなく、お金にお金を産ませるという、かつてベストセラーになった「金持ち父さん」のメッセージに繋がるものを感じました。株式投資に関しても、横綱の株を買ってどうするのか、横綱は勝つのが当たり前で、本当のタニマチというのは、その横綱を倒すような、これから伸びる若手を贔屓にするものだと自ら表現される邱さん(漢字変換が大変なので、以下、Qさん)ですが、事業と言うと、自ら会社を興して社長として引っ張ることを想像しがちですが、Qさんの場合は一味違い、人と人との繋がりの中から、ビジネスの種を見つけ、金ではなくて、いわば人を育ててその人に事業をやらせておられるように見受けられます。この本の著者は玉村豊男さんですが、Qさんが手がける食糧ビジネスに関する中国視察旅行に同行し、その先見力と行動力を余すところなく伝えます。
 それとともに、以前読んだ時にはアメリカのビジネスしか知らなかった私でしたが、今回はアジア大洋州のビジネスで少なからぬ華人ビジネスマンとも付き合いがあった後で、あらためてQさんの中国人(台湾人)としてのメンタリティを大変興味深く拝見しました。発言や行動の中に、実感として納得出来る部分がかなりある。そして、今後益々存在感が増し、日本人としても付き合いが増すであろう、中国という異形の凄まじさに思いを馳せました。この本の中でも二箇所、日本人が苦手なこととして、買物をする時に値切ることと、役人に賄賂を握らせることだと、Qさんが言い切るところが出て来ます。日本人には中国ビジネスは難しいだろうなあと思います。
 最後に、Qさん自身が語った、印象に残るフレーズを。
 いつも考えていることは、見える景色の中で物事を判断するのではなくて、見える景色の向こうはどういう景色かということに興味を持っているので、いつも余計なことを考えて、20年前に、今日の中国がこういう形になるということを予想した(以下略)。
 なんだかイチローの発想とも繋がります。また別のところではこうも語っています。
 世界同時不況の中で、実体経済も最悪というところまで来てしまいました(3月の誕生会での発言)ので、右を向いても左を向いても、皆、どれだけ損を防ぐか、どれだけ倹約するかという話ばかりです。(中略)おカネに本当に値打ちが出るのは、そういう時に使えること(以下、略)
 実業家の面目を感じさせられ、私(たち)も元気をださなきゃと、肩を押される気分にさせてくれる貴重な方です。
 上の写真は、シンガポールのチャイナ・タウンにて。
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人(4)エンターテイナー

2009-12-29 01:56:28 | 日々の生活
 今年も多くの著名人が亡くなられました。亡くなられた方を多く知っているということは、それだけ私自身も年をとったということでもありちょっと寂しくもありますが、その中でも一番衝撃的だったのは、マイケル・ジャクソンさんの突然の早過ぎる死でした。ニュースを知ったのは、4年の海外勤務の末、まさにシドニーを発つ日の朝のこと、前日に家具を売り払い、ホテルに泊まって、マンションを引き払う最後の日の朝、ホテルのレストランでゆっくりと朝食を取っていて、レストランの片隅に置かれた映りが良くないテレビの映像に驚愕したのでした。その時の記憶と相俟って、この一年の中でも、ひときわ印象に残っているわけです。King of Pop、同時代に最も輝いたエンターテイナーの一人でした。
 マイケル・ジャクソンを初めて知ったのは学生の頃でしたが、正直なところ、話題になっていたからこそ「スリラー」のレコードをレンタル店で借りて聞いたクチで、私にとっては私自身と言うよりも常に世間への影響力の大きさによって私の中に存在感を示した人でした。所謂黒人音楽に囚われず、白人にも受け入れやすい曲作りをしたと言われ、まさに彼が登場する前と後とでは音楽シーンが変わったことは驚くべきことでありましたし、他方、顔がどんどん白くなって行くのがなんだか不憫でもあり、またゴシップや訴訟が多かったのも有名税と言うべきでしょうし、恐らく誤解も多かったのだろうと思います。
 そんな彼の素顔は、案外、生涯を通じて、世界各地で子どもたちのための慈善活動を続けたあたりにあったのではないかと思います。Wikipediaによると、2004年のNYタイムズ紙に彼の一ヶ月の生活費が2億円で、おもちゃ代だけで一ヶ月に3000万円費やしていたと紹介されていたそうです。ディズニーランドが好きで、以前住んでいた自宅には遊園地や動物園が併設されて「ネバーランド」と呼ばれていた通り、お伽話のような人生を駆け足で走り去って、最後まで私たちの手が届かないまま、伝説になりました。合掌。
 上の写真は、マレーシアで唯一のカジノ施設、ゲンティン・ハイランド。子供も遊べる娯楽施設になっています。ぼんやり霞んで見えるのは、山の上にあって霧に包まれているからです。
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人(3)プロ野球監督

2009-12-27 23:53:08 | 日々の生活
 昨晩の「うるぐす」で、今だから語るWBC監督としての原さんのインタビューが放映されていました。これまで毀誉褒貶で揺れていた原監督ですが、今年は確実に評価をあげ、大リーグを別にすると、最も傑出した野球人の一人に挙げられるでしょう。選手ではなく監督であるところが異例ですが、監督として、WBC、セ・リーグ、日本シリーズ、日韓統一王者の四冠を達成し、正力松太郎賞や紫綬褒章をはじめ、直近で「国連の友」が制定する「国際寛容賞」を日本人として初めて受賞したものまで含めると、今年、手にしたタイトルは11に及ぶそうで、まさに原監督イヤーだったと言えます。
 原選手としては、学生時代から大いに期待され、巨人軍入団後は、新人王を獲得し、三年目に達成した3割30本塁打100打点は、青田・長嶋・王に次ぐ球団史上四人目の快挙で、第48代・巨人軍4番の座は1066試合に及び、川上・長嶋・王に次ぐ長きに亘りますが、特に勝負強かったというような印象は残っていません。野球人としては、むしろ監督になってからの方が評価が高いくらいではないかと思います。特に、お気に入りの選手ばかり集めて4番だらけの重量打線ながら峠を過ぎたベテランが多くてチームとしての実力を発揮できずに終わった晩年の長嶋さんの後に監督になっただけに、ベテランや中堅だけでなく若手も積極的に起用した適材適所の配置で打順を生かした野球スタイルは評価が高く、実際に九連覇以来のリーグ三連覇を達成しました。
 原監督の評価を難しくしてきたのは、長嶋さん譲りの思いつき野球や、大袈裟なやや意味不明のところもある言動にも起因すると思われます。しかしジャイアンツ愛というキャッチフレーズに見られるように、ジャイアンツというチームを愛する気持ちひいては野球を愛する気持ちがびんびんに伝わって来て、選選手を乗せてしまうところがあるのは、リーダーとして重要な素養のように思います。こうした原監督のキャラクターを形作ったのは、長嶋さんの影響もさることながら、1986年のシーズン途中で広島・津田投手の直球をファールした際に左手首の有鉤骨を骨折し、「事実上、バッター原辰徳は、この骨折の時に終わった」と後に告白したほど、後々まで古傷に悩まされ選手生命に影響を与えた経験と無縁ではないでしょう。
 愛は地球をなかなか救えませんが、愛する者は救われる、人は愛に包まれて実力を遺憾なく発揮するようです。
 4番というのは、中国では「死」を連想させる忌むべき数字で、マレーシアでも華人が経営するホテルやマンションでは4階と13階の表示がありません。上の写真では分かりませんが、エレベーターでも4階に代えて3Aと表示し、13階に代えて12Aと表示したりします。なお×印がついているのは、ドゥリアン持込み禁止の標識です。
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人(2)ピアニスト

2009-12-27 01:01:31 | 日々の生活
 今宵、たけしさんの番組に辻井伸行さんが出演され、ピアノの生演奏を披露されました。この一年を通して、景気の悪さは変わりませんでしたが、他方、日本人を元気にする話題が多い年でもありました。辻井さんは間違いなくその内の一人だろうと思います。ご存知の通り、今年6月、アメリカで開催されたヴァン・クライバーン国際ピアノコンクールで優勝されました。中国人ピアニスト張昊辰さんとの同時優勝で、日本人として初の快挙です。
 私はこのニュースをシドニーで知りました。音楽に全く造詣のない私なので、視覚障害者だというところに、親としての感情移入があったというのが正直なところでしたが、そんな思いは消し飛んでしまうほどに、圧倒的な強さ、あっけらかんとした明るさがあり、感銘を受けました。そして、勿論、ここに至るまで私たちの想像を超える苦労があったと思いますが、所詮は私たちには理解できない世界であり、私たちは今ある結果を楽しめば良いのだと思い知らされました。
 私の知人に、人間の極限状況を記録したドキュメンタリーや小説などの読み物を好む人がいました。15年くらい前の話で、当時の私は、酔狂だなあとしか思えなかったのですが、こうした話を今も覚えているということは、どこかで引っ掛かるところがあったのでしょう。今にして思うと、人間という存在の限界と同時に可能性も見てみたいという強烈な思いがあったのではないかと思います。
 辻井さんを見ていると、人間の可能性を感じます。もとより譜面を読むことは出来ないので、音楽を聴きながら、右手と左手でどう弾けばよいのかを体得していったのだと言います。私の息子などと比べるべくもありませんが、息子の英語は、耳から入っているので、一見、完璧に見えますが、高校入試の英語問題をやらせると、理論から入っていないだけに、英文の書き換え問題や発音問題が弱い。しかしこうした厳密さ、緻密さは、日本的なパターンをなぞって、学習の到達レベルを確認するという目的に資するものに過ぎなくて、英語本来のコミュニケーション力を伸ばすために必ずしも必要なものではありません。辻井さんの音楽への接し方、息子の英語への接し方を見ていると、恵まれているはずの私たちこそ、却って何かを失っているのではないかと思えてなりません。
 ピアノと言えば、ピアノが弾けなくても、ネコ踏んじゃっただけは見よう見まねで出来る人は多いのではないでしょうか。上の写真で、天井の屋根の影はネコ。ここに寝ている限り踏まれることはありませんね。マレーシア・ランカウィ島のレストランで。
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人(1)独裁者

2009-12-26 00:30:14 | 日々の生活
 昨日は宇宙的と言いましたが、政権交代後100日を経過した今の民主党・鳩山政権には、本当の意味での国益の観念や国家のグランドデザインといったものが残念ながら見られません。民主党が金科玉条にするマニフェストは、基本的には自民党政治がやってこなかったことを目指す、いわば陰画として纏められたものに過ぎず、しかもマニフェストを策定した野党時代には十分な情報をもっていなかったわけですから、期待すること自体が無理筋と言うものです。実際に国民は、そんなにマニフェストに拘らなくてもいいよと言ってあげているのですが、民主党は何が何でも自民党との違いを際立たせたいのか、こだわりを捨てようとはしません。
 これは畢竟、民主党の目線の先にあるものが国家ではなく、もとより世界政治でもなければ地方でもなく、ひとえに夏の参院選で過半数をとるという政局一点張りにあるからではないでしょうか。小沢さんの動きを見たら、そう思わない人はいないでしょう。
 たとえば小沢さんが政府に提示した重点要望は、小泉さんが進めた構造改革路線を否定する内容で、言ってみれば古い自民党に先祖がえりするものだと言えましょう。旧来の自民党支持基盤を取り込みながら、民主党政権を磐石の態勢にすることに注力するのは、何が何でも政権を手放さないという覚悟の表れです。採算度外視の高速道路建設が問題化した時、小泉改革は財政支援を打ち切りましたが、民主党は高速道路整備に向け、利便増進事業の抜本的見直しに加え、高速道を全額税金で整備する新・直轄事業の廃止も決めました。1000円乗り放題などの料金割引の縮小を目指し、きちんと料金を取り、借入金で建設するという、道路公団の手法そのものへの回帰です。自民党建設族で道路整備の仕組みに精通し、かつて列島改造を推進した田中角栄氏を師と仰ぐ小沢さんの面目躍如といったところでしょう。
 こうして見ていると、幹事長として民主党を牛耳る小沢さんに権力が集中し、政権の二重権力構造が強まるばかりか、鳩山さんの影が薄く、小沢さんの控えめな独裁と言っても過言ではありません。小沢さんの傍若無人振りは、先日、来日した習近平国家副主席と天皇陛下との特例会見に極まります。私は天皇陛下や皇室を崇拝するというよりも、ただ単に日本の古き良き伝統として尊重するだけですが、先週の記者会見でキレた小沢さんの暴言は聞き捨てならず、かつての小沢さんに期待した者としては、すっかり幻滅させられました。あの特例会見を、憲法の定める天皇の「国事行為」と誤って断じたことは、既に訂正されているので追及しませんし、政治利用かどうかの判断についても、このブログで既に書いていますので、これ以上触れません。問題は、世界に冠たる立憲君主国家であるわが国が戴く国王を軽んじ、内閣が天皇陛下の行動を指図するかのような、そしてそれが民主主義の精神を体現すると言わんばかりのモノの言いだったことでした。民主党幹部の発言を見ると、小沢さんの意向に逆らうものはありません。
 鳩山首相「(習氏は)将来のリーダーになる可能性の高い方だ。もっとお喜びの中でお迎えすべきでは」「外交的な話を(1カ月ルールで)お役所仕事のようにすぱっと切っていいのか」
 長妻昭厚労相「(特例会見は)政治利用でなく適切な判断だ」
 亀井静香郵政改革・金融相「次の主席にお会いするのは当たり前だ」
 仙谷由人行政刷新担当相「政治利用をうんぬんするのも政治利用になる。皆さん(マスコミ)もしてほしくない」
 しかし菅さんだけは辛うじて異彩を放っていました。
 菅直人副総理「陛下の体調に気をつかうのは宮内庁長官の仕事の大きな部分だ。陛下のそばにおられ、他の行政庁(の事務次官)とはやや性格が違うところもある」
 今の小沢さんは、国民の生活が第一と嘯きながら、自治労や日教組、さらには朝鮮総連や民団(在日本大韓民国民団)といった支持母体からも無縁ではなさそうです。かつての自民党は、右から左まで取り揃え、ここ数年を別にすると、野党ともきっちり根回しをして、極端に走ることはない安心感がありましたが、今の民主党が参議院でも過半数を取ると、本当の独裁になりかねず、何をしでかすか分からない不安があります。むしろ参議院では自民党が過半数を取って、ねじれ国会によって歯止めをかけた方が良いのではないかとさえ思ってしまいます。
 上の写真は、メルボルンの真夏のクリスマス。
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スペース・イシュー

2009-12-23 15:42:57 | 時事放談
 日米当局者は、普天間基地の移設先や時期を巡って迷走する日本政府の元凶としての、「宇宙人」の異名をとる鳩山さんの意味不明・理解不能な言動を「宇宙問題」と呼んでいるそうです。
 15日、鳩山さんは結論を先送りすることに決め、現地時間17日、COP15の晩餐会で隣に座ったクリントン長官に、現行計画に代わる新たな選択肢を検討する方針を説明し、結論を暫く待ってもらうよう要請し、基本的に理解してもらえたと記者団に語っていました。ところが昨日(現地時間21日)になって、駐米大使がクリントン長官に呼びつけられ、日米関係の現状についての米政府の見解、すなわち普天間基地はキャンプ・シュワブ沿岸部への移設という日米合意の早期履行を求めたと見られることから、またしても鳩山さんの独りよがりに終わったことが明らかになりました。
 普天間基地移設問題に関して、15日の前後で、NYタイムズやワシントン・ポストでどのように報じられていたか紹介します。
 結論先送り前の12月10日付のNYタイムズでは、信頼できるパートナー(Reliable Japan)が今や御しにくく(restive Japan)、対等な関係(“equal partnership”)すなわち言いなりにならない(less subservient)関係を口にするようになったのは、冷戦後の政治変動の中では正常なことだと、要所要所の言い回しには引っ掛かりますが、一定の理解を示しています。かつてのドイツのように、アメリカの庇護の下を離れようとする日本を取り巻く環境が、かつてのドイツと違うのは、核武装した北朝鮮という冷戦の遺物や軍拡を続ける中国の存在が目と鼻の先にある点であり、その意味でも日米同盟の重要性は変わらず、鳩山民主党の本質として折々に滲み出る「友愛世界」という絵に描いた餅の説教(the pie-in-the-sky “world of fraternity” musings of elements in Hatoyama’s party)に学んで苛立ちをぐっと堪えるのが良かろうと皮肉り、普天間問題には柔軟に対処する一方で、日米の戦略的な結束は堅持するのがよいと主張しました。翌日のワシントン・ポスト紙はもっと手厳しく、中国の躍進の陰で、日本経済は立ち往生し、人口は痩せ衰え、かつては軍事大国として、その後は経済大国としてアメリカを脅かした過去一世紀と比べると、今は見る影もないと貶しながら、それでも日本は世界における経済的なプレゼンスが依然重要なだけでなく非西欧圏における最大の民主主義モデル国としても重要だと指摘し、更に、自民党の敗北以来、日米関係は危機的状況にあるが、民主党が自己主張を始めたことよりも、日本が重要かどうかが曖昧になることの方がもっと懸念すべきことであり、日本経済が回復し自信を取り戻すためにも、日本は重要であるという風に遇すべきだと主張しました。
 ところが、結論先送りを知った12月15日付のNYタイムズは、鳩山首相が決定を先送りしたことで、米国との同盟関係に既に生じている緊張関係がさらに高まること、そしてインド洋での給油を継続しないことを引き合いに出しながら、今回の基地を巡る騒動で、オバマ政権にとって、やや左寄りの鳩山政権と同じ土俵に立つことが困難であること(difficulties in finding common ground with Mr. Hatoyama's slightly left-leaning Democratic Party government)を益々際立たせることになったと突き放しました。翌日のNYタイムズとワシントン・ポストは、サンフランシスコ・クロニクル紙の記者の記事を載せ、米国政府は鳩山新政権に対して辛抱強く対応するサインを送ってはいるものの、日本の対応が遅れていることに苛立ちを隠せず、忍耐にも限度があるという米国政府高官の声を引用し、警告しました。
 12月11日のNYタイムズが、オバマ大統領来日時のことに触れ、鳩山さんがTrust me!とアピールし、オバマさんがSure!と応えたのは事実だけれども、それぞれ何を意識していたのか、鳩山さんにとっては将来に向けた日米関係のことだったようですし、オバマさんにとっては基地移転合意の実行を明確に意図していたようですが、いずれにせよその意味するところが曖昧ですれ違いの可能性があることがお互いに不幸だと指摘していたのは、今の日米関係を象徴するようでもあり、印象的でした。
 沖縄の米軍基地問題ひいては日米同盟は、今の日本の国益に沿い、日米同盟を通した日米双方の利害であるにとどまらず、北東アジアの安全保障上も重要な存在であり、朝鮮半島有事の際に沖縄駐留米軍(海兵隊)の出動を期待する韓国でも注視されています。日本国首相としての関心の在り処がそこここにないとすれば、まさに宇宙的(ゆめゆめミクロな連立政権維持の政局を見ているだけとは言いません)と言えるかも知れません。
 上の写真はバリ島で見せられた絵です。インドネシア語なのでよく理解できませんが、人の身体が頭部・胴体・脚部の三つに分かれるように、家も、柱も、また庭の平面的なつくりも、頭部(最も大事な部分)・胴・脚(土台、床)の三つの構成からなる、宇宙にも繋がる全体性、調和を感じます。
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韓国製

2009-12-19 02:35:54 | 日々の生活
 今朝の日経新聞に、韓国企業の強さの秘密と題する特集記事が出ていました。必ずしも全体をまとめているものではありませんが、印象に残った箇所を引用します。
 韓国企業のキーワードは「ハミョンテンダ(なせばなる)」。立ち止まらず走りながら解を探す。・・・(中略)・・・韓国勢には、国内市場にライバルが少ないという強みがある。94年まで自動車産業への参入を事実上規制。金大中政権下では半導体産業などで政府主導のビッグディール(大型再編)に踏み切った。現代自動車グループの国内シェアは8割に迫り、寡占市場で稼いだ利益を海外につぎ込む。一方、日本は、自動車10社以上、高炉も5社が乱立。国内市場は体力消耗の舞台だ。
 かつて(10年くらい前?)、三星の会長が、「日本人は石橋を叩いて渡る、韓国人は歩きながら考える、中国人は走り出した後で、どちらに向かっていたのか考える」というようなことを言って、日本のビジネスのスピード感を批判したものでした。当時、日本メーカーは半導体世界一の座から陥落し、韓国にその地位を譲った頃で、この発言にはそうした自信が背景にあります。
 私もこれまでずっと、家電製品については日本メーカー製を愛用してきましたが、昨年、オーストラリア赴任時には、ついに三星製の32インチLCDテレビやLG製の洗濯機を購入しました。日本メーカーの価格プレミアムは私にはもはやJustifiableではないと思われたからです。これら韓国製家電は一年で手放したので何とも言えませんが、どうやら品質に大きな問題はなさそうです。しかし車は依然日本製でした。生産品質の積み重ねがまだ活きていると思ったからですが、マレーシア・ペナンでは、品質が劣るマレーシア国産車と、高品質の日本車との間にあって、価格・品質ともにそこそこ良いと言うべきか、そこそこ悪いと言うべき韓国車KIAが静かにシェアを伸ばしていますので、この分野でも、日本メーカーが新興国の追い上げを食うのはいずれ時間の問題でしょう。
 こうして、ここ10年以上、日本経済が不況に喘いでなかなか離陸出来ないでいるのは、韓国、さらには中国、そしてベトナムなど、人件費が安い新興国に生産拠点が移り、日本のエレクトロニクスを中心とした輸出産業が価格競争で太刀打ちできなくなるという真の意味でのグローバリゼーション環境にあるからです。確かにここ5年ほどは円安で輸出が上向きましたが、規模は多少拡大しても恐らく収益性は上がっていなくて、実際に私の身の回りでは、年収が過去5年間で増えておらず、その結果、消費が盛り上がらず、景気の足を引っ張ったり、更にはデフレを惹き起こしているわけです。これに年金問題等の将来生活への不安が輪をかけて、消費の足を更に引っ張ったのでした。
 これには、記事で触れられている通り、日本では依然、分野によっては競合会社が多いことも影響しています。例えば、かつて半導体業界や銀行業界にさえも再編劇が続き、今、携帯電話機業界でもプレイヤーが集約されつつあるように、日本のパソコン業界でもメーカー数が多過ぎるのでいずれ淘汰されるだろうと、随分前から証券アナリストに指摘され続けてきましたが、まだ動きはありません。先ほどの三星の会長の言葉にあったように、日本メーカーは、他社との提携や事業撤退に関して、思った以上に日本的なウェットな感情に引き摺られてか決断が遅いことが原因だと思います。太平洋戦争で、大方の予想を越えて日本人及び日本軍が武器弾薬が尽きても頑張り抜いたのは、日本人の美徳と考えて良い一方で、特攻にまで突き進むなど、被害を大きくした罪からは免れ得ません。同様に、資本の論理によって自然淘汰が進んである健全なレベルへと収斂する市場メカニズムが働かないとすれば、ガンバリズムは結構ですが、体力を消耗し続ける現実は、やはり社会に対する罪と呼ぶべきではないかと思います。
 上の写真はペナン大橋。これも韓国製です。
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イランのミサイル試射

2009-12-18 00:10:23 | 時事放談
 一昨日、北朝鮮の兵器輸出について書いたばかりでしたが、昨日の新聞には、イランが最新型の中距離弾道ミサイルを試射し、成功したことを発表したとありました。
 イランに関しては、製造した低濃縮ウランの貯蔵量を減らし、核兵器に転用されるリスクを軽減するため、ロシアやフランスなどの国外に輸送し、研究用原子炉の燃料に加工して変換する計画を、アメリカ・フランス・ロシアが提案しながら、なかなか進展しなくてアメリカが痺れを切らしていることが報道されていました。そんな交渉をしている最中の10月から11月に、シリアやレバノン向けに大量の武器・弾薬を密輸をしていたことが発覚し押収されたとの報道に続き、今回のミサイル試射の報道です。
 今回の中距離弾道ミサイルは、これまで複数回発射実験を実施した「セジル」の改良型「セジル2」とみられ、北朝鮮の「ノドン」を基に開発した中距離ミサイル「シャハブ3」(射程距離1300キロ)よりも射程を2000キロまで伸ばしたそうです。ミサイルと言えば、北朝鮮が身近な存在で先ず浮かび、今春、北朝鮮が実施したミサイル発射実験は、安全保障の専門家の世界では、大成功と言われています。五大国は既にICBM(大陸間弾道弾)を保有していますが、これに次ぐ距離を出すミサイルはなんと北朝鮮のテポドン2(5500キロ)だからです。その他の国のミサイルは、インドやパキスタンやサウジアラビアでせいぜい2000~2600キロ、イスラエルですら1500キロといったところであり、イランはこのレベルに仲間入りしたことになります。
 しかし地理的な環境を勘案すると、単純に距離の問題ではありません。この射程2000キロというのは、イスラエルやアラブ諸国の大半、更には欧州の一部までも射程内に収め、同地域にある米軍基地にも届くものだからです。北朝鮮がアメリカ大陸と離れているのとはワケが違います。おまけにイラン国防軍需相は、発射に必要な時間を短縮し、敵のミサイル防衛システムを回避する改良を加えて、更に抑止力が高まった成果を強調しています。
 アメリカは新たな経済制裁を考えているようですし、イスラエルは、かつてシリアの各施設を攻撃し無力化したように、再び、核施設への攻撃を辞さない構えを見せていると言われます。現代社会においてイランと北朝鮮は核拡散の二大頭痛の種ですが、こうした国が(欧州や東アジアの)身近にいるのが国際社会の長らく変わらない現実であり、ここにきて一段と国際的な緊張が高まりそうです。
 上の写真は、オーストラリア・キャンベラの戦争博物館で。第一次大戦中、フランス北部の町アミアンで、オーストラリア軍がドイツ軍から奪った鉄道車輌銃の銃身部分で、第一次大戦の記念品としてオーストラリアでは有名です。台車の方は第二次大戦でも利用されてスクラップされたため、銃身部分と屋根の部分のみ今に伝えられます。
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北朝鮮の武器輸出

2009-12-16 00:59:03 | 時事放談
 タイ当局は、12日、給油のために着陸した貨物機から、北朝鮮製とみられる兵器を押収し、乗員5人を拘束したことを明らかにしました。貨物機は、12月上旬にウクライナを出発し、アゼルバイジャンとアラブ首長国連邦を給油目的で経由した後、北朝鮮・平壌に到着し、兵器を積み込んだ後、タイとスリランカで給油した上で目的地の国で積み荷を降ろし、ウクライナに戻る予定だったと言われています。米国からの情報提供が摘発に繋がったとされますが、それでは何故、給油の中継地としてわざわざタイを選んだのか、みすみす発覚することを狙っていたかのような行動ですし、目的地はパキスタンか中東か(はたまた旧ソ連地域のいずれかの国か)はっきりしないのも、怪しい。
 参考までに、積み荷は「石油掘削機器」と申告されていましたが、実際には対空ミサイル20基や可搬式の対戦車ロケット砲48基などで、総重量は約35トンに達しました。特に対戦車ロケット砲RPG-7は低空飛行するヘリなどを攻撃することができ、正規戦は勿論のこと、ゲリラ戦やテロ集団にも使われる、携帯が簡便で破壊力が大きい在来兵器として、中東やアフガニスタンなどに拡散し、アメリカが懸念しているモデルです。
 また、今年6月には、兵器を積んでいたとみられる北朝鮮船舶「カンナム1号」がミャンマーに向かっていたところ、米国の艦艇の追跡を受けて引き返したことがありましたし、8月には、イランに向かっていた第三国船舶から北朝鮮の兵器が発見され、アラブ首長国連邦によって押収されたこともありました。今回はそれに続くものですが、他方、摘発されたのは国連安保理決議による経済制裁履行にあたっての各国協力体制が機能している証拠でもあり、お陰で外貨不足が深刻な北朝鮮の台所事情も察せられますし、船舶を通じた武器輸出が相次いで失敗したからこそ、今回は航空機を選んだのかも知れませんし、敢えて複雑な経路を選んだのかも知れない、とする見方もあります。
 何よりも驚くべきは、今回の事件が、米国・ボスワース特別代表(北朝鮮担当)が北朝鮮を訪問し、六ヶ国協議に復帰するよう北朝鮮側に求めて、金正日総書記側近の姜錫柱第一外務次官や、六ヶ国協議首席代表の金桂冠外務次官らと会談した矢先(二日後)のことだった点です。こうした時期でも、平気で武器輸出を行なうほど厚かましい北朝鮮も北朝鮮なら、意味ある非核化措置が実現するまで対話と並行して制裁も強行するトゥートラック・アプローチを示したアメリカもアメリカです。これが国際政治の現実だと日本語で言ってしまえば生ぬるいですね、これがRealismだと英語で言い換えた方が良いほど厳しく徹底した対応と言うべきですし、日本を取り巻く北東アジアの安全保障の現実として、日本の防衛問題を議論するにあたって認識しなければならない前提です。
 上の写真は、オーストラリア・キャンベラの戦争博物館で。兵器とはいえ、生々しい傷跡が残されています。
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