風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

ゲティスバーグ演説

2009-12-08 01:06:35 | 日々の生活
 昨日、ブログを書きながら、1863年11月19日にアメリカ合衆国第16代大統領エイブラハム・リンカーンが行なったゲティスバーグ演説(the Gettysburg Address)を、初めて読んでみました。20年前であれば、百科事典を見ても全文は掲載されていそうもなくて、専門書か図書館にでも行って調べなければならないような代物でしょうが、現代ではWikipediaで簡単に検索出来てしまうのですから、インターネットは偉大だとつくづく感じます。それはともかく、その演説の中で語られた一節で、「人民の、人民による、人民のための政治」は、後世、民主主義の本質を語る言葉として有名になりましたが、英語を習い始めた中学生の頃からずっと、アメリカで発行されたリンカーンの切手に書かれていた「of the people, by the people, for the people」の直訳で、日本語の字面だけ見ていても意味不明瞭だと感じ続け、ずっと心に引っかかっていたので、今回、あらためて前後の文章も含めて確認しようと思ったわけです。
 そこで、いくつか発見がありました。
 一つは、これは南北戦争の最中に聴衆に語りかけた勇壮な演説だとばかり勝手に想像していたのですが、実際には、ゲティスバーグ国立墓地の開所式で、メイン・スピーカーである組織委員長デイヴィッド・ウィルズという人の2時間もの基調演説の後で行なわれた、短い挨拶に過ぎなかったということでした。言葉にして僅かに272語、文にして10、2分ちょいの短い挨拶だったそうです。マイクもない当時のこと、リンカーンの演説が始まってもカメラマンはそれと気づかず、ようやく気づいて写真を撮ろうとした頃には既に演説が終わっていて、歴史的演説を行っているリンカーンの鮮明な写真は存在しないそうです。
 もう一つは、この言葉自体は彼のオリジナルではなくて、14世紀に、ジョン・ウィクリフという人が翻訳した聖書の序言冒頭にある一節、「This Bible is for the government of the people, by the people, and for the people」(「この聖書は人民の、人民による、人民のための統治に資するものである」)からの引用のようだということでした。
 まさにこの「人民の、人民による、人民のための政治」(government: of the people, by the people, and for the people)の部分をどう訳すか。学生時代の英語の授業で、ことさらに難解な古文(詩)を読まされた時、その教授が「by~」を「~の名の下に」と訳していたのを覚えています。従い、「人民による」は「人民の名の下に」と解すべきではないか。また「for~」は、古文でどのような意味で多用されていたのか分かりませんが、素直に「~に代わって、~を代表して」の意味で良いのではないか。そうすると、「人民の、人民による、人民のための政治」は、「人民が(of the people)、人民の名の下に(by the people)、人民を代表して(for the prople)行なう政治」となって、意味がようやく明確になるように思いますが、如何でしょうか。
 上の写真中央にある白亜の殿堂はオーストラリア旧・国会議事堂。現在の国会議事堂の眼下に広がります。
コメント (2)
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