風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

人(2)ピアニスト

2009-12-27 01:01:31 | 日々の生活
 今宵、たけしさんの番組に辻井伸行さんが出演され、ピアノの生演奏を披露されました。この一年を通して、景気の悪さは変わりませんでしたが、他方、日本人を元気にする話題が多い年でもありました。辻井さんは間違いなくその内の一人だろうと思います。ご存知の通り、今年6月、アメリカで開催されたヴァン・クライバーン国際ピアノコンクールで優勝されました。中国人ピアニスト張昊辰さんとの同時優勝で、日本人として初の快挙です。
 私はこのニュースをシドニーで知りました。音楽に全く造詣のない私なので、視覚障害者だというところに、親としての感情移入があったというのが正直なところでしたが、そんな思いは消し飛んでしまうほどに、圧倒的な強さ、あっけらかんとした明るさがあり、感銘を受けました。そして、勿論、ここに至るまで私たちの想像を超える苦労があったと思いますが、所詮は私たちには理解できない世界であり、私たちは今ある結果を楽しめば良いのだと思い知らされました。
 私の知人に、人間の極限状況を記録したドキュメンタリーや小説などの読み物を好む人がいました。15年くらい前の話で、当時の私は、酔狂だなあとしか思えなかったのですが、こうした話を今も覚えているということは、どこかで引っ掛かるところがあったのでしょう。今にして思うと、人間という存在の限界と同時に可能性も見てみたいという強烈な思いがあったのではないかと思います。
 辻井さんを見ていると、人間の可能性を感じます。もとより譜面を読むことは出来ないので、音楽を聴きながら、右手と左手でどう弾けばよいのかを体得していったのだと言います。私の息子などと比べるべくもありませんが、息子の英語は、耳から入っているので、一見、完璧に見えますが、高校入試の英語問題をやらせると、理論から入っていないだけに、英文の書き換え問題や発音問題が弱い。しかしこうした厳密さ、緻密さは、日本的なパターンをなぞって、学習の到達レベルを確認するという目的に資するものに過ぎなくて、英語本来のコミュニケーション力を伸ばすために必ずしも必要なものではありません。辻井さんの音楽への接し方、息子の英語への接し方を見ていると、恵まれているはずの私たちこそ、却って何かを失っているのではないかと思えてなりません。
 ピアノと言えば、ピアノが弾けなくても、ネコ踏んじゃっただけは見よう見まねで出来る人は多いのではないでしょうか。上の写真で、天井の屋根の影はネコ。ここに寝ている限り踏まれることはありませんね。マレーシア・ランカウィ島のレストランで。
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