風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

『トップガン』にも中国の香り

2019-07-27 12:25:21 | 時事放談
 34年振りに続編が公開される予定の『トップガン』の予告編が18日にリリースされ、後にCNNヘッドラインに“New Top Gun Movie Bomber Jacket Controversy”と言わせることになる内容が、真っ先にツイッターで話題になった。かつて、トム・クルーズ扮するマーベリックのジャケットの背中には、アメリカの戦艦Galvestonによる西太平洋での活動を記念した「Far East Cruise 63-4, USS Galveston」と書かれた大きなワッペンが貼られ、アメリカ、国連、日本、台湾のそれぞれの旗が大きくあしらわれていた。ところがこの続編ではGalvestonには触れられず、日本と台湾の旗は外されて、同系色の似て非なる別の旗にすり替えられていたそうである。恐らく最初に報じたであろうBusiness Insiderは、これが何の旗なのか確認できていないという。
 Business Insiderは「中国の検閲と観客に受け入れられる映画を作ることで、興行収入を最大化しようと考えた」「中国は海外の映画やテレビ番組を厳しく検閲していて、世界最大の映画市場としてアメリカに取って代わろうとする中、映画製作会社はますますその要望に応じるようになっている」と報じている。日本語の記事タイトルは「トム・クルーズのジャケットに異変! 映画『トップガン』の続編は、中国共産党に配慮か」と比較的穏やかだが、英語版では“Looks like the new Top Gun bows to China’s communist party by censoring Maverick’s jacket”と、検閲することで中国共産党に屈した、などと刺激的だ(苦笑)。CNNによれば「テンセントは昨年12月、子会社のテンセント・ピクチャーズがこの続編に出資し、共同で宣伝を行うと発表していた」ということらしい。
 ハリウッドがあるアメリカ西海岸はリベラルな土地柄で民主党の大票田でもあり、それこそ私が駐在した20年前でも、シリコンバレーの4割はアジア人で(大部分は中国人で、次がインド人)、半導体の値段はチャイニーズ・レストランに行けば分かる、などと言われるほど、もともと開放的なアメリカの最前線とも言える土地柄だった。私は当時、東海岸のボストンという、映画に引っかけて言えば、ハリウッド映画がヨーロッパのシーンをボストンで撮影すると言われるほどヨーロッパの影を色濃く残す街から、シュワちゃんが後に州知事となるカリフォルニアの州都サクラメントに引っ越したばかりで、こりゃ半分アジアだと驚いたものだった。あれから20年が経ち、今や中国は大国になって存在感を増し、深く静かにアメリカを、そして世界を侵略しつつある(笑)
 まあ、トム・クルーズのワッペン程度なら悪い冗談であって、所詮は相対的に弱い(西側世界の)鎖である日本と台湾に矛先が向けられたもので、アメリカに対する攻撃は間接的であり、むしろこうして話題になることで、人々の中国に向ける猜疑心はいよいよ強まり、中国は相変わらず減点を稼ぐばかりなのだが、しかし今後、更に中国の存在感が増し、その監視社会がグレート・ファイアーウォールを超えて世界に広まるようなことになれば、もはや悪い冗談だと笑って済ませられなくなる。資源経済を中国に依存するオーストラリアですら、“Silent Invasion”(Clive Hamilton著)が出版され、ここでも相対的に弱い(西側世界の)鎖であるオーストラリアに対して、中国が政治家を買収したり、中国に不利になるような出版や研究や講義・授業を妨害したり・・・といった工作を行ってきたことが告発された(因みに、弱い鎖を衝くのは、戦争の常道である)。そして、「本丸」のアメリカで、米中貿易戦争に始まって、技術覇権、さらに秩序を巡る覇権そのものの争いが本格化しているのは、こうした冗談じゃなくなりかねない事態が、深く静かにアメリカ社会に広がりつつあることを恐れているからだ。日本は脇が甘いから、既に相当の中国人工作員が入り込んでいるのか、メディアや野党政治家の少なくない数が買収されているのか、反日・韓国と区別がつかないような主張が巷に充ち溢れていて、社会の分断が煽られているのではないかと・・・(苦笑)
 その韓国は、経済的には存在感がないわけではないけれども、中国依存の弱みを握られているために、朴クネさんの頃あたりからであろうか、韓国的儒教世界に言う「長男坊の夷」韓国が「次男坊の夷」日本を貶めるという、まさに「夷を以て夷を制す」という中国の工作に、まんまと利用されてしまっているように感じている。その証拠に「大国」中国では露骨な反日はおさまっている。韓国の一部の運動家を中心に、感情的に反日で糾合する過激さは、もはや近代国民国家にあるまじき異常さであって(いや、本ブログでは、韓国は近代国民国家の要件には満たないと思っているが)、文在寅大統領の思想的偏向だけではない、より深いところで広く浸透しつつある、ある“力”を感じる。
 日本はこうした厳しい東アジア環境の中を生き抜いて行かなければならない。それはもはや日本のリベラルな方々が恐れるようなドンパチの戦争ではない。そんなものは北朝鮮だってイランだって、中国だってアメリカだって望まない(そう言いながら偶発的に・・・と言って第一次世界大戦に繋がったのだったが)。それはもはや「事実」をもとに議論すれば分かるとか、いずれ明らかになる、などと悠長に構えているわけにも行かない。危ういネット社会のもとで、土地やモノを占領する伝統的な戦争ではなく、人の心を占領する「宣伝」戦がとうに始まっているのだ。
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冴えない参院選

2019-07-22 22:30:40 | 時事放談
 なんとも盛り上がりに欠けた参院選だった。選挙戦を通じて争点が明確にならなかったと言われている通りで、衆参同時選挙にならなかったし、選挙前の安倍さんの政権運営は、争点を呼ぶような法案の提出を控え、間違っても足を引っ張られるようなことがないよう、安全運転だったし、参議院だから有識者が立候補しているのかと思えば、どうもそうでもなさそうで、一般国民には参議院って何?と疑問に思わせたのではなかっただろうか。
 結果はサプライズもなく、ほぼ予想通りだった。円グラフだか棒グラフだか、選挙結果を一覧表示するのは朝日新聞が上手だろうと思って、今宵、サイトを覗いて見たが、結果が出た当日ながら、トップ頁にリンクすら貼られていない(正確には、政治欄に言葉で表示されているが全く目立たない)。朝日新聞としてはさぞ不本意だったことだろう。菅官房長官が「安定的な過半数をいただけた。経済再生、外交・安全保障の再構築などの課題について、国民の声に耳を傾けながら取り組んできた結果だ」と落ち着いて評価されていたのを、ちょっと訂正すると、外交・安全保障については国民の声に耳を傾けているかどうかは別にして真摯に取り組んで成果もそれなりにあげてきたと思うし、経済再生については成果は別にして取り組んでいる姿勢だけはそれなりに見せていたと思う。
 ウォールストリート・ジャーナル電子版は「参院選の勝利で安倍晋三首相の在任期間が日本史上最長となることがほとんど確実になった」などと大きく報じたらしく、なるほど、このタイミングでこれを持ち出すのかと感心する(日本人特派員によるものか)。
 韓国の与党「共に民主党」(カッコ付きにしなければ何のことやら誤解を招きかねない困った党名)の代表は、「今からわが国への経済侵略が本格化するだろう」「政府も党も国民も非常な覚悟で臨まなければならない」などと警戒感を露わにしているが、相変わらず輸出管理のことをよく理解していないようだ。立憲民主党や共産党や社民党も、やはりよく理解していないようだが、禁輸にするでなし、規制するでなし、手続きが煩雑になるだけのことなので、横流しなどの悪さをしていなければ、という条件はつくが、韓国が厳正に輸出管理をしているのであれば短期的な影響が出るくらいだと思っていて、文在寅大統領が「韓国の経済成長を妨害している」などとほざくほど大それたことをやっているわけではない。むしろホワイト国から外すという、どちらかと言うと実害より象徴的な意味合いを込めた、日本としては極めて穏当な措置であって、そこに注目して欲しいと日本政府は思っていたのだろうが、アテが外れた。いや、やっぱり韓国はこういう国だったのかと諦めるしかなく、日本のことになると何事につけ政治問題化して感情的に反応するのは、全く困ったものだ。
 中国外務省の報道官は、改憲勢力が国会発議に必要な全議席の3分の2を割り込んだことに関して「改憲問題は日本の内政だが、歴史的な原因によって特にアジアの隣国は強い関心を寄せている」と、安倍政権の憲法改正の動きを牽制したようで、日本のこの方面の動きが気になって仕方ないのだろう。また、日本が引き続き「平和的発展の道」を歩むことを希望すると語ったらしいが、南シナ海を要塞化し、東シナ海の日本の領海をしばしば侵すなど、力による現状変更を続ける中国に言われたくないものだ(苦笑)。
 選挙と言えば、以前から投票率を政治家のKPIにすることを提唱してきた(笑)私としては、やはり投票率に注目するが、こちらは予想を上回り、選挙区で48.80%、比例代表で48.79%と、過去2番目の低調さで、50%を割り込むのは過去最低の44・52%だった平成7年以来2回目で実に24年振りということだ。台風の影響で九州や山陰地方は過去最低だったようだが、今回、全国最低は徳島で、38.59%と言えば三分の一に近くて、これで民意を反映しているなどとは間違っても言えない。惨憺たる結果だ。お陰で、安倍さんは浮動層の得票を見込めず、改憲発議に必要な3分の2に届かなかったし、社民党は首の皮一枚繋がって、固定票が相対的に得票率を押し上げ、無事2%を上回って、公職選挙法上の政党要件を維持することが出来た。それもこれも低い投票率のお陰であろう。こんなんで日本は良いのだろうか!?と思ってしまう(苦笑)
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日本隠しの韓国

2019-07-16 22:35:07 | 時事放談
 韓国のことを書くのは甚だ不愉快で実に疎ましく、極力控えるようにして来たが(苦笑)、今回までは続けたいと思う。別に韓国の一般国民のことが嫌いなわけではないし、海外とりわけ米国駐在中は朝鮮戦争帰りの米軍人家族が開く韓国料理店にお世話になったので、韓国料理には愛着もある。ところが政治レベルとなると、日本は朴クネさんから相当な嫌がらせを受け、文在寅政権の日本への感情的な反応ったら、これまでになく辟易してしまう。これほど感情的になるということは、余程やましいことがあるに違いない(笑)
 かつての日本の高度経済成長を支えたのは「ものづくり」の力であり、存立基盤は資源を輸入し加工して輸出する貿易立国にあった。それは安い円に支えられた側面もあり、1985年のプラザ合意以降、日本経済は(その後バブルに至る)大きな変革を強いられ、冷戦崩壊に伴って東側(東欧や中国)が西側の経済に組み込まれるにつれて(言わば韓国や台湾、さらには中国に後追いされて)日本の「ものづくり」の空洞化が進んでいく。しかしそれは、個々の企業はともかく産業レベルで見れば、「スマイル・カーブ」の底辺(すなわち付加価値が最も乏しく儲けも少ないところ)にある「組立て」を諦めたことを意味するだけで(余談だが中国も「中国製造2025」でその底辺からの脱却を目論み、米中摩擦の淵源でもある)、日本経済の強さは、防衛装備庁の方によれば素材や部品にあると言い、それに「ものづくり」を支える製造装置産業も加えるべきなのだろう。このたびの韓国に対する輸出管理の運用見直しは、韓国から報復的と言われ、確かにこれまでの韓国の日本に対する徴用工問題をはじめとする外交姿勢を謙虚に反省し改める契機にして欲しいという安倍政権の気持ちを理解させる必要はあるが(まあ、そう簡単には行かないだろうけど)、まさに日本経済の強さをテコにしたものだった。
 韓国で何が起こったかというと、韓国が世界に誇る半導体やスマホの中身の多くが、実は日本の部品や技術に支えられているという事実への驚きと衝撃が、一般国民の間に広がっているという。わずか三種類の輸入素材で国を挙げ大騒ぎになっているからだが、これは、2年ほど前だったか、中国の通信機器メーカーZTE(中興)に対するアメリカの制裁によって中国内で起った現象に似ている。中国政府は、スマホだって自製できると自慢するなど、すごいぞ!中国♪みたいな国威発揚の映画を作成して上映していたところ、折悪しくZTEに対するアメリカの制裁(華為と同じEntity List 掲載)が始まるや、アメリカ製の部品入手難でスマホ生産が止まってしまい、映画の上映も突然の中止に追い込まれたのだった。
 産経新聞のソウル駐在客員論説委員の黒田勝弘さんによると、韓国ウオッチャーの間では昔から韓国の「日本隠し」という言葉が語られてきたという。「戦前の日本統治時代に韓国の近代化が進んだといういわゆる『植民地近代化論』はともかくとしても、少なくとも1965年の国交正常化以降の韓国の発展に対する日本の協力、貢献を無視し隠してきた」ことを指し、「こうした『日本隠し』は韓国の経済、社会のあらゆる分野に存在する」(産経電子版)という。
 実際に、4月25日付の朝鮮日報(日本語版)の記事「韓国小学校教科書から消えた『漢江の奇跡』」によると、今年3月に小学校で使用され始めた社会科教科書から、その記述が削除されたという。「漢江の奇跡」は、ご存知の通り、1965年の国交正常化以降、朴正熙政権までの保守政権の時代に進んだ経済発展を指し、「反日」と「保守政権の否定」というイデオロギーに凝り固まった文在寅政権は、この事実を歴史から消し去りたいのだろうと解説される。文在寅大統領にとって、韓国の歴史とは左翼政権の金大中大統領の誕生(1998年)から始まったものらしい。いやはや。そして、この「漢江の奇跡」こそは、1965年の日韓基本条約・日韓請求権協定により、日本からODAも含め総額約11億ドルもの経済援助をせしめて、元・軍人や元・徴用工や元・慰安婦への補償には回さず、高速道路やダムや発電所などのインフラ投資に集中投下したことで可能になったもので、実に今の徴用工問題と見事にシンクロする。
 勿論、それだけではない。そもそも韓国の反日教育は根強く、今なお健在で、小6社会科の教科書を見ると、歴史領域の71ページのうち、日本統治直前から独立までの「反日(抗日)」史におよそ4割、28ページも割き、1章2節の「日本帝国の侵略と光復のための努力」では、韓国社会で頻繁に耳にする語句「日帝(イルチェ)」を《日本の「帝国主義」または「日本帝国」を短くした言葉で、自分の国の利益のために数カ国を侵略した日本を示す言葉》と説明するなど、韓国では日韓について小6の子供から「日本を懲らしめる韓国」という勧善懲悪の構図でとらえさせていると、つい最近、教科書を調べた産経新聞の加藤達也さんは憤る。ほんの10数年前、マレーシア・ペナン島に駐在していた頃、インターナショナル・スクールで仲良くなった韓国人のお母ちゃんから真顔で「日本人って野蛮じゃなかったのね」と言われた家内が呆れていたのを思い出す(苦笑)が、懲りない韓国は変わらないようだ。
 つい最近も、創立50年の韓国ヤクルトの創業者が亡くなったことにひっかけて、韓国マスコミはその功績を称えるとともに、人気と親しみの「ヤクルト・アジュマ(おばさん)」のことを紹介したらしいが、韓国の人たちはヤクルトが実は日本発のビジネスとして韓国社会に貢献していることを全く知らされていないと報じられた。Wikipediaで「韓国起源説」と引いてみれば分かるように、孔子からソメイヨシノまで、何でも自国起源にしてしまう性向の韓国人のことなので、さほど驚かないが、日韓関係を冷え込ませている原因は、このあたりにあるように思う。
 こうして再生産され続ける反日イメージは、最近、近畿大国際学部の李潤玉教授が日韓の三大学で実施した学生意識調査にも表れていて、「日本に親しみを感じる」と回答した韓国の学生は70・4%にのぼるのに、「日本の政府を信頼できない」と回答した学生は80・8%にのぼったという。このギャップは、韓国の事大主義(その地政学的に不幸な環境から、かつてのロシアや中国などの大国につかえる)だとか、小国意識(で甘えが許される)だとか、儒教社会に特有の「恨」だとか、いろいろ解説されるが、要は韓国にあっては政治が極めて脆弱で、韓国政府は(朴クネさんの)保守派にしても(文在寅さんの)革新派にしても、日本のことを政治利用して止まないことの何よりの証拠であろう。
 7月9日付の韓国・東亜日報に、「韓国の『急所』を突く!」との大見出しが打たれた6年ほど前の週刊文春(2013年11月21日号)の誌面が紹介されて、話題となったらしい。この東亜日報の「6年前から徴用工補償問題で“征韓”論」と題された記事では、安倍官邸において韓国への制裁措置の検討がなされていると6年前に週刊文春が報じていたにもかかわらず、韓国の企業も政府もその対応を怠ったと指摘しているという。それもそうだが、文春オンラインに掲載されたこの6年前の記事によると、「安倍総理周辺によると、総理は『中国はとんでもない国だが、まだ理性的に外交ゲームができる。一方、韓国はただ愚かな国だ』と語っていた」といい、よくもまあ6年間も我慢したものだと、妙なところで感心したりもする(笑)。
 本来、輸出管理の運用見直しの問題は、禁輸になるわけではなし、三年有効の包括許可が使えず個別許可の取得が必要になり、最大90日を要すると言っても、サムスンなどの大手がそれなりに確証を取り揃えれば、実質的な影響はさほど大きくなく済むはずだが、文在寅大統領は、米国だけでなくWTOまで巻き込んで政治問題化し、相変わらず懲りないものだと、またしても不愉快で疎ましく思う自分を止めることは出来ないのであった・・・
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韓国に見る前・近代

2019-07-13 23:02:16 | 時事放談
 シリコンバレーでビジネスをしている知人によると、韓国人は約束を守らないし平気でウソをつくと、甚だ評判がよろしくない(などと、以前にも本ブログに書いたかも知れない)。確かに状況証拠はいろいろあるが、韓国にいたたまれないからこそアメリカにいるような韓国人は、まあそういう面も強かろうと、多少、割り引いて考えてきたが、文在寅政権の韓国を見ていると、約束を守らないし平気でウソをつく韓国人は、かなりの比率で朝鮮半島にも棲息すると、考えをあらためざるを得ないと思うに至った(苦笑)
 昨日、韓国向け輸出規制強化に関して、日韓の事務レベル会合が開かれた。日本は冒頭、飽くまで運用を見直す措置のため「協議対象ではない」、事実関係の「説明の場である」として、会合を始めたところ、韓国側の理解が進んでおらず丁寧に説明したため、当初想定された1時間を大幅に超過して5時間半に及んだらしい。結果として、今回の措置は禁輸ではなく、WTO協定に違反しないことも説明し、韓国側からも措置の撤回要請や抗議などはなかったというが、後ほど、韓国政府関係者は、会合で日本に対して措置の撤回を求めたとし、日本の説明を事実と異なる「たわ言」だと言い放った。どちらを信用するかと言って、状況からして、日本の優秀な官僚を信用するに決まっている(笑)
 こうした輸出規制強化に関し、だんだん事実関係が明らかになってきた。輸出管理は安全保障貿易管理と言われ、監督官庁である経済産業省の中で、担当部署は貿易経済協力局の傘下の貿易管理部にぶら下がっており、産業政策を担当する部局とは異なる。WTOでは安全保障目的の規制は一定の範囲で例外扱いであり、WTOの一般理事会に諮ろうとする韓国の動きは的外れとなる。また、この輸出管理の世界では、最も厳しい法制度を「施行」するのはアメリカで(なにしろ“安全保障”貿易管理と呼ばれるくらいだから)、最も厳格に「運用」するのは日本で、韓国は甚だ杜撰というのが通り相場のようだ。既に5月17日付の朝鮮日報は、2015年から今年3月までに、韓国の国内業者が政府の許可なく違法輸出した戦略物資が156件にのぼると、韓国当局の発表で判明した事実を野党議員が取り上げたことを報道していた。これらの不正輸出について、韓国では刑事事件の対象となったかどうかも個別の企業名も公表されず、不正輸出が後を絶たない背景には、韓国の罰則や処分の運用が甘く、抑止効果を発揮できないことがあると指摘され、その点では日本政府の主張と一致する。そして、今回もまた韓国の外務大臣はアメリカの国務大臣に告げ口し、(徴用工問題では仲裁に頑として応じないにも関わらず)あっさり仲裁を依頼したらしいが、いくら告げ口しようが、輸出管理を正確に理解するならば的外れとなろう。韓国には「小国意識」が潜むとする病理解析は、結局、国際ルールをよく理解しなくても誤魔化せる、あるいは大目に見て貰える、といった甘えそのものを難じるものではないだろうか。
 さらに、輸出管理をよく知る知人によれば、数年前、韓国が法改正した際、条文に矛盾があることを指摘された韓国は、信じられないことに、いつの間にか(正式な手続きを経た形跡なく)条文を修正してしまったらしい。また、国内法によって条約や国際的な約束を破ることは許されない(従い、徴用工問題での韓国政府の対応は不当)とか、外国公館前での侮辱行為を禁じる(従い従軍慰安婦像建立も不当)といった、ウィーン条約を平気で無視する。日本統治時代に日本政府に協力した韓国人を追及するためには、法の遡及効など何のその、近代西欧の基本的な法秩序を平気で無視する。ことほど左様に、法治主義に疑問符がつく韓国である。詰まるところ、これらは、韓国は中国同様、前・近代(もっと言うと古代王朝あたり?)の意識のまま(つまり西欧的な自由・民主主義を一応経験しているように見えても、余り理解していそうにないまま)ではないかと疑うようになった。そうでなければ、政権交代のたびに前政権の大統領が投獄されたり自殺したり、といった混乱はあり得ないだろう。これはかつての中国における王朝交代の混乱に準じるものだ。
 これも以前に本ブログに書いたことだが、脱・近代の先頭を行く欧・米・日のような国と、前・近代のまま(あるいは古代か中世のまま)の国とが混在するのが、国際社会の難しさであろう。夫婦喧嘩に際して自らの正当性を表通りに出てまで喚き散らすような韓国人の外交攻勢(?)に対して、日本政府は自らの立場をいちいち国際社会に正確に説明する粘着質のしつこさを(不本意ながらも)求められよう。
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米中の田舎芝居

2019-07-11 01:34:08 | 時事放談
 G20で、貿易協議を巡る米中の攻防が中国ペースになってきたと言う人がいるが、果たしてそうだろうか。確かにトランプ大統領が、(最後の)第四弾の関税引き上げの対象として残していたのは米国の景気減速に繋がりそうな品目であって、ご本人の頭の中が大統領選で一杯だとすれば、これ以上の景気減速は望まず、関税引き上げをやりたくないのが本音、というのは確かだろう。
 日本総合研究所理事の呉軍華さんもその一人で、数日前の日経で、来年の大統領選を控えて経済界と支持基盤の農業州に配慮しなければならないから、農産品の輸入拡大という中国側のかねてのオファーに、敢えてファーウェイ・カードを切ってまで合意に漕ぎ着けたのだという。その限りではその通りなのだが、トランプ大統領は大きな決断をするときに、それほど大きく的を外さないし、ちょっと外しても事務方がきっちり修正する(トランプ大統領が言い過ぎたとすれば、事務方はその限りでサボタージュする)。そのため、今のところファーウェイの制裁解除は極めて限定的で、事務方によるとEntity List掲載を変えるつもりすらないようだ。
 さらに、呉軍華さんは、同じ日経記事で、経済のみのグローバル化のもとで、民主的な国よりも開発志向の強い非民主的な国の方がより経済効率を高められる、と主張される。民主的な…とは、自由競争は…という意味だろうと察するが、ある程度のムダ(あるいは所謂「遊び」)を前提としているのは事実だろう。センミツ(モノになるのは千に三つ、すなわち0.3%)とまでは言わないまでも、例えば日本の国家予算では省益なり前例踏襲なりで2割方はムダではないかと(自らのビジネス経験に照らして)邪推するように、人のやることなすこと、所詮はそんなものだと割り切るしかない。他方、確かに人智は万能ではないにしても、対象領域を絞るならば、リターンを極大化させることは可能だろう(例えば、シンガポールを想像するならば、限定された領域での実現可能性は高いだろう)。
 さはさりながら…である。非民主的な国の方が経済効率を高められるとは、中国に限ると、ちょっと楽観的に過ぎやしないかと思わざるを得ない。確かに、最近の中国は、AI分野で特許出願件数や論文発表数が多く、アメリカにキャッチアップしつつあると、まことしやかに囁かれる。他方で、中国が出願する特許の技術者の中に日本人の名前があったり、政策あれば対策ありで、ノルマ達成やカネ目当てのために補助金申請が杜撰だったり・・・といった話には枚挙に暇がない。中国の民間企業の平均寿命が3年未満とされるのは、一体、何を意味するだろうか。「国退民進」を目指すと言われながら、結局は「国進民退」すなわち国営企業にしか資金が回らなくて、民間企業の活力が減殺されているのではないかと想像するが、そんな社会で、果たして効率的な経済運営が持続可能だろうか。
 そもそも中国人は、技術を日本人のように地道に育てるほど悠長な性格ではなく、とっとと技術を盗んで来るか、盗むのが難しくなればさっさと金で解決するか、買うのが難しくなれば、さてどうするか・・・というのが昨今の状況であろう。逆に効率が良いとすれば、盗むか買うかして時間を稼ぐからに過ぎないのではないか、との疑念が浮かぶ。それで昨今、はやりの「持続可能」と言えるのかどうか。
 中国の技術力向上を認めないわけではない。実際、アップルのiPhoneよりサムスンや華為のスマホの方がよほど性能が良いのに価格は安いからコスパが良いと、話には聞く。その限りではその通りだろう。AIに関して言うならば、確かに軍事転用など対米競争力向上で、アメリカが神経質になるのはよく分かるが、一歩退いて冷静に眺めるならば、10年後あるいは15年もすれば、人口動態の予測によれば中国は人口減少社会に突入し、それに備えて今、出来ることはやっておこうと焦っている、という解説は、なるほどと大いに頷ける。
 さて、本ブログのタイトルに戻って、G20は結局、米中協議が世界の耳目を集めるばかりに、米中お互いの立場を尊重し、メンツを立てて、結果として田舎芝居で、その実、何も進展はなかった、というのが素直な見立てだろう。現に、中国が米国産の穀物輸入を再開すると明言しながら、いつまでに、という期限は中国政府から何ら示されていない。結局、米中対立は、①貿易収支の側面(トランプ大統領は、1980~90年代の頃のマインドセットから抜け出せていないか、あるいは他を理解するつもりはないか)、②構造協議の側面(1990年代の日米構造協議を思い出せば分かるように、中国をWTOに加盟させても、結局20年近く経って、中国は飽くまで伝統的な中華であって、西欧的に民主化するという期待は無残にも裏切られた)、③米中覇権の側面(技術覇権も含む)という、三つのレベルの話が錯綜している、というのが世間一般のコンセンサスだろう。①は、アメリカ大統領選を睨んで短期的な解決が(プラグマティックと言われようが)可能だが、②や③は中国の核心的利益(中国共産党統治の正当性)に関わる根本問題であり、こればかりは悲観せざるを得ず、中・長期で身構えるほかない。
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日韓貿易戦争?

2019-07-06 14:39:19 | 時事放談
 韓国に対する日本の輸出規制強化に、韓国から感情的な反発があがったのは予想通りだった。一般大衆の中でも一部の過激な方々の反発はともかくとして、韓国メディアの、「稚拙な報復措置を即刻、撤回すべき」(ハンギョレ紙社説)、「偏狭で度量が小さい」「狭量」「信頼を破壊する不当で稚拙な行為」(中央日報)といった恨み辛みは相変わらずで、およそ西欧の国家関係であれば使われるに相応しくない「稚拙」な表現に見える(苦笑)。「韓国バッシングを支持率上昇に利用していると疑われてきた安倍政権が、21日に実施される参院選を意識して幼稚な手法を使ったとの指摘もある」(東亜日報)とまで言われると、自意識過剰もほどほどにと、いかり肩をぽんぽんと叩きたくなる。400年近く前のことではあるが「国家における領土権、領土内の法的主権および主権国家による相互内政不可侵の原理が確立され、近代外交および現代国際法の根本原則が確立された」(Wikipedia)とされるウェストファリア体制下に今もあると、日本は思っているが、お隣の国は、地域のこと(中国や日本相手)になると、儒教思想に裏打ちされた華夷秩序が優先するらしい。
 日本のメディアが「報復措置」と書きたてたことの反映でもあろう。しかし問題を日韓の間の「報復措置」に矮小化すべきではない。「ホワイト国」を安全保障上の友好国と定義し、韓国を除外したとセンセーショナルに(!?)騒いだが、法制度はそんな曖昧な運用は許されない。あくまで4つの国際レジームに参加し、輸出管理を適切に運用していることが確認されるという実務の要件を満たす必要があり、世耕経産大臣自らもツイッターで解説に乗り出さざるを得なくなったが、もしそうだとするならば、朝鮮半島の緊張がなかなか解けない現下で深刻な話である。こうしてメディアによる言説は安易に引用され、あるいはこだまするもので、日→韓→米と伝わって、ウォールストリート・ジャーナル紙が「日本はルールに基づく多国間システムの最も信頼できる支持者だったが、それに背を向けようとしている」と言及したことには注意を要するだろう。「脱亜」を言うつもりはないが、日本は常に西欧的な価値観とともにあった方がよいと思うからだ。もっとも一般論として、欧米の主要紙にしても、例えば中国系・韓国系アメリカ人が書く記事の中には、必ずしも高級紙にふさわしくない偏向したものも見られるようになっているところは割り引いて見る必要があるのだが(この記事を誰が書いたのか知らない)。
 今回、ちょっと注目していたのは文在寅大統領の反応だったが、殆ど無反応だったようだ(苦笑)。「日本のメディアを通じて日本政府の規制措置が韓国に伝えられると、韓国経済界と関連省庁が事実関係の確認に右往左往していた」(産経電子版)ようだが、大統領府は公式コメントを発表することなく、青瓦台関係者は「産業通商資源部など関係部処が対応するだろう」と語ったという。そして翌7月1日、大統領は予定通り休暇を取り、その翌2日、大統領府で開かれた閣議では、大統領が会議場に登場するや、出席者全員から大きな拍手で迎えられ、閣議冒頭の発言の全てを6月30日に行われた「板門店米朝首脳会談」に割いて、日本の輸出規制と日韓関係については一切言及しなかったそうだ。大統領府関係者の説明によれば「戦略的沈黙」だと、毎日経済新聞が伝えている。日本の政府関係者が韓国への対応を「戦略的放置」と呼んでいることが伝えられたことへの意趣返しであろうか。それでも日本政府は最低限の反応はして外交的配慮を見せているが、無反応とは何とも「稚拙」だ(笑)。
 韓国人作家の崔碩栄氏は韓国側の反応について、「一般の人たちの最初の反応は、日本が本気で怒ったことに“驚いた”というのが正直なところ。(韓国国内へのTHAADミサイル配備をめぐり韓国企業を中国から締め出し、韓国への旅行を禁じるなどの報復措置をとった)中国と違い、日本から抗議はされても最後は“仲良く未来志向で”などとうやむやになるのが通例でしたから。今は日本に対する怒りと韓国政府の無策に対する怒りが半々といったところです」と語っている。韓国メディアの反応も日本批判一色ではなく、「対韓輸出規制:関係悪化招いた韓国大統領府、尻拭いは担当省庁に押し付け」(朝鮮日報日本語版)、「文大統領、自画自賛する時間に対策を出すべき」(中央日報日本語版)と、政権の無策を批判するものも出るには出ている。
 ある朝鮮半島研究者は、考えあぐねた末、大統領が国益が分かっていない(プライオリティ付けが出来ない)ことが問題だと、遠慮がちに批判していたが、ずばり適格性の問題で、同じ市民運動家あがりで、イデオロギー偏向もあって言葉巧みに政権の個別政策批判は出来ても政治的調整の行動は出来なかった菅直人状態ではないかと、秘かに危惧している。
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G20大阪・夏の陣

2019-07-02 00:54:22 | 時事放談
 G7ではもはや世界を代表できないと言われて久しいが、G7でも纏まるのが難しいこのご時勢に、G20を議長国として取り仕切るのは、さぞ大変なことだったろうと、これは安倍さんをヨイショするつもりはなくて、そう思う。貿易問題では「保護主義と闘う」との文言が2年連続で見送られたのは止むを得ないにしても、「自由で公正かつ無差別な貿易・投資環境を実現し、開かれた市場を保つ」ための、ただの(と言っては失礼だが)努力目標と明記するだけに終わってしまったのは物足りない。辛うじて、デジタル経済に関してデータ流通の国際ルールづくり「大阪トラック」や、プラスチックごみの流出による海洋汚染を2050年までにゼロにする「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」を立ち上げたのは良いが、総論賛成、各論はなかなか困難が予想される。とにかく難しい時代になってしまったものだ。
 このデジタル経済をテーマとした会合で、身長190cmのトランプ米大統領、175cmの安倍首相、180cmの習近平国家主席の三人が仲良く並んで、首脳会議(サミット)だというのに普通っぽい会議室に狭っ苦しく肩寄せあったすし詰め状態だったのが話題になった。その写真で見るトランプ大統領と習近平国家主席の表情の不機嫌そうなこと・・・狭いからではなく、そもそもそうした全体会合には関心がないのがありありで、個別会合で頭が一杯だったのではなかったかと想像させられる。この三人に関わることで、三つばかり印象に残った。
 一つは、その個別会合で最も注目された米・中で、お互いに立場を慮ったのか、歩み寄りを見せ、ひとまず「休戦」と報道された。しかし根本的には何も変わっていようはずはなく、長期戦を覚悟せざるを得ないのだろう。
 二つ目、トランプ大統領が、帰りに韓国に寄った際、金正恩委員長と電撃会談を行なった。実質一日の内に、トランプ大統領のツイッターの呼び掛けに金委員長が応えたという(習近平国家主席の仲介は水の泡?)、いかにもトランプ大統領らしいスタンドプレイだ。訪韓を懇願されたところで文在寅大統領とは話すことがない手持無沙汰の解消のためか、あるいは6月の文藝春秋に掲載された麻生幾さんの論考にあったように、アメリカの関心(麻生さんに言わせればフットプリント=軍事的な重心)はもはや朝鮮半島から中国に(いや、中国に中東情勢も加えて、インド太平洋だと、私としては言っておこう)、移ってしまったのか。金委員長としては、現職のアメリカ大統領に初めて北朝鮮の地を踏ませ、個人的な関係の強さをアピールできて、さぞ満足だったろうが、トランプ大統領の中では、麻生さんが言われるように、北朝鮮の軍事的脅威のレベルは決して下がっていないものの、現在のままで(すなわち経済制裁は効いており、これ以上の北朝鮮による挑発は自殺行為になることを金委員長自身も分かっていることから)封じ込めることが可能と判断し、プライオリティを下げているのだろう。急がないというトランプ大統領の度々の発言にも、そのあたりの感覚が滲んでいるように思われる。そして文大統領は終始、蚊帳の外で、好々爺の如く見守るだけだった。
 三つ目、議長として多忙ということにして、安倍首相はG20で韓国大統領と会う時間を作らなかったが、その韓国に対して輸出規制を強化する方針を発表した。韓国から徴用工問題に対する経済報復との反発があるであろうことを承知の上で、しかし徴用工問題では韓国の余りに誠意のない理不尽な対応に堪忍袋の緒が切れて、他方で「自由で公正かつ無差別な貿易・投資環境を実現し、開かれた市場を保つ」ためとG20の首脳宣言で謳っておきながら、福島などの水産物輸入禁止措置があったり、北朝鮮による瀬取りを見逃していたりと、「貿易管理について韓国と一定期間対話がなされていない」(経済産業省)し「信頼関係の下に輸出管理に取り組むことが困難になった」(同)として、抗弁できると判断したのだろう。過去、贖罪意識もあって韓国に対しては控え目な対応をしてきた日本にしては、なかなか大胆な打ち手である。
 いずれにしても表面上の派手さの陰で、実務上は波乱の幕開け(再開)となりそうだ。
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