風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

人(1)独裁者

2009-12-26 00:30:14 | 日々の生活
 昨日は宇宙的と言いましたが、政権交代後100日を経過した今の民主党・鳩山政権には、本当の意味での国益の観念や国家のグランドデザインといったものが残念ながら見られません。民主党が金科玉条にするマニフェストは、基本的には自民党政治がやってこなかったことを目指す、いわば陰画として纏められたものに過ぎず、しかもマニフェストを策定した野党時代には十分な情報をもっていなかったわけですから、期待すること自体が無理筋と言うものです。実際に国民は、そんなにマニフェストに拘らなくてもいいよと言ってあげているのですが、民主党は何が何でも自民党との違いを際立たせたいのか、こだわりを捨てようとはしません。
 これは畢竟、民主党の目線の先にあるものが国家ではなく、もとより世界政治でもなければ地方でもなく、ひとえに夏の参院選で過半数をとるという政局一点張りにあるからではないでしょうか。小沢さんの動きを見たら、そう思わない人はいないでしょう。
 たとえば小沢さんが政府に提示した重点要望は、小泉さんが進めた構造改革路線を否定する内容で、言ってみれば古い自民党に先祖がえりするものだと言えましょう。旧来の自民党支持基盤を取り込みながら、民主党政権を磐石の態勢にすることに注力するのは、何が何でも政権を手放さないという覚悟の表れです。採算度外視の高速道路建設が問題化した時、小泉改革は財政支援を打ち切りましたが、民主党は高速道路整備に向け、利便増進事業の抜本的見直しに加え、高速道を全額税金で整備する新・直轄事業の廃止も決めました。1000円乗り放題などの料金割引の縮小を目指し、きちんと料金を取り、借入金で建設するという、道路公団の手法そのものへの回帰です。自民党建設族で道路整備の仕組みに精通し、かつて列島改造を推進した田中角栄氏を師と仰ぐ小沢さんの面目躍如といったところでしょう。
 こうして見ていると、幹事長として民主党を牛耳る小沢さんに権力が集中し、政権の二重権力構造が強まるばかりか、鳩山さんの影が薄く、小沢さんの控えめな独裁と言っても過言ではありません。小沢さんの傍若無人振りは、先日、来日した習近平国家副主席と天皇陛下との特例会見に極まります。私は天皇陛下や皇室を崇拝するというよりも、ただ単に日本の古き良き伝統として尊重するだけですが、先週の記者会見でキレた小沢さんの暴言は聞き捨てならず、かつての小沢さんに期待した者としては、すっかり幻滅させられました。あの特例会見を、憲法の定める天皇の「国事行為」と誤って断じたことは、既に訂正されているので追及しませんし、政治利用かどうかの判断についても、このブログで既に書いていますので、これ以上触れません。問題は、世界に冠たる立憲君主国家であるわが国が戴く国王を軽んじ、内閣が天皇陛下の行動を指図するかのような、そしてそれが民主主義の精神を体現すると言わんばかりのモノの言いだったことでした。民主党幹部の発言を見ると、小沢さんの意向に逆らうものはありません。
 鳩山首相「(習氏は)将来のリーダーになる可能性の高い方だ。もっとお喜びの中でお迎えすべきでは」「外交的な話を(1カ月ルールで)お役所仕事のようにすぱっと切っていいのか」
 長妻昭厚労相「(特例会見は)政治利用でなく適切な判断だ」
 亀井静香郵政改革・金融相「次の主席にお会いするのは当たり前だ」
 仙谷由人行政刷新担当相「政治利用をうんぬんするのも政治利用になる。皆さん(マスコミ)もしてほしくない」
 しかし菅さんだけは辛うじて異彩を放っていました。
 菅直人副総理「陛下の体調に気をつかうのは宮内庁長官の仕事の大きな部分だ。陛下のそばにおられ、他の行政庁(の事務次官)とはやや性格が違うところもある」
 今の小沢さんは、国民の生活が第一と嘯きながら、自治労や日教組、さらには朝鮮総連や民団(在日本大韓民国民団)といった支持母体からも無縁ではなさそうです。かつての自民党は、右から左まで取り揃え、ここ数年を別にすると、野党ともきっちり根回しをして、極端に走ることはない安心感がありましたが、今の民主党が参議院でも過半数を取ると、本当の独裁になりかねず、何をしでかすか分からない不安があります。むしろ参議院では自民党が過半数を取って、ねじれ国会によって歯止めをかけた方が良いのではないかとさえ思ってしまいます。
 上の写真は、メルボルンの真夏のクリスマス。
コメント
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