かつて、「中国の歴史教育はプロパガンダ」、「韓国の歴史教育はファンタジー」と揶揄された。どこぞのシンクタンクが調査・研究した結果だと、もっともらしく引用されていたのを読んだだけなので、ただの都市伝説かもしれない。出来過ぎていて、ファンタジーに付き合っている暇はなく、左右の振れが大きい韓国内の事情に一喜一憂するのもアホ臭いので(大阪弁のニュアンスなのでご容赦頂きたい)、ブログでは滅多に取り上げて来なかった。しかし、北朝鮮がウクライナ戦争に派兵し、見返りに軍事技術を入手している疑いが囁かれて(ロシアのやることなのでクリティカルな技術ではないと思うが)、朝鮮半島情勢がキナ臭くなりつつある昨今、故・安倍さんのように韓国を戦略的に放置し続けるわけには行かないかもしれない。横目で眺めてみる。
アメリカで、第一期トランプ政権に懲りたはずなのに、同氏を大統領に再選させた民意は、日本人の私には理解し難いけれども尊重しなければならないように、韓国で、第一期トランプ政権で評判の悪かった革新政権に懲りることなく、第二期トランプ政権の今、再び革新政権を選んだ民意は、やはり日本人の私には理解し難いけれども尊重しなければならない。しかし、留保がつきそうだ。
韓国大統領選挙の結果は、李在明氏の得票率49.42%、金文洙氏41.15%、李俊錫氏8.34%と僅差で、李在明氏に意外に票が集まらなかったのは、投票率があがって、これまで選挙に行かなかった人が投票所に足を運んで、革新系に投票しなかったという事実を指摘する声がある。また、木村幹教授は、「金文洙と李俊錫の得票率の合計が李在明を上回った形になり、『戒厳令宣布後』の大混乱にも拘わらず、韓国の保守・進歩両派の均衡状態は何も変わらない結果になった」、「『戒厳令の結果、保守が勢いを失ったから』ではなく、『戒厳令の結果、保守が分裂したから』、李在明が勝った、という形」、「『分裂した方が負け』という意味で、『平常運転』になった。ある意味で驚くほど『安定している』」、と冷静にコメントされている。また、「今回の李在明の得票率、昨年の国会議員選挙の小選挙区で『共に民主党』が取った得票率を『下回っている』んですよね。つまり戒厳令事態にもかかわらず、進歩派は票の割合を減らしている。結構『凄いこと』だと思うんですけど」ともコメントされている。
韓国社会の分断状況は、アメリカに似て、左右それぞれに4割前後の岩盤支持層があって、その真ん中に2割の無党派層が是々非々で行ったり来たりする(それによって政権交代を招来する)不安定な構造だと思うが、感情で揺れ動くあの韓国人が戒厳令騒動の後もなお「安定している」状況は、俄かに信じがたい。さすがの韓国人も、保守も革新もどっちもどっちで、革新政党の底の浅さを見透かしつつあるのだろうか。
いずれにしても、日本人の私としては、かつて日本のことを「敵性国家」、日韓関係を改善させた前政権の外交を「対日屈辱外交」と呼び、選挙戦中はまともな政策論争をすることなく「内乱勢力の撲滅」を言い続けるような李在明なる人物がどうにも信用ならない。いかにもとってつけたような作り笑いは、文在寅氏にも似て、革新系の政治家に共通するわけではないだろうに、やはり信用ならない。李在明氏をよく知る人は、彼のことを必ずしも反日主義者ではなく、実用主義者だと言う。この実用主義なる言葉が韓国でどのように受け止められているのか私は知らない。よく聞かれるのは、過去のことに拘っていても解決のしようがないので、脇に置いて、未来志向で協力していく(つまり日本を利用する)、ご都合主義のツー・トラック政策のことのようだが、本来、明確な政治理念を持ち高い理想を掲げつつ現実に対処して行かなければならない現実主義が基本の政治家にあって、実用主義などと、なんとも軽い形容は、日本人の私としては、やはり信用ならない。そもそも反日教育を改めない以上、右・左ともに今後も反日を政治利用するであろう韓国自体、信用ならない。
それでも、日韓基本条約が締結されて60年の節目の年である。
韓国は、歴史的に見れば、中国やロシア(や日本を含めてもよい)などの大国に隣接し、地政学的に見れば、大陸の端で逃れようのない半島国家なので、(戦前の日本が迷惑したような)日和見なのも、また、散々苛められてきた中小国家の独特の僻み根性や歪なナショナリズムが高まるのも、理解できなくはない。とかく激しやすく感情に左右される国民性なので、安定的と言われると、俄かに信じがたいが、自慢げに実用主義などといった軽い言葉を使うことなく、価値観を同じくする国同士なのかどうか甚だ怪しいにしても、お互いに西側の、引越しできない隣人として、少なくとも未来志向で向き合って欲しいものだと思う。