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風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

外国人と共生する社会

2025-08-12 20:56:23 | 時事放談

 日本人ではない日本在住者が増えている。首都圏のコンビニでは、日本人店員に出合う方がむしろ少なくなった。宴会予約の電話を入れると、こんなところまで・・・と思うくらい、たどたどしい日本語で、しかし、キャンセルは二日前まで、前日は50%、当日は100%かかると、しっかり教えてくれる。

 参政党の梅村みずほ参院議員が東京・新宿で行われた参政党の街頭演説の動画をXに投稿し、「大きくバツをつけた日章旗を振り『差別をやめろ!』と叫びを上げる。発煙筒で威嚇しながら中指を立て『差別をやめろ!』と叫びを上げる。純粋に演説を聴きに来た人の頭に大音量スピーカーを向け『差別をやめろ!』と叫びを上げる。」「悲しき日本の異常な現状。#参政党は絶対負けない。日本を守る」とあらためて主張したそうだ(8日)。

 確かに異様な光景である。リベラルと称される方は、数の割りに声が大きいものだが(これは私の偏見ではなく、SNSなどのデータ解析で、拡散することが実証されている)、今どき日章旗に×をつけるのは、リベラルの中でも全共闘世代のゴリゴリの左翼か、はたまた日本を荒らそうと企図する国(党)の息のかかった反日の方々であろう。

 参政党の神谷代表も、長崎で開催された被爆80年の平和祈念式典に出席した後、福岡市内で街頭演説を行っている際、「人種差別をやめろ」という趣旨の怒声が飛んだことに反応して、振り向きざまに「してねぇっつってんだろ!!」と怒鳴り返したそうだ(9日)。リベラルと称される方はレッテルを貼るのがうまい。ウソも100回言えば真実になると言うが、うっかり聞き流している内に、そういうものだと思い込みかねない。最近、facebookの動画で参政党の神谷代表の演説を見かけて、何とはなしにいくつか眺めていたら、いつの間にかfacebookで参政党の露出がやたら増えてしまった(苦笑)。確かに、参政党は差別を助長するわけではなさそうだし、戦争をけしかけるわけでもなさそうだ。

 先の参議院選で参政党が躍進したのを、ロイターは、「『極右の参政党』が日本の政治の主流に浸透し、『最大の勝者』として台頭した」と解説した。寄稿しているのはリベラル系の日本人ジャーナリストか学者だろうか。左側から見ればニュートラルな人も右に見えるし、同じく左側から見れば右の人は極右に見えるだろう(苦笑)。ロイター(または寄稿した人)の軸が左にずれている証左であろう。警戒したいのは分かるが、先の参議院選では、これまで投票に行かなかったような、声が大きくない、サイレント・マジョリティの中道あるいは中道保守が投票に行ったと考えられ、風向きが変わりつつあるのは確かだろう。そして、そのきっかけの一つが外国人労働者問題である・・・遠回りしたがようやく話が元に戻った。やれやれ。

 私は通算10年近く、アメリカやマレーシアやオーストラリアといった多民族国家に駐在したので、異国の人たちが共生する社会に違和感はないが、難しさもまた実感している。アメリカに滞在したのは90年代後半で、同時多発テロが起こる前だから、伝統的な人種差別(例えば蔑まれたり、接触を忌避されたりすること)は特に東海岸には顕著に残っていたが、暴動などの実力行使が目立つことはなかった。今はアジア系には住み辛くなっているかもしれない。マレーシアに滞在したのは2000年代後半で、マレー系が三分の二、中国系2割、インド系が1割という人口構成で、大雑把に言えば、役所などの公共部門はマレー系、ビジネスは中国系、弁護士や医者などの技術者はインド系と、棲み分けられている社会だ。ブミプトラ政策(マレー系優遇政策)はまだ生きているはずで、放っておけば生存競争に強い中国系が社会を牛耳ってしまいかねない(とは、かなりの偏見だが真実、笑)。オーストラリアに滞在したのは08年から09年にかけての一年だけだったが、インド系アジア人が襲われる事件が頻発し、共生社会の難しさを垣間見た。中国系移民が問題を起こすことも度々ニュースになった。アメリカで海外生まれの人口はせいぜい10数%だが、オーストラリアは30%にも達するほど、今もなお移民が増え続ける国であり、対決も生々しい。当時のシドニーでは、ナビのお蔭で土地勘がなくてもタクシーの運転手が務まるので、中東系が増えて、私もつい大丈夫かいなと身構えることが多く、最短距離であれば渋滞だろうがお構いなしに突っ込むので閉口したものだ。安い労働力として外国人を招き入れているわけではないと日本国政府は言うかもしれないが、現実問題として外国人は日本人が避けるような仕事に就くことが多く、その場合には、どこかでヒズミが出てくるのは避けがたく、そのコストは多少は甘受しなければならない。問題はどこまで許容できるかだ。

 参政党が争点化したお蔭で、外国人政策に関する司令塔組織「外国人との秩序ある共生社会推進室」が内閣官房に新設された。ごく当たり前に外国人にも暮らしやすい街づくりが必要だと主張されるようになった。現実問題として、外国人に来て貰っている以上、ある程度は受け入れる側の義務であろう。他方で、例えば私はオーストラリアに駐在するべく、就業ビザを取得するとき、彼の国の価値(詳細は失念したが、例えば言論・出版・信教などの諸々の自由や民主主義や法の支配など)を尊重するよう宣誓させられたものだった。それは受け入れて貰う側の義務であろう。先ずは日本でもオーストラリア同様に外国人労働者に対して日本の価値を認識させ、法以前の彼らの行動基準とさせるべきだろう。参政党が正確にどのように主張しているかは知らないが、所謂「郷に入っては郷に従わせるべき」だと私は思う。それは差別でも何でもない、お互いに譲り合う共生社会の掟(一種のマナー)であろう。

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参院選の宴のあと

2025-07-27 11:49:13 | 時事放談

 参院選は、下馬評通りに自民党が惨敗した。その落ち穂を、どうやら参政党と国民民主が躍進し掬い取ったようだが、ここまでやるとは正直なところ思っていなかった。

 自民党が選挙で勝ち続けていた安倍政権時代と単純比較するのは、石破さんには気の毒だろう。衆議院で過半数を割って、政策毎に野党と連携しなければ前に進めない苦しい政権運営を、ある意味で火中の栗を拾うように引き受けて、自民党が過半数を占め続けた盤石の政権運営しか知らない重鎮からとやかく言われたくはないだろう。それでも衆議院だけでなく参議院でも過半数を割るという、自民党の退潮を食い止められない責任は問われて然るべきだろう。前々回のブログで、「自民党は、声だけは大きい野党に惑わされて、どこか自らのアイデンティティのポジショニングを間違ってしまったのではないだろうか」と書いた。石破さんには、石破カラーが見えないと、参政党からも同情される始末である。石破カラーを打ち出して世間がどう反応するか、見てみたい気がする。

 立民は比例代表の得票数で、自民、国民民主、参政党の後塵を拝して4位に沈んだと衝撃的に書き立てられた。4位だと蔑むよりも、2位の国民民主762万票、3位の参政党743万票、4位の立憲民主740万票と、ほぼ並ばれてしまったと見るのが正確だ。世上、言われるように、インフレあるいは実質賃金が上がらない現状への不満から、与党にせよ野党にせよ、既存政党が支持を集められず、「手取りを増やす」「日本人ファースト」などの単純な、およそ総合政策としての辻褄合わせが簡単ではなさそうなスローガンが世間の耳目を集めた。自・公、立民、維新や共産まで含めて既存政党が支持を失う中で、立民は改選議席を維持するにとどまったのは、健闘したと言うべきか、実質的な敗北と言うべきか、よく分からない。恐らく立場によっては、例えば立民の政治家の中にはプライドを傷つけられて、あるいは執行部批判のために、敗北と受け止める人もいるだろう。

 国民民主はともかく参政党は一気に素人議員が増えて、これから大丈夫だろうか。大丈夫じゃないよねえ・・・

 今回の選挙戦の特異なところは、石破総理の進退をめぐる騒動に、より顕著に象徴的に表れていたのが興味深かった。ご本人は現時点で辞任を否定されているようだが、故・野村克也さんが言われたように(元を辿れば江戸時代の大名だった松浦静山の言葉だそうだが)「負けに不思議の負けなし」である。率直に反省すべきであろう。先ほど、石破カラーが見えないことに触れたが、それは自民党内の政権基盤の弱さ、党内野党であり続けた哀しさの故であろうし、それ故に自民党内に責任論が根強いのも当然であろう。だからと言って、安倍さん亡きあとの自民党で、辛うじて将来の党を託すべき高市早苗や小泉進次郎といった重要なカード(切り札)を今、使うのはどうかとも思う。石破さんに汚れ役を押し付ける意味ではなく、この難局は、石破さんのような、自民党には珍しい実直な方でないと務まらないのではないかと思うのだ。面白いのは、リベラル派から石破氏続投を望む声が上がったことだ。かつて故・安倍氏を蛇蝎の如く嫌った顔ぶれなので、その底意は察せられる。

 れいわ新選組の山本太郎代表は、「代わりになる人が誰なのか。高市さん、小泉さんという声も結構ある。高市さんだときな臭くなる。小泉さんだと新自由主義は加速する」などと、相変わらずツイッター式あるいはラップ調の紋切型で批判した。社民党の副党首はXに、「関東大震災の朝鮮人虐殺があった前提で話ができる人が首相で良かった。国会にはなかったことにする国会議員が山ほどいる」と石破首相を持ち上げたそうで、首相続投の判断基準が歴史認識問題に収斂するナイーブさには驚かされる。初当選のラサール石井氏は、「答弁はメモを読まず、沖縄には追悼し、戦争は起きてはならぬと主張する。ここ最近の自民党の首相では一番まとも」と、Xで太鼓判を押したそうだ。初当選しても、複雑な国際情勢の現実を議論し対処の検討をするつもりはなく、イデオロギーを押し付けたいだけのように見える。ついでに、韓国・聯合ニュースは石破氏を「歴史認識で穏健派」と紹介したそうだし、選挙対策とは言え関税交渉に際して「なめられてたまるか」と口にした石破氏を、日米間にクサビを打つのに好都合と判断して好感するのであろう中国大使館筋は「できれば石破政権が継続してほしい」と打ち明けたと聞く。日本でリベラル野党は頼りにならないが、与党には不安があり、与党の中の党内野党(的なリベラルな存在)に期待が集まる?という、なんとも皮肉な状況である(微笑)。

 欧米諸外国からは、政治情勢が安定していた日本でもいよいよ反移民などの保守派ポピュリズムが台頭し、多党化が進みそうだと心配して頂いている。心配には及ばないと言いたいところだが、どうであろうか。今はSNSの時代で、短期決戦の選挙戦でこそワン・フレーズに注目が集まるのはやむを得ないとして、野党が乱立し、保守寄りが現れて纏まるのが益々難しくなる中で、過半数を取れなかった与党がどの分野でどこと組んでどこまで妥協を強いられるのか、そのときの立民の立ち位置はどうなるのか、国民民主と参政党に至ってはこれからが正念場で、注目している。

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選挙戦の暑い夏?

2025-07-19 10:41:54 | 時事放談

 昨日、関東甲信越でも梅雨が明けた。その宣言を待っていたかのように、昨夕から蝉が一斉に鳴き始めた。ここ一週間は初秋かと見紛うような穏やかな陽気で、快適だったが、今日は朝から陽射しが厳しい。

 明日は参議院選の投票日だ。テレビを見ない私にとって、日経新聞が主な情報源になるが、どうにも選挙戦が冴えないように思われてならない。一票は決して「重い」わけではなく、「軽い」ことくらい誰でも分かっているが、それでもチリも積もれば山となるので、投票することは民主主義国の市民として義務であることに変わりない。オーストラリアなどのように棄権すると罰金を科す国があって、日本でもそろそろそこまですることも考えなければならないかもしれない(そうすれば市民は、投票に値する政治をしろと批判の声を強められると思うのは浅はか、か?)。私はと言えば、これらのことを承知しながら、ここ15年ほど、気になる候補者がいたり政策論争もどきがあったりすれば投票所に出向くが、そうではない場合はつい足が遠ざかりがちになる。

 どうして日本の政治は(日本でも、と言うべきかもしれない)、ここまで沈滞してしまったのだろう。経済の元気がないせいか? 自民党の肩を持つつもりはないが、自民党の足を掬おうとするばかりの、立民をはじめとする野党のだらしなさのせいであり、また、局外にあって政局を追うばかりでまっとうな政策批判をしないマスコミの怠惰なせいだと思っている。

 先ず野党について。もともと自民党は左右のウィングが広く、保守を軸に、政策に幅があって、結構、リベラルなことにも手を出して、適度に所得再配分しつつ高度成長の日本を支える存在だった。かつての社会党のような左派系の野党は、これでは太刀打ちできず、敵失がない限り党勢を伸ばせない苦しい立場に置かれていた。所謂55年体制である。最近の立民や国民民主などの野党は開き直ったのか、健全な政策論争から更にほど遠く、ポピュリズムに堕している。国民の関心がそういうものだ(とは限らないのだが)と野党政治家は思い込んでいるのではないだろうか、だから国民から見透かされ、既成野党は支持を増やせていないのではないだろうか、と思わざるを得ない。それだけで終わるとすれば、政治家は使命放棄になる。何のために、生活で汲々とする市民が、政治家という専門職に高給を与えてまでして養っていると思っているのだろうか。それは市民の近視眼に半ば応えつつ、それは半ばに抑えてもいいから、その先にある国家百年の計とまでは言わないまでも、国の将来を見据えた手を打って欲しいと、市民が期待しているからだ。それは間違いなく市民にはなし得ないことで、政治の専門職にこそ期待されることなのだが、期待外れで市民は浮かばれない。

 最近の野党政治家の発言は、ツイートと同じで、言葉足らずに局所攻撃するだけで、財源の裏付けに乏しい、言わば耳に心地よい夢物語を語るばかりで、総合政策を打ち出せないから、とても政権交代に耐えられると市民に受け止めて貰えない。政治とは、理想を語りつつ現実に対処し、妥協しつつ総合するものだからだ。自民党も自民党で、減税しないと言い切ったところまでは良かったが、結局、給付金をばらまくことになった。露骨な選挙対策で、弱小・公明党のせいではないかと疑っている(勿論、選挙に弱い自民党議員の声もあっただろう)。まさに、政治家(statesman)は次の世代のことを考え、政治屋(politician)は次の選挙のことを考える・・・を地で行く現実に呆れて、諦めの境地である。

 マスコミの凋落も著しい。特に全国紙がそうで、若者は今や情報源を真偽不明のSNSに頼るようになった。そんな中でも、私は相変わらず日経を支持しているのは、英国メディアを買収して、その翻訳記事によって英国目線を紹介したり(同じアングロサクソンでも米国とは違うように感じるのは、大英帝国の面影であろうか)、調査報道に力を入れたりするなど、なかなか健闘していると思うからだ。朝日・毎日・東京の左の御三家は古色蒼然とした理念先行で読む気にならないし、読売・産経にも物足りなさを感じてしまう。

 今回の選挙戦の特徴は、保守的な弱小野党が健闘して、自民党の支持基盤を蚕食していることだろう。安倍元首相の負のレガシー、とりわけ党内野党として安倍元首相に対抗することで存在を主張していた石破政権のせいでもあろうが、自民党は、声だけは大きい野党に惑わされて、どこか自らのアイデンティティのポジショニングを間違ってしまったのではないだろうか。ポピュリズムに逆らえず、保守らしさが薄れてしまったように思う。だからといって私は、チンピラのような弱小・保守政党を支持する気にも至らず、悩ましいところだ。

 結果として、私の思いは宙に浮いてしまい、投票場所から遠ざかる・・・などと言い訳をするつもりはない。ボヤいていないで、「軽い」とは言え「清い」一票を投じなければと、老体に鞭を打っている。

 選挙戦とは関わりなく、暑い夏になりそうだ。

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トランプのショック療法?

2025-07-13 09:32:23 | 時事放談

 数日前の日経によると、相互関税と称してトランプ大統領が仕掛ける関税戦争で、輸入価格が上がって米国民は苦しむだろう(だからいずれその内、その政策は挫折する)と専門家は予想したが、実際に起こったことは、中国は米国向け輸出価格を引き下げ、日本の乗用車価格もまた18%弱も下落しているのだそうで、トランプ氏はこれを受けて「『専門家』たちはまたも間違っていた」とSNSに投稿したらしい。彼のいかにも得意げな表情が目に浮かぶ(笑)。

 日経は、こうした状況は、トランプ氏をさらなる高関税政策に向かわせるリスクが大きいし、そもそもこうした価格戦略が企業収益を圧迫し、デフレ圧力を生んだ、などと苦言を呈する。しかし、こうした事態に対処するのは、国家という、ある意味で統一した対応を取り得るアクターではなく、短期業績で株主の目を気にしなければならない個々の企業である以上、なかなか難しいところである(まあ、産業界を適切な方向に向かわせるよう環境設定して誘導するのが政府の役割だと反論されそうだが)。

 もっとも、こうした状況も、3月に米国内企業が値上げを避けるために駆け込みで輸入を増やして在庫を積み上げた事情を反映している可能性があり、これからこうした在庫がなくなれば、高関税がかかった輸入品が米国市場に出回るようになり、関税による物価の押し上げ効果が予想より長い時間差を経て出てくる可能性も小さくない、と日経は結んでいる。経済や外交の原理・原則を無視して好き勝手に振る舞い世界を混乱の渦に陥れるトランプ大統領の鼻を明かしたいという悔しさが滲み出て日経らしさを感じさせる記事である(微笑)。

 トランプ大統領の関税政策は、グローバリゼーションの美名のもとに、世界で製造業の水平分業が進展する一方で空洞化してしまった米国への製造回帰を目指すものとされる。しかし競争力がないからこそ米国内の製造基盤が失なわれたのであって、いくら呼び戻そうにも、昨日・今日の話ではなく、既に久しく、冷戦崩壊から数えても30年を超えるスパンのことである。今更それを支える人材がいるわけでなく、絵に描いた餅じゃないかと、この時代を生きて来たビジネスパーソンはせせら笑っていたのだが、高関税を避けるために米国に製造を移す企業が出始めているとの報道もあり、ほんまかいなと、なかなか一筋縄ではいかない世の中にあらためて驚かされる。

 日経は同じ日の別の記事で、中国によるレアアース規制強化に関して、トランプ氏が中国に勇ましく高関税を課して見せたものの、中国が4月に繰り出したレアアースの輸出規制という“けたぐり“に合ってあっけなく関税引き下げに追い込まれた、と解説して、さもトランプ大統領の失態であるかのように報道する。日本の産業界にも、アメリカにはこれほどの弱点がありながら強気に対峙したのは如何にも稚拙だったと憤慨する人たちが多い。

 そもそもレアアースがEVだけでなく防衛産業にも重要な材料であることは数年前から分かっていたことであって、最近、矢継ぎ早に対中規制を繰り出したのは、こういう事態を見越していたのではないかと、実は私は勘繰っている。つまりトランプ大統領は、素人のように慌てふためいているのではなく、確信犯だったのではないかと思うのだ。穿った見方かもしれないが、言わばショック療法として、内外の企業に行動変容を迫っているのではないか、と。トランプ大統領のやり方は乱暴だが、主張することに一片の真実が含まれることが、そう思う根拠になっている。

 中国では、政策あれば対策あり、と言われる。これには、法の抜け穴を探すような「あざとさ」があるが、より本質的に、たとえば権力構造はそれほどヤワなものではなく、トランプ大統領個人に振り回されているように見えながら、イーロン・マスクのように取り巻きのフリをして近づいて自らの思いを遂げようとトランプ氏に影響力を与えようとする人たちは現れるものだし(イーロン・マスクは失敗したのだと思うが)、同じように、たとえば産業界だってそれほどヤワなものではなく、中国へのレアアース依存を脱するには時間がかかるだろうが、代替ルートを確立するとか、代替技術を開発するなどして、いずれ脱中国を果たし得るのは間違いない。これは産業界への私の願望であるが、技術力への、とりわけ衰えたりと言えども日本の技術力(それは多分に人の問題である)は今なお健在であるとの私の信念でもある。

 そうだとしても、当面は日米欧にとって苦難の時期が続く。

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日韓60年

2025-07-08 23:12:25 | 時事放談

 かつて、「中国の歴史教育はプロパガンダ」、「韓国の歴史教育はファンタジー」と揶揄された。どこぞのシンクタンクが調査・研究した結果だと、もっともらしく引用されていたのを読んだだけなので、ただの都市伝説かもしれない。出来過ぎていて、ファンタジーに付き合っている暇はなく、左右の振れが大きい韓国内の事情に一喜一憂するのもアホ臭いので(大阪弁のニュアンスなのでご容赦頂きたい)、ブログでは滅多に取り上げて来なかった。しかし、北朝鮮がウクライナ戦争に派兵し、見返りに軍事技術を入手している疑いが囁かれて(ロシアのやることなのでクリティカルな技術ではないと思うが)、朝鮮半島情勢がキナ臭くなりつつある昨今、故・安倍さんのように韓国を戦略的に放置し続けるわけには行かないかもしれない。横目で眺めてみる。

 アメリカで、第一期トランプ政権に懲りたはずなのに、同氏を大統領に再選させた民意は、日本人の私には理解し難いけれども尊重しなければならないように、韓国で、第一期トランプ政権で評判の悪かった革新政権に懲りることなく、第二期トランプ政権の今、再び革新政権を選んだ民意は、やはり日本人の私には理解し難いけれども尊重しなければならない。しかし、留保がつきそうだ。

 韓国大統領選挙の結果は、李在明氏の得票率49.42%、金文洙氏41.15%、李俊錫氏8.34%と僅差で、李在明氏に意外に票が集まらなかったのは、投票率があがって、これまで選挙に行かなかった人が投票所に足を運んで、革新系に投票しなかったという事実を指摘する声がある。また、木村幹教授は、「金文洙と李俊錫の得票率の合計が李在明を上回った形になり、『戒厳令宣布後』の大混乱にも拘わらず、韓国の保守・進歩両派の均衡状態は何も変わらない結果になった」、「『戒厳令の結果、保守が勢いを失ったから』ではなく、『戒厳令の結果、保守が分裂したから』、李在明が勝った、という形」、「『分裂した方が負け』という意味で、『平常運転』になった。ある意味で驚くほど『安定している』」、と冷静にコメントされている。また、「今回の李在明の得票率、昨年の国会議員選挙の小選挙区で『共に民主党』が取った得票率を『下回っている』んですよね。つまり戒厳令事態にもかかわらず、進歩派は票の割合を減らしている。結構『凄いこと』だと思うんですけど」ともコメントされている。

 韓国社会の分断状況は、アメリカに似て、左右それぞれに4割前後の岩盤支持層があって、その真ん中に2割の無党派層が是々非々で行ったり来たりする(それによって政権交代を招来する)不安定な構造だと思うが、感情で揺れ動くあの韓国人が戒厳令騒動の後もなお「安定している」状況は、俄かに信じがたい。さすがの韓国人も、保守も革新もどっちもどっちで、革新政党の底の浅さを見透かしつつあるのだろうか。

 いずれにしても、日本人の私としては、かつて日本のことを「敵性国家」、日韓関係を改善させた前政権の外交を「対日屈辱外交」と呼び、選挙戦中はまともな政策論争をすることなく「内乱勢力の撲滅」を言い続けるような李在明なる人物がどうにも信用ならない。いかにもとってつけたような作り笑いは、文在寅氏にも似て、革新系の政治家に共通するわけではないだろうに、やはり信用ならない。李在明氏をよく知る人は、彼のことを必ずしも反日主義者ではなく、実用主義者だと言う。この実用主義なる言葉が韓国でどのように受け止められているのか私は知らない。よく聞かれるのは、過去のことに拘っていても解決のしようがないので、脇に置いて、未来志向で協力していく(つまり日本を利用する)、ご都合主義のツー・トラック政策を主張することのようだが、本来、明確な政治理念を持ち高い理想を掲げつつ現実に対処して行かなければならない現実主義が基本の政治家にあって、実用主義などと、なんとも軽い形容は、日本人の私としては、やはり信用ならない。そもそも、有為な韓国の若者たちに対して反日教育を改めない以上、右・左ともに今後も反日を政治利用するであろう韓国自体、信用ならない。

 それでも、日韓基本条約が締結されて60年の節目の年である。

 韓国は、歴史的に見れば、中国やロシア(や日本を含めてもよい)などの大国に隣接し、地政学的に見れば、大陸の端で逃れようのない半島国家なので、(戦前の日本が迷惑したような)日和見なのも、また、散々苛められてきた中小国家の独特の僻み根性や歪なナショナリズムが高まるのも、理解できなくはない。とかく激しやすく感情に左右される国民性なので、安定的と言われると、俄かに信じがたいが、自慢げに実用主義などといった軽い言葉を使うことなく、価値観を同じくする国同士なのかどうか甚だ怪しいにしても、お互いに西側の、引越しできない隣人として、少なくとも未来志向で向き合って欲しいものだと思う。

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トランプ的世界(続)

2025-06-28 09:41:31 | 時事放談

 NATO首脳会議のためオランダ・ハーグを訪れていたトランプ大統領は、記者会見でBBCウクライナ語サービスのミロスラワ・ペツァ記者の質問を受けた際、記者や家族の状況について尋ねたそうだ(一昨日のBBCによる)。

 記者から、パトリオット・ミサイルをウクライナに売却する用意があるか尋ねられると、それに答える前に、記者が子供とともにワルシャワに避難し、夫は軍人としてウクライナに残っていることを確認した彼は、そりゃ大変だね(Wow, that's rough stuff, right?)と同情して優しく返答し、ミサイルはアメリカ自身も必要だし、イスラエルにも供給していて、入手するのは難しいが(非常に効果的で100%の命中率だと宣伝するのも忘れなかった)、検討する(We’re gonna see if we can make some available.)と静かに答え、最後に次のように結んだ。I wish you a lot of luck, I mean, I can see this is very upsetting to you and say hello to your husband, OK?

 これもトランプ氏なのだ。故・安倍総理とウマが合ったのは、こちらのトランプだったのではないだろうか。

 トランプ氏が登場し、アメリカ社会が分断されて収拾がつかなくなりつつある現象は、トランプ氏が「原因」ではなく、「結果」だと言われる。これは重要なポイントで、彼もそれは分かっていて、MAGA派のご機嫌取りに余念がないし、世論や株価・為替などの指標をやたら気にしている。だから私は時々、次のような妄想に取り憑かれる。トランプ氏は確かに好き勝手に踊っているが、実は同時に操り人形か道化師でもあって、確かに好き勝手なことを言い続けて、その通りにアメリカを動かしているアメリカ合衆国のリーダーなのは事実だが、別の「意図」も同時に働いていて、確かにトランプ氏のものに近いからトランプ氏自身も気が付かないが、実のところ同床異夢ではないか、と。異夢と言うより近い夢ではあるのだろう。というのは、トランプ氏のやり方は乱暴だが、やっていること自体は概ね間違っていないと思うからだ。方向性はほぼ間違っていないが、彼が主張することは必ずしもアメリカ合衆国の国家意思そのものとは言えず、微妙に異なる真意が隠れているのではないか。

 第一次政権で、トランプ氏は中国に対して貿易戦争を仕掛けて、その後、中国との間で技術覇権を争う闘争へとエスカレートしたと解説されるが、そんなリニアなものではなく、トランプ氏の意図は飽くまで貿易戦争まで、貿易赤字を毛嫌いしていただけで、技術覇権闘争は必ずしも彼の意図するところではなく、彼が乗せられただけではないか。第二次政権で、ハーバード大学などのアカデミアがリベラルに過ぎ、反ユダヤ主義の学生に対して適切な対応を取らなかったことを彼は気に入らないと言うが、外国人留学生を減らすのは、そのようにトランプ氏が好む政策をとらせつつ、裏でアカデミアにおける中国の影響力を排除することを意図しているのではないか。だから私たちはトランプ政権における真意は何かを見極めなければならない。それはトランプ氏個人のキャラをいくら分析してみても分かりっこないので、アメリカそのもの、アメリカという複雑系のある側面が問題なのだ、と。

 こんなことを思うのは、権力はそんなに薄っぺらなものではないだろうと思いたいからであり、現にそういうものだと思う。が、これも変種の陰謀論か!?

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トランプ的世界

2025-06-23 00:28:03 | 時事放談

 米軍がイランの核施設三ヶ所に対して攻撃を行い、「非常に成功した」と、トランプ大統領が自らのSNSで表明して、その事実を知った。ロイター通信も短く伝えた。とんでもない時代になったものだ。SNSの威力もさることながら、彼の自己顕示欲の強さには驚かされる。世界が自分を中心にして回っているのを喜んでいるのは間違いない。

 だからであろう、トランプ氏がMAGAなどの略語を好むのに倣って、マーケットは略語(造語を含む)を広めて茶化している。Financial Times紙のコラムニストが4月2日「解放の日」以降のトランプ氏の関税政策が優柔不断なのをTACO(Trump Always Chickens Out.=トランプ氏はいつも腰砕け)と揶揄したのが話題になった。グリーンランド購入や51州目の対象にされたカナダを巡って、新MAGA(Make America Go Away=アメリカよ去れ)が唱えられて、アメリカ離れが起きつつあるとの声が漏れた。昔(トランプ氏登場以前)から使われていたFAFO(Fuck Around and Find Out.=好き勝手にやれば痛い目を見る)なる略語が、市場の混乱や不確実性を象徴する表現として最近よく使われるらしい。権威主義に近づいているのではないかと囁かれるトランプ氏だが、本人を対象とするTACOに対してせいぜい不機嫌な対応を見せただけで、さすがに、さる権威主義国でクマのプーさんが哀れにもネット環境から抹殺されている状況とは根本的に異なる。

 そんなトランプ氏は最近、かつてのG8からロシアを排除したことは「大きな間違いだった」と述べ、また、中国をG7に招くことは「悪い考えではない」と指摘した。彼はG7に何を期待しているのだろうか。国連・安保理や、ロシアや中国を含むG20などの国際機関が既に機能不全を起こしているのを知らないわけではないだろう。彼には国際秩序について目指すべき高邁な理想はなく、国際社会をまるで、金づるになりそうな富豪をもてなす悪徳不動産屋のオヤジの仲良しクラブのように捉えているかのようだ(苦笑)。

 制度としての自由民主主義はシステムで動くので、個人の力でどうなるものでもないはずだと思って来たが、彼は懲りずに挑戦し続け、実際に崩れつつあるのか、自由民主主義がレジリエンスを見せるのか、少なくとも自由民主主義の価値や経済原理を理解しないリーダーが巻き起こす混乱は、トランプ劇場として私たちは今まさに目撃しつつある。

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目くそ鼻くそ

2025-06-13 00:01:16 | 時事放談

 大変お下品なタイトルをつけてしまったが、これ以外のタイトルを思いつかなかった。

 環境活動家のグレタ・トゥンベリさんが支援物資を届けるために親パレスチナ活動家らと船でパレスチナ自治区ガザに向かう途中の9日未明、イスラエル軍に拘束され、どうやら無事、国外退去させられたらしい。これほどの有名人だから、無事に国外退去させないわけにはいかないだろう。

 どうでもいいことだが、「グレタ」とは日本人にはなんとも微笑ましい名前だ。もうちょっと学業に専念すれば、きっと優秀で明るい未来が開けているであろうグレタさんは、環境保護を中心に人権や社会問題に関心を持ち、道草を食ってグレている。いや、これはこれで大事なことで、これほどの行動力がある彼女の未来は明るいに違いない。

 ガザを巡って、イスラエルは拘束後、グレタさんに2023年10月7日に起こったハマスによるイスラエル襲撃の映像を見せようとしたが、グレタさんは見るのを拒否したそうだ。それでいて、かねて、民間の犠牲者拡大を厭わず攻撃を続けるイスラエルを批判し続けるのは、ちょっとアンフェアであろう。坊主憎けりゃ・・・といったところか。右も左も同じようにある種の思い込みから「不都合な真実」に目をつぶるのが現実である。

 それはともかく、トランプ大統領のコメントが秀逸だった。「(グレタさんは)アンガー・マネジメント教室に通うべきだ」「変な人だ。若く、怒りに満ちている」と評したという。

 あんたに言われたくない、と誰もが思うだろう。若くないが怒りに満ちた人が、アメリカ国内だけでなく世界を混乱の渦に巻き込んでいるのだ。これを自覚しない鈍感さこそ、トランプ氏の最大の武器であろう。

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中国的修辞法2

2025-05-23 05:13:54 | 時事放談

 中国政府の対外発表は興味深い。

 自由な言論空間が確保されない権威主義の中国では、政府発表や国営メディアの提灯記事が全てである。それを受け止める人民は、身の回りの現実との間で齟齬を感じれば、政府への信任に揺らぎが生じ、ひいてはそれが社会不安に繋がりかねないから、政府は慎重に対応せざるを得ない。なにしろ中国を統治する中国共産党の核心的利益の第一は共産党統治を維持することにあるのだから、政府の対外発表は内向けの人民を意識したものにならざるを得ない。中国共産党が最も恐れるのはアメリカではなく、中国人民だと言われる所以である。

 4月に日本の外務省がウェブサイトに「中国を渡航先とする修学旅行等を検討される学校関係者の皆様へ」と題するページを掲載した。中国各地で一般市民が襲撃されるなどの重大事件が発生しており、邦人も犠牲になっていることから、中国を渡航先とする修学旅行を検討している学校関係者に対し、外務省海外安全ホームページなどを十分参照の上、「渡航の是非」を判断するよう求めた。そうは言っても、渡航の自粛を求めるものではなく、安全確保や警備強化における外務省の支援、修学旅行出発15日前までの旅行届の提出、「たびレジ」への登録など、一般的な注意喚起を含むものだそうだが、これに中国外務省の報道官が噛みついた。そこまでならともかく、「中国は開放的で寛容で安全な国だ。我々は日本を含む全ての国の人々が中国を旅行し、中国で学び、ビジネスを行い、中国に住むことを歓迎する。中国国民と中国に滞在する外国人の安全を分け隔てなく守るために、引き続き効果的な措置を講じる」と言い募った上、「中国は日本に対し、直ちに誤った慣行を是正し、日中間の人的交流に前向きな雰囲気を作り出すよう強く求める」と、日本に注文まで付けたそうだ(4/25付ニューズウィーク日本版)。とりわけ反スパイ法の施行以来、中国以外のどの国の誰が、この報道官の発言を信じるだろうか。中国外務省の報道官が気にするのは、日本人ではさらさらなく、中国人民の目であろう。

 中国が2008年に北京五輪を成功させ、4兆元の経済対策を実施してリーマンショックから世界を救ったと言われ、2010年にGDPで日本を超えて世界第二の経済大国に躍り出て以来、大国たらんと欲し、そのように遇されることを望むのは、「未富先老」(豊かになる前に老いる)社会が現実のものになりつつある中、人民の自尊心をくすぐり、中国共産党の統治を正当化せんがためだ。こうして中国は、益々、自縄自縛に陥り、世界から奇異の目で見られるばかりで、ソフトパワー大国の夢は遠のき、中国の覇権は夢のまた夢となるだけのように見える。

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中国的修辞法1

2025-05-22 05:13:54 | 時事放談

 中国政府の対外発表は興味深い。

 古来、中国では、天が徳を失った王朝に見切りをつけると、革命(天が「命」を「革(あらた)」める)の名のもとに王朝交代が正当化される。一見、西欧の啓蒙主義思想のように、「被」統治者目線で、人民の支持を失う王朝を倒すことが正当化されるかのように思われるが、どうも中国の場合は統治者目線で、革命を目指す反逆王朝が現王朝の不徳と悪逆を詰り自己を正当化するロジックのように思われる。それは現代の中国でも同様で、だから社会不安を招かないよう中国共産党は社会(例えばメディア)や人民を、ひいては国家を「領導」することになっている。「領導」とは、日本の専門家によれば、指揮命令に服従させる含意があるそうだが、中国では命令でも強制でもなく、影響を与えることだという。まあ、いずれかはともかくとして。

 14日付ロイターによると、中国外務省の報道官が定例記者会見で、2021年12月に上海で拘束され2023年10月に初公判が開かれていた日本人男性に対し、中国の裁判所がスパイ行為で懲役12年の判決を下したことに関連し、「日本は中国の司法主権を真剣に尊重すべきだ」と述べたそうだ。報道官は、「中国は法治国家であり、当該案件の処理にあたっては法的手続きを厳格に順守し、関係者の正当な権利と利益を保障している」、「日本は自国民に対し、中国の法律や規定を遵守し、違法・犯罪行為に関与しないよう教育・指導すべきだ」とも述べたそうだ。

 中国の法治はRule by Lawで、法の上に中国共産党が君臨し、法を利用して統治するもので、法が最上位にある西洋の法治Rule of Lawとは似て非なるものだ。それでも英語ではないのをよいことに「(中国流の)法治」と呼んで日本人を惑わせる。そして、上の報道官談話で「教育・指導すべき」と訳されているのは、日本国政府は日本国民を「領導」せよ、と言いたいのだろう。強制や命令ではなく、(中国から見て)正しい道を外さないように影響力を行使せよ、ということか。かつて、日本のメディアが中国共産党の気に障ることを書きたてたことに対して、ある日本の政治家は中国の政治家から、政治はメディアを指導(領導)するべきだと言われたらしい。中国は自らの文法なり文脈に沿って(それは必ずしも日本や西洋の文法なり文脈と同じではない)あれこれと指図し、無意識の内にその異質さを露呈する。

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