先週末のAIG全英女子オープンで、山下美夢有選手が優勝した。賞金はなんと146万2500ドル(2億円超)。
賞金はともかくとして、日本勢の全英女子オープン制覇は、2019年の渋野日向子以来6年ぶりとなる快挙だが、当時と違うのは、この大会で初日から首位を日本人がキープして譲らなかった上、最終的に優勝のほか、勝みなみが2位タイ、竹田麗央が4位タイと、トップ5人の中に日本女子三人が名を連ねたことだ。
中でも初日から3日続けて、山下美夢有と竹田麗央という、国内女王経験者で、今季から米女子ツアーに参戦して新人王争いを繰り広げる二人がラウンドした。因みにこの二人が昨季、国内ツアーでマークした平均ストローク数は年間69台前半と突出していたらしい。竹田の(計測ホールでの)ティーショット平均飛距離263.19ヤードはツアー1位、山下はパーセーブ率で歴代1位の91.85%をマークしている。最も旬で、最強の二人なのである。
ゴルフにおいても、海外のツアーで活躍するにはパワー(ゴルフ)が必要と言われる。しかし、山下美夢有は身長150センチと小柄で、飛距離は出ないが精密機械のようなショットとパットを連発する。球筋も、高さを出したいとか、フェードで止めようとは思わず、日本にいた時と同じようにドローだけで攻め、コースによって球質を変えることはないらしい。そうやって自分のスタイルを貫いて、究極まで精度を高めることで、海外メジャーで優勝をかっさらってしまった。
松山英樹は、「やっぱり自分の武器を分かっているから、こういう結果が出せる。勝つ人というのは、そういうものを持っているんじゃないですかね」と、体格的なハンデをものともしない芯の強さに感心したそうだ(Golf Digest Onlineより)。
羽川豊は、本大会最終日の戦略に驚いていた(日刊ゲンダイDIGITALより)。560ヤードの6番パー5で、バンカーを避けるため、飛距離が出ない選手であるにもかかわらず、第1打にアイアンを使ったのだという。リンクスでポットバンカーに入れることは「1罰打と同じ」と言われるようにボギー以上になりやすいとは言え、無理をしてバーディーを取りに行き、ミスを繰り返すのがゴルフなのに、と(私の)耳に痛いことを言う(笑)。
これで日本人女子のメジャー制覇は、4月のシェブロ ン選手権の西郷真央に次いで6人目(7度目)となる。さすがに48年前の樋口久子さんは除くとして、2019年以来のこの6年間で5人のメジャー・チャンピオンを生んだことになる。西郷真央と、全米女子オープンを2度制覇した笹生優花は山下とプロ同期であり、昨年のメジャー、エビアン選手権を勝った古江彩佳のプロ転向は2019年で、いずれも日本中が「スマイリング・シンデレラ」ブームに沸いた渋野日向子の全英女子オープン優勝が大いなる刺激になったようだ。私が期待した渋野日向子はその後、ぱっとしないが、よい循環になっていて、それは大リーグでの野茂の活躍を見て、日本人メジャーリーガーが続々と後に続いたのに似ている。山下美夢有のプレースタイルは、さながらイチローの日本人らしい職人芸のようでもあり、見るのが楽しみになる。