風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

米大統領選の行方

2024-07-23 23:56:20 | 時事放談

 選挙イヤーの今年は選挙が荒れる…とは言っても致命的な大波ではなく、小波程度の混乱ではあるのだが。

 アメリカ大統領選ネタが続く。バイデン氏が、現職大統領として56年振りに再選出馬を断念したことには、予想されたとは言え驚いた。断念させられたと言い方が正しいし、先月27日のTV討論会以降は周囲に不満と言う名の断念圧力が燻り、今月13日のトランプ前大統領暗殺未遂事件以降はそれが爆発すると言うよりも、さ〜っとまるで潮が引いたように人気がなくなり、バイデン大統領が一人取り残されたような寂寥感は、自業自得とは言え気の毒なほどだった。シューマー院内総務やペロシ前下院議長に続き盟友オバマ元大統領まで離れてしまった。さぞやご本人は無念だっただろう。所詮、政治家は次の選挙に(バイデン氏が"顔"では)勝てないことを最も恐れるのだ(厳密には神学者ジェームズ・フリーマン・クラークは政治屋と政治家を区別して曰く、政治屋は次の選挙のことを考え、政治家は次の世代のことを考える)。手のひらを返したように、なぜここまで決断が遅れたのか、などと後出しジャンケンよろしく論評され、やれバイデン氏は頑固だの、やれ側近はイエスマンだらけだの、何を今さら裸の王様だったかのような書き振りには違和感がある。バイデン氏に代わる候補者などいなかったはずだ(彼の肩を持つつもりはないが)。

 それが僅か一日で、民主党は図ったように一枚岩になって、後継候補がカマラ・ハリス副大統領に一本化されたことにも驚いた。副大統領職は「人類が発明した最も重要性に乏しい公職」(ジョン・アダムズの言葉)とされることなど忘れたかのように、やれ行政や外交の経験が乏しいだの、やれ(ハリス氏が担った)不法移民対策は難航し成果が乏しいだの、やれ側近が相次いで離れて組織をまとめあげる能力や人望が乏しいだの、やれインテリで冷淡な印象だのと貶めて、一顧だにしなかったではなかったか。それが、手のひらを返したように、やれ検事出身で弁舌に定評があるだの、やれ若者や女性や非白人の支持を獲得でき、トランプ氏と正反対の人として有効な候補者だの、やれダイナミズムがあり期待を持てるハリス氏が出て来たことで民主党が活性化するだの、提灯記事には些か片腹痛い。

 実はトランプ氏にとってバイデン氏のままの方が戦いやすかったとの苛立ちも見られるようだ。何しろ敵は自分より年上のバイデン氏81歳から、年下のハリス氏59歳へと若返り、自ら高齢批判に晒される立場に逆転するからだ。おまけに、前回ブログに書いたように年齢(や性別や人種)などの属性による対決を煽るのは、本来、ご法度であることを弁えつつ、次のTV討論会は、冴えない「高齢者」対決から、まるで「犯罪容疑者」対「検察官」であるかのような緊張感あふれる対決となり、ただの野次馬には見応えがありそうだ。

 選挙では(選挙だけに限らないが)一寸先は闇との思いを強くする。そしてメディアのご都合主義も甚だしい。

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大統領と年齢

2024-07-19 00:44:51 | 時事放談

 本来、年齢による衰えは(ある年齢を超えると)人それぞれなのだから、若くても意志と能力さえあれば抜擢されるべきという議論があるならば、年寄りだから若者に譲るべきという議論はナンセンスだ。アメリカ大統領選での問題は、先般の討論会で見せた、そしてまたこれまでにも垣間見させた老いによる現実的な「衰え(健康不安)」にある。

 それでもなお(しつこく)年齢に着目すると、バイデン氏は1942年11月20日生まれの81歳、トランプ氏は1946年1月14日生まれの78歳、このままでは二人とも史上最高齢の大統領候補者になる(バイデン氏が民主党大会で順調に指名されれば)。これでは四つ足して任期を全うする年齢まで数えると不安になる。

 Potus.comによれば、アメリカ大統領は平均すると55歳で就任して来たそうだ。かつて最高齢は、69歳で就任したロナルド・レーガンだったが、トランプ氏が70歳、バイデン氏が78歳と、次々に更新した。逆に若い方を見ると、テディ・ルーズベルトが史上最年少の42歳で就任し、次いでJFK43歳、ビル・クリントン氏46歳と続く。そのビル・クリントン氏(1946年8月19日生まれの77歳)が選出されたのは30年以上も前のことなのに、彼よりも年上の二人が今なお大統領の座を巡って争っているというのは、清少納言が今を生きていたら「いと浅まし」と嘆きそうな悲劇であり、喜劇だ。

 こうして、大統領に不測の事態が発生して副大統領が大統領に昇格する可能性はこれまでになく高いと言われ、副大統領が誰なのかが注目される仕儀となる。

 西山隆行氏(成蹊大学教授)によれば、米国の副大統領に関して、憲法制定者は必ずしも大きな関心を持っていなかったという。「アレグザンダー・ハミルトンは『フェデラリスト』の第68篇で副大統領についても言及しているが、その職の基本的な役割について説明していない。初代の副大統領となったジョン・アダムズは、その職を『人類が発明した最も重要性に乏しい公職』だと評したことは知られているかもしれない」(同氏)。そして驚くことに、副大統領に欠員が生じた場合の補充方法についての規定が定められたのは、ようやく1967年の合衆国憲法修正第25条においてだったということだ。

 その副大統領候補となりそうな民主党側のカマラ・ハリス氏はマネジメントに問題があると言われ、実際に今一つも二つも冴えないし、共和党側のトランプ氏が選んだジェームズ・デービッド・バンス氏(39歳)は若くて未知数、輪をかけたトランプ主義者で、結局、大統領候補のお二人に頑張って貰わなければならないと思う気持ちになる。

 しかし繰り返すが、年齢による衰えは人それぞれだから、年齢による決め付けは余計なお世話なのだろう。

 一方の、暗殺未遂事件で見せつけたトランプ氏の危機における超人的なタフさ(気力・胆力など)は、大統領時代に多少の訓練を受けていたであろうことが想像されるとは言え、彼自身のキャラと相俟って、演技がかって、やや無謀とすら思わせるが、特筆されるべきであり、世界最強の米軍・指揮官としての要件の一つを満たすと人々をして思わせるものがあった。しかし、そこに神が介在していたなどと、神がかりなことを言ったところで、トランプ支持者にしか受けないだろう。なお、1992年3月、右翼団体の構成員から銃撃を受けた金丸信氏(当時自民党副総裁、77歳)は、弾が逸れて無傷だったものの、その場で腰を抜かして自らの力では立ち上がれなかったそうだ。自分だったら、腰を抜かしてしょん●んをちびって立ち上がれなかっただろうと白状した人もいたが、ムベなるかな。

 他方、民主党ではバイデン降ろしが本格化しつつあるが、代わりが思い浮かぶわけではないのが悩ましい。まさに健康不安を払拭し、年齢を感じさせないタフさ加減を見せつけるべき正念場であろう(が、今更もう手遅れなのかもしれない、少なくともメディアの評価は)。

 大統領選は相変わらず混沌としている。暗殺未遂事件は、アメリカ社会の分断を深めるばかりとなった。犯人が共和党員だったことで、辛うじて深刻な事態は避けることが出来たのかもしれない。

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トランプ氏 暗殺未遂(続)

2024-07-16 21:28:33 | 時事放談

 大統領または大統領候補が銃撃を受けたということで、懐かしいエピソードが紹介されていた。

 レーガン元大統領は、就任後まもない1981年3月の受難で、シークレットサービスや側近から有無を言わせず車の中に押し込まれたので、トランプ氏のような咄嗟の(しかし状況からすれば超人的な)パフォーマンスを見せることが出来なかったが、搬送先の病院で医者や看護師に向かって、「君たちはみんな共和党員だよね?そうならいいけど。」と問いかけた機転(ウィット)が高い評価を受けた、というものだ。ここまでは、かつてどこかで読んだことがあるが、続きがあって、その中の医師が、「今日一日は全員が共和党員です、大統領閣下。」と切り返したということだ。ちょっと出来過ぎのところもあるが、如何にもアメリカ人好みの小噺である。

 トランプ氏の場合は、恐らく伝説的となるであろう写真が拡散された(上記の通り)。星条旗を背景に(但し旗が裏向きなのが残念)、フランスの七月革命を描いたドラクロアの名画「民衆を導く自由の女神」を彷彿とさせる構図である。英紙ガーディアンは、トランプ氏の流した血は写真に宗教画のような効果を生んだと指摘し、そんなトランプ氏のことを、フランス紙フィガロは「闘技場に立つ剣闘士」と評し、ドイツ紙ウェルトは「劇場効果の天才」と評したそうだ。撮影者はAP通信ワシントン支局チーフ・フォトグラファーのエバン・ブッチ氏で、2020年5月にミネアポリスで起きた白人警官による黒人男性暴行事件を巡る抗議行動を撮影し、AP通信チームの一員として翌21年ピュリツァー賞速報写真部門を受賞している。CNNによれば、駆け出しの頃にイラクやアフガニスタン情勢を取材した経験があり、戦闘状態に身を置いたこともあったお陰で、混乱の中でも落ち着いていられたと語ったそうだ。「全てに焦点が合っていたこと、自分のすべき仕事をやり遂げたことに満足している。」(ブッチ氏)

 ブッチ氏もお見事だったが、トランプ氏もやはり役者である。出来過ぎとも思う。

 だからと言って、彼こそ大統領に相応しいかと言うと、それはまた別の話である。

 

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トランプ氏 暗殺未遂

2024-07-15 22:57:51 | 時事放談

 先週は、選挙イヤーでいろいろ驚かされることがあると書いたら、今週は、選挙演説中のトランプ前大統領が銃撃を受けたことに驚かされた。右耳上部に銃弾を受けたか、あるいは(プロンプターのような?)ガラスの破片を受けたという報道もあるが、ご本人の命に別状はなかったのは何よりだった(聴衆に犠牲者が出てしまったが)。

 ちょうど二年前、安倍元首相が銃撃を受けたのを、つい思い出してしまう。もし存命なら、今の自民党の体たらくは許さなかっただろうし、この秋の自民党総裁選に三度目の出馬があったかも知れないと思うと、なんだかやりきれない思いにとらわれる。

 トランプ氏は、一発目の銃声で「伏せろ」の声と身を挺するシークレット・サービスに守られて、身を屈めた。そして暗殺者は即座に、警護するシークレット・サービスのカウンター・スナイパーによって射殺された。如何にも銃社会らしい、手慣れた対応には感心してしまう(もっとも、金属探知機で持ち物チェックされる会場内はともかくとして、会場外であっても演説場所から120~150メートル程度離れた建物の屋上という、ライフルで狙撃可能な場所を警戒しなかった警護の責任を追及する声があがっているようだ)。一方の安倍元首相は、一発目の銃声に伏せずに振り向いて、命を落としたのだった。平和な日本の脇の甘さと詰られても反論のしようがない。

 さて、トランプ2.0は、同盟国としては勘弁して欲しいと、つい思ってしまうが、決めるのはアメリカ国民だ。今回の銃撃事件に際して、トランプ氏は軽傷だったこともあり、会場を後にするときに拳を何度か突き上げて健在ぶりをアピールしたのは、さすがだった。大統領にはこうした力強さを、アメリカ人は求める。

 もっとも、選挙戦はまだ四ヶ月近く残されており、9月10日に第2回テレビ討論会が、また、10月には(2016年のヒラリー・クリントン氏のメール問題や、2020年のトランプ氏の新型コロナウイルス感染などのような)見えないイベント「オクトーバー・サプライズ」が控えて、予断を許さない。同盟国としては、国際秩序にも十分に目配りする大統領を期待するが、バイデン氏のように舌禍で弱腰に付け込まれたり、トランプ氏のように不規則発言で懸念国の行動を牽制したり、結局、どちらが良いのか、実はよく分からないのが正直なところではあるのだが。

 何はともあれ、最悪の事態でアメリカが、ひいては世界が混乱するのを避けることが出来たのは幸運だったと思う。そしてトランプ氏が強運であることも思わないわけにはいかない。

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東京都知事・七夕決戦

2024-07-09 23:10:46 | 時事放談

 今年は選挙イヤーと言われ、各地の様々な選挙でサプライズが続出し、世間を賑わせている。

 6月初めのEU議会選挙では、極右や右派などのEU懐疑派が躍進し、フランスやイタリアやオーストリアでは国内第一党になったのには驚いた。これを受けたフランス・マクロン大統領が国民議会(下院)解散・総選挙の賭けに打って出たことに驚いた上、マクロンの狙い通りに極右が失速したこと、更に左派連合が最大勢力になったことにも驚いた。マクロン政権の年金改革が不人気だったようで(不人気でもやるべきことをやったのは偉いと思うが)、彼の求心力が低下すると噂されるのは気の毒ではあるし、EUやNATOの結束という意味でも不安がある。

 イギリス下院選挙が予想外に早く実施されたのはともかくとして、5年前に屈辱的な惨敗を喫し、今後10年は立ち直れないと言われた労働党が、下馬評通りとは言え見事にカムバックしたことには驚いた。労働党が野党の立場から総選挙で勝利するのは27年ぶり、総選挙で勝つこと自体19年振りだそうで、久しぶりの政権担当能力が問われる。

 …とまあ、前置きが長くなった。一昨日の七夕に東京都知事選が行われ、現職有利は既定路線と言ってもよく、得票数こそ前回から大幅に落としたものの、8時の開票直後に小池さんに当確が出たことに驚きはない。蓮舫さんが国政の政局を持ち込んで「反自民・非小池」とやらかして不発だった上、共産党と組んで伸び悩んだことにも驚きはない。財政に余裕がある東京都で政策論争を仕掛けたところで勝ち目はなさそうだ。ところが、広島県安芸高田市の前市長(石丸伸二氏)が、緑の古狸と必殺仕分け人(ちょっと古い)という注目の二人に挟まれながら善戦し、165万票を獲得して二位に食い込んだことには驚いた(残念ながら二位ではダメなのだが、というのもちょっと古い)。知名度不足をSNSでの発信や連日連夜の街頭演説で克服したと賞賛されるのは、既存政党が飽きられているとは言え、並大抵ではない。「出来ることは全部やったと言い切れる」と胸を張ったのは天晴れと言うべきで、次に来年秋の広島県知事選出馬を狙っているのではないかと囁かれるのは、なかなか野次馬的には楽しみだ。

 選挙はやってみなければ分からない。また、選挙にはマーケティングが働く余地が多く、実はやってみると面白いものだ。私は、選挙好きの父に騙されて、小5の時に児童会書記に当選し、小6で会長に当時史上最多得票で当選したことがあって、応援演説にひょうきん者のカサマツ君を起用したり、ポスターや演説に凝ったりして、子供心に選挙なるものを楽しんだことを懐かしく思い出す。だからと言って、過去最多の56人もの立候補者の中に多数の売名出馬があり、ポスター掲示板ジャックやら掲示スペース販売が騒がれたのは、ちょっと大人げない。かつての私の真摯なるも心から楽しんだ選挙活動は所詮はガキの遊びで、見習えとは言わないけれども。

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