風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

日中の尖閣領有権争い

2020-11-29 22:26:22 | 時事放談
 日本シリーズにかまけている間に、また、その後、燃え尽き症候群を患っている間にも(笑)、当然のことながら世の中は動いている。アメリカ大統領選での選挙不正の行方も気になるが、今日は日中関係について触れておきたい。
 中国・王毅外相が24~25日の来日中、尖閣諸島について中国の領有権を一方的に主張し、日本漁船の進入禁止まで求めたとされることが物議を醸した。共同記者会見で隣に並んでいた茂木外相はニヤけたような表情で反論しなかったものだから、一部の保守派から批判に晒されたようだ。そのため加藤官房長官は、「共同記者発表が両国の外相がそれぞれ1度ずつ発言する形式だった」(産経新聞)と釈明しなければならず、「発表後、日本政府として王氏の発言は受け入れられないと中国側に申し入れた」(同)と強調したそうだし、茂木外相ご本人も27日の参院本会議で釈明を余儀なくされた。日本共産党の志位委員長は、茂木氏について「王氏の発言に何ら反論もしなければ、批判もしない。そういう対応をした」「中国側の不当で一方的な主張だけが残る事態になる。極めてだらしがない」と批判したそうだが、まさにその通りだと思う。他方で、国会は相変わらず桜と日本学術会議で盛り上がっているようで、ジャーナリストの門田隆将氏は「国会の集中審議で、尖閣問題の言及がなかったのは異常だ。主権に関わる問題意識が欠如している」「いかに中国による日本の政財官界や、メディア界への工作が浸透しているかの証左ともいえる」と述べたことにも、同意する。
 もっとも、事情はあるようだ。
 王毅氏が2013年3月に外相に就任して以降、日本に関する発言をほぼ逐一フォローしてきたと自負されるジャーナリストの近藤大介氏は、今回は、狼がいつの間にパンダに変身したのだろうと、逆に驚いてしまったと告白されている。共同記者会見については、王毅外相の女性通訳の日本語がたどたどしくて、「戦狼発言」のように聞こえてしまったもので、事実誤認だと言う。
 王毅外相は、「今後ともわれわれは、わが国の主権を維持し、保護していく」と述べたことに続けて、以下の3点を希望するとして、「第一に、双方が『4つの共通認識』を継続して順守していくこと、第二に、およそ敏感な海域では、事態を複雑化させる行動を取らないこと、第三に、いったん問題が起こった際には、双方が迅速に意思疎通を図って、問題をうまく処理していくこと」と述べたという(近藤大介氏による)。ここに言う「4つの共通認識」は、2014年11月の北京でのAPECの際に、ついでに開催されたと揶揄された(笑)日中首脳会談に先立って、楊潔篪国務委員と谷内正太郎国家安全保障局長(当時)との間で合意されたものだ。2年5カ月ぶりの日中首脳会談は、習近平国家主席と安倍首相(当時)との間では初めてで、背景に国旗が飾られることもなく、習氏が仏頂面で安倍氏と握手した姿は、今もありありと思い出す(笑)。「4つの共通認識」は、外務省HPによると以下のものを指す。

1.双方は,日中間の四つの基本文書(注)の諸原則と精神を遵守し,日中の戦略的互恵関係を引き続き発展させていくことを確認した。
2.双方は,歴史を直視し,未来に向かうという精神に従い,両国関係に影響する政治的困難を克服することで若干の認識の一致をみた。
3.双方は,尖閣諸島等東シナ海の海域において近年緊張状態が生じていることについて異なる見解を有していると認識し,対話と協議を通じて,情勢の悪化を防ぐとともに,危機管理メカニズムを構築し,不測の事態の発生を回避することで意見の一致をみた。
4.双方は,様々な多国間・二国間のチャンネルを活用して,政治・外交・安保対話を徐々に再開し,政治的相互信頼関係の構築に努めることにつき意見の一致をみた。
(注)日中共同声明、日中友好条約、日中共同宣言、戦略的互恵関係の包括的推進に関する日中共同声明

 私には、近藤大介氏が言うように狼がパンダに変身した姿が実感できないのだが、少なくとも中国がマスク外交や戦狼外交の昨今ではなく、当時の共通認識に立ち戻ろうとしていることは重要ではないかと思う。トランプ政権のもとで米中対立が先鋭化し、中国は進退窮まって、米中が対立するときほど日本に擦り寄ってくるとか、日米関係にクサビを打ち込んでアメリカを牽制しようとしているとか、いろいろワケありの日・米・中の三角関係だが、習氏は終身になったり社会監視を強化したりして中国共産党支配を強化していると言われる一方、習氏の政権基盤はそこまで盤石とは言えないと見る人もいるし、中国の対外的な強硬姿勢は対内的な弱さの裏返しだという気もする。茂木外相は、王毅外相との会談の後、互いの通訳だけを入れたサシの会談を約30分行っており、直後の会見で、「王毅外相とは電話で4回会談したが、直接話をする重要さを感じた」と述べていて、何らかの手ごたえを掴んでいそうでもある。
 時事通信は、「中国内では『日本による釣魚島(尖閣諸島の中国名)の実効支配を崩したことは習近平指導部の大きな実績』(中国軍筋)という声があり、尖閣問題で日本に譲歩することは極めて困難」と伝えており、中国のサラミ・スライス戦略にはよくよく注意しなければならないが、尖閣の問題は暫く様子を見た方が良いのかもしれない。
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日本シリーズ第四戦

2020-11-26 01:19:49 | スポーツ・芸能好き
 この日本シリーズは、巨人の球団史に刻まれる屈辱的な惨敗となった。しかし、ここまで来ると、最悪を予想していたせいもあり、正直なところ悔しさよりも、ソフトバンクは強いな、という印象が先に立つ。巨人ファンとしては、ちょっとどころか大いに寂しい(笑)。
 今日は「2番・坂本、3番・丸、4番・岡本」の打順を復活させ、菅野もベンチ入りさせるなど、総力戦で臨む構えを見せた。その意気込みが通じたのか、初回、4戦目にして初めて先制した(が、その裏にあっさり柳田に逆転2ランを浴びたが)。そのため、「33-4」(2005年の日本シリーズ4試合の合計スコア)として話題になったときの阪神は1度もリードを奪えなかったが、「0―0を除く同点にすらできなかったチーム」という史上初の屈辱は免れ得た。
 シリーズを振り返れば、鹿取義隆さんの言葉を借りると、「4番・岡本が初戦の第1打席でソフトバンク・千賀の厳しい内角攻めにバットを折られた場面が象徴的だった」。結局、岡本は13打数1安打で打率0.077、丸は15打数2安打で打率0.133、坂本は14打数3安打で打率0.214と、ものの見事に抑え込まれた。この三人だけではなく、チーム打率0.132は、昨年4連敗で記録した4戦での最低打率0.176を更新し、試合数を問わなければ2007年の日本ハムの最低打率0.147(5試合)をも更新した。4戦での安打数16はシリーズ最少記録22(05年阪神、19年巨人)を更新し、4戦での4得点は05年阪神と並ぶ最少タイ、4戦での41三振はシリーズ最多と、記録づくめである(笑)。これで巨人の日本シリーズ9連敗は最長タイ、セ球団はパ球団ホームゲームで19連敗、DH制の試合で21連敗となった。はあ・・・(溜息)
 ソフトバンクが投打で圧倒・・・という報道があるが、ソフトバンクのチーム打率は0.267で、ペナントレースの0.249こそ上回るが、圧倒というほどではなく、むしろ短期決戦での誤差の範囲(具体的には第二戦の打率0.349に引っ張られた)ではなかろうか。つまり、エース菅野が勝てなかったのが痛かったが、巨人の投手陣はそれなりに頑張ったと言える。とにかく巨人の打者が抑え込まれたのだ。
 また、1975年にパ・リーグに導入されたDH制がセ・パの投打の力の差を生んだと言われるが、過去の日本シリーズを振り返ると、
   1980~1989年 セ5勝、パ5勝
   1990~1999年 セ5勝、パ5勝
   2000~2009年 セ5勝、パ5勝
   2010~2020年 セ1勝、パ10勝
と、実に2000年代までの10年単位では見事に「分け」ているのに対し(偶然にしては出来過ぎのようだが 笑)、直近の11年間が問題であることが分かり、果たしてDH制のせいと言ってよいのか疑問である(そう言えばドラフトのクジ運も良かったし・・・)。そして、この直近11年間のパ10勝の内、ソフトバンクが実に7勝(現在4連覇中)しており、つまり、かつてのV9時代の巨人に並ぶ黄金時代を現出させていると言うべきではないだろうか。DH制を活かしている部分も勿論あるかも知れないが、選手育成やチーム編成の問題という気がする。結論として、冒頭に書いたように、ソフトバンクが強い(!)のである。
 この一強の時代に、来年以降、他のチームがどう立ち向かっていくのか、楽しみにすることにしよう(と、心を入れ替えることにしよう 笑)。
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日本シリーズ第三戦

2020-11-25 01:15:02 | スポーツ・芸能好き
 かつて週刊文春に「萬流コピー塾」という名物コーナーがあって、私も学生時代に何度か応募したことがある(が、一度も採用されなかった 笑)。その塾長のコピーライター・糸井重里さんは「無念、屈辱、唖然の3試合。明日は気絶するのか?」と投稿された。さすが塾長、お見事。まさに崖っぷちである(苦笑)。
 第三戦も、ソフトバンクは4-0で巨人を圧倒し、2018年の第3戦以来3年越しの日本シリーズ連勝記録を11に伸ばした。他方、巨人は日本シリーズ8連敗。ついでに、セ・リーグのチームとして、日本シリーズでのパのホームゲームで18連敗、DH制の試合で20連敗。もはやひとり巨人の問題ではなく、セ・リーグの意地がかかっている(笑)。
 そんな中、巨人の先発サンチェスは、強力打線を相手に強気の内角攻めで7回途中まで3失点と好投した。初戦・第二戦で打者として唯一、気を吐いたウィーラーといい、外人選手に救われている。このあたりこそ今の巨人の雰囲気をよく伝えるものだろう。
 それにしても・・・投手がそれなりに頑張っても、打てない。今シリーズは計89打数10安打の打率1割1分2厘という貧打である。ソフトバンクの投手が良いのだろう。150キロ台の直球でごりごり押してくるパワー・ピッチャーとの対戦で揉まれるパ・リーグ野球が、かつて巨人にも在籍した谷佳知氏に言わせれば「次はカーブ」とか配球を読みながら甘い球を待つセ・リーグの野球を圧倒しているのも分かる。それにしても、である。とりわけ今日の試合は9回2死まで継投によるノーヒット・ノーランという体たらくだった。
 その崖っぷちを辛うじて救ったのは、「逆シリーズ男」とまで呼ばれる丸だった。個人的には広島時代を含めて5年連続リーグ優勝を経験しながら、なかなか日本一に手が届かない。周囲の期待が高いだけに、この日本シリーズでも打撃不振で、スケープゴートにされているところがある(苦笑)。今シリーズ初戦の4回無死一・二塁の場面でショートゴロの併殺に倒れたとき、駆け抜ける丸の足がファースト中村晃の足を蹴る形となって、ネットが大荒れとなったのは、象徴的なシーンだった。翌日の試合前に工藤監督と中村に謝罪を入れるに至ったが、何事も真面目で、野球に対して常に真摯に取り組む丸のこと、本来、その場で謝罪があって然るべきだったと思う。このあたりも、今の巨人の雰囲気を伝えるものではないだろうか。
 この、巨人を覆っている何とも言えない、ど~んよりした閉塞感を何とかして欲しい(笑)。それが出来るのは主軸打者しかいない。とにかく打つべき人がしっかり打たないことには突破口は開けないように思う。ダルビッシュは、「ソフトバンクが圧倒的な2連勝をしたからか、日本シリーズが終わったかのようなツイートをよく見るのですが、まだ2試合しかしていないからわからないよね」と言ってくれていたが、まだ3試合しか終わっていない(などと強がっても、空虚に響くだけだが 笑)。三日続けて、同じ言葉で締め括りたい・・・とにかく、意地を見せて欲しいものだ。
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日本シリーズ第二戦

2020-11-23 00:05:44 | スポーツ・芸能好き
 スポーツ報知は、「試合後の会見は39秒。原監督としては極めて異例の短さだった」と伝えた。良いところ無しで、2-13の得点差そのままの惨敗だった。日本シリーズで二桁失点したのは1994年の西武戦(第1戦)で11失点して以来26年ぶり、13失点は日本シリーズ史上球団ワースト記録だそうだ。これで日本シリーズ7連敗、対するソフトバンクは10連勝となり、新記録を更新した。
 打つ方では、辛うじてウィーラーが5回に2ランを放ち、前日9回裏の犠飛に続き、二試合続けて完封負けを阻止して気を吐いた。なんとも寂しい話だ(笑)。岡本に7打席目にしてようやくシリーズ初安打が出た。唯一、盛り上がったのは、この6回裏の攻撃だろうか。坂本・岡本の連打で一死一・二塁となって、丸が三振、代打・田中が四球を選んで二死満塁となって、中島が三振。力でねじ伏せられた感じだ。
 投げる方では、ソフトバンク打線が強力なのは事実だろうが、巨人の投手陣が(高梨を除き)これほど打ち込まれると処置なしだろう。挙句、9回表、7番手で登板した大竹が一死満塁のピンチで、甲斐を投手ゴロに打ち取り、1-2-3の併殺コースとなるところ、捕手への悪送球で二者生還したときには、さすがに球場は騒然となったようだ。このシリーズに象徴的な場面と言えるだろう。
 こういうときはつい自虐的になるが、なんとかこらえて(笑)・・・昨年の日本シリーズから同一カード6連敗というのは、レギュラーシーズンでもなくはないのだろうが、同じプロ球団としてここまで抑え込まれるのは、実力の差と言うよりは、日本シリーズという短期決戦の独特の雰囲気の中で、これ以上負けられないという硬さと焦りが極限に達していることだろう。プロとして恥ずかしい。ええ加減にしいや~である(笑)。昨夜に引き続き、同じ言葉で締めくくりたい・・・意地を見せて欲しいものだ。
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日本シリーズ第一戦

2020-11-22 00:26:39 | スポーツ・芸能好き
 日本シリーズ初戦、巨人・菅野とソフトバンク・千賀のエース対決は、ソフトバンクが快勝した。巨人ファンとしては辛いが、力負けである。2013年の第7戦から、昨年、そして今年と、日本シリーズ6連敗は、球団史上59年ぶりの屈辱だそうである(対するソフトバンクは、日本シリーズ新記録となる9連勝)。とりわけ昨年の日本シリーズ4連敗は、会社に行くのが嫌になるほどこたえたもので(笑)、そんなパに「一泡吹かせたい」とリベンジを誓った菅野だったが、勝てなかった。言い訳はいろいろ用意してある(笑)。
 まあ、巨人としてはスロースタートになるだろうとは予想していた。よく言われることではあるが、クライマックス・シリーズがなく、実戦から遠ざかっていたこと、ペナントレース終盤は調子を落としていたこと(逆に、ペナントレースを独走した原マジックの方が驚きだった)、ホームの東京ドームが使えないこと。さらに中期的に見れば、以前から人気のセ、実力のパと言われたものだが、明らかにパの実力が上回っていること、そのパでソフトバンクは2位に14ゲーム差をつけてぶっち切りで優勝したこと。
 セ・パの格差ということでは、今年はコロナの影響で交流戦がなかったが、昨年までパが10年連続で勝ち越している。日本シリーズでは、この10年間でパが9勝1敗(この1敗の相手は2012年の巨人)で、現在7連勝中である。そのため、今年で71回目を迎える日本シリーズの過去の対戦成績は、セ・パともに35勝ずつで五分となった(かつては巨人の9連覇があるなど、セが圧倒していたものだが)。冷静に眺めれば、そして選手層の厚さを見ても、どうひっくり返しても、ソフトバンクの優位は動かない。
 今年の日本シリーズでは、特例で全試合DH制が採用されることが決まり、話題になった。「交流戦中止で、今季一度も打席に立っていない投手に余計な負担が掛かる」というソフトバンクの提案を巨人が受け入れたもので、原監督は、「(全試合DH制導入による)有利とか不利とか、そんな議論は、もうすぐ90年を迎えようとしている野球界に対して失礼。やっぱり『ファンが何を望んでいるか?』というのは、とても大事なことですよ」と、啖呵を切った。以前から、DH制で、セはパに相当差をつけられていることを実感し、セでもDH制を使うべきと発言して来た原監督らしい潔さである。
 普段、セのことしか気にしないので、正直なところDH制なるものを余り真剣に考えたことがなかったが、あらためて思うに、選手に緊張感を与えるものであるのは間違いなさそうだ。野手の出場枠が1つ増えて育成に繋がるし、投手は切れ目のない打線に気を抜けないし、中・終盤にチャンスで打順が回ると代打が出て投手交代ということにならないので、より長いイニングを投げるチャンスがある。投・打それぞれが切磋琢磨の好循環を生んで、レベルアップに繋がっているという指摘は正しいのだろう。あるスポーツ紙の記者は、観ていて純粋に面白いのは、やはりパの試合であり、何より野球がダイナミックで、どのチームにも「この選手のプレーが見たい」という選手がいる、と語っている。
 原マジックがなければ、あっさり返り討ちにあいそうな今シリーズだが(苦笑)、南海以来の伝統のホークス戦である。惰性で続ける50年来の巨人ファンとしては、かつての王者として、ガムシャラに、ではなく、飽くまで巨人らしくスマートに、意地を見せて欲しいものだ。
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中国がつくる分断した世界

2020-11-16 22:54:47 | 時事放談
 なかなか決まらないアメリカ大統領選にかまけている間も(当たり前だが)世の中は動いている(笑)。マクロンさんのイスラーム過激派との戦いも気掛かりの一つだが、日本人としては、中国の一挙手一投足を気にしないわけには行かない。
 二週間ほど前の日経夕刊に、「豪産ロブスター 中国で通関遅れ」という小さな記事が出たのが、なかなか衝撃的だった。まだやるのか、ここまでやるのか、と。中国は、4月にモリソン豪首相が新型コロナ・ウイルスに関する独立した調査を求めたことに反発し、5月に豪産食肉の輸入を一部停止したほか、大麦には80%超の追加関税を課した。10月には、中国で豪産石炭の通関手続きに遅れが出たほか、中国政府が国内紡績工場に対して豪産綿花の利用中止を求めたことも判明しているという(以上、日経夕刊11/1付)。豪紙によると、豪州のロブスター輸出の9割超が中国向けだという。豪州のような中小国が超大国・中国に歯向かうとこうなるという、見せしめであろう。なんとも露骨な中国のエコノミックス・ステイトクラフトの発動であるが、中国への過度の依存が招く悲劇として関係諸国の警戒心を呼ぶことになろうことなど気にしないほど、自らの威信を保つことに汲々としているように見えて、却って心配になる。世にデカップリングと言われるが、それを招いているのは「中国製造2025」以来の中国である。
 時事(10/31付)は、「中国依存強め威嚇能力持て 世界の産業チェーンで習主席指示」と題する記事を配信し、中国の舞台裏を伝えた。習近平国家主席が4月10日の党中央財経委員会で行った演説(共産党理論誌「求是」がホームページに掲載)によると、「産業の質を高めて世界の産業チェーンのわが国への依存関係を強め、外国に対し供給停止が強力な反撃・威嚇力を形成する」よう要求したということだ。今朝の日経も、RCEP署名に絡めて「中国 高まる存在感」と題する記事の中で、このときの習近平国家主席の発言を、よりこなれた和訳で取り上げている。曰く、「国際的なサプライチェーン(供給網)を我が国に依存させ、供給の断絶によって相手に報復や威嚇できる能力を身につけなければならない」と。
 コロナ禍の当初、中国製造のマスク等の医療品が入りにくくなって、世界中が大騒ぎしたことが念頭にあったのだろう。これを機に、日・米・欧は中国への過度の依存を問題視するようになった。安倍政権はその支援策として2200億円の補助金を用意したし(その後、増額を検討と伝えられる)、日・米・豪・印のQuadの目的の一つは、需要逼迫する資源(レアアースなど)や生産品目の相互融通にある。大紀元という法輪功系のメディアは10/28付で、「中国の外資系企業『7割近く』が工場移転を検討」と報じた。英スタンダード・チャータード・グループが実施した調査によると、43%が米中貿易戦争とパンデミックの影響で生産能力の移転をより積極的に検討中、25%近くはその他の理由で移転を検討中だという。
 中国は、アヘン戦争以来の日・欧からの屈辱的な仕打ちに対する民族の怨念を晴らすというストーリーによってナショナリズムを焚きつけ、求心力を高めようとしていると言われるが、その行動特性もあの帝国主義の時代に回帰しているかのようだ。中国流のレトリックなのだが、時代錯誤も甚だしく、かつ危険極まりない。このあたりの中国のマインドセットは先ずは環境問題で明らかになったものだった。欧米諸国はかつて二酸化炭素を排出して経済成長し近代化を成し遂げたのに、発展途上の中国が今、それをやって何が悪いと開き直って見せたのだった。同様に、欧米諸国がかつて植民地支配を通して「搾取」したことを、今や大国となった中国がやって何が悪いと開き直っているのであろうか。しかし、人類は進歩しないと言われながらも、ポリティカル・コレクトネスとして歴史は確実に前進し、二度の戦禍を潜り抜けて、欧米諸国はポスト・モダンの時代認識のもとに変わろうとして来た。いくら歴史に学ぶ中国とは言え、逆行するのは賢明とは思えない。
 いや、逆行しているのではなく、この地球上には、ポスト・モダンを生きる日・米・欧のような先進国とともに、今なおモダン(帝国主義の時代を含む)を生きる中国やロシアのような権威主義体制の国々が併存するというのが現実なのであろう。北朝鮮も同様で、核開発を凍結するという、一部の核保有国の優位をも凍結することになる苦渋の決断をした日・米・欧をはじめとする国際社会の神経を逆撫でする。コロナ禍への対応で、権威主義体制の国の強さが際立つと言われるが、国内統治に限れば、民主主義という歴史的経験、すなわち民衆の成熟がなく、強権に頼るのは統治の脆弱性を抱えて戦々恐々としていることの裏返しに他ならない。日本や欧米諸国の課題は、モダンの中国を如何にしてポスト・モダンの世界へとソフトランディングさせるか、そして飽くまでも国際社会に包摂していくことであろう。
 そして、経済的に中国に依存するオーストラリアが足元を見られて、さんざん中国に苛められていることからすれば、日本は、中国経済への依存を減らし、自らにパワー(中国にない先進技術などの付加価値)を備えることが、中国から軽んじられることなく、モダンとポスト・モダンの間の仲裁の立場になり得る重要な要素だと思う。折しもEUは、復興基金や中期予算計画の中で、「デジタル(=欧州デジタル単一市場)」、「グリーン(=欧州グリーンディール)」とともに「レジリエンス」というキャッチフレーズを謳い、医療やヘルスケア分野のサプライチェーン強化や、技術・インフラ等の保護を進めようとしている。他方、中国は先の5中全会で、米中対立が続くことを見越して、「双循環」なる方向性を公式に宣言した。「内循環」(=国内循環)を主とし、「外循環」(=貿易や対外開放)を従とした政策、言わば自力更生路線を打ち出したのである。日本企業のサプライチェーンも、中国生産は中国市場に限定するものと割り切り、多少コストがかかっても「世界の工場」機能は国内回帰(リショア)やASEAN・インドなどの第三国への分散によって「レジリエンス」を高めていくべきだろう。言うは易し、行うは茨の道だが・・・
 上の写真は、かれこれ10年前になるが、シドニー駐在時にお世話になったDarling HarbourにあるNick’sというシーフード・レストランでの、ややシュールな豪産ロブスターのお尻(と言うより背中)の数々。
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アメリカ大統領選・続報2

2020-11-14 14:01:10 | 時事放談
 投票から10日が過ぎ、CNNによれば、昨夕、アリゾナ州でバイデン氏に当確が出たのに続き、私たちが寝ている間にジョージア州(バイデン氏)とノースカロライナ州(トランプ氏)でも当確が出て、ようやく50州が赤と青に色分けされた(灰色が消えた)。獲得投票人数は、奇しくも前回と同じ306対232で、皮肉にも前回、トランプ氏は「地滑り的勝利」と評していたが、2州を除き州毎に選挙人総取りなので、激戦州と言われるところでは前回も今回も接戦だったのが実態だ。トランプ氏は、この日、バイデン氏の当選が確実になってから初めて、ホワイトハウスのローズガーデンで公に発言し、自分の政権ではロックダウンを行うつもりはない(将来何が起ころうとも・・・もっとも誰の政権になるか分からないが)などと述べて、政権交代可能性の含みを持たせた("I will not — this administration will not be doing a lockdown. Hopefully whatever happens in the future — who knows which administration it will be? I guess time will tell — but I can tell you this administration will not go to a lockdown.")
 トランプ氏にとって、前回との違いは、ウィスコンシン、ミシガン、ペンシルベニア、ジョージア、アリゾナの激戦五州がひっくり返されたことにある。マクロに見れば、白人票が少し減ったくらいで、概ね変わらなかったようだが、州毎に産業構造や人口動態などの詳細を見ないと分からない。ジョージアやアリゾナといった共和党が地盤の州で、伝統的な産業から情報通信産業などへの転換が起こって、時間の経過とともに掘り崩されているようだ。
 あらためて色分けされた全米地図を眺めると、民主党支持者は都市部に多く、共和党支持者は内陸部の農村地帯に多く分布している状況は、見事だ。ヴァーチャルなネットの世界では、SNSで似た者同士が繋がる傾向にあるが、物理的にもその傾向があるようで、成蹊大学の西山隆行教授によれば、他党支持者の友人が全くいないような有権者が増大しているようだ。有権者の分極化傾向は大統領に対する支持にも明確に現れており、例えばオバマ大統領、トランプ大統領ともに、自らの政党の支持者の中では80%以上の支持を誇るものの、オバマ氏の場合は共和党支持者から10~20%程度、トランプ氏に至っては民主党支持者から10%未満の支持しか得られない状態だということだ。
 他方、激戦五州から外れるノースカロライナは、トランプ氏が辛うじて獲ったが、ヴァージニアから民主党支持者が移住して接戦になったと言われる。もともと郊外は比較的裕福な白人層が多く、共和党が強い傾向にあったが、最近は都市部から移住したり、人種も多様化したりして、民主党支持が徐々に増えつつあるようだ。共和党=赤だったところに民主党=青が混ざって紫になる「パープルリング現象」と言われる。どうやら全米規模で民主党支持者が広がる傾向にあるようで、今後を見通すと、民主党優位の州を共和党が覆すのは難しくなって行くのかも知れない。
 そんな中で登場したトランプ現象である。社会主義が崩壊した冷戦以降、共和党は自由経済を主張して小さな政府を求めるのに対して、グローバル化が進展して所得格差が拡大し、民主党が大きな政府を求めるのが大まかな対立構図だった。そのような共和・民主で色分けされた世界に、トランプ氏は、ただ大統領として勝つためだけに戦術を尽くして成り上がって来たようなところがある。彼はもとからの共和党員だったわけではなく、実際に自由貿易には背を向けるし、国境の壁建設のような公共事業を推進し、財政規律に頓着しない。白人労働者や福音派と呼ばれる宗教保守やビジネスマンをコアなターゲットにして、「みんなの大統領」になろうなんて気はさらさらない。この岩盤支持層をがっちり握って、数々のスキャンダルが持ち上がっても、揺らぐことはない。国家の安全保障すらディールの材料にしかねない、まさに不動産セールスマンらしい、稀に見る極めてビジネス・ライクな大統領だったと言える。何だかんだ言って共和党として史上最高7200万もの票を獲得したトランプ氏が投げかけた波紋は大きく、共和党がどう咀嚼して行くのか、党内の路線対立はもとより、アメリカ社会としても深刻である。打倒トランプでいったんは結集した民主党内では、バーニー・サンダース氏やエリザベス・ウォーレン女史の入閣が取り沙汰されるなど、左派が勢いづいており、バイデン氏は党内左派とトランプ的なもの(言わば白人ナショナリスト)に挟まれて苦境に立たされるかもしれない。
 なお、慶應大学の渡辺靖教授を介した孫引きになるが、ペイパル創業者ピーター・ティール氏によると、トランプ氏のことを嫌いな人は、トランプという存在自体は軽く受け止め、小馬鹿にすらしつつも、トランプ氏の一挙手一投足はいちいち真剣に受け取るのに対して、トランプ支持者は、彼の一挙手一投足はどうでもよくて、トランプという存在そのものを極めて真剣に受け止めるのだそうだ。トランプ氏は変なことも言うし、人格的にもパーフェクトではないけれど、今のインチキな社会、制度を壊そうとしている、その姿勢は本物で、自分はそこに懸けているのだ、と。これって、日本の安倍・岩盤支持層とアベガーにも当てはまるのではないだろうか(笑)。勿論、日米社会のありようも、安倍氏・トランプ氏のタイプも異なるのだが、問題はこれら支持層と反発層の間でなかなか会話が成り立ちにくいことだろう。その日米でこれら主役が交代し、The Divided States of Americaや分断された日本がどう修復されるのか、されないのか、興味が尽きない。
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祝・坂本選手2000安打

2020-11-09 20:39:55 | スポーツ・芸能好き
 昨日、巨人の坂本勇人選手が通算2000安打を達成した。アメリカ大統領選のように、あれかこれかで揺さぶられるのと違って、ただ地道にヒットを積み重ねていく作業だから、すっきりしている。しかし、途方もない数字であるのは間違いない。
 なにしろ、過去にプロはおろか甲子園にも出場出来ない野球小僧を含めて幾千万人もの中で、またプロ野球86年の歴史の中で、達成したのは53人目である。しかも31歳10ヶ月での達成は、史上2番目の若さでもある(試合数で言えば8番目)。さらに、遊撃手という激務をこなしながらの記録である。因みに過去に遊撃手のまま記録達成したのは石井琢朗氏(当時35歳)くらいで、だいたい別のポジションに移ってから記録達成したらしい。
 今年はコロナ禍のため、開幕が三ヶ月近くズレ込んだ。コロナ禍がなければ、史上最年少記録を狙える位置にあったのが惜しまれる。シーズン立ち上がりは調子が出ずにもたついたが、残り3試合で、しかもチームにとって東京ドーム最終戦に合わせて来たのは、「持っている男」故であろうか。巨人の生え抜きとしては、川上哲治、長嶋茂雄、王貞治、柴田勲、阿部慎之助に次ぐ6人目で、誰もがよく知る名選手列伝に名を連ねた。
 若い頃のエピソードが面白い(今も十分若いが)。
 田中まーくんとともに所属していた少年野球チームの監督は、「吸収がすごく早い。教えたことを、すぐに7、8割の完成度で実行できた」と振り返り、「天才肌」の坂本と「努力型」の田中という、正反対の2人が競い合うように力を磨いたという。ONのような運命を感じる(言うまでもなく一つのチーム内で切磋琢磨した「天才肌」の長嶋と「努力型」の王である)。坂本はもともと左利きだったとは驚きだが、指導者の勧めもあり、一時期、両打ちに挑戦し、どうしても飛距離で田中に勝つことができず、再び右打者に専念したのだそうだ。
 母校・光星学院高(現・八戸学院光星高)時代の恩師が、中学生時代の坂本を見たときの印象として、「身のこなしが柔らかく、『プロに行く子だな』とピンときました。ただ、かなりヤンチャだっていうんです(笑)」と語っておられる。(“更生”ならぬ)“光星”学院に野球留学すると、案の定、手を焼いたそうで、「練習をさぼることはありませんでしたが、ノックを『死ねボケ!』と言いながら返球してきたり(笑)」したそうで、2000安打を達成するまでの選手に成長した理由を聞かれて、「反骨精神ですね」と答えておられる。なるほど。
 ドラフトのときの巨人スカウトの見立ては、身体能力に優れたアスリートタイプの投手、打者としても有望で、ショートとして育ててみれば面白い、大化けする可能性は十分にある、というものだったそうだ。当時、二岡に代わる新時代の遊撃手を欲しており、また余り報道で注目されていなかったこともあって、外れ1巡目で坂本を当てたそうだ。「初めて見たのは高校1年の秋。それからずっと気になっていました。躍動感があって、魅せるものがある。特に目に留まったのは、あの独特の打席でのタイミングの取り方でした。2年秋の東北大会は初戦から決勝まで、坂本目当てで全試合を見に行ったぐらいです」とまで言わせている。
 今、巨人の野手総合コーチを務める件の石井琢朗氏は、坂本が打てる一番の理由を「彼の持っている独特の間(ま)」と表現し、武道を引き合いに出される。野球では打者は常に攻められる立場、しかも速球もあれば変化球もあり、3割打てば「勝者」で、自分が打てるポイントにいかに呼び込めるか、坂本はタイミングを取ることが抜群にうまく、石井コーチは「(投手に)合わせるんだけれども、なるべく自分の間合いに持っていく。それが彼の独特のもの」と評される。また、「間近で見て、インコースのボールに対するさばきというか、バットの出し方は天才的」だと再確認したといい、「修正能力が高い。ピッチャーに対して、おかしいなと思ったらタイミングなり、バットの持ち方も変えられる。だから大崩れしないというか、調子の悪い時期が続かない」と語られる。絶妙なバット捌きの内角打ちは彼の代名詞だ。
 そして昨日の試合後のインタビューで、「今でも、野球がうまくなりたい。どうやったらもっと打てるのか考えている。」と語った。イチローに通じる、永遠の野球小僧だ(微笑)。シーズン最多二塁打記録を持つ先輩の谷佳知氏(当時巨人)に「二塁打ってどうやって打つんですか?」と率直に質問したというし、山田哲人選手(ヤクルト)にバッティングや練習方法の話を聞き、今期、首位打者争いを演じる佐野恵太選手(DeNA)に内角打ちの考え方を聞き、オフには同学年の秋山翔吾選手(レッズ)らと野球談議を重ねるなど、好きこそものの上手と言うが、いくら天才的であっても、旺盛な探究心と向上心があってこそ、球界屈指の好打者にのぼり詰められるのだろう。やんちゃな野球小僧と言えば、清原和博氏などの愛すべき系譜に連なる(笑)。
 原辰徳監督は、次の打席で放ったバックスクリーンに飛び込む19号ホームランを、力強く3000安打に向かってスタートを切ったとして、喜んだ。日本プロ野球史上二人目の3000安打を見てみたいものだ。
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アメリカ大統領選・続報

2020-11-07 12:56:04 | 時事放談
 どうやら開票の結果ではバイデン氏が過半数を押さえそうな勢いだ(という書き方は、まだ法廷闘争が控えるという含みがある、為念)。
 トランプ氏については、アリゾナでバイデン氏を追い上げ、先行するペンシルベニア、ノースカロライナ、ジョージアで逃げ切れれば、逆転満塁ホームランとなり得る展開だったが(笑)、CNNによれば、昨晩(現地時間6日午前中)、ジョージアとペンシルベニアでバイデン氏が逆転して、「バイデン氏、過半数目前」(Biden on the brink of 270)との見出しが躍り、寝る前に「バイデン氏、過半数寸前」(Biden on the verge of 270)に変わり(私にはbrinkとvergeの違いがよく分からないが 笑)、今朝(現地時間6日夕方)、「バイデン氏、リードを広げる」(Biden's lead grows)に変わった。得票数こそ現地時間4日夕方から6日夕方まで二日間、バイデン氏253、トランプ氏213のままで動いていないが、他の中西部激戦州と同様、郵便投票の集計が進むにつれて、トランプ氏の優位が掘り崩され、共和党のシンボルカラー赤が青に変わってしまうレッド・ミラージュ(赤い蜃気楼)現象が現実化しつつあることになる。
 トランプ氏は既に現地時間4日深夜の段階で、重要州における自らのリードは「魔法のように」消えて、法廷闘争に向けて陰謀論らしきものを呟き始めた(Last night I was leading, often solidly, in many key States, in almost all instances Democrat run & controlled. Then, one by one, they started to magically disappear as surprise ballot dumps were counted. VERY STRANGE, and the “pollsters” got it completely & historically wrong!)。気持ちは分からなくはない。開票はだいたい想像の範囲で動くものだが、郵便投票を含む期日前投票が余りに多かったため、その開票の進捗によって異常な動きがあるかのように見えたのは事実だ。また、日本の総選挙では開票が始まった途端、当確が出て驚かされることがあって、それでもそこには相応の裏付けがあるものだが、今回は当確を覆すことを余儀なくされたメディアもあった。
 その後、トランプ氏は郵便投票が不正の温床として法廷闘争を訴える。確かに、私の肌感覚として、アメリカの郵便制度にしても行政サービスにしても、また(開票作業そのもののことはいざ知らず)一般に単純作業と言われるものにしても、大陸的なおおらかさと言うか、端的にいい加減さが、私たち日本人には信じられないほど多分にあって(笑)、よくもまあ大統領選挙で郵便投票が幅広く取り入れられているものだと感心する。投票日を過ぎても当日の消印があれば受け付ける州があるなど、俄かに信じ難い。しかし、アメリカの地理的な広がりや人の多様さは私たちの想像を絶するから、その緩さ加減は仕方ないことかも知れない。そして、一つの州の当落をひっくり返すとすれば、数千や数万という単位で組織的に動かす必要があるから、それほど簡単ではないように思う。
 法廷闘争にしても、保守派の最高裁判事が増えたからと言って、政治的に動くわけではなし、やはり法に忠義を尽くして判断をするはずだ(多分)。まるで法廷闘争を見越してトランプ氏が迅速にエイミー・コニー・バレット女史の判事就任に動いたかのようなリベラル・メディアの印象操作は、トランプ氏の思惑としてはその通りかも知れないが(笑)、思惑通りに行くとは思えない。SNS全盛の時代に、その申し子のようなアメリカ大統領が登場するとは夢にも思わなかったと言って早4年が過ぎるが(笑)、それはトランプ氏個人の人格的資質(中でも振舞い)に関することであって、世界最大の権力者と言われるアメリカ大統領と言えども、思い通りにならないことの方が多く、実際、彼のスキャンダラスな噂を別にすれば、トランプ政権が実行して来た政策は満更おかしいわけではない(と、だいたいにおいて私は思う)。その意味で、司法にしても立法にしても、また長としてのトランプ氏とは確執がある行政にしても、それから選挙制度にしても、システムとしてのアメリカの民主制度は信用している。
 さはさりながら、不正はないとは言い切れないのが世の常だ。法廷闘争はどうなるのか、いつになったら大統領が決まるのか、お隣の国の大統領は、今度こそ、日本を出し抜いて真っ先にアメリカ大統領に会いに行くと意気込んでいるらしいが、さてどうなるのだろうか。今、CNNのサイトを見たら、”The world waits”という見出しに変わっていた・・・
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アメリカ大統領選・速報

2020-11-05 00:58:39 | 時事放談
 CNNによると、9州を除いてほぼ大勢が決まったとされる州の投票人の数を集計すると、バイデン氏が224、トランプ氏が213と、大接戦を演じている。接戦州でポイントとされていたフロリダやテキサスをトランプ氏が落とさなかったことが寄与しているが、別の言い方をするならば、これまでのところは前回2016年の大統領選での勢力図と全く変わりがない。Real Clear Politicsはより慎重にToss Up(五分五分)を197と見て、バイデン氏216、トランプ氏125、しかしToss Upを除くと最終的に319対219になると予想している。ここまで差がつかないように思うが、バイデン氏が有利と見るのは、1億117万もの期日前投票があって(フロリダ大の教授による)、開票に時間がかかる郵便投票(総数は6500万とも言われる)で民主党員の割合が多いとされるからだ。同教授によると、投票率は67%と、過去100年で最も高くなると予測している。大変な盛り上がりだ。
 結局、カギを握るのは、ラストベルトのミシガン、ウィスコンシン、ペンシルベニアの三州になりそうだが、集計が終わって全容が判明するまで数日かかる可能性があると言われる(ペンシルベニアの郵便投票は、3日の消印有効で6日までに到着すれば受け付ける)。投票日当日の開票が終わった段階では三州ともトランプ氏がリードしていたが、翌日午前中すなわち現時点ではミシガン、ウィスコンシンでバイデン氏リードに変わった。郵便投票の開票が進み、バイデン氏が票を積み上げているようだ。保守の地盤とされて来たアリゾナでもバイデン氏がリードしており、トランプ氏としてはぎりぎりのところで、苦しい戦いを続けている。そのせいか、トランプ氏は一方的に勝利宣言し、集計停止を求めて最高裁提訴の意向とロイターが伝えた。予想通りのこととは言え、往生際が悪い(笑)。
 以上、トランプ氏が選挙戦終盤で追い上げて善戦していると言えるが、木村太郎さんが「9割、トランプが勝つと思う」と早々に当確予想されたほどではなく、依然、バイデン氏がやや有利に進めているといった状況だろうか。しかし予断は許さない。別に賭けているわけでなし、スポーツの勝ち負け予想にとどまっていては意味がないと(政策の比較をして日本への影響を考えろという意)、今朝、自衛隊の元幹部からメールでお叱りを頂いたばかりだが、いやいや、選挙って、やっぱり面白い(笑)
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