日本シリーズにかまけている間に、また、その後、燃え尽き症候群を患っている間にも(笑)、当然のことながら世の中は動いている。アメリカ大統領選での選挙不正の行方も気になるが、今日は日中関係について触れておきたい。
中国・王毅外相が24~25日の来日中、尖閣諸島について中国の領有権を一方的に主張し、日本漁船の進入禁止まで求めたとされることが物議を醸した。共同記者会見で隣に並んでいた茂木外相はニヤけたような表情で反論しなかったものだから、一部の保守派から批判に晒されたようだ。そのため加藤官房長官は、「共同記者発表が両国の外相がそれぞれ1度ずつ発言する形式だった」(産経新聞)と釈明しなければならず、「発表後、日本政府として王氏の発言は受け入れられないと中国側に申し入れた」(同)と強調したそうだし、茂木外相ご本人も27日の参院本会議で釈明を余儀なくされた。日本共産党の志位委員長は、茂木氏について「王氏の発言に何ら反論もしなければ、批判もしない。そういう対応をした」「中国側の不当で一方的な主張だけが残る事態になる。極めてだらしがない」と批判したそうだが、まさにその通りだと思う。他方で、国会は相変わらず桜と日本学術会議で盛り上がっているようで、ジャーナリストの門田隆将氏は「国会の集中審議で、尖閣問題の言及がなかったのは異常だ。主権に関わる問題意識が欠如している」「いかに中国による日本の政財官界や、メディア界への工作が浸透しているかの証左ともいえる」と述べたことにも、同意する。
もっとも、事情はあるようだ。
王毅氏が2013年3月に外相に就任して以降、日本に関する発言をほぼ逐一フォローしてきたと自負されるジャーナリストの近藤大介氏は、今回は、狼がいつの間にパンダに変身したのだろうと、逆に驚いてしまったと告白されている。共同記者会見については、王毅外相の女性通訳の日本語がたどたどしくて、「戦狼発言」のように聞こえてしまったもので、事実誤認だと言う。
王毅外相は、「今後ともわれわれは、わが国の主権を維持し、保護していく」と述べたことに続けて、以下の3点を希望するとして、「第一に、双方が『4つの共通認識』を継続して順守していくこと、第二に、およそ敏感な海域では、事態を複雑化させる行動を取らないこと、第三に、いったん問題が起こった際には、双方が迅速に意思疎通を図って、問題をうまく処理していくこと」と述べたという(近藤大介氏による)。ここに言う「4つの共通認識」は、2014年11月の北京でのAPECの際に、ついでに開催されたと揶揄された(笑)日中首脳会談に先立って、楊潔篪国務委員と谷内正太郎国家安全保障局長(当時)との間で合意されたものだ。2年5カ月ぶりの日中首脳会談は、習近平国家主席と安倍首相(当時)との間では初めてで、背景に国旗が飾られることもなく、習氏が仏頂面で安倍氏と握手した姿は、今もありありと思い出す(笑)。「4つの共通認識」は、外務省HPによると以下のものを指す。
1.双方は,日中間の四つの基本文書(注)の諸原則と精神を遵守し,日中の戦略的互恵関係を引き続き発展させていくことを確認した。
2.双方は,歴史を直視し,未来に向かうという精神に従い,両国関係に影響する政治的困難を克服することで若干の認識の一致をみた。
3.双方は,尖閣諸島等東シナ海の海域において近年緊張状態が生じていることについて異なる見解を有していると認識し,対話と協議を通じて,情勢の悪化を防ぐとともに,危機管理メカニズムを構築し,不測の事態の発生を回避することで意見の一致をみた。
4.双方は,様々な多国間・二国間のチャンネルを活用して,政治・外交・安保対話を徐々に再開し,政治的相互信頼関係の構築に努めることにつき意見の一致をみた。
(注)日中共同声明、日中友好条約、日中共同宣言、戦略的互恵関係の包括的推進に関する日中共同声明
私には、近藤大介氏が言うように狼がパンダに変身した姿が実感できないのだが、少なくとも中国がマスク外交や戦狼外交の昨今ではなく、当時の共通認識に立ち戻ろうとしていることは重要ではないかと思う。トランプ政権のもとで米中対立が先鋭化し、中国は進退窮まって、米中が対立するときほど日本に擦り寄ってくるとか、日米関係にクサビを打ち込んでアメリカを牽制しようとしているとか、いろいろワケありの日・米・中の三角関係だが、習氏は終身になったり社会監視を強化したりして中国共産党支配を強化していると言われる一方、習氏の政権基盤はそこまで盤石とは言えないと見る人もいるし、中国の対外的な強硬姿勢は対内的な弱さの裏返しだという気もする。茂木外相は、王毅外相との会談の後、互いの通訳だけを入れたサシの会談を約30分行っており、直後の会見で、「王毅外相とは電話で4回会談したが、直接話をする重要さを感じた」と述べていて、何らかの手ごたえを掴んでいそうでもある。
時事通信は、「中国内では『日本による釣魚島(尖閣諸島の中国名)の実効支配を崩したことは習近平指導部の大きな実績』(中国軍筋)という声があり、尖閣問題で日本に譲歩することは極めて困難」と伝えており、中国のサラミ・スライス戦略にはよくよく注意しなければならないが、尖閣の問題は暫く様子を見た方が良いのかもしれない。
中国・王毅外相が24~25日の来日中、尖閣諸島について中国の領有権を一方的に主張し、日本漁船の進入禁止まで求めたとされることが物議を醸した。共同記者会見で隣に並んでいた茂木外相はニヤけたような表情で反論しなかったものだから、一部の保守派から批判に晒されたようだ。そのため加藤官房長官は、「共同記者発表が両国の外相がそれぞれ1度ずつ発言する形式だった」(産経新聞)と釈明しなければならず、「発表後、日本政府として王氏の発言は受け入れられないと中国側に申し入れた」(同)と強調したそうだし、茂木外相ご本人も27日の参院本会議で釈明を余儀なくされた。日本共産党の志位委員長は、茂木氏について「王氏の発言に何ら反論もしなければ、批判もしない。そういう対応をした」「中国側の不当で一方的な主張だけが残る事態になる。極めてだらしがない」と批判したそうだが、まさにその通りだと思う。他方で、国会は相変わらず桜と日本学術会議で盛り上がっているようで、ジャーナリストの門田隆将氏は「国会の集中審議で、尖閣問題の言及がなかったのは異常だ。主権に関わる問題意識が欠如している」「いかに中国による日本の政財官界や、メディア界への工作が浸透しているかの証左ともいえる」と述べたことにも、同意する。
もっとも、事情はあるようだ。
王毅氏が2013年3月に外相に就任して以降、日本に関する発言をほぼ逐一フォローしてきたと自負されるジャーナリストの近藤大介氏は、今回は、狼がいつの間にパンダに変身したのだろうと、逆に驚いてしまったと告白されている。共同記者会見については、王毅外相の女性通訳の日本語がたどたどしくて、「戦狼発言」のように聞こえてしまったもので、事実誤認だと言う。
王毅外相は、「今後ともわれわれは、わが国の主権を維持し、保護していく」と述べたことに続けて、以下の3点を希望するとして、「第一に、双方が『4つの共通認識』を継続して順守していくこと、第二に、およそ敏感な海域では、事態を複雑化させる行動を取らないこと、第三に、いったん問題が起こった際には、双方が迅速に意思疎通を図って、問題をうまく処理していくこと」と述べたという(近藤大介氏による)。ここに言う「4つの共通認識」は、2014年11月の北京でのAPECの際に、ついでに開催されたと揶揄された(笑)日中首脳会談に先立って、楊潔篪国務委員と谷内正太郎国家安全保障局長(当時)との間で合意されたものだ。2年5カ月ぶりの日中首脳会談は、習近平国家主席と安倍首相(当時)との間では初めてで、背景に国旗が飾られることもなく、習氏が仏頂面で安倍氏と握手した姿は、今もありありと思い出す(笑)。「4つの共通認識」は、外務省HPによると以下のものを指す。
1.双方は,日中間の四つの基本文書(注)の諸原則と精神を遵守し,日中の戦略的互恵関係を引き続き発展させていくことを確認した。
2.双方は,歴史を直視し,未来に向かうという精神に従い,両国関係に影響する政治的困難を克服することで若干の認識の一致をみた。
3.双方は,尖閣諸島等東シナ海の海域において近年緊張状態が生じていることについて異なる見解を有していると認識し,対話と協議を通じて,情勢の悪化を防ぐとともに,危機管理メカニズムを構築し,不測の事態の発生を回避することで意見の一致をみた。
4.双方は,様々な多国間・二国間のチャンネルを活用して,政治・外交・安保対話を徐々に再開し,政治的相互信頼関係の構築に努めることにつき意見の一致をみた。
(注)日中共同声明、日中友好条約、日中共同宣言、戦略的互恵関係の包括的推進に関する日中共同声明
私には、近藤大介氏が言うように狼がパンダに変身した姿が実感できないのだが、少なくとも中国がマスク外交や戦狼外交の昨今ではなく、当時の共通認識に立ち戻ろうとしていることは重要ではないかと思う。トランプ政権のもとで米中対立が先鋭化し、中国は進退窮まって、米中が対立するときほど日本に擦り寄ってくるとか、日米関係にクサビを打ち込んでアメリカを牽制しようとしているとか、いろいろワケありの日・米・中の三角関係だが、習氏は終身になったり社会監視を強化したりして中国共産党支配を強化していると言われる一方、習氏の政権基盤はそこまで盤石とは言えないと見る人もいるし、中国の対外的な強硬姿勢は対内的な弱さの裏返しだという気もする。茂木外相は、王毅外相との会談の後、互いの通訳だけを入れたサシの会談を約30分行っており、直後の会見で、「王毅外相とは電話で4回会談したが、直接話をする重要さを感じた」と述べていて、何らかの手ごたえを掴んでいそうでもある。
時事通信は、「中国内では『日本による釣魚島(尖閣諸島の中国名)の実効支配を崩したことは習近平指導部の大きな実績』(中国軍筋)という声があり、尖閣問題で日本に譲歩することは極めて困難」と伝えており、中国のサラミ・スライス戦略にはよくよく注意しなければならないが、尖閣の問題は暫く様子を見た方が良いのかもしれない。