1959年にチェ・ゲバラとともにキューバ革命を主導・成功させ、半世紀にわたりキューバの社会主義政権を率いた「革命の英雄」フィデル・カストロ前・国家評議会議長が25日、死去した。享年90。
反米主義を貫き、ロシア・プーチン大統領は「この卓越した政治家の名は、時代の象徴として現代史に刻まれている」「彼とその仲間が築いた自由で独立したキューバは、多くの国々の手本となった」と称賛し、中国・習近平国家主席は「われわれの時代の偉大な人物だった」との弔電を、北朝鮮・金正恩朝鮮労働党委員長は「社会主義制度を樹立し、国の富強繁栄と人民の幸福のために全生涯をささげた卓越した指導者だった」との弔電を、シリア・アサド大統領は「数十年にわたり帝国主義と戦った偉大な指導者」との弔電を、それぞれ実弟のラウル・カストロ国家評議会議長宛に送ったらしい。他方、54年振りに国交回復を実現させた米・オバマ大統領は、米国在住の亡命キューバ人にも配慮しつつ、「一人の人間が周囲の人々と世界に与えた大きな衝撃が歴史に刻まれ、評価が下されるだろう」とやや好意的に語ったが、トランプ氏に至っては「自国民を60年近く抑圧した残忍な独裁者」と批判し、キューバは依然として「全体主義の島」だと指摘、死去で「キューバ人が長年の恐怖から脱し、自由を謳歌する未来へと進むことを望む」とのコメントを発表したらしい。相変わらず激しいなあ・・・。
フィデル・カストロ氏の革命闘争はもとよりリアルタイムに知らないし、気がついたらキューバの顔だっだのだが、革命の世紀と言われた20世紀を代表する人物であり、また一つ、生きる伝説が歴史になってしまったという印象があって、感慨深い(以下、歴史的人物として呼び捨てにする)。
もっとも革命と言っても、今の若い人にはピンと来ないだろう。私の世代でもピンと来ないか何とはなしにおどろおどろしさがつきまとうが、チェ・ゲバラの伝記を読むと、純粋に社会主義に傾倒した側面はあったもののソ連をも帝国主義的と呼んで政権の方針と合わずキューバを去るに至った、その理想主義と民族主義にはつい同情的になってしまったこともあって、観念的でありまた今となっては無責任であることをも許してもらえるなら、当時の騒然とした時代背景とともに革命ロマンチシズムのようなものを懐かしむ。キューバ革命の成功は、戦術の専門家ゲバラと戦略の専門家カストロが手を組んだ結果と言われる。ゲバラはスペイン・バスク系とアイルランド系のアルゼンチンの両親の裕福な家庭に生まれて医者になり、カストロはキューバ東部ビランのスペイン移民で裕福な農場主の子に生まれて弁護士になった。本来なら体制側と言ってもおかしくない職業に就いた二人だが、親米バティスタ政権打倒を目指し武力闘争を開始したのだった。ゲバラの理想主義も大したものだが、カストロも、歴史上どの社会主義国も独裁に陥り腐敗しているのに対し、腐敗を遠ざけ、私利私欲に振り回されない潔よさがあり、個人崇拝をも嫌い、今もキューバには、ゲバラを讃えるモニュメントはあっても、カストロ自身を含め存命中の人物のモニュメントは存在しないという。冷戦後の経済運営は困難を極めたようだが、フロリダから僅か150キロ離れたカリブ海に浮かぶ島ながら、良くも悪くもアメリカナイズされることなく、街並みそのままに、50数年前のまま時間が止まっているかのようだ。遅れた国と言うのは簡単だが、20世紀半ばのロマンがなお残っている気がする。
そんなキューバも、カリスマが去って、間もなく時計の針は動き始めるのだろう。私自身は社会主義とは相容れないが、グローバルと言われる時代だからなおのこと、願わくば、少しずつ、少しずつ、ゲバラやカストロの理想主義の思いの残るお国柄であり続けて欲しいと思うのは、わがままでナイーブに過ぎるだろうか。
反米主義を貫き、ロシア・プーチン大統領は「この卓越した政治家の名は、時代の象徴として現代史に刻まれている」「彼とその仲間が築いた自由で独立したキューバは、多くの国々の手本となった」と称賛し、中国・習近平国家主席は「われわれの時代の偉大な人物だった」との弔電を、北朝鮮・金正恩朝鮮労働党委員長は「社会主義制度を樹立し、国の富強繁栄と人民の幸福のために全生涯をささげた卓越した指導者だった」との弔電を、シリア・アサド大統領は「数十年にわたり帝国主義と戦った偉大な指導者」との弔電を、それぞれ実弟のラウル・カストロ国家評議会議長宛に送ったらしい。他方、54年振りに国交回復を実現させた米・オバマ大統領は、米国在住の亡命キューバ人にも配慮しつつ、「一人の人間が周囲の人々と世界に与えた大きな衝撃が歴史に刻まれ、評価が下されるだろう」とやや好意的に語ったが、トランプ氏に至っては「自国民を60年近く抑圧した残忍な独裁者」と批判し、キューバは依然として「全体主義の島」だと指摘、死去で「キューバ人が長年の恐怖から脱し、自由を謳歌する未来へと進むことを望む」とのコメントを発表したらしい。相変わらず激しいなあ・・・。
フィデル・カストロ氏の革命闘争はもとよりリアルタイムに知らないし、気がついたらキューバの顔だっだのだが、革命の世紀と言われた20世紀を代表する人物であり、また一つ、生きる伝説が歴史になってしまったという印象があって、感慨深い(以下、歴史的人物として呼び捨てにする)。
もっとも革命と言っても、今の若い人にはピンと来ないだろう。私の世代でもピンと来ないか何とはなしにおどろおどろしさがつきまとうが、チェ・ゲバラの伝記を読むと、純粋に社会主義に傾倒した側面はあったもののソ連をも帝国主義的と呼んで政権の方針と合わずキューバを去るに至った、その理想主義と民族主義にはつい同情的になってしまったこともあって、観念的でありまた今となっては無責任であることをも許してもらえるなら、当時の騒然とした時代背景とともに革命ロマンチシズムのようなものを懐かしむ。キューバ革命の成功は、戦術の専門家ゲバラと戦略の専門家カストロが手を組んだ結果と言われる。ゲバラはスペイン・バスク系とアイルランド系のアルゼンチンの両親の裕福な家庭に生まれて医者になり、カストロはキューバ東部ビランのスペイン移民で裕福な農場主の子に生まれて弁護士になった。本来なら体制側と言ってもおかしくない職業に就いた二人だが、親米バティスタ政権打倒を目指し武力闘争を開始したのだった。ゲバラの理想主義も大したものだが、カストロも、歴史上どの社会主義国も独裁に陥り腐敗しているのに対し、腐敗を遠ざけ、私利私欲に振り回されない潔よさがあり、個人崇拝をも嫌い、今もキューバには、ゲバラを讃えるモニュメントはあっても、カストロ自身を含め存命中の人物のモニュメントは存在しないという。冷戦後の経済運営は困難を極めたようだが、フロリダから僅か150キロ離れたカリブ海に浮かぶ島ながら、良くも悪くもアメリカナイズされることなく、街並みそのままに、50数年前のまま時間が止まっているかのようだ。遅れた国と言うのは簡単だが、20世紀半ばのロマンがなお残っている気がする。
そんなキューバも、カリスマが去って、間もなく時計の針は動き始めるのだろう。私自身は社会主義とは相容れないが、グローバルと言われる時代だからなおのこと、願わくば、少しずつ、少しずつ、ゲバラやカストロの理想主義の思いの残るお国柄であり続けて欲しいと思うのは、わがままでナイーブに過ぎるだろうか。