風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

ガラパゴス

2009-12-12 01:05:19 | 日々の生活
 昨日は、私が海外駐在していた時のアジア大洋州事業について触れました。何のことやらワケがわからなかったと思いますが、要は、事業撤退することになり、シドニーには僅か一年滞在した後に、オフィスを閉めて、日本に帰国したのでした。事業撤退の原因はいろいろ考えられますが、私の会社に特殊・特有の話をしても面白くないので、一般化して話してみます。
 最近、日本のエレクトロニクス産業はガラパゴス化しているという言い方をよくされます。ガラパゴス島はエクアドル本土から西に約900km離れた南太平洋上の島で、19世紀はじめ、ダーウィンがビーグル号に乗って訪れ、進化論の着想を得ることになったことで知られます。この島は、大陸と隔絶されている上、天敵になるような大型の哺乳類が存在せず、独自の進化を遂げた固有種が多く存在しています。同様に、現代社会においても、隔絶されて独自の進化を遂げ、結果として世界の発展から取り残された市場や地域のことをガラパゴスと呼ぶわけです。典型的な例は、日本で、主にNTTのお蔭で特異な発展を遂げた携帯電話機市場です。
 世界、とりわけアジア大洋州では、新しモノ好きを反映して最先端の高性能部品を使った、しかしシンプルな機能で安い商品がよく売れるのに対して、日本では、一般に日本の顧客は高機能志向であると信じられており、高機能商品を次から次に繰り出して日本の顧客を囲い込む日本のメーカーとが相俟って、高機能で高価格の商品がよく売れます。割りを食っているのは、単機能商品による市場参入を阻止されている外敵(外国メーカー)ではなく、日本の顧客だと言えます。その結果、こうした商品領域では、日本メーカーが日本の市場シェアの上位を占め、日本市場は世界の趨勢から完全に取り残されています。このような日本市場に最適化された商品をアジア大洋州市場に持ち込んだとしても、競争力がなく、ジリ貧になったのでした。
 先日、ある雑誌を読んでいると、寿司は日本オリジナルでありながら、Sushiとして世界中に広まった数少ない銘柄ですが、ハンバーガー業界におけるマクドナルドのような看板企業が、Sushi業界にはないのは何故か?というような問いかけを見かけました。寿司はオリジナルを越えて、世界市場で特異な発展を遂げ、Sushiと言えばかつてのカリフォルニア・ロール、最近ではスパイシー・ツナ・ロールとかスパイダー・ロール、レインボー・ロールなどのイカガワシイ巻き物が中心で、日本人の私たちにとっては邪道と呼びたいほどですが、客観的に見ると話は逆で、日本人が本来の寿司にこだわっている間に、世界の大勢から完全に取り残されているというわけです。いずれアメリカあたりからSushiの世界のマクドナルドが出現するかも知れません。
 今日のニュースで、亀井さんは、郵政事業のことを明治以来の国民の財産と呼び、それがズタズタにされていると憤慨していましたが、E-Mailなどの普及で郵便事業は縮小傾向ですし、銀行・保険などの分野で民業を圧迫しているのが真実の姿であって、これもまた特異な発展を遂げてガラパゴス化しかねない事業と言えます。
 食は文化で、平準化する必要はさらさらなく、寿司は守るべきだと思いますが、日本自体がガラパゴス化しかねない状況は憂うべきところです。
 大陸と隔絶されて特異な進化を遂げていると言えば、オーストラリアの有袋類もそうです。上の写真は、オーストラリア・ブリスベンのコアラ園で。
コメント
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