風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

新型肺炎のこと

2020-01-31 23:34:59 | 時事放談
 昨日、世界保健機関(WHO)がようやく国際的な公衆衛生上の緊急事態を宣言した。
 2009年4月の豚インフルに対する緊急事態宣言が最初らしく、話は脱線するが、あの頃のことは鮮明に記憶している。当時、シドニーに駐在していて、6月の帰国を前に、ウルルへの最後の家族旅行の予約をしていた。所詮、冬の北半球のことは他人事のように眺めていたからだが、冬に向かう南半球のオーストラリアにも広がり始めて、焦った。オーストラリアは有袋類などの希少動物が生息する絶海の孤島とは言え、ウルル(エアーズロック)は有名な観光地で、人が集まる。ぎりぎりまで迷った末、人口密度が極端に低いところであることから、移動の機内のみ留意することにして、医療関係者を知人にもつ同僚に洗浄液を分けて貰って、覚悟して出かけたものだ。それはともかく・・・
 その後、エボラ出血熱やジカ熱などでも緊急事態宣言が出たが、遠く離れた土地のこと故、日本人には馴染みが薄い。6度目の今回は、お隣の中国が発症源だから、他人事ではない。しかも、フランスのルモンド紙によれば、WHOが22~23日の緊急委員会で緊急事態宣言を見送ったのは、中国代表が「宣言は問題外」だと強く主張し、同調する国も出てきたためで、同紙は「中国の強い反対を受け、政治的配慮が科学論議に勝ったようだ」と評価したと、日経や産経が報じた。エチオピア人のWHO事務局長は、祖国に鉄道建設など多額の投資をしてくれる中国を忖度したのか、まさかこんな緊急事態でも中国お得意のシャープ・パワーが炸裂することになるとは・・・
 さらにロイターの29日付の記事「新型肺炎はなぜ広がったか、検査受けられない武漢の実態」を読むと、権威主義国家・中国の国内のガバナンス(ガバメントと言うべきかも知れない)の脆弱性が問題を大きくしているのを感じさせる。ウィルスの遺伝子情報を迅速に解読し、大胆にも過去最大規模の「検疫・隔離作戦」により湖北省の感染地域を封鎖し、感染者の治療のため2カ所に新たな病院を建設中で、感染拡大に対処するため特別委員会を創設するなど、「頭脳」たる共産党中央は強権発動して、それなりに機能しているように見えるが、「末端」たる現地では検査キットや医薬品が不足して検査や治療が遅れ、何より、市長の言動は省政府ひいては国家首脳から厳しく制限されているため、情報管理や住民への対応が後手に回っているという。ロイターは、管理職レベルの市職員は党レベルの上司に問題を持ち込もうというインセンティブが殆ど働かない上、湖北省で新規のウイルス感染例が報告されなかった週は、春節への準備や全国人民代表者会議・中国人民政治協商会議に向けた湖北省内の会議の時期に当たっていたと、中国のお役所仕事の無能ぶりをも批判する。確かに習近平政権で反腐敗運動が始まってからは地方の党職員の間にサボタージュが広がっていると、かねて懸念されていた。アメリカと技術覇権を競うのはいいが、自由・民主主義国家には当たり前のエコ・システム的な発展は見当たらず、公衆衛生などの社会インフラ整備が後れたイビツな国家資本主義社会の弱点が曝け出されたような感じだ。
 そればかりではない。
 何かとSARS(2002~03年)と比較される今回の新型肺炎だが、SARSの時は、時の中国政府による情報隠匿があったため、広東省で最初の感染者が見つかってからWHOが新型コロナウイルスと断定するまで実に4カ月を要したのに対し、今回は患者発生からおよそ1カ月で新型ウイルスのゲノム情報が世界の科学者に公開されたのは大きな進歩だと言わんばかりである。
 もう少し詳しく見ると、武漢で最初の感染者のケースが非公式にネットで伝えられたのは12月8日頃のことだったが、当局は秘匿し続け、中国の官営メディアが初めて報道したのは1月9日のことで、習近平国家主席が突然、登場し、中国発「新型コロナウイルス」に関する発表を行ったのは春節直前の1月20日のことだったという。最初の発生から40日以上が経過していたのを、果たしてよしとするのかどうか。SARSの頃と比較すると、経済規模は格段に大きく、新幹線や高速道路はそこいら中に張り巡らされ、人の移動が格段に多くなったリスクを考慮すべきだろう。武漢市を中心に封鎖に踏み切ったときには、その三週間前から春節の移動が始まっていたために、武漢市の人口1100万人のうち既に500万人が脱出し(他方、300万人が入ってきて、計900万人いる)、日本にも1万人が訪問していたと言う。なんという間の悪さであろう。
 中国4000年の歴史を振り返ると、王朝交代の動乱のたびに人口が激減すると歴史家が紹介するのは、異民族による大量虐殺が行われる大陸の激しい土地柄とともに、支配者を信用しない人民は蜘蛛の子を散らすように四方八方へとさっさと逃げる地続きの大陸的特性によるものだったのではないだろうか。
 ここから先は(私の好きな!?)陰謀論である(笑)。1月24日付のワシントン・タイムズは、今回のコロナウイルスの発生源は武漢市にある国立の病源体研究機関(武漢国家生物安全実験室)の可能性があると報じたらしい。ジャーナリストの福島香織さんも、このラボは中国科学院と武漢市の共同建設ということになっているが、実は人民解放軍系の施設とみられ、当初計画で設計を請け負うのはフランスの会社だったところ、最終的に解放軍系の企業が請け負ったもので、2017年2月の英科学誌「ネイチャー」で、米国のバイオ・セイフティ・コンサルタントのティム・トレバン氏が、中国の官僚文化の伝統からみてこのラボは安全ではないと警告していたという。中国当局が新型コロナウイルスを最初に発見したとする海鮮市場からほんの30キロほどの距離にあり、2017年に完成してからは、毒性の強いエボラ出血熱やニパウイルス感染症などのウイルス研究にあたってきたらしく、ワシントン・タイムズによれば、中国の生物(細菌)兵器に詳しいイスラエル軍事情報機関の専門家ダニー・ショハム氏への取材をもとに、(1)同ラボは中国人民解放軍の生物戦争のための兵器開発に関与していた、(2)同ラボは今回のコロナウイルスの研究にも関わっていた可能性が高い、(3)同コロナウイルスが人間への接触で同実験室から外部に流出した可能性がある、などと報じたという(古森義久氏による)。この陰謀論は、私だけでなく誰もが心の奥底に一抹の疑惑として抱いているに違いない(苦笑)
 その当否はともかく、日本国政府として、武漢在留邦人の救出を決断するのは早かったが、その後の対応には詰めの甘さが見える。ハンセン病患者隔離で批判を浴びたトラウマがあると指摘する声もあるが、過去に囚われていていいはずはない。折しも監視社会で情報隠匿ばかりか情報統制が強まってきた中国で発生したことで、情報は余りアテにならないと思った方がいい。私たち個人、国家、国際社会がそれぞれの立場で「正しく恐れて」(とは、東日本大震災の際に福島原発で発生した放射線漏れに対して使われた言葉で、私も肝に銘じている言葉)、適切に対処しないと、東京オリンピックどころではなくなってしまうことを恐れる。
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お相撲さん

2020-01-29 22:53:41 | スポーツ・芸能好き
 記憶にないほど幼い頃に先代・豊山を応援していたらしいから、相撲歴はゆうに50年を超え、実年齢に近いほどだが、もはやただの伊達に・・・徒に年数を重ねるだけになってしまった。最近は知らない力士が多くて、豪栄道が引退することにそれほど感慨が湧かないし、あれよあれよという間に優勝してしまった徳勝龍にも唖然とするばかり。引退した豪栄道(大関)や稀勢の里(横綱)と同い年の「花のロクイチ組」(昭和61年生まれ・・・最高位関脇の経験者に至っては実に6人もいる)の一人で、33歳というから遅咲きの初優勝だ。
 ニュースでダイジェストを見て思わずほっこりした。結びの一番で大関・貴景勝を破ると、人目をはばからず号泣し、優勝決定直後のインタビューでは、いきなり「自分なんかが優勝していいんでしょうか」と言い放ち、(場所中、優勝争いへの意識について「ないです」「自分は一番下なので」と繰りかえすだけだったのに)いざ優勝を決めたら「(優勝は)意識することなく・・・嘘です、めっちゃ意識していました」「バリバリインタビューの練習しました」と本音をぽろぽろ。なんと控えめで素直で初々しいことだろう。福福しい顔立ちに、くしゃくしゃの笑顔がまたいい。あんこ型の、絵に描いたようなお相撲さんである。
 平成21年の初土俵から丸11年間一度も休場がないのは素晴らしいが、相撲にムラがあって、幕下で足踏みしていた頃、一時期師匠だった北の湖に、「突き押し」から「左四つ」に転向するよう助言されてようやく関取に定着する力士へと躍進し、優勝を決めたのも「左四つ」からの寄り切りだった。それにしても今場所・千秋楽では、「幕尻」力士として大相撲史上初となる「これより三役」に登場し、更に「幕尻」力士として大相撲史上初となる千秋楽結びの一番に登場して大関・貴景勝と対戦するという、異例の事態となった。「幕尻」での優勝は平成12年春場所の貴闘力以来20年ぶり史上2人目の快挙であり、33歳5カ月での初優勝は年6場所制となった昭和33年以降3番目の年長で、日本出身力士としては最年長であり、奈良県出身力士としての優勝は98年ぶり2度目であり・・・と珍しい記録が並ぶ、不思議な星の下に生まれた。
 他方、横綱審議委員会は、序盤戦で途中休場した白鵬と鶴竜の両横綱に奮起を促すとともに、白鵬のプロレス技のような「かち上げ」について、「ルール違反ではない」としつつも「大関以下がそういう技を使うのと違う。より高い基準で自分を律して臨んでほしい」と改めて苦言を呈したらしい。横審は相変わらず奥歯にものの挟まったような遠回しな言い方をするが、親方ははっきりと、とても相撲技には見えない、相撲は格闘技ではない、中でも横綱は勝ちっぷり(負けっぷり)に真価が問われる存在であって、ただ強ければいいとか勝てばいいという心掛けは間違っている、何故なら相撲は様式美を尊ぶ伝統芸能だから、と厳しくたしなめるべきだ。
 この人もお相撲さん、あの人もお相撲さん・・・勝ち負けが全てじゃないという世界は、理解されにくいだろうことは分からないではないのだが。
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陰謀論

2020-01-25 23:24:22 | 時事放談
 私はまあまあ陰謀論が好きだ(笑)。学生時代にはフリーメーソンとかユダヤが皇室に繋がるとかいったトンデモ本に近いものを楽しんだものだ。しかしそれを信じるかどうかは別次元の話だ。知人の一人は国際情勢を何でも国際ユダヤ資本の陰謀に結び付けるので閉口している。物事には実体(ビジネス)とカネ(金融)の両側面があり、表裏一体なので、金融から見たビジネスの陰謀ストーリーを描けないことはない。それは否定しないが、ビジネスの主体の意思を軽視してもらっては困る。というわけで陰謀論は、それこそ成吉思汗は実は源義経だったといった類いのエンターテインメントの一つだと思うことにしている。もっとも断片的な事実は否定しないから、頭の中で、「事実」として記憶するでもなく、「虚偽」として捨象するでもなく、「保留」ボックスに入れて区別して保存している(笑)
 このブログで陰謀論とタイトルして書こうとしているのは、例えばIR疑惑だとか、あるいは三菱電機がサイバー攻撃を受けたことを半年以上も公表しなかったことに対して、まるで昭和の政治家を彷彿とさせる政治腐敗だとか、責任ある情報公開にはほど遠い閉鎖的な企業文化だと、批判するのは結構だが、それだけではないだろうと思っているからだ。というのは、いずれも仕掛けたのは中国という共通項がある。そうは言っても、所詮は言わば「保留」ボックスに入れて確信は持てないが留意すべきと思っている私の「妄想」の類いに過ぎない(笑)
 IRに関しては、政治家の責任は言うまでもないが、オーストラリアでさんざん報道されているように、中国による外国の政治家などへの不公正なアプローチという側面をも見逃すべきではないだろう。
 三菱電機に関しては、「機密性の高い技術情報や取引先に関わる重要な情報は流出していない」と公式発表し、いまのところ「被害や影響は確認されていない」としている。防衛装備品の分野で、火器管制レーダーの「J/APG-2」や長射程空対空ミサイルに搭載するアクティブ・フェーズド・アレイ(AESA)レーダーなど、存在感を示す同社だが、幸いにも世間では悪名高い(!?)「特定秘密保護法」のおかげで、某社では、こうした機密情報に接する社員を厳密に制限し(セキュリティ・チェック)、ネットワークからも遮断するといった厳重な体制を敷いていると聞いており、三菱電機でも同様の措置が講じられているであろうことが想像される。問題は、採用応募者や従業員、グループ企業の退職者ら最大で8122人分の個人情報が流出した可能性がある、という問題の方である。
 中国に関しては、米中対立の中で「中国製造2025」が注目された。ドイツが言い始めたインダストリー4.0を担う基幹技術を国産化するという野心的な試みで、例えば産業のコメとされる半導体については、2025年に70%の国産化を目標としている。ところが現実は生易しいものではなく、半年ほど前に聞いた話によると、世界の工場・中国で使用される半導体の8割方は他国からの購入品だという。とてもじゃないが2025年の目標は達成されない(が、中国共産党の統治に誤謬があってはならない)というので、先月の日経によれば、ここ数年、台湾の世界的な半導体メーカー・台湾積体電路製造(TSMC)に対して高待遇をちらつかせて引き抜いた管理職や技術者は、台湾の経済誌「商業周刊」によれば3千人に及ぶというし、こうしてカネで買うか、窃取することに余念がないと見られている。
 他方、アメリカは、2017年12月の国家安全保障戦略で明らかにしたように、ロシアと並んで中国を、技術、宣伝、および強制力を用いながら、米国の国益や価値観と対極にある世界を形成しようとする修正主義勢力と断じ、翌2018年8月の国防権限法2019では、中国を念頭に、機微技術管理を強化することを法制化し、昨年5月の大統領令では、情報通信技術やサービスなどのサプライチェーンを保全することを宣言した。この大統領令では、中国を名指しはしなかったが、「敵対勢力」は、機密情報が行き交い、重要な社会インフラを支える情報通信技術やサービスの脆弱性を突こうとしていること、こうした「敵対勢力」の息がかかった情報通信技術やサービスを使うことは、国家安全保障上の脅威となり得ること、情報通信技術分野でのオープンな投資環境を維持することはアメリカの経済成長や繁栄にとって重要だが、安全保障とのバランスを考慮しなければならないこと、をその前文で謳っている。アメリカでは、いわゆる防衛装備品の中に、中国製部品が採用されていたり、中国が牛耳るレア・メタルに依存していたりするのは、危険だと報じられており、さらに国防総省は、中国の国家ぐるみのダンピング、公的補助金、さらに知的財産窃取を含む略奪的慣行が、アメリカの国防産業基盤を崩壊させかねないことを懸念している。国防権限法2019の中で示した台湾へのコミットメントは、戦闘機やミサイルを売り込むという(それによって中国をイラつかせているという)トランプ流の商法ではなく、今や世界の半導体製造基盤となった台湾を、アメリカの重要なサプライチェーンを構成するものとして保全する、という文脈で理解すべきだと思っている。アメリカ政府が、先の半導体メーカーTSMCに対して、アメリカ国内で生産するよう圧力をかけていると報じられているのはその証左だろう。
 回り道になったが、三菱電機は、2000年代初めに半導体産業から撤退したとされる日本にあって、随一の半導体製造基盤を今なお有し、窒化ガリウム(GaN)を使った電子機器では世界トップクラスの技術力を持ち、中国の垂涎の的である。私が懸念するのは、中国がこの分野の技術者を狙っているのではないかということである。三菱電機の個人情報の流出、もっと言うと、同社のパワハラ問題(それによる従業員の動揺や心の離反)だって、この流れに位置づけられるのだとすれば、恐ろしいことだ。いや、私の単なる妄想に過ぎないということにしておこう。
 ところで、三菱電機のサイバー攻撃被害をスクープしたのは朝日新聞だが、関連する記事はことごとく有料会員限定に指定されており、私のような貧乏人には肝心の後半部分が閲覧できない。社会の公器を自任する全国紙には、公共性の高い(と言ってしまえば全てそうだと反論されそうだが)記事を無料公開してもらえないものだろうか・・・
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時代精神

2020-01-19 20:45:19 | 日々の生活
 学生時代、加瀬俊一という外交官の著作を何冊か読んで、外交官に憧れたことがある。振り返れば私が人生で希望した唯一の職業になるが、歴史叙述と自伝がごちゃまぜになったそれらの著作は、裏方として国家を背負い歴史を紡ぐ外交官の使命を華々しく印象付けて、学生を惑わせるに十分だったわけだ(笑)。その息子さんの英明さんが、あるエッセイで、明治女性の粋な美しさを讃えておられる。

(引用)
 先の戦時中、私は外務省の少壮幹部だった父を東京に残して、母と長野県に疎開したが、空襲下で、か津(注 父方の祖母)が父の面倒をみた。
 戦争が敗戦に終わって、9月2日に東京湾に浮ぶ敵戦艦ミズーリ号艦上で、降伏調印式が行われた。父は全権団の随員として、甲板を踏んだ。敵将マッカーサーが傲然と立つ前で、重光葵全権が万涙を呑んで調印するわきに立っているのが、42歳だった父だ。
 父はその前の晩に、か津に降伏調印に随行することを告げた。か津は父を正座させると、「私はあなたを恥しい降伏の使節として、育てたつもりはありません。行かないで下さい」と、凛としていった。
 父はこの手続きを経ないと、日本が立ち行かなくなると、恂々と説明した。しかし、か津は承知しなかった。「わたしは許しません」といって立つと、隣室へ行って父のために翌朝の下着や、服を整えはじめた。衾ごしに泣きじゃくる声が、低く高く聞えた。
 私は10月に父の借家に戻った。か津は私を正座させると、「英明さん、この仇はかならず討って下さい。約束して下さい」といった。私はいまでも、この教えを大切にしている。
(引用おわり)

 女性はもともと気丈なものだという願望のような思い込みがあって、感動を新たにするとともに、別のこと・・・明治の(あるいは戦前の)時代精神を思い、胸が熱くなった。先の戦争について、そもそも無謀だったとか、特攻精神だとか捕虜を恥とみなす時代がかった考え方だとか、現代の私たちが批判するのは容易いことだが、当時の人たち(とりわけ庶民)がどんな思いで戦っていたのかを垣間見ると、私には簡単に批判できなくなる。
 東洋の離れ小島の日本が、食うか食われるかの帝国主義の時代に開国させられ、そこに住まう素朴主義の日本人が、いきなり世界の荒波に放り出され、必死にもがいて生き残りを図った前史があってこその大東亜戦争だったとの思いを強くするからだ。それを、満州事変以降を「15年戦争」と恣意的に切り取り、侵略的だったと一方的に裁くことの愚かさ(やり過ぎたところがあったのは事実と思うが)。その反動から、戦後はすっかり骨抜きになって、脅威に対する認識が乏しく、危機に対する感度を鈍らせてしまったことの恥ずかしさ。それが平成・令和の時代精神だと割り切ってもよいものだろうか。
 戦後レジームが今なお続く現代に、それを覆すような言説が如何に危険かは、第二次安倍政権が発足後、間もなく、中・韓のみならず、アメリカからもその保守的性格を警戒されたことからも窺える。しかし、政治的主張はともかくとして、一般国民レベルでしっかりした歴史認識を持たないことには、これからの難しい時代を生き抜く自立的な国家構想を描くのは難しいのではないかと、自戒をこめて、ちょっと絶望的になってしまう。災害対応を見る限り、日本人の底力は信じているのだが・・・。
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白鵬の休場

2020-01-17 01:06:01 | スポーツ・芸能好き
 実のところ、白鵬が休場しようがどうしようがお構いなしのところだが、今回は二日目に遠藤に、外掛けからの切り返しで背中から土俵に叩きつけられ、金星を献上した後のことだったので(さらに三日目には妙義龍にも敗れて、二日連続で金星配給)、些か感慨深い。その遠藤との取組みについては、YouTubeでためつすがめつ繰り返し眺めて、爽快感に浸った。なんとさもしい根性だろう(笑)
 もちろん、先場所の対戦のことが伏線としてある。あのとき白鵬は、すっかり悪名高くなった「かちあげ」と言うよりプロレス技の「エルボー・スマッシュ」のように右肘で遠藤の顔面を打ち抜き、更に左右から荒々しく張って、土俵に沈めた遠藤から鼻血が滴り落ちたほどだった。大の横綱が、いくら勝負へのこだわりがあるとは言え、格下相手にむごい仕打ちをするものだと、すっかり興醒めてしまった。むろん、それは白鵬にとって初めてのことではなく、何度指摘されても言うことを聞かない、またか、という話である。それだけに、今場所の遠藤の奮闘には拍手喝さいを送ったのだった。
 白鵬の「かちあげ」は議論があるところだ。特にスポーツ評論家と名の付く方は、反則技ではない以上、横綱が正当な技を繰り出してどこが悪い、使わせたくないなら禁止にしろ、それを横綱の品格などと前近代的なことを言って否定する大相撲に将来はない、モンゴル力士は大相撲の救世主であり恩人なのに、などと言いたい放題である。しかし、このブログで何度も言ってきたように、大相撲はスポーツでも格闘技でもなく、神前で行われるがごとく、様式美を尊ぶ伝統芸能だ。白鵬の「かちあげ」と称される技は、相手の身を起こす相撲技ではなく、打撃目的のプロレス技であって、似て非なるもの。最高位の横綱が格下相手においそれと使うものでは毛頭ない。それはモンゴル人であろうが日本人であろうが関係ない。横綱は横綱らしく、相手に技をかけさせるくらいの余裕をもって、どーんと受け止め、それでも美しく勝つ勝ちっぷり、あるいは潔い負けっぷりの、品格ある相撲が求められる。前近代的で結構、それで廃れるなら仕方ないとも思う。
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青梅への道(2)

2020-01-15 00:07:48 | 日々の生活
 個人的なことになるが、週一ランナーを自称する私は、4日に走り初めをし、この週末に二度目の練習をしたが(正確には二日続けて走ったので、三度目も)、正月の不摂生が尾を引いているのか、どんよりと身体が重く、幸先の悪いスタートとなった(苦笑)。
 12月半ばに、知人と皇居回り三周、約15キロのミニ大会に参加した。毎年恒例にしているもので、今回は大嘗祭という大切な皇室行事があったため、通常10~11月のところ、このタイミングにズレ込んでしまった。そのため、いつもなら15キロという長い距離の言わばシーズン走り初めとなるところ、シーズン中盤にさしかかり、例年以上に身体が出来上がっていて(などと偉そうに言うが、半年ぶりに練習を再開して二ヶ月間、9回走り込んだだけ)、1時間26分強と、これまでのベスト・タイムで(と自慢できるほどではさらさらないが)、自分なりには比較的楽に走ることが出来た。そこまでは良かったのだが、年末年始の休みで油断して、どうやら元の木阿弥である。
 秘策は・・・ないよねえ・・・
 正月の箱根駅伝でも、ナイキのピンクの厚底シューズが目立った。そのお陰だとつい思ってしまう区間新記録が続出した(10区間中、実に7区間)。青学大の原監督は「大学生のレベルが上がった」と言われるが、東海大の両角監督は「総合的なものの向上」と、靴の影響も認めるような発言をされ、駒大の大八木監督に至っては「靴で全然変わってくる」と断言された。選手の間からも「推進力はあると思う。履いている人でも成績に差があり、履きこなす練習をしてきた選手が結果を出している」「股関節に(反発が)ダイレクトに来るので、鍛えないで履くとケガをする。人によっては両刃の剣」などの声が聞かれたようだ(産経電子版)。
 この靴には大いに惹かれるものがあるが、素人が最先端テクノロジーを駆使した靴を活かせるわけでなし、もっと基本的なところで改善すべきことがあることは分かっている。そもそも週一(大会前は週二にしているが)のズボラな性分を、年相応にあらためなければならないのではないかと、最近、さすがに反省している。
 あと一ヶ月半、今年も試行錯誤は続く。
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台湾総統選

2020-01-12 21:48:17 | 時事放談
 11日の総統選では、下馬評通り現職の民進党・蔡英文総統が再選を果たした。台湾では出口調査が禁じられているため詳細は不明だが、74.9%という高い投票率のもと、過去最多の817万票を獲得したらしい。苦戦が予想され所謂「ねじれ国会」が懸念された立法委員選でも、民進党は過半数を維持して、ほぼ完勝と言ってもよいだろう。香港問題が後押ししたのは間違いないが、もう一つ、米中摩擦の文脈でコメントしたい。
 米中摩擦について、トランプ大統領ご本人は貿易赤字の改善にしか興味がないかも知れないが(笑)、技術覇権(ひいては軍事覇権)を巡る争いが本質であることはもはや明らかである。たとえば、アメリカの国防権限法2019(一昨年8月に成立)に併せて成立した輸出管理改革法では、Emerging and Foundational Technologiesの管理を強化して行くことが謳われた。Emerging Technologiesは、例えばAIや機械学習、IoT、量子コンピューティング、3Dプリンティングなど、お馴染みの先端技術について、商品化以前の研究開発段階の技術を規制するもので、これまで目の前にあって取引対象となる商品(技術を含む)を規制して来た輸出管理の枠組みを超えるものだ。またFoundational Technologiesは、既にある製品や技術の中で、軍事に関連する製造技術を新たに規制対象にすると噂されており、台湾は、この分野に大いに関連する半導体製造技術の基盤を持つ。
 トランプ氏自身が大統領に当選したとき、蔡英文総統と電話会談して、習近平国家主席の神経を逆なでし、米高官の台湾訪問や定期的な武器売却を求める「アジア再保証イニシアチブ法」を成立させて、中国政府の反発を買うなど、これまでのアメリカの伝統的な外交・安全保障政策をひっくり返して、関係国・関係者を慌てさせているように見えるが、単にオバマ前政権のレガシーに反対するのではなく、極めて戦略的に動いているように見える。
 台湾は、中国が太平洋に進出する出入口となり得る要衝の地にあり、軍事・安全保障面ばかりが強調されるが、中国への依存を深める経済、とりわけ先端技術について、アメリカは懸念しているように思うのだ。既に中国は、高度な半導体人材を抱える台湾からの引き抜きを加速し、「対象は世界大手の台湾積体電路製造(TSMC)の経営幹部から現場技術者まで幅広く、2015年に半導体強化を打ち出してから特に動きが加速し、これまでに累計で3000人超を取り込んだ」(日経新聞電子版12月2日付)という。技術の国産化を進めるべく、華々しく立ち上げた「中国製造2025」の達成が危ぶまれていることから、中国は台湾のほか日米欧先進国に向かって、企業買収や高給での人材リクルートや技術窃取など、なりふり構わず仕掛けているところだ。アメリカが、台湾が切望していたF16V戦闘機66機の売却を正式決定したほか、7月にはM1A2Tエイブラムス戦車108両や、携帯型地対空ミサイル「スティンガー」250発の売却まで決めたのは、半導体製造技術の宝庫・台湾を中国に渡すわけにはいかないという覚悟からだろう。戦闘機をはじめこれら防衛装備品は、メンテナンスされながら今後30年は大事に使われる類いの技術である。アメリカはそこまでコミットしているということだ。
 今回の選挙戦で、中国は莫大な人と金を投入し、蔡英文総統の再選を阻止しようとしたと伝えられるが、効果をあげられなかった。一つには、そんな中国からの資金流入などを阻止するために、米国はさまざまな形で台湾の捜査当局に協力したと伝えられる。
 蔡英文さんが総統になってから、台湾が国交を結ぶ国は22から15にまで減ってしまった。中国にじわりじわりと追い詰められる台湾だが、香港ともども、中国の覇権主義の防波堤となっており、今日も、日米の駐台代表と相次いで会談し、今後とも日米など「価値観の近い国々」との連携を強化していく意向を示したという。大事にして行きたい相手である。
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中東一触即発

2020-01-10 22:18:06 | 時事放談
 国際社会の緊張状態としては「今世紀で最も高いレベルにある」とグテレス国連事務総長が危機感を表明していた、イランとアメリカの間の報復合戦は、お互いに戦争へのエスカレーションは望まないことが確認され、最悪の事態は回避された模様だ。正式な外交ルートがなく、現地のスイス大使館を介したやりとりの上、相手が予測不能なトランプ大統領とあっては、間違いなきよう、普段ならあり得ないほどの(!?)明確な意思表示が行われ、アメリカはイランの顔を立ててイランによる(実質的には国内保守強硬派を納得させるためとも言うべき)攻撃を許し、イランは一人のアメリカ人の犠牲者も出さない配慮を見せて、それに応えた。
 以下は後日談として。
 アメリカは当然のことながらイラン革命防衛隊とソレイマニ司令官の両方ともテロリストに指定しているのに対し、イランもまた米軍を国家テロに指定したのには、思わず苦笑いしてしまった。どちらにも正義があるのが国際社会というもので、どっちもどっちだという議論は分からなくはないが、アメリカのストーリーを聞く限りアメリカ贔屓になってしまう。これに対し、EUや主要国、さらに中・露が(いずれの側を支持するかは別にして)すぐさま双方に自制を求める声明を出したことには感心した。中・露はアメリカを責め、欧州はイランを責めたのに対し、日本(安倍さん)は立場上どちらも責め(られ)なかったのが印象的だった。日本の市民団体は、「アメリカとイランは軍事行動やめろ」「アメリカはイランを武力攻撃するな」「戦争絶対反対」「自衛隊送るな」と抗議行動を行ったのはいつものこととは言え、野党が「今の状態で海上自衛隊を現地に派遣すべきではない。閣議決定そのものを白紙に戻す、撤回することの方が正しいのではないか」と主張したのは、国内の論理としては分からないではないが、国際的にはなかなか理解を得られないのではなかろうか。これでは野党は、日本の船舶ひいては日本の国益を守るのではなく、憲法を守ることを優先しているように見えてしまう。
 また、イランと北朝鮮は、核問題でアメリカと駆け引きをしているという意味で、連動している(もっとも双方に核開発段階の違いはあるが)。かつて金王朝三代目のお父ちゃん(二代目・正日氏)は、アメリカがアフガニスタンやイラクを攻撃したとき、1~2ヶ月もの間、身の危険を感じて公開活動を控え雲隠れしたらしいが、三代目は超大国アメリカと堂々と交渉するだけあって肝が据わっている(ように見せたがる)。北朝鮮中部の肥料工場の建設現場を視察し、高笑いし、「いかに情勢が厳しく、難関が立ちはだかろうと、理想は必ずわれわれの手で実現する」と豪語したそうだ。なんとも健気な演出である。
 最後に、史上かつ世界で最強のアメリカ軍を率いているとは言え、あらためてトランプ大統領の予測不可能性には恐れ入った。お正月気分に浸っていた私を含め、世界中が中東での一触即発に身構えたことだろう。そもそも一介の不動産セールスマンは、戦争を理解しないし、好まないし、できないだろうと言われてきたが、ものの見事に覆し、これまでのところは今秋の大統領選に向けて得点を稼いだのだ。しかも半年前から直前までの事態の流れをあらためて振り返れば、自衛権の発動として国際法上もぎりぎり正当化し得るような状況を確保していそうに見える。いずれにしても、イラン革命防衛隊の精鋭コッズ部隊を率い、イランの対外工作を統括してきたソレイマニ司令官については、歴代大統領もマークしながら手を拱いて来たとされるのに、トランプ大統領は、関係者が提示したオプションの内、最も過激だった殺害オプションをいとも簡単に承認し、やってのけさせた。このあたり、伝統的な外交・安全保障を破天荒に打ち破るという意味で、北朝鮮・金正恩委員長とのトップ会談をあっさり受け入れ、ラブラブの関係を演出しつつ、掌の上で転がし続けているのに似ている。こうしてハラハラ・ドキドキのトランプ劇場に、今年も翻弄されるのであろうか。
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首相の動静

2020-01-06 22:25:11 | 時事放談
 日経に首相の「動静」欄があり、他紙にも同様のものがあることだろう、ある知人は毎日チェックして、最近は誰と頻繁に会っているとか、こんな人と会食している!?などと、ウォッチャーを気取っているが(苦笑)、もとより私はそこまでの関心はない。
 しかし、この年始・年始は、ゴーン被告の逃亡疑惑あり(これも日本の主権がないがしろにされたと言えなくはない)、米軍によるイラン革命防衛隊のソレイマニ司令官という大物の殺害事件あり、それにしては政府関係者のコメントがないことに違和感を覚えて(前者については法相や外相や岸田さんのコメントが後れて出た)、あらためて産経電子版の「安倍日誌」や関連記事を辿ってみた(なんと物好きな・・・)。
 年末28日から今日の年頭会見の前日5日まで、私たちサラリーマンと同じ9連休の内、元日に皇居で新年祝賀の儀に閣僚らと共に出席されたほかは、ゴルフを4回、映画鑑賞やホテルのジムで運動など、ゆっくり過ごされたようだ。ゴーン事件について首相がコメントすることはないまでも、中東情勢の緊迫化についてはレベルが違うだろうと私なんぞは思ったりもしたが、そうでもないようで、各紙が事件を報じた3日昼頃から、昭恵夫人と映画「決算!忠臣蔵」を観賞され、見終わった15時過ぎに記者団から感想を聞かれて、「たいへん楽しく見させてもらいました」といったやりとりがあったくらいで、翌日のゴルフの際、記者団から事件について水を向けられると、「今月、諸般の情勢が許せば中東を訪問する準備を進めたいと思っている」とはぐらかされて、事件そのものについてはどうやら今日の年頭会見まで触れられなかったようだ。
 サラリーマンにとっては仕事納めとなる年末の27日の「安倍日誌」を見ると、分刻みのスケジュールで、夕食はハシゴして二度とるほどであり、責任の重さに至っては私たち庶民には想像がつかず、その激務を慮ってか、安倍さんの自民党総裁4選はないと断言する側近もいるくらいで、年末・年始の休みくらいゆっくりしたいと思うのは人情だろうけれども・・・。
 私事を言っても仕方ないが、1990年代後半、アメリカ東海岸に駐在したとき、上司からは24時間スタンバイするものだと諭され、当時はEメールなどという便利なものは一般的ではなくて、自宅にFAXを置き、夜中でも(日本は昼間だから)やり取りすることが時々あった。「24時間 戦えますか~」(1989~91年頃?)というCMのキャッチコピーがまだ記憶に残るバブリーでブラックな時代のことではあるが。
 いや、NSC長官あたりから、暫く喪に服するので進展なし、心配ご無用といったインプットでもあって、余裕でゴルフを楽しんでおられたのかも知れないので、目くじらを立てるのは筋違いかも知れない。自衛隊を中東に派遣する時節柄、自衛隊の最高指揮官としての危機に対する感度がちょっと気になったのだった。
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年頭の辞

2020-01-02 23:42:59 | 時事放談
 新年早々ぼやくのもなんだが・・・Windows7のサポートが切れる前にパソコンを買替えようと、年末に近所の量販店を訪れたところ、既に品薄状態で、ブランドと性能と筐体の色との組合せで希望に沿うものはなく、店頭にあるもので妥協せざるを得なかった。使い始めてみると、キーボードのキー配列が(相変わらず)微妙に異なっていて、誤動作してしまう。Outlookのアカウント追加はずいぶん楽になった(当初、タスクバーに表示されていたメールソフト(GmailもどきのMS版?)でやろうとして、勝手が違って焦ったが)こともあり、Officeは最新ではないものの新し目のものを会社で使っていて、もっと進化しているだろうと期待していたら、フォントの種類が減っていて、旧パソコンで作成した年賀状の字体が表示できなかった。エクスプローラーからダブルクリックしてOfficeで作成したファイルを開こうとすると、フリーズして(「応答なし」)立ち往生してしまう(仕方なく対処法をググって、いくつか便利機能を殺して、なんとかおさまった)。MS EdgeではYouTube動画を「名前を付けて保存」できなくなっていて(念のためInternet Explorerも起動してみたが、同様で)ちょっとショックだった・・・とまあ、いろいろ事情はあるのだろうけれども・・・。ようやくブログを書ける余裕ができて、(別に自身の年頭の抱負を述べるつもりはなく)著名人の動向を拾ってみる。
 天皇、皇后両陛下は初めての「新年祝賀の儀」に臨まれた。私自身の年齢のせいもあるが、この歴史と伝統は尊いものだとあらためて思う。
 プーチン大統領は、年末の国民向けテレビ演説で、「我々の団結が崇高な目標の達成に向けた基盤となる」と述べ、国民に結束を呼びかけたそうだ。クリミア併合に伴う制裁で経済は低迷し、年金支給年齢引上げをきっかけとした反政府デモをはじめ、政府への風当たりは厳しくなっていると伝えられており、北方領土は遠くなってしまった。
 反政府デモといえば、香港の恒例「元日デモ」に、今年は数十万人が集まったそうだ(昨年は主催者発表でも僅か5千5百人)。「生後7カ月の男児を抱いて参加した男性(30)は『この子には自由と民主のある香港を残したい。それは、市民が法律に守られ、警察にコントロールされない香港です』と話し」(産経電子版)、「クラスメートたちと参加した女子中学生(14)は『(デモ隊が掲げる)5大要求を認めてほしい』と政府に求めたが、その実現性については『政府の後ろに中国共産党がいる限り、難しいと思います』と語った」(同)というのを読むと、なんだか切なくなる。
 同じく中国共産党の圧力を受ける台湾では、31日、中国からの選挙介入を防止する「反浸透法案」を与党の賛成多数で可決し、蔡英文総統は「主権を守り民主主義と自由を守ることが総統として堅持すべき立場だ」と意気盛んで、不幸な香港情勢が明らかに1月の台湾総統選には追い風になっている。習近平国家主席には、新彊ウィグル、香港と並び、頭が痛い問題だろう。
 その習近平国家主席を国賓として迎えることには、天安門事件で孤立した中国を事実上、天皇陛下訪中が救った歴史を引き合いに、今なお保守派を中心に慎重論が根強いし、所詮、日中関係は米中関係の従属変数に過ぎなくて、日中関係の好転は米中摩擦のおかげと揶揄する声もある。それもよく分かるし、難しいところだが、こうした状況だからこそ、アメリカも了解の上で、日中関係を前進させる独自外交の努力も分からないではない(実際、アメリカには、尖閣国有化以降マイナスだった関係をゼロに戻すものだと説明しているらしい)。日本が置かれた地政学的環境からすれば、アメリカの尻馬に乗って中国を追い詰めて中国デカップリングを煽るのではなく、最大限の警戒をしつつも如何に国際社会に包摂するかを考えるべきだろう。公式日程にあがった以上、日本は遠慮することはないし、中国の動きをピン止めする効果もあるだろう。
 北朝鮮では、金正恩朝鮮労働党委員長が予告したクリスマス・プレゼントも、恒例の「新年の辞」読み上げも、見送られた模様で、党機関紙・労働新聞が伝えたのは年末に4日間という異例の長さで開かれた党中央委員会総会の結果だった。北朝鮮の動揺が読み取れる。それも覚悟で交渉期限を年末で切ったとすれば、北朝鮮の経済情勢が一刻の猶予もなく厳しいにも係らず米朝交渉が膠着している現状への焦りを示すものだろう。実際に金委員長の発言は、トランプ大統領を名指し非難することなく、また「戦略兵器」と呼んで大陸間弾道弾や核実験といった直截の表現を避け、さらに「(北朝鮮の)抑止力強化の幅と深度は米国の今後の立場次第で調整される」とも述べて、虎の尾を踏むことなくぎりぎりのところで踏みとどまり、交渉継続の余地と未練を残した。なにしろアメリカは、その間、アメリカ太平洋空軍司令官をして「わが軍は必要に応じて軍事力を使う態勢にある」と語らせ、最新鋭の偵察機や爆撃機などを北朝鮮上空に飛ばした上、11月に行っていた米韓合同の特別作戦演習(所謂「斬首作戦」とされる)の一部を、クリスマス前にわざわざメディアにリークしたのだ。金正恩委員長をびびらせ、具体的行動を控えさせるのに十分だったことは言うまでもない。
 こうして、暦が変わっても、東アジア情勢は不穏な空気に包まれたまま、混沌としている。この東アジア情勢に最も影響力をもつのは、幸か不幸か言わずと知れたトランプ大統領で、アメリカ大統領選までは安全運転するのだろうが、それまでにもそのあとにも不安が残る(笑)。なかなか飽きさせてくれない令和2年となりそうだ。実はゴーン氏逃亡のニュースに最も興味をそそられるのだが、まだ分からないことが多いので、稿を改めたい。
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