風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

戦争ごっこ

2022-11-06 12:37:08 | 日々の生活

 ロシアのウクライナ戦争は泥沼と言ってもよいのだろう。これから物理的にはウクライナの地は泥沼ではなくなるのだが・・・さすがに8ヶ月を超えて、ロシアのような経済力でよくもまあ続くものだと感心していたが、とうとう部分的動員をかけ、数少ない悪友の北朝鮮やイランから砲弾や武器を導入し、公然と発電所などの一般インフラを(すなわち非戦闘員の日常生活を)攻撃するようになったのを見ると、相当、苦しくなって来たようだ。10日ほど前のプーチン演説では、世界は第二次世界大戦後で「恐らく最も危険な」10年間に直面していると警告したそうだ(10/28付BBC)。こういうのを盗っ人猛々しいと言うのだろう。プーチンによれば、ロシアは常に清廉潔白で、ウクライナ戦争にしても世界的な食糧危機にしても、全て西側のせいで、ロシアを核で脅し、同盟国に対してロシアに背を向けさせようとしているのだそうだ。お隣の大国と同じで、情報統制をして自国民の離心や叛乱を抑えるのに必死と見える。振り返れば「アラブの春」や、旧ソ連圏の「カラー革命」(2003年グルジア「バラ革命」、2004年ウクライナ「オレンジ革命」、2005年キルギスタン「チューリップ革命」)、そして2014年ウクライナ政変(マイダン革命)など、全て西側が「非線形戦争」を仕掛けていると思い込む被害妄想(いや、西側が資金援助、抵抗運動のノウハウ伝授、宣伝技術のコンサルティングなどをしていたのは事実のようだが)に囚われたプーチンは、我々とは次元の異なるパラレル・ワールドを生きているようで、停戦交渉のような接点が見えない無力感に囚われる(プーチンだけでなく習近平や金正恩にもそれに近いものを感じる)。

 日本でも、防衛論議が静かに進行している。隔世の感があるが、かかるご時世で、子供の頃、「戦争ごっこ」をしていたのだと思い出すことがある。

 小学校高学年の頃、「クチク」と呼び慣わす鬼ごっこがあった。二手に分かれ、陣地を決めて、「ホンカン」(実は今となっては正確な呼び名の記憶がないので、とりあえず「ホンカン」としておく)1名、「キチ」数名、「スイ」数名という役割分担のもと、「ホンカン」は「キチ」にタッチすると捕獲でき、「キチ」は同様に「スイ」を捕獲でき、「スイ」は同様に「ホンカン」を捕獲できるという、ジャンケンの三すくみの原理で、敵を捕獲したり、敵の網をかいくぐって敵陣地に捕獲された味方を助けたりして、優勢を保ちながら、敵「ホンカン」を捕獲した時点、あるいは「ホンカン」を捕まえるべき敵の「スイ」を全員捕獲した時点で勝ちとなる遊びである。

 後年、オトナになってから、「クチク」はもしかしたら「駆逐(艦)」、「スイ」は「水兵」のことを意味するのではないかと察して、つい最近、ググってみたら、Wikipediaには「水雷艦長」の名称で、「第二次世界大戦前から昭和40年代に入った頃まで男の子の間で盛んに遊ばれた」とある。「ホンカン」は「本艦または母艦」、「キチ」は訛っているが「駆逐艦」、「スイ」は「水雷艇」を意味するようで、一隻の「本艦または母艦」を複数の「駆逐艦」と「水雷艇」が守る艦隊構成で戦うわけだ。誰から教わったのか、どのように全国規模で子供たちの間に広まったのか、定かではない。このあたりは「こっくりさん」のように、(つのだじろうさんの)漫画で広まったのか、ラジオが媒介したのだろうか。かつては国内だけでなく、吉林やハルビンの日本人学校でも遊ばれていたようで、地域によって呼び名にもバリエーションがあるようだ。

 小学生の鬼ごっこと言えば、「盗っ人と探偵」という、二手に分かれたシンプルな追い掛けっこが思い浮かぶ。これは関西方面の呼び名で、関東方面では「どろけい(泥棒と警察の意か)」と呼ばれる(さらに地方によって別の呼び名があるかも知れない)、男の子も女の子も一緒になって遊べる「警察ごっこ」だ。「くちく」は何故、「男の子の間で遊ばれた」(Wikipedia)のかと言うと、「戦争ごっこ」だからというわけではなく、つばのある帽子を使うからだと思う(女の子の帽子につばはなかった)。「ホンカン」はつばを前に向け、「キチ」は横に、「スイ」は後ろに向けて、見た目で区別する。今どきの教育委員会あたりは、「戦争ごっこ」なんぞ物騒な遊びだと目くじらを立てそうだが、本人たちはお構いなし、そもそも意味を理解することなく、ただ「盗っ人と探偵」よりも複雑で面白さが数倍化するので、夢中になったのだった。

 因みに、三すくみの原理及びその応用は日本人の発明なのだそうだ(高島俊男氏)。例えばジャンケンは、江戸から明治期の日本で生まれ、「20世紀に入ると、日本の海外発展や、柔道などの日本武道の世界的普及、日本産のサブカルチャー(漫画、アニメ、コンピュータゲームなど)の隆盛に伴って、急速に世界中に拡がった」(Wikipedia)そうだ。南アメリカのボリビアでは「Yan  Ken  Po」、フィリピンでは「Jack  and  Poy」などと、日本の掛け声そのままである。これは標準語(東京弁?)が元になったもので、大阪では「いんじゃんほい」と言った。

 さて、「クチク」に話を戻すと、私の子供たちの世代ではすっかり見かけなくなっていたが、「遊び方の重要な小道具となった前つばのある帽子を男の子がかぶらなくなるのに合わせたかのように廃れた」(Wikipedia)とある。夏場はともかく、冬場を中心に、誰かが「クチクしよ~」と叫ぶと、それまでばらばらに遊んでいた男の子たちが即座に10人以上集まって、元気に運動場を駆け回ったものだった。昭和な光景とも言える。

 その昔、関西の深夜番組で、「アホ」「バカ」という言葉がどのように全国に分布するのかを調べる企画があった。それによると、京都を中心に、「あほ」が地方に行くに従って「ばか」に変わっていく様子が、柳田国男の「方言周圏論」(一般に方言というものは時代に応じて京都で使われていた語形が地方に向かって同心円状に伝播していった結果として形成されたものなのではないかとする)を実証する結論だったように記憶する。「クチク」についても、どの時代(横軸)にどこ(縦軸)で遊ばれていたか分布図を作れば、いつからどこからどのように広まって行ったかが分かるように思うが、令和の時代に、そんなヒマなことをする人はいないだろう。

 プーチンの戦争は、昭和どころか19世紀に引き戻すかのような時代錯誤な残酷さを見せ、心が痛む。「クチク」のように、「戦争ごっこ」をそれと気づかせないような世相になって欲しいものだと思う。

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2 コメント

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どろじゅん (あんびばれんと)
2022-11-17 13:31:22
私が記憶しているのは「どろじゅん」です。泥棒と巡査と思います。名古屋地方です。
いろいろ (風来庵主人)
2022-11-21 23:04:56
名古屋は関東でも関西でもないと言われますが、関東の「どろけい」に近いですね。やっぱりフォッサマグナのあたり、あるいは関ヶ原のあたりで変わるんでしょうかね。

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