風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

北朝鮮の扱い方

2018-06-30 14:42:40 | 時事放談
 米朝首脳会談について、成果が乏しかったという声が大半ではあるものの、一部にはそれは予想通りで(とは後出しジャンケンのような苦しさも漂うが)、そもそもそれほど期待できない類いのこと、むしろ北朝鮮がこれまでの「鎖国」政策を転じて国際社会に姿を現したこと、それを引き出した米国もまた政策を転じて首脳会談に応じ、先ずは前に進める一歩を踏み出したことを評価する声も少なからずある。まあそういうことにしておこう。何しろオバマ前大統領がやってきたことを全否定するトランプ大統領だからこそ可能だったことだ。しかも彼はプーチン大統領や習近平国家主席といった権威主義者の方が好きで、どうもウマが合うようだ(苦笑)。
 今回の取引のポイントは、北朝鮮による非核化のコミットメントと引き換えに、米国が北朝鮮に体制保証のコミットメントを与えたことにあったと、巷間、伝えられる。この体制保証が何を意味するかは、余り報道されることがない。一般には、曖昧に金王朝支配が続くことを意味するようだが、他者がそこまで踏み込むことは現実問題としては無理筋であり、北朝鮮にしても米国のことをそこまで信用しているとは思えない。ある研究者は、北朝鮮の体制に対する批判をさせないことだと解説されていて、なるほどと思った。かつて自由や法治主義や人権などの西洋的な価値観を自ら体現し、伝道師を任じてきた米国からすれば、北朝鮮の体制批判をしないのは大いなる妥協だ(まあ、最近は中国に対する批判も控えているが、これも中国共産党からクギを刺されている、あるいは頼まれている可能性があるし、トランプ大統領はそもそもビジネス・ライクで西洋的価値といったものには興味がなさそうだ)。北朝鮮が国際社会に復帰するにあたって、国内世論(というものがあれば、の話だが)対策の前提である。
 首脳同士の会談で、そのことを確認した意義は大きく、一般に期待されたCVIDといった手順にまで踏み込むのは難しかったのかも知れない。こうした基本的な出発点において、交渉者としてのアメリカが、それ以上の褒美を金正恩委員長に差し出さなかったことは重要だと思う。米韓合同軍事演習を中止したじゃないかと反論されそうだが、いつでも再開できることであり、金正恩委員長の次の一手を引き出すためには先ず自分から、というトランプ大統領一流の取引の一手だろう(勿論、背景には、韓国が安全保障のfree-riderだという根強い不満があるのは間違いない)。中でも、経済協力は中国や韓国や日本が実施すること(加えて、米国の民間企業が応じるかも知れない)と突き放したことは、交渉者として実に正しい。何しろ、核やミサイルの開発は国際犯罪と断じて、国連安保理が制裁を重ねて来たものだ。そんな犯罪者に褒美を与えたら、第二、第三の北朝鮮が現れないとも限らない。第二次世界大戦の悲劇を教訓にして、戦後、人類は営々と核不拡散のための努力を続けてきた。NPTは「(核を)持てる者」の地位を固定化して不平等だと批判する人がいるが、核拡散という悪い方向への流れを食い止めるための現実的な政治の知恵だ。戦後体制の大前提でもあり、テロの時代にあって、テロリストの手に核が渡るリスクを思えば、容易に理解されるところだろう。
 金正恩委員長が国際社会に復帰して期待するのは、先ずは国連安保理が課して来た経済制裁が解除されることであり、次に関係国からの投資であろう。とりわけ平壌宣言で経済協力を謳った日本に対する期待は大きい。何故か。
 戦後の日本が実施してきた健気な経済協力が、世界中の国から歓迎されるのは、現地の資材や人材を活用し、現地経済に貢献するからだと言われる。それは、資材も人材(犯罪者が多いと言われる)も中国から持ち込み、リターンが期待できそうにないことなどお構いなしに多大な投資をし、高利で貸し付け、返済できなければ港などの99年間の租借を得て、新・植民地主義などと批判される中国のありようと比べれば、一目瞭然だ。それはその通りなのだが、大事なことは、日本に政治的野心がないことを、経済協力(と言うより支援)を受け入れる側がしっかり認識していることだろう。こうした事情は、国際情勢に人一倍敏感な金正恩委員長なら理解しているはずだ。中国に頼れば、これまでの長い悲哀の歴史の延長戦上で、属国化のリスクがある。韓国に頼れば、将来の統一に当たって主導権を握られるリスクがある。その点、日本はニュートラルだ。しかもかつての植民地支配(とは私は認めないが)を批判できる被害者としての立場は今となっては却って有利でもある(日本の世論に対しては)。
 ここで、もう一度、事実関係を確認しなければならない。日朝関係に横たわる問題は、拉致、核開発、ミサイル開発(長距離と言うより、中・短距離)の三点セットで、中でも拉致問題は主権侵害の国際犯罪行為である。そんな北朝鮮を甘やかせ、つけ上がらせる謂われはない。そこで、トランプ大統領が褒美を与えなかったように、日本も経済協力というカードを、どのようなタイミングで、いかなる条件のもとで、巧妙に切って見せるかが問題となる。日本は蚊帳の外だとか、置いてきぼりだ、などと自虐的に安倍外交を批判する声が多かったが、全く心配するには及ばない。日本の出番はこれからで、しかも強力なカードが手元にあるのだ。これまでも、朝鮮半島情勢には余り関心がなさそうなトランプ大統領の歓心を買い、なんとか交渉で守るべき立場を理解させ、経済制裁の圧力を弱めることなくCVIDを言い続け(最近は諦め気味だが)、トランプ大統領の中間選挙に向けた成果(と、一応、言っておこう)に繋げたのは、恐らく安倍外交の成果だと思うが、真価が試されるのはこれからだと思う。
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大阪北部地震

2018-06-25 23:40:50 | 日々の生活
 個人的なことで忙しさにかまけている間、世間ではいろいろな出来事があった。時間軸に沿って思い出すと・・・同じ価値観で纏まっていたはずのG7が纏まらず、同時期に開催された上海協力機構(SCO)と相俟って、貿易の保護主義化を巡って「トランプ大統領 vs その他世界」、つまり米以外のG7諸国と中・露・印が反トランプで同調するという奇妙な状況が現出した。トランプ大統領就任以前には考えられなかった事態だ。そのG7を抜け出したトランプ大統領が北の深窓の令嬢ならぬ御曹司に会った米朝首脳会談は、期待外れと酷評されている。このあたりは世界中がトランプ大統領に振り回されたものだった。その後、日本はW杯初戦でコロンビアに(W杯でアジアの国として初めて南米の国に)勝って、久しぶりにカタルシスを感じ、昨晩、セネガルと引き分けて勝ち点を得るという快進撃には、いくら勝負事はやってみないことには分からないとは言え、想定外の事態に狂喜した。しかし今日のところは、18日朝に起きた大阪北部地震について思うところを記したい。
 今回の地震は、日本国中、どこでも起こりうる典型的な直下型地震で、震源地が浅く、揺れの大きいエリアが局地的だったことから、広範囲の大災害には至らなかったことが特徴的だと言われる。また、かれこれ23年前の阪神・淡路大震災の教訓が生きて、最近の建築物は震度5強から6弱程度では倒壊する可能性が低かったとも伝えられる。しかし、水道管が破裂して付近が水浸しになるなど、日本で最も老朽化が進んでいると言われるこの地域のインフラがあちらこちらで悲鳴をあげたし、違法な外壁構造物によって、数は少ないながらも不幸な犠牲者が出た。
 顕在化した活断層のみならず、地下鉄やガスパイプなどインフラ設備があるために十分な調査が進んでおらず、未知の活断層も数多く隠れていると言われる日本列島では、果たして「大地変動の時代」に入ったかどうかでは専門家の意見は分かれるようだが、まさに日本国中、明日は我が身ということなのだろう。
 それにも係わらず、あるいはそれだからこそであろうか、震度6弱と聞いて、東日本大震災のときの震度5弱を記憶する身としては些か驚いたが、それも何だか当たり前のように思ってしまう自分がいて、戸惑っている。大阪北部と言えば、私が大学を卒業するまで20年間を過ごした高槻市や、高校生の頃に通学した茨木市が含まれ、とても他人事ではないにも係わらず、だ。年老いた親戚については、私の親が電話で安否確認をし、私の知人についてはfacebookで安否確認をした。もしかしたら、頭の中は学生時代の平穏な記憶に占められていて、俄かに信じられない思いでいるせいなのか。あるいは東日本大震災以来、日本列島はこういうところだという覚悟、言わば諦観のようなものが芽生えたせいなのか。東日本大震災のときに感じた共感疲労が、またぞろ思い出されたわけでもないだろうに、奇妙な脱力した感覚が、どうにも不快で仕方ない。頭の中では、当地の一刻も早い回復を祈りつつ。
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米朝会談の心配ごと

2018-06-11 01:53:02 | 時事放談
 今日、米朝両国首脳が無事シンガポール入りしたようだ。千両役者の揃い踏み、といったところだ(イヤミで言っている訳ではない)。
 正直なところ米朝首脳会談については、会議が行われる環境が整うかどうかという心理的な問題(いわゆる駆引き)の心配のほかに、私個人的には物理的に会議が行われるかどうか、つまり金正恩委員長は果たしてシンガポールに辿り着けるのか?という心配もあったが、自らの専用機ではなく中国国際航空の旅客機を使用し(シンガポール紙ストレーツ・タイムズによる)、なんとか第一関門はクリアしたようだ。もしお父ちゃん(金正日氏)だったら、大の飛行機嫌いなので、夜に昼に列車でも乗り継いで時間をかけて行ったのであろうが、幸い委員長は飛行機好きで、普段から国内移動に専用機を使っており、シンガポールまでの7時間という実績のない初めての長距離フライトに対して、自らの専用機の安全性を信用できるのかどうか?という、ある意味で深刻な問題意識からである。
 韓国メディアによると、今朝、平壌からは三機の航空機が離陸したらしい。一機目は輸送機(IL-76)で、委員長の専用車ベンツや移動式トイレを搭載していた模様だ。因みに、委員長専用トイレは有名だが、排出物から健康状態に関する情報が外部に漏れないようにするためとは、余程健康に自信がないのだろう(まあ、あの体格を見れば不思議はないが・・・貧しい北朝鮮でせめて親方だけは余裕があることを見せたいのか、ストレス太りか?)。昔、高校生の頃に習った古文は今となっては殆ど覚えていないが、唯一、姫に恋い焦がれた男が、恋い焦がれる余り、姫の「おまる」を盗んだところ、その「おまる」には「香」が入っていて雅びな香りがしたという(考えようによってはフェティッシュな危なっかしい話だが)れっきとした文学作品の一話だけは何故か記憶に残っている。委員長にも何とか教えてあげたいものだ。冗談はさておき、続いて、二機目と三機目は中国国際航空の旅客機ボーイング747と委員長の専用機「チャムメ1号」だったという。
 中国国際航空機は、要員の輸送やバックアップ用で、委員長は当然のことながら専用機に乗るものと見られていたので、韓国メディアは委員長の所在を特定できないようにする攪乱目的で飛ばされたのか?との見方を伝えたらしいが、間違いなく安全目的であることを隠すためだろう。なにしろ専用機は、旧ソ連が1963年に初飛行させた「イリューシン62型」で、かつては世界最大だったが、既に1995年に生産を終了しており、老朽化は否めない。国連制裁で航空機を輸入できない北朝鮮は今も後生大事に現役として使っているシロモノなのだ。
 続いて外野としての心配は、委員長が宿泊するホテル代をちゃんと支払うのかどうかという下衆な話題だ。当初希望していたとされるフラトンには、なんと私も一度だけ泊まったことがある。10数年前、海外駐在したマレーシア会社の新体制お披露目パーティーを東南アジア数か国で行った際のシンガポール会場だったのだ。マーライオンと目と鼻の先という絶好のロケーションで、委員長の気持ちも分からないではない。結果としてセントレジスになったとはいえ、北朝鮮は外貨不足のため、シンガポール政府に費用負担の肩代わりを求めているといった話が漏れ伝わって、なんともシケた話だ。今年の平昌五輪では、応援団の派遣費用約260万ドルを韓国に負担させたのは記憶に新しいが、2014年に当時のクラッパー国家情報長官が北朝鮮に拘束されている米国人の解放問題の折衝で訪朝した際、北朝鮮側から12品目に上る豪華な食事を振る舞われたものの、後にその代金を請求されたというから、外交慣例を踏み倒す予測不能ぶりはトランプ大統領以上かも知れない。
 因みにこの米朝首脳会談の開催場所を、南北軍事境界線がある板門店にほぼ決めていたトランプ大統領を翻意させ、シンガポールに変えさせたのは安倍首相らしい(産経新聞電子版による)。しかも米政権内から「首相から大統領に言ってほしい」との要請があったというから、先日のG7と言い、安倍首相が勝ち取ったトランプ大統領の信頼感は大したものである。
 もう一つ、心配(と言うより秘かに期待していた言うべきかも知れない)していたのは、この戦後の東アジア政治にエポック・メイキングな米朝会談というイベントに参加して留守にしている間にクーデターが起こらないか?ということだったが、朝鮮人民軍を統括する三首脳が一気に交代したとの見方が出ており、委員長はその芽を摘んだものと思われる。党の立場から軍を監督する軍総政治局長、国防相に当たる人民武力相、作戦を統括する軍総参謀長の三役で、非核化交渉の障害になりかねない軍強硬派の力を削ぐのが狙いだと分析されているのは、その通りだろうが、クーデターを気にしていなかったとも言えないのではないか。
 さて前置きが長くなったが、肝心の朝鮮半島の非核化に向けて、お互いに同床異夢と想像される中で(何しろ委員長が何を考えているのかよく分からない)、どこまで歩み寄れるか注目されるところだが、その代償となる体制保証となると、本当にうまく行くのか、大いに心配するところだ。そもそも体制保証など、諸外国に頼むものではなく、自ら頑張るものだという正論がある。また権威主義体制のその後については、中国という恰好の先行事例がある。社会主義体制から改革開放に舵を切って、経済成長を果たし、人民の生活水準が向上すると、民主化要求など、中国共産党王朝にとって不都合な動きが出かねないための備えとして、江沢民は愛国主義を、それとは裏腹の反日教育を、徹底したのだ。それでも情報は(グレート・ファイアーウォールがあっても)国境を超えようとするご時勢にあっての厳格な情報統制とジョージ・ウォーエル著「1984」を思わせる管理社会の現出だ。金王朝を生き延びさせるのは簡単ではない。日本への技術やカネの要求も出てくるだろうし、どこぞの国と同様、そんな恩は忘れて、反日というスケープゴートにもされかねない。今から心配しても仕方ないのだが、委員長には、自らの名前に恩の字があることを忘れないで欲しいものだ。
 トランプ大統領が北朝鮮との交渉に応じる後押しともなったのは、CIAで北朝鮮の情報収集・分析をする「朝鮮ミッションセンター」が昨秋まとめた金正恩委員長の思考や性格に関するプロファイリング(人物像推定分析)らしい(朝日新聞電子版による)。「欧米の文化に強い憧れと尊敬の念を抱いている」、「北朝鮮の歴代指導者より交渉しやすい相手」であり、結果として「米国が取りこめる可能性がある」という。果たして、千両役者が揃って、近年稀に見るビッグ・イベントはどういう次第になることやら。
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世界の王さんの快挙

2018-06-08 20:54:41 | 日々の生活
 一週間ほど前の話になるが、世界の王さんが入籍されたという報道があり、ちょっとほっこりした。
 芸能レポーター的な野次馬根性によれば・・・1966年に結婚した前妻を2001年に亡くした王さんが、2006年7月に胃を摘出する手術を受けた後、身の回りの世話をして献身的に支えてくれたのが、結婚した18歳年下の女性だという(知り合ったのは2000年頃という)。博多は中州の老舗料亭の娘さんで、などと聞くとそれだけでなんとなくおっとりと、しかし、しっかりとしていそうだ。2008年頃から一緒に住んでいて、周囲には「家内です」と紹介していたというので、今さら?とも思う。
 その、今さら?という疑問について、ご本人は「一緒に住んで10年目。10年も世話になったから、しっかりとけじめをつけようということで」「これからはますます年齢も上がるし、体の方も。2人で支え合って生きていこうということで」と説明され、ご自身なきあとのことをご配慮されたのはまあ当然だろうが、当面、一般人のように年金や保険の心配はしなくて済んでも、スマホの家族割引が受けられなかったり(世界の王さんはそんなことは気にしないか)、航空会社のマイレージが適用できなかったりと、いろいろ不便だったことだろうと思う(微笑)。実際のところ、3人の娘さんの中で亡き母親に対する思いが最も強く、王さんの交際に複雑な感情を持っていたらしい次女の理恵さんが2015年に三度目の結婚をして、下衆な話ながら、お相手は銀座や青山など都内一等地に7つもの医院を経営する歯科医師のセレブだそうで、「自身が本当の幸せをつかんだことで、頑なだった気持ちが徐々に変わったよう」(日刊ゲンダイDIGITAL)といったあたりが影響していそうだ。
 その日刊ゲンダイDIGITALは「就活」ならぬ「終活」と形容しているが、人生100年と言われる時代にあって、王さんのような再婚はごく普通に身近なものになりそうな気がする。そしてそのときに最も問題になりそうなのが家族の気持ちだろうが、これからの時代は、それもそれほどの障害になるとは思えない。
 さて、それもそのような局面に至れば重要なことだが、しがないサラリーマンにはもう一つ重要なことがある。
 知人の中には、第二の人生を考えるなら決断は早い方がいいと、50代になったばかりで転職を決意した勇気ある者がいるし、かつて大前研一さんは、老後の趣味を始めるなら頭や身体が動く40代や50代の内がいいと語っていた。私はと言えば、20代半ばの頃、当時は若造でもビジネスクラスで海外出張できて、隣に座った商社出身で仲間と起業したという40代くらいのおじさんと仲良くなって、誘われて何度か飲みに言って同僚を紹介されるまでになったが、大企業への思いは(余り無理せずとも大きな仕事ができるであろうという意味で)断ち切れなかった(同じ頃、台湾行きのフライトで、尻ポケットに万札の束を突っ込んだヤクザ屋さんと隣り合わせて仲良くなって、台北でカラオケ店をやってるから是非遊びにおいでと名刺交換したこともあったのはご愛嬌、対で記憶にある 微笑)。40歳の頃、仕事の転機があって転職が纏まりかけたこともあったが、その年齢になると家族(とりわけ乳飲み子)のことを思ってやっぱり踏み切れなかった。あの頃、飛び出していればという後悔する思いはちょっぴりないわけではないが、とうとう(人生100年とすれば)人生の折り返し点を既にちょっと過ぎてしまうと、さて、財政的余裕がない、しがないサラリーマンは、人生の第二ステージをどう過ごしたものかと、王さんのように地位も名誉も財政的基盤も(多分)しっかりされているからこそ、余裕の老後が微笑ましくも、羨ましくもあるのであった。
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日本は蚊帳の外?

2018-06-03 13:19:59 | 時事放談
 どうやら米朝首脳会談は12日に開催されることになったようだ。トランプ大統領が会談中止の通告をしてから一週間余り、国際社会からはなかなか目が離せない、興味深いゲームが続いている(日本では、モリ・カケこそ廃れたが、日大アメフト問題でもちきりだったが)。
 既に北朝鮮の国際社会復帰“後”に向けた宣伝戦が始まっているようだ。
 北朝鮮は「1億年たっても日本は北朝鮮に入れない」などと豪語したものだったが、その極端な数字は、傲慢さのあらわれと言うよりも、レトリックとして真意を理解せよ、とでも言わんばかりだ(笑)。昨日も、朝鮮労働党機関紙・労働新聞(電子版)は論評で「日本が『拉致問題』に執着しているのは、わが国の対外的イメージに泥を塗ろうという不純な下心以外の何物でもない」と非難し、また「既に解決された問題を騒ぐ前に、過去にわが国を占領して、わが民族に耐え難い不幸と苦痛を与えた前代未聞の罪悪を謝罪し、賠償するのが筋だ」と口汚く主張したという(時事)。
 「多くの北朝鮮専門家の指摘によれば、北朝鮮エリートは、自国に対する評価も含めて外部世界の状況をかなり正確に掌握しているらしい」(中西寛・京都大学教授)が、やはりこうした感情的に反応する場面では、脇の甘さが出るのだろうか。労働新聞が言う北朝鮮の「対外的イメージ」とやらがどんなものか聞いてみたいものだ(少なくとも泥にまみれていないと思っているのは事実のようだ)。あるいは、国際的犯罪者・・・と言って言い過ぎなら、戦後、人類がまがりなりにも営々と積み上げてきた核不拡散の努力を「自衛」の名の下に踏みにじる、戦後秩序への反逆者のイメージを、韓国で御しやすい革新派の大統領が登場し、米国で安全保障も通商もひとまとめにしてディールにしてしまって恥じないビジネスマン大統領が登場した、千載一遇のタイミングを捉えて、折角、刷新しようとしているときに、水を差すな、ということだろう。
 中国や韓国が「侵略」「植民地支配」などと日本のことを口汚く罵るから、日本人もつい心に負い目を抱えているが、あれは公平に見て西洋的な意味での「植民地支配」や「占領」とは言えないと思われる。当時、東アジアにロシアの圧力が強まることが懸念され、朝鮮半島が独立を維持できそうにないことが、日本の安全保障上、最大の関心になったことから、条約という正当な手続きを踏んで日本がやむなく併合したものであって、勿論、帝国主義の時代にあって、欧米諸国の植民地支配にありがちな諸問題など一切なかった・・・などと奇麗ごと(韓国人の発想になぞらえればファンタジー)を言うつもりはないが、日本の議会では台湾にしても朝鮮半島にしてもその経営を内地の延長で行うかどうかといった議論があり、GDPの10数パーセントを投資したと言われている。
 それを、国際犯罪である拉致と比し、古色蒼然とした「賠償」なる言葉の煤を払って持ち出すとは、そのレトリックの真意は、日本の技術とカネを寄越せ・・・ということに尽きるのだろう。既に私たちの「記憶」ではなく「歴史」の一コマになったことだが、サンフランシスコ講和条約から日韓基本条約に至るまで、韓国の怨念あるいは複雑な民族感情が噴出し歴史認識問題として持ち上がって紛糾し、実に14年もの歳月をかけた、あの余り生産的とは言えない交渉が思い起こされる。日本は「乗り遅れている」だの「蚊帳の外」だのと、北朝鮮が言うのはこれまたレトリックで、これほど北朝鮮から注目!?されているのだから、それを日本人がオウム返しに言って心配する必要はない。歴史的に、隣接する中国やロシア(ソ連)の間で揺れた朝鮮半島の「振り子外交」から生まれた心理戦の一つと言ってよいのだろう。
 かつて韓国は、対日戦勝国(つまり連合国)の一員であるとの立場を主張し、日本に戦争「賠償」金を要求した。サンフランシスコ講和条約締結の時にも、戦勝国(つまり、何度も言うが連合国)としての署名参加を申し入れたが、アメリカとイギリスに却下され、1951年9月8日の日本国との平和条約調印式への参加も許可されなかった。第二次大戦中、韓国が連合国だったとは歴史のどこをどう引っくり返せば出てくるのか不思議・・・と思ってWikipediaを読むと、「第二次世界大戦中に韓国人で構成された組織的兵力が中国領域で日本軍と交戦した事実は韓国を連合国の中に置かねばならないという我々の主張の正当性を証明している」と言うことらしい(まあ、そういう散発的なイザコザがローカルになかったとは言い切れないが)。そして戦勝国(連合国)のロジックが通用しないと分かると、次には、36年間の日本の支配下での愛国者の虐殺、韓国人の基本的人権の剥奪、食料の強制供出、労働力の搾取などへの「賠償」を請求する権利を持っていると主張した。
 ここで登場するのが、久保田発言(韓国に言わせれば妄言)として知られることになる日本側首席代表の外務省参与・久保田貫一郎氏の反論である。「日本は植林し、鉄道を敷設し、水田を増やし、韓国人に多くの利益を与えたし、日本が進出しなければロシアか中国に占領されていただろう」と、当然のことを主張したのだった。当時を知る日本人が多かった時代にあっては、日本ではごく普通に受け入れられたことであろうが、植民地支配は韓国に害を与えただけと(タテマエだけでも)考える韓国側からは「妄言」として批判され、日韓会談は中断したのだった。
 その後も、久保田氏は、(日本が)まるで暴言したかのように(韓国が)外国に宣伝することは妥当ではないし、(自分の主張は)撤回しない、また発言が誤りであったとは考えないと主張したが、韓国側は、会談に今後出席できない、これは完全に日本に責任があると述べ、会談は終了し、韓国は「久保田妄言」への報復として李承晩ラインを設定し、竹島を占領するという、日本人には甚だ不愉快だが韓国にとっては民族的プライドを賭けた(?)蛮行に発展する。このやりとりを見ていると、韓国の本質は変わらないものだと感慨深い。久保田氏は極秘公文書「日韓会談決裂善後対策」(1953年10月26日) で、韓国について「思い上がった雲の上から降りて来ない限り解決はあり得ない」と記述し、韓国人の気質について「強き者には屈し、弱き者には横暴」であると分析した上で、李承晩政権の打倒を開始するべきであるとの提言すら残している(このあたりもWikipedia)というが、名言というよりごく当たり前の真実だろう。
 結果として、韓国政府が朝鮮にある唯一の合法的な政府であると確認され、日本から韓国に対し計11億ドル(3億ドル無償、2億ドル有償、3億ドル以上の民間借款)もの経済援助が行われた。当時の韓国の国家予算は3.5億ドルだったというから、如何に巨大だったか(漢江の奇跡もむべなるかなと)知れる。そして、日本は韓国に対し朝鮮に投資した資本及び日本人の個別財産の全てを放棄するとともに、韓国は対日請求権を放棄することに合意した(それでも慰安婦や徴用工の個人の請求権など、なんだかんだと蒸し返しているのは周知の通りだが)。こうした文脈からすれば、将来、北朝鮮を統一あるいは統一的に経済発展する道が開かれれば、是非、(日本のカネなどアテにせず)韓国ご自身にご活躍頂きたいものである。
 折しも産経新聞(電子版)は、「海峡を越えて 『朝のくに』ものがたり」というシリーズ企画を掲載している。その中には、日本が戦後、北朝鮮地域に残してきた水豊ダムなどの資産は現在価値で9兆円以上もあるとか(これについて産経は「朝鮮北部の奥深い山に分け入り、ダムや発電所、鉱山、工場を築いていった日本人の血と汗が染みついている」と書いているが、こうした歴史的事実は忘れ去られてはならないだろう)、桁は違うが、戦後、日本の商社やメーカーによる北朝鮮へのプラントや機械類の輸出は1970年代後半にピークを迎えたが、1983年に北朝鮮が起こしたラングーン爆破テロ事件で、国際社会から孤立を深めたことを逆手にとって、以来、北朝鮮は支払いを止めており、関係者によれば、未払額は元本だけで約400億円、利子や延滞分を合わせると計2200億円に上る(日本の関係機関は毎年6月と12月末に郵送とファクスで「請求書」を北側へ送り続けているが、返事すらない、ナシの礫だそうだ)といった記述がある。もし北朝鮮が日韓基本条約を認めず「戦後賠償は終わっていない」と言うのを(拉致問題解決のためにも)無視できないとするならば、こうした抗弁をしつつ交渉するのかと思うと、気が遠くなりそうだ。2002年の小泉訪朝に伴う日朝平壌宣言で経済協力が謳われたとき、一説によると北朝鮮は1兆円規模を期待していたという。北朝鮮の国家予算は謎だが、韓国の事例から類推すれば、北朝鮮の国家予算はこの三分の一(日本の国家予算の三百分の一)ほどだろうか。
 こんな南・北朝鮮であるから、米朝首脳会談も一筋縄では行かないのは(過去の交渉を見るまでもなく)明らかである。さて、どうなることやら。ニューズウィーク日本版は先々週、「交渉の達人 金正恩」とタイトルして金正恩委員長を持ち上げ(その後、トランプの中止カードに妥協)、先週は「米朝新局面 今後のシナリオ」とタイトルして、今後の展開を曖昧なものにして時が過ぎるとネガティブに予想する、というように、二週続けて外してしまった。それほど読み切れない難しい局面であることは否定しないが、トランプ嫌いという米国メディアの色眼鏡はいったん外してみた方が良さそうに思う(日本の安倍嫌いも同様かも)。
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