保健福祉の現場から

感じるままに

TPPと医療問題

2011年10月12日 | Weblog
毎日新聞「米大統領:TPP参加を野田首相に迫る 首脳会談で」(http://mainichi.jp/select/seiji/news/20111012k0000e010068000c.html)。<以下引用>
<環太平洋パートナーシップ協定(TPP)を巡り、オバマ米大統領が9月21日にニューヨークで行われた日米首脳会談で、野田佳彦首相に対し早期の交渉参加を要請していたことが12日、分かった。大統領は会談で、「日中韓、欧州連合(EU)との関係でTPP交渉の余裕がないのか。よく考えてほしい」との考えを表明。首相も「しっかり議論し、できるだけ早期に結論を得たい」と応じた。首相は首脳会談後、TPP参加について、11月のアジア太平洋経済協力会議(APEC)までの決着を視野に、政府・民主党に議論を始めるよう指示している。結論を急ぐ背景に、米大統領の強い意向があったことが明らかになった。日本政府は5月、日中韓首脳会談で日中韓自由貿易協定(FTA)に関する検討の前倒しで合意したほか、EUとも経済連携協定(EPA)交渉に向けた予備交渉の早期開始で一致。一方、TPPについては3月の東日本大震災を境に議論が中断していた。米側にはTPPに日本を巻き込むことで、新たな貿易枠組みをつくり、中国をけん制する狙いがある。TPP以外の経済連携を先行させる日本の姿勢に危機感を強め、首脳会談での参加要請となった。日米両政府は日米同盟深化の柱として▽安全保障▽経済▽文化・人材交流--の三つを掲げており、TPPは経済分野の柱の一つと目される。APECでは日米首脳会談も予定されており、日本側の対応が焦点となる。政府・民主党は首相の指示を受け、11日に経済連携に関する関係閣僚会合と、民主党プロジェクトチーム(PT)を相次いで再始動させた。しかし、農業分野への影響などを理由に党内の反発が根強く、調整は難航している。>

NHKTPP参加 医療団体から懸念」(http://www3.nhk.or.jp/news/html/20111012/k10013215281000.html)。<以下引用>
<TPP=環太平洋パートナーシップ協定の参加に慎重な民主党などの国会議員が開いた勉強会で、日本医師会など医療関係の団体から、「TPPに参加すれば、所得によって受けられる医療に格差が生じる社会となる」などと懸念が示されました。勉強会には、鳩山元総理大臣や国民新党の亀井代表のほか、TPPへの参加に慎重な民主党や自民党などのおよそ50人の国会議員が出席しました。この中で、会長を務める民主党の山田前農林水産大臣は「きのう党のプロジェクトチームの役員会もあり、いよいよ早期に結論を出すという形で動き始めた。しかし、慎重にやっていかないと大変なことになる。単なる農業の問題ではない」と述べました。このあと、勉強会では、日本医師会や日本薬剤師会など、医療関係の4つの団体からTPPに参加した場合の影響などについて、意見を聞きました。この中では、「規制緩和や市場開放が進むと、所得によって受けられる医療に格差が生じる社会となる」などと懸念が示されたほか、「薬の自由化が進むと、安全性をどのように担保するのかが問題となる」といった指摘も出されました。勉強会のあと、山田前農林水産大臣は、記者団に対し「政府からの情報提供が不十分ななかで、判断できるわけがない。交渉参加に慎重な対応を求める署名は、民主党だけでおよそ190人分集まっているので、そうした主張をしっかり政府に伝えていきたい」と述べました。>
 
THE JOURNAL「TPPに前のめりの野田政権──肝心のTPP交渉の行方は霧の中」(http://www.the-journal.jp/contents/ono/2011/10/tpptpp.html)。<以下引用>
<野田首相は11月にホノルルで開かれるAPEC(アジア太平洋経済協力)首脳会議で、TPP(環太平洋経済連携協定)参加を表明したいと前のめりだ。与党民主党の前原政調会長も張り切っている。一方で党内の慎重派は署名活動を展開して、執行部をけん制している。読売新聞や朝日新聞などマスメディアも、TPP推進のキャンペーンを張っている。だが、国内のこうした動きと、交渉をめぐる国際的な動きの間にはかなりの温度差がある。国際的にはTPP交渉の雲行きはなんだか怪しくなっているのだ。TPPをめぐる国内の状況は、メディアの報道を含め、日米同盟に縛られた内向きの議論という気がしてならない。9月22日にオバマ大統領と会談した野田首相は、「普天間で結果を出せ」「米国産若牛肉を早く買え」「TPP、やる気あるのか」を脅され、野田首相が「努力します」という意味のことをヘラヘラかつ神妙に答えている姿がテレビで流れた。日米同盟については最右翼読売新聞はさっそく23日の社説で「同盟深化へ『結果』を出す時だ」と煽り、TPPについて「11月(APECホノルル首脳会議)が日本参加決断の期限」を尻を叩いた。この野田・オバマ会談を機に、民主党政権の中にあった慎重姿勢が引っ込み、促進の声が強まった。だが現実を直視すると、TPP促進一辺倒の日本のメディアの報道と、現実のTPP交渉の間にはかなりの隔たりがある。例えばアメリカ。オバマ政権は国内、国際政治とも追い込まれ、来年の大統領選挙を控え、TPPどころではないという見方がもっぱらだ。「だからこそTPPで日本を引き込み、得点を挙げようとあせっている」という言い方をする人もいるが、いま米国内の政治状況はそれどころではない。来年11月の大統領選挙では上院、下院の中間選挙も行われる。すでにワシントンは選挙一色といってよく、与党民主党と野党共和党の対立は政策的妥協の余地などないほどに先鋭化している。アメリカのマスメディアもTPPにはほとんど関心がないといってよい。しかもオバマ政権はブッシュ前政権の置き土産であるコロンビア、パナマ、韓国とのFTA国会批准を果たしえていない。FTAによって失業が増えるとして反対する労働組合を説得できないからだ。オバマ政権のTPP推進の背景には、「2014年までに輸出を倍増し、200万人の雇用を創出する」というオバマの約束があるが、そのためには上記三つのFTAを仕上げなければならない。それには民主党支持基盤である労働組合を「FTAで失業は出さない」ということで説得しなければならない。そのためにオバマ政権は貿易調整支援制度(TAA)と提案している。これは貿易自由化によって打撃を受けた労働者や企業に一定の保証をする制度なのだが、共和党はこの制度は一層の財政赤字を招くと強硬に反対している。つまり、オバマ民主党政権はTPPに到達する前に、袋小路に落ち込んでいるわけである。このジレンマを抜け出すためには、アメリカはTPP交渉で一方的にアメリカに有利に働く枠組みを交渉参加各国に押し付けなければならないことになる。これもTPPをめぐって日本のメディアが報道しないことの一つだ。現実には、国内のジレンマを抜け出すためのオバマ政権の強硬策は、破たんしつつあるとみてよい。米国のTPP交渉参加国に対する要求は外交交渉ということで厳重に隠されて外に出てこないが、それでも医療制度や薬品、環境基準、労働基本権などの分野で投資国の権利を重視し、当該国の裁判権も認めない、などといった米国の主張は次第に明らかになってきている。交渉参加国のオーストラリアやニュージーランドでは市民運動や環境保護団体ばかりでなく、議会でも反対論あるいは慎重論が強まっている。また、今年6月にベトナム・ハノイで行われた第7回TPP交渉は、日本のメディアでは枠組み交渉が進展があったと報道されたが、現実には、ベトナム政府代表は「アメリカが繊維と靴について市場開放リストを示さない限り、ベトナムの農産物市場開放策は出さない」という強い姿勢を崩さなかったと伝えられている。加えて、交渉参加国の一つであるペルーで6月に行われた大統領選挙で、左派のオジャンタ・ウマラ大統領が出現するという出来事があった。ウマラ大統領は、ガルシア前政権が行った新自由主義的政策を批判して登場しただけに、TPPに対しどういう対応をするのか、予断を許さないものがある。TPP交渉はハノイに続いて9月にシカゴ、そして10月24日から28日にかけてペルーの首都リマで行われることになっている。いまのところ、このリマ会議が予定通り開催されるかどうかさえはっきりしない。TPPをめぐる情勢が混とんとする中で、オバマ政権はより一層強く日本に交渉参加を迫るものとみて間違いない。日米同盟強化一辺倒の野田政権はそれに引きづられて、TPP交渉参加に向け無防備に突き進むことが十分考えられる。>

「2011/10/11「TPPを慎重に考える会」会長、山田正彦元農林水産大臣インタビュー 」(http://news.livedoor.com/article/detail/5929561/?p=1)。<以下一部引用>
<山田「なかなか本当に厳しい、乏しい情報なんですが、シカゴ会議が先月あった。シカゴ会議の後、オーストラリアで一部内容がリークされてますよね。投資家報告、知的財産権の件で。今オーストラリアで非常に大問題になっているみたいですね。折りしもアメリカのモーリス・フィリップスというタバコ会社がオーストラリア政府を訴えたでしょ。タバコの飲み過ぎに注意しようという公衆衛生規則が不当な貿易障害であると。障壁であると」

岩上「非関税障壁に当たるというような事なんですか?」

山田「はい。だけどオーストラリアでは知的財産権について、いま大騒ぎを始めましたよね。TPPでは、オーストラリアとアメリカ政府のFTAよりもニュージーランドとのこれまでの色々な外交交渉よりもさらに高いハードルでルール作りをやろうとしているわけで、非常に神経質になってきましたよね」

岩上「TPPの本当の狙いというものが少しづつ露わになってきたということですよね。とりわけ、『タバコの飲み過ぎに注意しよう』ということは国民に対する注意喚起であったり、国民の健康を考えるような法の、さまざまな法制、そういうものが時に資本の都合で踏みにじられていくという可能性があるということですよね。>
 
元防衛大教授、外交官(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AD%AB%E5%B4%8E%E4%BA%AB)ツイッター;TPP(http://twitter.com/magosaki_ukeru)(http://twitter.com/#! /magosaki_ukeru)。<以下引用>
<TPP:TPPに入らなけれれば経済浮揚しないというのは全くの嘘。こんな嘘をよく政府、経済人、官庁が平気で云う.数字を見れば一目瞭然。属米以外の何者でもない。アジア、TPP外が大きい市場を充分に認識しよう。これを認識すればTPP参加吹っ飛ぶ。()内はGDP10億ドル 参加:豪州1235,ベトナム176,シンガポール305,ブルネイ16、 不参加:中国10061,韓国1476,タイ460,インドネシア1212,フイリピン269、インド2516。毎日社説批判(TPP):TPPの嘘、詭弁蔓延。. 社説:うちに閉じこもっていては、日本経済の未来はない。経済開国と農業の再生にむけて、首相の力強い決断を求めたい」、内にこもってではない。米除き市場の小さい国相手。TPP不参加の市場が逆に大きい。それを全く無視し開国と騒ぐ。TPPの嘘:外相の説明は嘘。中国、韓国、台湾、インドネシア、タイ、フィリピンはTPPに参加していない。それを、あたかも参加している様に説明、11日日テレ「政府は11日午後、TPP関係閣僚の会議を開催、玄葉外相”アジア太平洋40億の内需を日本の内需と考え、外に目を見開くべし”」>
 
ここのところ、TPPに関する報道が増えている。しかし、①全国保険医団体連合会「ねらいは医療の市場化……世界の潮流に逆行するTPP参加」(http://hodanren.doc-net.or.jp/iryoukankei/seisaku-kaisetu/110914tpp.html)、②同「国民皆保険を壊すTPP参加は容認できない」(http://hodanren.doc-net.or.jp/news/teigen/110305tpp.html)、③同「医療の市場化拡大を狙うTPP参加は、国民皆保険制度の崩壊を招く」(http://hodanren.doc-net.or.jp/news/teigen/110131tpp.html)、④日本医師会「医療における規制改革とTPPについての見解」(http://www.med.or.jp/shirokuma/no1379.html)、⑤同「政府のTPP参加検討に対する見解」(http://www.med.or.jp/shirokuma/no1354.html)など、医療団体から、国民皆保険への影響が強く懸念されているにもかかわらず、政府、大手メディアは、これまで農業分野以外についてはほとんど報道されてこなかった。TPPには24の作業部会があり、農業だけではない(http://tpp.main.jp/tadashii.ppt)。報道されているように、米国の強い要請によるものであれば、米国大使館「日米経済調和対話」(http://japan2.usembassy.gov/j/p/tpj-20110304-70.html)も念頭に置かなければならない。TPPは日本の保険や医療制度に全く影響がないと断言できるのであろうか。ネット社会の中で、これまで政府、大手メディアが農業分野以外についてほとんど報道してこなかったばかりか、事実と反するような報道を繰り返すことが、かえって不信感を招くように感じるのは気のせいであろうか。少なくともTPPの進捗状況や24作業分野に関する情報公開が不可欠であろう。
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精神疾患での入院期間10年以上の患者が7.3万人

2011年10月12日 | Weblog
10月6日の医療計画の見直し等に関する検討会資料(http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001qswh.html)が出ているのでみておきたい。「精神保健医療の現状と課題」(http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001qswh-att/2r9852000001qt3j.pdf)に示されるように、平成20年には精神疾患での入院期間10年以上の患者が7.3万人、5年以上10年未満が4.5万人と推定されている。我が国の精神科医療は、歴史的に入院医療中心で進んできており、諸外国に比べて、我が国は精神病床が際立って多い。厚労省資料(http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/kaigi_shiryou/dl/20110630-02-03.pdf)p10に出ているように、精神病床の平均在院日数は短縮傾向にあるものの、平成20年で313日である。以前の厚労省資料(http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/syakai/z-fukushi/gyosei/gyousei05.html)では、「精神入院患者の2割が生活保護受給」とされ、生活保護者の精神病床長期入院ケースが少なくない。長期入院(特に生活保護による医療扶助)は、家族、医療機関、行政にとって、ある意味「楽」かもしれない。しかし、最近の精神保健医療福祉の動向を鑑みると、そんな時代ではない。さて、8月30日の「障害者総合福祉法の骨格に関する総合福祉部会の提言案」(http://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/sougoufukusi/2011/08/dl/0830-1a01_03_01.pdf)では、「精神障害者の入院ニーズを精査し、国並びに都道府県は精神科病床の削減計画を立て、入院に代わる地域医療の体制を構築することが必要である。」とされている。今年度スタートしている「精神障害者アウトリーチ推進事業」(http://www.wam.go.jp/wamappl/bb15GS60.nsf/0/2c116f8976613f4a4925783f00016cba/$FILE/20110222_1shiryou4_1_2.pdf)でも病床削減計画が組み込まれている。次期医療計画では精神疾患が追加され、いくつかの指標が示される(http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001qswh-att/2r9852000001qtqi.pdf)見込みであり、入院期間短縮化のために、精神疾患の医療連携、医療福祉連携、保健医療連携、保健福祉連携が必要となる。入院患者を退院させるためには、受け皿をしっかり作らなければならない。また、それ以上に、新たな入院患者について、長期入院にならないような対策が必要であり、後方連携、前方連携、水平連携のそれぞれが推進される必要がある。認知症に関しては、平成32年度を達成時期として、「新たな入院患者について50%が2ヵ月以内の退院」という目標が提案されている(http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001nyoe-att/2r9852000001nyts.pdf)が、精神疾患全体として、同様な目標が必要と感じる。
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