「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の旅」を読む。
村上春樹の小説の魅力は、ストーリーを説明しても伝えられない。
そこここに出てくる音楽は知らないものが多いし、主人公が行く恵比須や広尾の洒落たバーやカフェにも興味がないけど、そんなことは問題じゃないのだ。
主人公はみんな同じような男で、同じようなタイプの女を好きになり、不器用だとか社会に適合できないと言いつつも、ちゃんと恋を成就させ、ちゃんと立派な仕事も持っている。嘘くさい。でも、そんなこともなんだというのだろう。
村上春樹の魅力は、登場人物が作中で語る「ありえないけど信じてしまえる」不思議な挿話にあるのだと、私は思う。
村上春樹の手にかかると、途方もないファンタジーも、ありうることに思えてくる。
「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の旅」でも、「ある種の夢は、たぶん本当の現実よりもずっとリアルで強固なものなのよ」という言葉があり、登場人物の「思い」が、現実世界に直接作用してくる場面が出てくる。あ、これこれ、と思う。来た来たと、思う。ここが好きなんだと納得する。
癖のある文体は、読んでいるとすぐに村上春樹だとわかる。
いつもの男。いつもの女。いつもの物語。ああ、まただと思いながら安心する。
気取ってるとかわざとらしいとか言われ続けている比喩や警句も、
「ヘルシンキの空に浮かぶ、使い古された軽石のような半分の月」とくれば、うーんさすがと思ってしまう。ヘルシンキの白夜なんて知らないくせに。
………………
物語が現実に作用する。物語の力で現実を変えることが出来る。
とほうもないことをありうることに思わせる物語の力。
子供の時から、私はいつも物語に救われてきた。
物語の世界は、私にとって現実逃避ではなく、
現実を乗り切るために必要なものなのだ。
村上春樹の小説の魅力は、ストーリーを説明しても伝えられない。
そこここに出てくる音楽は知らないものが多いし、主人公が行く恵比須や広尾の洒落たバーやカフェにも興味がないけど、そんなことは問題じゃないのだ。
主人公はみんな同じような男で、同じようなタイプの女を好きになり、不器用だとか社会に適合できないと言いつつも、ちゃんと恋を成就させ、ちゃんと立派な仕事も持っている。嘘くさい。でも、そんなこともなんだというのだろう。
村上春樹の魅力は、登場人物が作中で語る「ありえないけど信じてしまえる」不思議な挿話にあるのだと、私は思う。
村上春樹の手にかかると、途方もないファンタジーも、ありうることに思えてくる。
「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の旅」でも、「ある種の夢は、たぶん本当の現実よりもずっとリアルで強固なものなのよ」という言葉があり、登場人物の「思い」が、現実世界に直接作用してくる場面が出てくる。あ、これこれ、と思う。来た来たと、思う。ここが好きなんだと納得する。
癖のある文体は、読んでいるとすぐに村上春樹だとわかる。
いつもの男。いつもの女。いつもの物語。ああ、まただと思いながら安心する。
気取ってるとかわざとらしいとか言われ続けている比喩や警句も、
「ヘルシンキの空に浮かぶ、使い古された軽石のような半分の月」とくれば、うーんさすがと思ってしまう。ヘルシンキの白夜なんて知らないくせに。
………………
物語が現実に作用する。物語の力で現実を変えることが出来る。
とほうもないことをありうることに思わせる物語の力。
子供の時から、私はいつも物語に救われてきた。
物語の世界は、私にとって現実逃避ではなく、
現実を乗り切るために必要なものなのだ。