シャープが、えらいことになっている。
「もともと、シャープペンシルの会社ですやん」
と、若手税理士K氏は、見放したようなことをおっしゃる。
ああ、わたしのシャープ株・・・。
気持ちは、真っ暗だ。
そもそも、守銭奴であるわたしは、ケチである。
倹約家、節約家といえば、聞こえはいいかも知れないが、たんに、お金がスキなだけの、卑しいヤツだ。
お金に囚われ、結局、振り回される。
お金は、上手に使ってこそ、値打ちがある。
奪われるのは、こころの贅沢。
そして、当然、実際の贅沢も奪われる。
お金がスキだから、お金を集めたがる。コレクションしたがる。
少しでも多くコレクションしようと、支出を極力抑え、ケチに徹する。
夫がトイレから出ても、電気を(何度も何度も)消さずに点けっぱなしにしていると、鬼のような形相になって怒る。
最近は、世間にエコ風が吹いてきて、わたしの、節電主義も、「ケチ」と、ののしられなくなり、ちょっと安心している。
義母の方針は、わたしとは、180度違う。
おなじ人間でも、こうも違うのかと思えるほどだ。
だが、社交家である。彼女を悪く言う人は、おそらく、ひとりもいないだろう。
いちばん、身近なわたしが、そう思うのだから、間違いない。
彼女は、大盤振る舞い。
ケチの正反対。
人に、惜しみなく施す。(自分にも)
お金があろうが、なかろうが、
そのお金がどこから生み出されているのか、いかにして苦労して生み出しているのか、
そんなこと、まったく関係なく、ばんばん使う。
じつに、気持ちいい使いっぷりである。
(お金の提供者の妻であるわたしは、いささか、複雑な心境に陥るときもある)
エコ精神は、皆無である。
エコという文字は、彼女の辞書にはない。
各部屋、扉も窓も開けっ放し、エアコンと扇風機をつけっ放し、
生花を活けてある部屋は、生花用の温度をキープするため、専用にエアコンで冷やす。
家中が、開けっ放しの冷蔵庫のごとくである。
各部屋、電気も点けっ放し。
(夫は、義母のDNAを色濃く受け継いでいるので、やはり、電気は点けっ放しだ。
寝るときも寝室に点けっ放し。わたしが、いつも、消しまわっている)
でも、それで、彼女は、加齢による老化に苦しみながらも、どうにかやってくれている。
病院に入院することもなく、ボケることもなく、しかも、まわりの人に慕われ、愛されている。
それに引き換え、わたしは、ケチなので、人に施さず、
義母からも、いつもいつも、なにかしら頂く一方。
お金がスキなあまり、お金に振り回される。
ちょっとしたことにも、細かく、うるさく、生活がケチケチ根性で溢れ満たされ、
もっと優雅に、贅沢とまではいかなくても、のびやかに暮らせばいいのに、なぜか、貧乏臭い。
そのくせ、どかんと、株で損をする。
しかも、キーボードをほんの数クリックするだけで、まばたきをほんの少しするだけで、
贅沢をした感触も満足感もなにも得られないのに、突然、お金が吹っ飛ぶ。
そんな株など、買わずに、汗だくで暮らさず、
家中のエアコンを点けっ放しにしているほうが、どれだけ、気持ちいいか。
人に気前よく、きっぷよく、金品をばらまくほうが、どれだけ、すっきりするか。
家族の動向さえチマチマ制限をつけ、誰にも愛されず、慕われず、内向きに暮らすのは、ほんとうに、バカである。
あの損金が生じなければ・・・、あのお金があれば・・・
(「たら」「れば」、を言う人は、株を売買してはいけないという鉄則がある)
あああ、あれも出来た、これも買えた、あそこにも行けた、あれも食べることができた、
あの遊びも出来た、
会費が高いから出席しなかった、あの会にも出席できた、
観劇だって、A席(2階)でなく、S席(1階)で観れた、
ちょっと値段が高いからと、ワンランク下のランチにした、あれも、制限なく食べられた・・・
・・・あれこれ羅列して、思った。
たんに、欲がどんどん引き出されているだけではないか。(しかもスケールが小さい)
やはり、人間、多少の制限があるほうが、よろしい。
いやあ・・・でもなあ・・・・
あの損金があれば、一生の思い出に残るイベントも楽しめただろうに・・・
と、なかなか欲は消えるどころか、もっともっと湧き出てくる。
それも、生きる原動力。
しかし、もっともっとお金がかかる案件を長期的に抱えている身としては、
それを放棄すれば、お金が自由になるではないか。
でも、自由になるお金が、ぐぐぐっと削られても、自分に課されたことは、やらなければならない。
それも、果たすべき役割。
この夏、わたしは自分ひとりの寝室では、汗だくなのにエアコンを一度もつけなかった。
ガマンの限度を超えた時のために、せめて、手動式・団扇から扇風機に、移行しようかと、
手元に置こうと扇風機を先週、バーゲンで買った。(なんで、あんなにお安い?)
(ちなみにエアコンは、設置されているが、つけない)
そう感じた頃には、そろそろ朝夕は、涼しくなってきている。
ああ、ケチ根性。
これが、自らの自由、快適さを奪っている・・・
解放されるのは、棺おけに入るときか。
棺おけも、安い、下から2番目のものでお願いね、なんて、言ってたりしそうだ。