蝶になりたい

いくつになっても、モラトリアム人生。
迷っているうちに、枯れる時期を過ぎてもまだ夢を見る・・・。

押し付け合い

2010-07-06 | お付き合い
うるさくて煙たい、一族ご本家様のご長老、K氏、御年89歳。
ある、ごくごく近い姻戚関係のお葬式で、
私は喪主さんのオヨメさんに、耳元でこそっと囁かれた。

「Kさんの近くに行ったら、うるさいから、離れてたほうがいいよ」

わざわざご親切に忠告いただいていたのに、トンマな私は、つかまってしまった。
うかうかしていた。

斎場へのマイクロバスでは、Kさんの隣にいる70歳ぐらいの親戚の男性Yさんが、座っていた。
私は、その後ろの席にYさんの奥さんと座っていた。
おんな同志のおしゃべりは、結構楽しいもの。


男性同志、前の席で機嫌よくしゃべってくれたらいいのに
いつの間にか、長老氏は、私に座席越しにわざわざ体をねじって、話しかけてくる。
長老氏の隣のYさんを、ちょっと見てみると、長老と反対の方向を向いている。
Yさんが、そっぽをむきはじめたから?
こら、Yさん、ちゃんと話し相手してよ~

まあ、バスの中だけのことだし、ちょっとの間の辛抱だと我慢していた。

やがて、斎場からバスはメモリアルホールに戻り、2階で、食事会が執り行われた。
長老は、上座の席。
私は、なぜかモタモタしていたら、長老の前の席になってしまった。
あちゃー。
こりゃ、まずい展開。

「おい、君のところの○○(夫の名前を呼び捨て)に、
今度、○月○日、会を開くことに決定したから、うちに来るよう、伝えておきたまえ」
(わー、上から目線。「来ていただけますか?」なんぞじゃないんだ。)

「故人の○○を○○に紹介して縁談をとりまとめたのは、私の母だ」
「故人の息子の嫁を紹介、仲を取り持ったのは、私だ」
「2代続けて、我々が世話して、今日に至っている」

道理で、喪主の奥さんが、煙たがるわけだ。
喪主さんの家を「無」から立ち上げたのは、長老のお陰だ、とでも仰っているような内容。
キリストさんのあばら骨から、アダムとイブを作ったみたいに。

「長男とは・・・代々のものを受け継ぎ、次代にバトンタッチするのが務め。
代々引き継いだものは、増やしてこそ、減らすなどとはもってのほか。
長男の嫁の役目は・・・延々、延々・・・なんたら、かんたら」

料理は、次から次へと美味しそうなものが出てくる。
長老の話を真剣に聞いていると、ちゃんと食べられない。

「今の役人は、アホだらけだ。
その中で、一番アホは誰だか知ってるか?
市長だ。
ワシは、この前、法務局に、クレームをつけに行ったが、
国の機関のヤツはアホばっかりで、ハナシにならん。
(この長老、○○省・国の機関ご出身の元・国家公務員)
なんも、仕組み、制度を知っとらん。
これこれ、あれこれの件では・・・
土地問題では、・・・・(延々、延々・・・あーだ、こーだ)
アタマを使わにゃあ、いかん。
いいか、スローさん、○○(夫の名前、またもや呼び捨て)にも言っておくように」

ああ、しんど。
隣に座っているYさんよ、
ちゃんと長老氏の話を聞いてくれないと、私に、とんだトバッチリがくるではないか。


この長老どの、耳とアタマがイイので、適当なことを言うと、キリリと目を吊り上げて、
「なに? ワシのハナシ、わかっとらんのか? 聞いてなかったのか?」
みたいな顔をされるので、ちゃんと聞いてないといけないし、
突拍子もない間抜けなことでも言うと、また、うるさいし。

自分の話したいことが一連でまとめて用意されているようで、
途中で、質問したり、話のコシを折るようなことを言うと、機嫌が悪いし。
結構、大変なのだ。
皆さん、ご経験済みなんだろう。


あとで、喪主さんや、周りの人々は、私に対する同情の念を口々に発していたそうだ。
可哀想に、気の毒に・・・スローさん、長老に、つかまってしまって・・・
(押し付けてしまったけど、その分、こっちは助かったわ・・・・と仰ったかどうかは存じないが)

今度の四十九日法要の時は、
長老の席を、私の席と離して用意する措置をとってくれるとのこと。
やれやれ。

矍鑠(かくしゃく)とした、長老どのの御守り(おもり)は、疲れます。
スケープゴート(scapegoat)のお役、次回は放免されるようだ。


人気ブログランキング
ブログ村 自分らしさ