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常住坐臥

ブログを始めて10年。
老いと向き合って、皆さまと楽しむ記事を
書き続けます。タイトルも晴耕雨読改め常住坐臥。

春呼ぶ虹

2015年03月05日 | 斉藤茂吉


昨日、東の空に虹が立った。大急ぎでカメラを持って撮影したが、陽射しの加減で虹の姿は刻一刻と変わった。虹と言えば、斉藤茂吉は多くの虹の歌を詠んでいる。そのなかでも、その代表作として記憶されているのが、

最上川の上空にして残れるはいまだうつくしき虹の断片 茂吉

である。歌集「白き山」に、虹という項を立てて17首の歌が並んでいるが、その3番目に置かれている。この歌が詠まれたのは昭和21年の夏である。大石田に移住して患った大患もようやく癒え、その前後から絵筆を握って、庭の草花や果実の写生を試みた時代である。

この歌の肝になる句は「いまだ」であろう。うつろいやすい虹を、最上川の上の空に定着させるには、なんとも重い言葉に思える。東京の空襲を逃れて、郷里の金瓶に疎開した茂吉であるが、敗戦という時代の進行に、失意のうちに大石田に移住した。茂吉の目は、大石田を流れる最上川に注がれた。

ながらへてあれば涙のいづるまで最上の川の春を惜しまむ 茂吉

「白き山」には、人間茂吉がにじみ出た数多くの秀詠がある。


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