ここは闇(やみ)のデパート。いろんな身体(からだ)が売(う)り買(か)いされていた。人の身体から心(こころ)だけを取り出すことが可能(かのう)になったので、こんな商売(しょうばい)が始(はじ)まったのだ。もちろん、これは非合法(ひごうほう)である。もし、警察(けいさつ)にバレたらただじゃ済(す)まない。だが、この場所(ばしょ)が見つかることはないだろう。
ある女が、ここにやって来た。どうやら初(はじ)めての客(きゃく)のようだ。店主(てんしゅ)は、その女の身体を品定(しなさだ)めするように見回(みまわ)した。なかなかの上物(じょうもの)である。
店主は言った。「どんな身体を、お探(さが)しですか?」
女はケースの中に入れられている身体を眺(なが)めながら、「そうねぇ、普通(ふつう)のでいいんだけど…。あんまり目立(めだ)たない感(かん)じがいいの」
「それは…」店主は愛想笑(あいそわら)いをして、「みなさん今(いま)より美しい身体を欲(ほ)しがるもんですがね」
「もう男にはこりごりなのよ。うんざりしてるの」
女が選(えら)んだのは、どこにでもいそうな顔立(かおだ)ちの中肉中背(ちゅうにくちゅうぜい)の平均的(へいきんてき)な身体だ。店主にしてみれば、それは売れ残(のこ)りの始末(しまつ)に困(こま)っていた商品(しょうひん)だった。まさか、上物と取り替(か)えることになるとは、これはぼろ儲(もう)けというものだ。店主は女に訊(き)いた。
「それで…代金(だいきん)なんだがね…」
女は即座(そくざ)に答えた。「もちろん無料(むりょう)でしょ。あたしの身体なら高く売れるんだから」
<つぶやき>もし、こんな世界(せかい)になってしまったら…。何だかちょっと怖(こわ)い気もします。
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