彼女は、三年間付き合っていた彼から突然(とつぜん)、別(わか)れを告(つ)げられた。そろそろ結婚(けっこん)を考(かんが)えていた彼女にとって、それは思いもよらないことだった。だって、喧嘩(けんか)なんかしたことないし、別れる理由(りゆう)がまったく分からない。
彼女は意気消沈(いきしょうちん)してしまった。会社(かいしゃ)に行っても仕事(しごと)が手につかない。そして、ミスを連発(れんぱつ)してしまった。見かねた先輩(せんぱい)が手を貸(か)してくれて、事無(ことな)きを得(え)たのだが…。彼女はますます落(お)ち込んでしまった。
会社からの帰り道(みち)。彼女はふらっと本屋(ほんや)に立ち寄(よ)った。そこで彼女は何かに引(ひ)き寄せられるように、日記帳(にっきちょう)が並(なら)べられている棚(たな)の前で足(あし)を止めた。彼女には日記をつける習慣(しゅうかん)など無(な)かった。なぜそうしたのか分からないが、彼女は手にした日記帳を買(か)って家に帰った。
寝(ね)る前に、彼女は日記帳を開(ひら)いた。そして、彼とのことを思いつくままに書(か)きつづった。最後(さいご)には、彼に対(たい)しての恨(うら)みつらみを吐(は)き出していた。
翌日(よくじつ)、彼女は何だかスッキリした顔で出社(しゅっしゃ)した。彼とのことを知っている同僚(どうりょう)が、彼女を気づかって声をかけた。
「大丈夫(だいじょうぶ)なの? もう、あんな人のことなんて忘(わす)れちゃいなよ」
でも、彼女はきょとんとした顔(かお)で、「なにそれ? そんなことより――」
彼女は、彼のことなどすっかり忘れてしまったのか…。まるでなかったことのように、彼女の頭(あたま)の中から消(き)え去(さ)ってしまったようだ。
<つぶやき>こんな日記帳があれば…。でも、彼はなぜ別れを切り出したのか。気になる。
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