銅版画制作の日々

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THE SOLOIST♪路上のソリスト

2009-06-06 | 映画:シネコン

 
これは「ユニークな友情の物語」
400万人が住む街で誰かと会ったことがふたつの人生を変えた

6月1日、ファーストディに東宝シネマズ二条で鑑賞しました。


アメリカ、ロサンゼルス・タイムズのコラムニスト、スティーヴ・ロペスが紙上でナサニエル・エアーズについてのコラムを連載し一躍人気を博したものが映画化された。それがこの作品「路上のソリスト」だ。

これは実在の人物ナサニエル・エアーズという、かってはジュリアード音楽院に通って将来を約束されたチェロ奏者が主人公である。彼は統合失調症となり、ロサンジェルスの路上で暮らしながら、弦線2本となったヴァイオリンを毎日持ちだしてベートヴェンの曲を演奏していた。その姿を、LAタイムズの記者スティーヴ・ロペスがルポした真実のストーリーをもとに、彼らの間に生まれた友情を描いている。

映画の内容から少し脱線します。この作品が映画化された経緯などに少しふれたいと思います。

映画化に至る経緯とは・・・・。

さてそのロペスのコラムは一つの本として出版されている。→「路上のソリスト/失われた夢、壊れた心、天才路上音楽家と私と日々」というタイトルで日本でも発売されている。

この衝撃的なロペスのコラムは、当時とりわけ反響が大きいかったようで、最初に書いたときは、とどまることなく続々とメールが届いたらしい。

そんなコラムはハリウッドおひざ元とあってか、映画化へのオファーも驚くような早さで訪れたわけだ。2005年1月からその年の暮れまでに、ドキュメンタリーも合わせてオファーが15~20件も来たとのこと。しかしどれに対しても返事しなかった。つまりナサニエルに対してやっていることを自分自身理解出来ていなかった。そしてこのことに終わりがわからないものをどうして映画に出来るのかなんて思っていたという。本を作ることも考えていなかったが、編集者に「これは本になる。ノートは取っておきなさい」と言われたので、一つの箱にまとめていたと話す。

映画化への同意の決定的なものは。

最終的には、あるプロデューサーの姿勢で大きな信頼を感じ、映画化への同意となる。絞り込んだ末、別々にオファーをかけてきた3人のプロデューサーと会う。そのうちのひとりだけが、ナサニエルに即会いたいと言ってきた。そして僕らはスキッド・ロウを歩いてナサニエルに会いに行った。そのことは僕にとって大きな意味をもつことだった。ハッピーエンドにならないこの話をどんな風に映画にしたいのか?と聞いた時、彼は「ユニークな友情の物語」にしたいと言ったのを気にいった。

あなたが彼の人生に影響を与えたと同じように、あなたの人生もまた彼のおかげで変わりました。400万人が住む街で、誰かと出会ったことが、ふたつの人生を変える。そんな人間のコネクションの話。だから終わり方はそんなに重要じゃないんです。

物語にはHomelessやSEISINSOUGAIを抱えた人たちの扱い、ZINSYU問題といったことなど、現代社会の問題を浮き彫りにしていますが、テーマはそう言った問題ではなく、友情と音楽のもつパワーを主張し続けた。なのに、配給権を持つパラマウントは、このようなHomelessの映画を公開するのにふさわしい時期ではないという理由で、半年延期させた時は、ロペスさんは怒ったと言う。あんな言いわけは大嫌いだと言った人は誰なのかは知らないけど。でも結果的には半年延期の間に本や映画に興味を持ってくれた人が増えただろうし、延期されたことは良かったかもしれないと。

4年という歳月がかかったが、辛抱強くない自分にとって、我慢強くあり続けることで得られる報酬を知った。それは主人公となったナサニエルの目の輝く瞬間。4年前の彼ならそうではなかったに違いない。明らかに彼は変化していたのだ。ナサニエル本人もロペスの著書を読み、映画も見ている。(実は試写会に出席したが、病気のためスクリーンが怖くて終始目を閉じていた。本も最初は気に入らなかったけど、でも後に“ありがとう”と言ってくれた)

というわけで、この作品は、素晴らしいキャストを迎えて映画化されました。

ナサニエルを演じたのは、ジェイミー・フォックス。そしてロペス役にはあのロバート・ダウニー・Jr。初共演の二人がこの素晴らしいドキュメント作品に挑みます。

Story

弦2本で世界を奏でるヴァイオリニスト

殺風景なロサンゼルスの公園は清らかなヴァイオリンの音色で心安らぐ場所に変身!LAタイムズの記者スティーヴン・ロペスは目を凝らした。みすぼらしい身なりの男が2弦しかないヴァイオリンを巧みに奏でていた。ナサニエル・エアーズと名乗り、ベートヴェンを敬愛していた。ジュリアード音楽院にいたと聞いたロペスは耳を疑った。何でそんな名門校の卒業生が路上で?

かってナサニエルは確かにジュリアードに在籍していた。但し卒業ではなく、退学だ。そんな彼の物語こそ、最高のコラムになると・・・・。彼の手がけるコラムは人気があったが、同僚のメアリー(キャサリン・キーナー)との結婚が破綻して以来、仕事への情熱が薄らいでいた。

早速ナサニエルに取材を試みる。彼の話は要領を得なかったが、教えてくれる電話番号をたどって彼の姉と元音楽教師に話を聞く。姉のジェニファーは行方知れずの弟を心配しながら、彼の少年時代のことを話す。過去のナサニエルはチェロを弾いていたと話す。音楽教師は「本気で取り組んでいたら、世界中の人が驚くような才能だった」と証言。

天才少年とさまよえる旅人の間を漂う

コラムは会心の出来だった。ナサニエルのヴァイオリンが2弦だと知った、感動した読者は自分のチェロを送って来た。ロペスはそれを届けるが、条件をつける。それはスキッド・ロウ地区にHomeless支援施設ランプコミニュティに預けて、そこで演奏するというものだった。しかしナサニエルはその条件に耳を貸そうとしない(室内を嫌がっていた)

チェロを見つめる彼に根負けしたロペスは数分だけその場で弾くことを許す。彼が弓を動かした瞬間、自分の魂が別の世界へと連れ出されるのを感じる。

ナサニエルが何故路上で?世間では、それを統合失調症と呼ぶ。ランプの責任者で心に問題を抱えたHomeless者をケアしているディヴィッドは「診断なんて役に立たない。必要なのは彼を病人扱いする人間だ」と語る。
彼の人生を、しばらくコラムに書き続けることにしたロペス。毎晩、路上のBAININや酔っ払いの間に横たわり、それでも神を讃えて「全世界に安らかな眠りを」と祈る彼を見守るうちに、ロペスの胸には彼を助けたいという願いが芽生え始める。

 

必要なときそばにいる友達でいて!

連載を重ねるごとに、コラムの人気は高まる。彼に手を差し伸べる人も現れる。ロサンゼルス交響楽団からは、ディズニーホールのコンサートにも招かれる。演奏曲目はベートヴェンの交響曲第3番「英雄」。騒ぎを起こしたくないと尻込みするナサニエルをロペスは、リハーサルに連れていく。

ロペスがプレゼントを贈ったはずが、逆にナサニエルにロペスは贈り物を貰う。

「同じ音楽を聴いて、音楽に魅入っている彼を感じると、高貴な何かが存在するんだ」興奮するロペスに、メアリーは「それは恩寵、神の愛よ」と教える。「僕には、あんなに何かを愛せない」。ロペスは、ナサニエルの音楽へのピュアな愛に感服する。

何とか彼を天才音楽家としての人生を取り戻して欲しい。その目標は目の前に。手始めに、ロサンジェルス交響楽団の主席チェロリスト、クレイドン(トム・ホランダー)にレッスンを依頼し、練習場所として支援センターのアパートを借りる。ところがナサニエルはクレイドンとの会話で、ひどく不安定に。 

治療が必要だ!と思い詰めたロペスはディヴィッドに訴える。「人生が変わり、彼を救えるのなら、拘束して強制的に薬を飲ませるべきだ」と。
そんなロペスにディヴィッドは「友情を裏切るのは、唯一のものを壊すことだ」と諭す。

答えの出ない問題に、悩み続けるロペス。そのとき、ナサニエルが取った予想もしない行動が、ロペスの人生観を根底から覆す。
さてロペスはナサニエルに助けられたのか?それはどちらともいえない。

しかしロペスはナサニエルから謙虚さと、芸術の力への信頼、信じ続けること、あきらめないことの気高さを学んだ。ナサニエルと友達になれて光栄だと・・・・。

ナサニエルを何とか助けたいというロペスの思いは途中から、方向が変わっていく。つまり彼を助けることより、彼を世に出してたいというロペスの欲望に変貌されていくのが見え見えである。ナサニエルがようやく心を開けられる人が見つかって喜んでいたはず。それが打ち消される事態になったことに、ナサニエルはまた心の闇に入り込む方向になったと思う。

悩みを抱えている人を助けたいという気持ちって大事だけれど、その行為がいつしか相手に押し付けてしまう危険がある。これは気をつけないとだめだろうね。

多分ナサニエルが、このような行動に出たことで、ロペスは失った心を取り戻したのだと思う。助けるということがどれだけ大変でパワーの入ることかを教えられましたね。純粋な気持ちで音楽を愛するナサニエルの姿に気持ちが洗われたって感じでしょうか。

追記:現在、私もハンディを抱えた方の支援をしています。以前心の病を抱えておられる方との関わりを少し持った経験もありますが、なかなか難しいです。相手の気持ちをどこまで受け入れることが良いのか?それは体験しなければ、見えてこないことですが・・・・・。そんなことが頭の中をよぎりながら、ふたりの交流を見ました。皆さんの身近にきっとそんな心の病を抱えた方はたくさんおられると思います。現実は映画のようには上手くいかないけどね。

 ジェイミー・フォックス、いい味出してました。


この方が本当のナサニエル・アンソニー・エアーズ。
現在もスキッド・ロウ地区でチェロを弾いておられるそうです。


ロバート・ダウニー・JRと原作者のスティーヴ・ロペス(右)

スティーヴ・ロペスのインタビューはこちらです。

 LAタイムズの記者スティーヴ・ロペスが、偶然出会ったホームレスの天才音楽家ナサニエル・エアーズとの交流を現在進行形で綴り全米で話題となった連載コラムを映画化した感動ドラマ。当初はナサニエルの数奇な人生を記事にするだけのつもりだったロペス記者が、次第にナサニエルと友情を築き、ジャーナリストのモラルとの葛藤を抱えながらも、彼の人生に自ら深く関わっていくさまを、2人の心の軌跡を軸に、社会的問題にも触れつつ美しい音楽とともに描き出す。主演は「Ray/レイ」のジェイミー・フォックスと「アイアンマン」のロバート・ダウニー・Jr。監督は「プライドと偏見」「つぐない」のジョー・ライト。(allcinemaより抜粋)

メディア 映画
上映時間 117分
製作国 アメリカ
公開情報 劇場公開(東宝東和)
初公開年月 2009/05/30
ジャンル ドラマ/音楽
奏で続ければ、いつかきっと誰かに届く。

オフィシャル・サイト
http://www.soloistmovie.com/ (英語)
オフィシャル・サイト
http://rojyo-soloist.jp/


 

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4 Comments

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今晩は・・・ (小米花)
2009-06-06 22:46:50
いつもTBを送らせて頂いてます小米花です。
しっかりと書かれた記事、読ませていただきました。
そして、興味深いサイト(読売)へのリンクもありがとうございます。映画をもっとよく知ることが出来ました。

私はいつも一言感想の簡単な記事しか書けないでいますが、これからも宜しくお願いします。
返信する
こんばんは^^ (KLY)
2009-06-07 03:03:15
何ていうか、どうしても嫌だったのがロペスの上から目線なんです。それもナサニエルが統合失調症だからと言うだけでなく、ホームレスだからって言うこともあると思うのです。
まあ、そういう風に見せてるのだから、むしろ上手いのだと思うことにしたんですが、ラストまでにそれに対する救いというか、フォローが感じられなかったんで、結局なーんか、いやーな気持ちだけが残ってしまったという…。

2人の演技力は、特にジェレミーはさすがオスカー俳優の実力でした。そこが救いと言えば救いだったかも。^^;
返信する
お邪魔しま~す♪ (ひろちゃん)
2009-06-08 21:25:32
夕方お邪魔した時は、コメントもTBも
できなくてあせりました(^^ゞ

ロバートが大好きなので、大甘な評価、
ハートマークの画像と、取り乱しているので(^^ゞmezzotintさんの感想読ませて頂いたら、TBさせて頂くのも申し訳ないような気が
しましたが、TBさせて頂きましたσ(^◇^;)

>現実は映画のようには上手くいかないけどね。

そうですね。実話なので、淡々と描かれては
いましたが、二人の友情(関係)は、実際は
このように上手くいくことは少ないですよね。

映画としては、いろいろといい面も悪い面も
考えるところがありますが、ロバート、ジェイミー二人の演技は素晴らしかったですよね^^
返信する
なるほどねえ (sakurai)
2009-10-02 20:15:20
巷の評判は、すごーーくいい、というものではないようですが、
>ナサニエルに対してやっていることを自分自身理解出来ていなかった。そしてこのことに終わりがわからないものをどうして映画に出来るのかなんて思っていたという・・・
ここの部分、映画観て一番感じたところです。
感動作にもできただろうし、成功物語にもできたでしょうか、あえて、見えないままにした・・・というところに、シンパシーを感じました。
映画の中で、友達ができることによって、言い働きかけができるかもしれない・・という言葉が印象的でした。

今度、チェロコンサートやるんですよ。
楽しみです。
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