ウィンザー通信

アメリカ東海岸の小さな町で、米国人鍼灸師の夫&空ちゃん海ちゃんと暮らすピアノ弾き&教師の、日々の思いをつづります。

伊賀焼とヴァーチャルリアリティと歌姫と

2016年12月07日 | 友達とわたし
日本に帰省する際に、いつも悩ましいのは、誰と会うかを決めること。
80歳を超えた母とはできるだけ一緒に時間を過ごしたいから、友人や親戚に会いに行ける時間は、いつもたったの1週間弱になってしまう。
だからもう、とんでもなくバタバタするし、今回はごめんね、またいつかねと、先送りになってしまう人が続出する。
いつか、発表会後の休暇を、思い切って1ヶ月ぐらい取って、お正月も含めてのんびりしたいと思ってはいるものの、そんな勇気も出ないまま、とうとう17回目の冬を迎えている。
まあでも、空と海を残して1ヶ月も留守にできないだろうし、わたしが日本に行くと言うと必ず、僕にも平等の権利があるなどと言ってくる夫が、じゃあ行っておいでと送り出してくれるとも思えない。
ここ数年は、毎年帰ることができているのだから、それだけでもありがたいと思わないとね。
母の家に滞在していた最後の日は、大津の友人二人と京都駅で会い、互いに元気でいることを喜び合い、その後、大津まで迎えに来てくれた宏弥師匠と一緒に、車の中で積もる話をしながら、また母の家まで戻った。
そしてその翌日から、友だちの家にお世話になりながら会いに行く、という毎日が始まった。

今回は、これまでずっと会えずにいた人に会うことにした。

その一人、というか二人が、あけみちゃん&洋くん夫妻。
彼らはともに、第一線で活躍している陶芸家で、彼らの一人娘の綾香ちゃんは、これまた第一線で活躍しているメゾソプラノ歌手。
三人ともに、キラキラと輝く星一家なのだ。

洋くんのお父さんは、古伊賀焼きの第一人者、谷本光生氏。
光生氏は、山深い里山の広大な敷地の中に、自宅陶房と、彼自らが発掘した品や、自他の作品を収めた展示場を建てた。
彼らとはずいぶん前に知り合い、以来ずっと大ファンであり続けているのに、会ってもろくに話ができないまま月日が過ぎていったのだけど、
数年前に起こった(まだ継続中だからここに書くことはできない)トンデモな人間によるトンデモな悪事に巻き込まれた彼らから、その話をチラチラ聞かせてもらっているうちに、
今以上に荒らされてしまう可能性がある光生氏の作品の数々を、何としても目に焼き付けておきたい、彼らともゆっくり話したいと思い、超多忙のふたりに無理を言ってお邪魔させてもらった。

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谷本 光生(たにもと こうせい) 窯名:三田窯(みたよう)
大正5年10月5日伊賀市三田に生まれる。
本名 光生(みつお)
洋画、書、俳句、彫塑、篆刻、曼荼羅などの趣味を背景に、戦後古伊賀、伊賀焼の復興に尽力し、谷本伊賀を確立。
作陶の他に抽象版画も手がけ、東京銀座のサロン・ドゥ・ボナで、シルクスクリーンによる版画の個展を開く。
自宅陶房には。縄文・埴輪時代から鎌倉・室町・桃山・江戸・明治・大正期までの伊賀焼を中心に。展示場を増設し、発掘品や作品を公開中。
谷本伊賀の他には、日本初「抽象陶画」の制作、版画「シルクスクリーン」、コンピュータグラフィックスなどにも新境地を拓き、着目される。
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伊賀上野の駅まで迎えに来てくれた洋くんの車に乗って、ぐんぐんぐんぐん山に入っていく。
その道ったらもう、とんでもなく狭くて、だけどここも往路なんだと聞いてたまげてしまった。
もうすっかりアメリカンサイズに慣れてしまってる自分だけど、こんな道をぐいぐい走っていたこともあったのだと、ちょっと懐かしくなったりもした。

到着して、話し込んでいる間にどんどん日が暮れて、気がついたら真っ暗になってしまった。
慌てて、洋くんの仕事場と、まだ見たことがなかった光生氏の展示館に、洋くんと彼のお弟子さんに案内してもらう。

真っ暗闇の中で撮った写真なので、色合いや存在感がちゃんと表せてないけれども…。

洋くんの穴窯。


奥がとても深い。




火を焚く薪にも、いろんな種類があるのだなあ。


神棚。


光生氏の自宅前から見ると。


展示館には、発掘品、作品がたくさん並べられていたけれど、すでに不正に持ち出されてしまった物も多い。






この皿の色合いや質感は、どうしても伝えきれない…。










光生氏が、全て木から作った筆。毛筆ではなくて樹筆というべきか?




富士山のような絵画を見て、黒澤監督の『夢』の赤富士を思い出した。


孫の綾香ちゃんから影響を受けて始めた、コンピュータグラフィックスによる作品。


そしてこれは、ネパールに何度も通っては集めたという曼荼羅の数々。








版画「シルクスクリーン」の展示館。








すごいとしか言いようのない芸術作品の数々を生み出した、すごいとしか言いようのない芸術家の父を、洋くんはとても尊敬し、心身ともにずっと支えてきた。
そんなお父さんと服飾デザイナーのお母さんの血を引く洋くんの手と心は、その作品に出会った人の魂を揺さぶるような伊賀焼を、次々に生み出していく。

作品の一部を見せてもらった。ちゃんと伝えられないのがとても残念!
洋くんの作品のちゃんとした映像は、ここで。




あけみちゃんの工房と作品は、うっかり撮り忘れてしまったので、ここを見てください。


さてその夜は、感謝祭をミスしたアレッサンドロ君とわたしのためにと、あけみちゃんが感謝祭ディナーを作ってくれた。
どうこのご馳走!




洋くんとお弟子さんが作ってくれたシューマイ鍋。


料理はもちろんだけども、器が贅沢すぎてうっとり…。




お友だち夫妻も合流して、美味しくいただいた後、アレッサンドロくんが開発したバーチャル世界で遊ぶことに。






初めての経験だったけれども、めちゃくちゃ現実味がある空間の中の物を、手に取ったり操作したりできたりして大興奮。
彼は今、京都のあちこちを細かに撮影し、それをヴァーチャルリアリティの世界に移して、人々に京都を体感してもらうというプロジェクトに関わっている。
そして彼はまた、テコンドーの達人だったりする。

やっと思いが果たせて興奮したのか、なかなか眠れなかった。
次の日の朝に出て、東京に向かい、その日一泊しただけでまた、大阪と三重に戻って来ると言ったら、
「まさかまうみちゃん、そのでっかい荷物と一緒に行くつもりじゃないよね」とあけみちゃん。
「え、そのつもりだけど」
「ダメダメ、絶対にダメ!そんなバカなことしちゃダメ!わたしが送っといたげるから、ここに置いていきなさい!」

そ、そんな…申し訳なさすぎるし、送り賃だってかなりかかるんじゃ…。
などとウジウジしているわたしを見て、「もうほんとに信じられないんだから!」と呆れるあけみちゃん。

結局甘えさせてもらい、横浜と東京で会う人たちへのお土産と着替えだけ持って行ったのだけど、行ってみてつくづく思った。
あけみちゃんの言うことを聞いてよかったと。
そして、これまで一度もそんなふうに考えずに、パンパンに膨れた重たいったらないカバンとバックパックと一緒に、あちこち周っていた自分の姿を思い出して、深いため息をついた。

次回からは賢くやろう。


🌸綾香ちゃんからのメッセージ🌸

ホセ・マリアとのCD「Sakura Variations~さくら変奏曲~」が完成しました〜♪
リリース記念のコンサートは、12月9日に、東京ハクジュホールで、19:00開演です。
チケットまだありますので、聴きに来て頂けるようでしたら、メッセージでご連絡下さい〜

また、コンサートには来れないけど、お手元にCDが欲しいという方も、メッセージ下さい♪
全てホセ・マリアの作曲とアレンジで、さくら変奏曲、クリスマス歌曲集、そして人生の歌曲集が入っています。

リリースを先取りして、人生の歌曲集から少しお聴き下さい。



Sakura Variations Release Concert(さくら変奏曲リリース記念コンサート)
日時:
12/9(金) 開場 6:30pm 開演 7:00pm
 
場所:
東京ハクジュホール

問い合わせ先:
ムジカキアラ Tel: 03-6431-8186


【谷本綾香】
英国以外では、スペインとの縁が深く、音楽を通してスペインとの交流に貢献するプロジェクトも数々行っている。
2014年より、スペインのギターリスト、ホセ・マリア・ガジャルド氏とのプロジェクト、”Alma Española en Japón”を開始し、
9月より日本でコンサートツアー。
11月にはロンドンの日本大使館において、日本スペイン交流400周年記念事業の一環として、Sakura Variationのプレミアコンサートが、スペイン・日本大使館の共同で開催。
同時に、ロンドン日本大使館のGreen Park Youth Concertと名付けられたコンサートシリーズで、期待の若手音楽家として、谷本綾香が紹介された。

2016年末にはホセ・マリア・ガジャルド氏とのプロジェクト”Alma Española en Japón”のプロジェクトで日本ツアーを行う予定。

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