ウィンザー通信

アメリカ東海岸の小さな町で、米国人鍼灸師の夫&空ちゃん海ちゃんと暮らすピアノ弾き&教師の、日々の思いをつづります。

うれしい手紙

2013年05月08日 | 音楽とわたし
こんなうれしいもん、もろた。



この子の名前はジョージア。
去年の夏過ぎに、ピアノの生徒になってくれた8才の女の子。
レッスンにはいつも、おかあさんとおねえちゃんがついてくる。

ジョージアは最初、♩(四分音符)を同じテンポで弾くことができんかった。
四拍子でも三拍子でも、弾いてるうちにどんどん速くなっていって収集がつかず、レッスンで直ってはまた戻る、そんな状態が続いた。
音符を覚えるのにも手こずった。
一番困ったのは、彼女は失敗をする自分が認められず、そのことでどんどん落ち込んでいくことやった。

彼女と手をつないで、部屋中行進しながら、彼女の曲のメロディーを歌たり、彼女の好きな曲をユーチューブで流し、一緒にダンスしたり、
そんなことをしてるうちに、弾いてる曲のテンポが、少しずつ少しずつ、揺れないようになってきた。
弾き間違えても、そのことで落ち込む深さも、だんだん浅うなってきた。

去年の11月の生徒の発表会。
ジョージアは、弾き間違えた時の自分を想像してパニックになり、どうしても出演したくないと泣いた。
発表会は、完璧に弾くことが目的ではなくて、その舞台で、自分なりに満足して、曲を楽しんで、歌って弾けることを目指して練習するんやからと言うても、イヤイヤと首を振る。
ずいぶん良い状態になってきてた時やったから、できたら弾いて欲しかったけど、ならばソロはやめといて、わたしとの連弾ならどうや?と聞いてみた。
「返事は、発表会の日まで待ってくれる?」
「もちろん」

万が一?ジョージアが弾こうと思た場合のために、とりあえず、連弾の曲の練習だけは続けた。

当日、なにも弾かんでも、聞きにだけは来ると約束していたジョージアは、おとうさん、そしておねえちゃんと3人でやって来た。
いつも、ジョージアの心の問題を親身になって考え、解決の助けをするおかあさんは、出張でその日は来れんかった。

ソロ演奏の発表の部が終わり、休憩に皆でスナックを食べながら歓談してた時、ジョージアが唇を一文字に閉じて、まっすぐ近づいてきた。

「まうみ、わたし……弾く」
「そうか、弾くか、よう決心したね~!」と叫びながら、わたしはジョージアを抱きしめた。
彼女は無事に弾き終え、すごく満足した様子で帰っていった。

その後も、わたしの教え方についての注文があり、教えるスピードについての注文があり、レッスン内容の修正が何回かあって、
初春の頃から、やっと彼女にぴったり合うたスタイルになったのか、練習にも励み、その努力が結果にちゃんと結びつくという理想の形に近づいてきた。

そんなこんなの一昨日に、彼女はこの、一枚の紙を、照れくさそうに渡してくれた。

『まうみは、史上最高のピアノの先生です
愛 グルジア』

日本語を一回も、目にした事も書いた事もないのに、グーグルの翻訳機能を使て、一所懸命に真似て書いてくれたのやそうな。
名前が、グーグルの翻訳が間違うたのか、グルジアになってる……。

ピアノを教え始めて38年。そのうちの13年はこちら。
いろんな場所で、いろんな生徒たちと出会い、いろんな思いをし、いろんなことを教えてもろてきた。
最近は、コンクールや進学を目指す生徒がめっきり減って、そのことでたまに、ちょっとした淋しさを感じたりもするけど、
初めてピアノに関わろうとする子どもたちが、音楽を楽しむ人生の扉を自分の手で開けられるようお手伝いができたらと願ってる。

めちゃうれしかったから、おすそわけ。

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21 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
はじめまして (びわこ)
2013-05-09 05:54:47
はじめまして、うまみさん。
昨日、うまみさんのブログに出会いました。関西弁でテンポのいい記事に、一気に引き寄せられて、笑わせてもらいました。

で、さっそくコメントさせてもらった次第です。

私はハワイ在住、今年17年め。
アメリカ人の夫と、息子(11才)の三人ぐらし
51才。
専業主婦です。
英語は苦手で、関西弁をこよなく愛してます。

これから、うまみさんの過去の記事を、ボチボチ楽しんで読ませてもらうつもりです。

どうぞよろしくお願いしますぅ。
まずはご挨拶まで。
びわこ




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名前間違い! (びわこ)
2013-05-09 06:04:06
失礼しました。
お名前、まうみさんで、うまみさんではなかったんですね。(爆笑)
いきなりのおおぼけです。
旨いと美しいやと、かってに思い込んでしまった様です。
まうみさん、よろしくです~。
びわこ
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びわこさんへ (うまみこと、まうみ)
2013-05-09 09:33:45
いやもう、びわこさん、いきなりのボケをかましてくれはって、めっちゃ楽しかったです!

けどね、うまみって呼ばれたんは初めてではなく、何回か呼ばれてはニヤニヤしてますねん♪
なんかこう、自分がおっきな鍋の中のぬくたいお湯ん中につかってるような……。

ハワイに17年!ええですね~。
わたしは2回だけ、マウイに遊びに行かせてもろたんですが、誰もおらん渓谷の薄暗~い川で泳いだんが一番の思い出。
ええとこですよね~♪

このブログは、好き放題書いてるので、てきとうに端折って読んでください。
楽しんでいただけたらええなあ~。

またいつでも遊びに来てくださいね~びわこさん!
琵琶湖の南岸で住んでたうまみこと(←くどいっちゅうねん!)まうみより
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マウイ島 (びわこ)
2013-05-09 12:53:46
さっそくのコメントバック、感謝です~。

まうみさん、滋賀県に住んでた事あるんですか? あんまりポピュラーな県ではないだけに、なんかうれしいです。

それに、ハワイといえばオアフ島、ホノルルが何と言ってもポピュラーで、マウイ島はリピーターさんか、通なツーリストさん向けの島ですよ~。そこへ二回も? すご~。
うち、マウイ島。

なんやいきなり接点があって、うれしいですわ。
私はハワイの前、豊中に5年ほど、住んでました。大阪が大好き、特に大阪弁が大好きです~。

ところで、ピアノといえば、うちの息子は三才半からピアノ習ってます。今11やから結構続いてて、ようやってるとプラウドしてます。上手下手は別として、楽しく続けてくれればと祈ってるんですけどね、本人次第かな。







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音を楽しむと書いて音楽 (ジェミニ)
2013-05-09 14:15:14
初めまして。
いつも癒やされている一回り上の酉年おじんです。
写真にはいつも感心してます。私もあんな写真が撮れるようになりたいな。もっぱら自宅の花・樹・野草を撮ってます。

ところで、びわこさんへの返信に「ぬくたいお湯」って表現があって、懐かしい響きに思わず・・・
純粋(?)関西弁には「ぬくたい」はないはず。
学生のときから豊中・明石に20数年住んでましたが、「ぬくたい」は通じるものの違和感もたれてました。いやぁ、懐かしい。

ではでは、お体お大事に。
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史上最高 (ころ)
2013-05-09 19:25:31
純粋で 生真面目な おちびさんの心を 羽ばたかせる事が 出来た まうみ先生…
ピアノ教師 だけではなく、人間としても 最高の まうみさんですよ。
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びわこさんへ (まうみ)
2013-05-10 01:50:02
もしかして、ひょっとして、びわこさんは滋賀県人さんですか?
わたしは、大阪と三重を行ったり来たりして大人になり、今の旦那と一緒に暮らすことになってから大津に移り、8年過ごしました。
ええとこでした。
息子らにとっては、幼少期を過ごした第二の故郷です。

息子さん、ピアノ、よう続いてますね~♪えらいえらい!
わたしの生徒の半分は男の子です。
高校卒業まで続いた子はやはり少ないけれども、やめてもなんらかの楽器を続けてくれていて、
音楽を自分の生活の中の一部として、大切に楽しんでくれてるので、嬉しいです。

ほんでびわこさんはマウイ?!
いや~もう、世界はちっちゃい!!
ええとこに住んではりますねぇ~!!
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ジェミニさんへ (まうみ)
2013-05-10 01:57:59
いやもう、ジェミニさん、酉年さんはみな家族です!ようこそ!ほんでもって、コメント、ありがとうございます!

で、ええと、ぬくたいっちゅうのんは、純粋な関西弁ではない……いたたたた、鋭いご指摘。
というか、大阪では使われてるとこと使われてへんとこがあるみたいですね。
子どもの頃のほとんどを、三重県で過ごしているので、その中でも特に名張という市の方言がガツンと残っております。
ジェミニさんももしかして……なんちて。

写真ですが、いやもう好きなだけで、毎日毎日撮ってるうちにだいぶ慣れてきました。
一眼なんて難しいもんを使える脳ミソが無いもんで、ひたすらふつ~のデジカメを使とります。
あんまり毎日付き合わせるもんで、カメラの方がわたしに力を貸してくれてるような気がします。
ジェミニさんの写真、また見せてくださいね。
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ころさんへ (まうみ)
2013-05-10 02:01:34
ころさん、ころさん、ほんまにご無沙汰していてすんません!!
うれしいこと書いたらいっつも、ころさんはこうやって来てくれはって、もっと嬉しいことを書き残してくれはる。
ころさんの温かな気持ちは、わたしの心をじわ~っと癒してくれるんです。

いっつも見守ってくれはってありがとうございます!
ころさんのところには、遊びに行かせてもろてます。
特に気持ちがガサガサした時や凹んだ時に。
感謝です!
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住めば都 (びわこ)
2013-05-10 08:45:01
まうみさん一家が、なんと大津に8年も。
ほんまに奇遇ですね。
湖北地方の琵琶湖に伊吹山、姉川。懐かしいです。
三重県ゆうたら鈴鹿サーキットのあるとこかなぁ。
日本は綺麗な国やなぁって、こっちに来てからつくづく思います。勿論ハワイもええとこです。多分まうみさんの住んでるとこもええとこなんでしょうね。
「住めば都」とは、よおゆうたもんですね。
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