ウィンザー通信

アメリカ東海岸の小さな町で、米国人鍼灸師の夫&空ちゃん海ちゃんと暮らすピアノ弾き&教師の、日々の思いをつづります。

ちちとらん

2023年03月10日 | 日本とわたし
ここ最近、夫がうるさかった。
「ちちとらん、これ、絶対読むべきやって」と、しつこく言ってくるのだ。
なんやそれ、ちちとらんって、とウザがりながら考えているわたしの頭の中では、ちちとらんは父と乱という漢字変換がされていて、なんのこっちゃ、意味不明やし、と無視し続けていた。
コンサートのバタバタも終わり、自分がピアノを学ぶ生徒になった緊張感もやや薄れ、口内手術の腫れや痛みも徐々に治ってくると、「絶対ええって、日本語で読むべきやって」、という夫の勧めをこれ以上聞きたくなかったので購入した。
ちちとらんは『父と乱』ではなく『乳と卵』だった。
なんでたまごではなくランなんやろうと思いながら、最初の一行を読み始めた途端にえ?っとなった。
なんやこれ?

それからは一気読み。
そして今、あの独特の語り口調が脳内に棲みついてしまったばかりか、ああいう書き方でわたしも書いてみたいというよこしまな欲求がムラムラと沸いてきて、前に書いた物語を書き換えてみようかとか、いや、そうじゃなくて自分がこれまで気持ちが合う人に出会っては話してきた話をあれ風にまとめてみようかとか、いやもうこれはただの興奮状態だから、落ち着くまで一旦保留にしとくべきだとか、もうすでにプチ『乳と卵』口調になってしまってる。

わたしがこれまで書いてきた物語は、もちろん好きだし大事に思ってるけど、そして読んでくれた友人や知人は話を好いてくれたり自己出版を勧めてくれたりしたけど、なんかホンモノではないっていう気がしていた。
そして今、かれこれ14年も前に出版されていた川上氏の物語を読んで、そのホンモノではない感がどこからきているのかがほんのりとわかったような気がする。

さて、どうしたものか…もう少し落ち着くまで待ってみようか、それともここで始めてしまおうか。