まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

有価証券減損処理の恣意性

2009-03-29 00:56:55 | 企業投資

     3月決算期が近づいています。有価証券を保有している会社は、決算時の会計処理として保有目的毎の有価証券について、①評価基準に基づく評価差額の処理と②減損処理(売買目的有価証券は①だけ)の2つをどうするか悩むところですね。今回は、有価証券とりわけ株式の減損処理について、自分の勉強のために整理し、併せてその恣意性についても述べて見たいと思います。以下の赤字の部分が、判断といいますか恣意性が入る部分ですね。

時価のある有価証券(日本基準)

売買目的有価証券以外の時価のある有価証券については、①時価が著しく下落し、②回復する見込があると認められる場合を除き、時価をもって評価し評価差額を当期の損失として損益計算書に計上することになっていますね。

     時価の著しい下落50%以上の下落の場合が著しい下落とされていますが、30-50%の下落の場合(=税務上の損金にはならない)でも、会社で基準を作り、これに該当する場合は「著しい下落」ですね。

     回復する見込:(株式の場合)下落が一時的であり、約一年以内に時価が簿価に近い水準まで回復する見込があることを合理的な根拠をもって予測できること。

     まず時価とは、公正な評価額であり、市場(独立当事者間)の取引価格、気配値その他の相場(=市場価格)に基づく価額ですね。市場価格がない場合には、経営者の合理的な見積りに基づく合理的に算定された価額を公正な評価額としますね。

尚、合理的な算定とは、公表されている類似金融資産の市場価格に、利子率・満期日・信用リスク・その他の変動要因を調整する方法、将来キャッシュ・フローの割引現在価値(DCF)を算定する方法、一般に認知されている理論値モデル等を使用する方法であり、合理的見積が困難な場合には、対象金融資産について上の方法に基づき算定された第三者評価の価額を合理的に算定された価額とすることができるとしています。

時価のない有価証券(日本基準)

株式について、当該株式の発行会社の財政状態の悪化により実質価額(一株当たりの純資産額)が著しく低下したときは、相当の減額をなし、当期の損失としなければならないこととなっています。また、市場価格のない株式の実質価額が「著しく低下」とは、株式の実質価額が取得価額に比べて50%程度以上低下した場合をいいますね。尚、子会社・関連会社の場合で、中長期の事業計画を入手し、それにより回復可能性がきちんとした証拠により裏付けられるのであれば、減損処理を行わないことも認められています。時価のない有価証券の場合は、上記②の「回復する見込みのある場合を除き」という条件がありません。

減損処理(米国基準)

米国会計基準ではどのように規定しているのでしょうか。日本でも金融庁の承認を得て、財務諸表を米国会計基準で作成・開示している会社がありますね。

Statement on Auditing Standards (監査基準書)SAS No.92 Applicability 47 Impairment Lossesには以下の様に規定しています。

Regardless of the valuation method used, generally accepted accounting principals might require recognizing in earnings an impairment loss for a decline that is other than temporary.

米国では、日本のように50%等と言う定量基準がありません。日本で米国基準を採用している会社は大企業ですから、日本基準を参照して社内基準を定めているのが一般的ですね。しかし、評価額を米国で一般的なDCF方式で算出している例があります。

日本の税法基準

日本の税務上減損が損金処理できるかどうか、どうなっているのでしょう?法人税基本通達第9章その他の損金第3款に有価証券の評価損の規定があります。

9-1-7 (上場有価証券) 「有価証券の価額が著しく低下したこと」とは、当該有価証券の当該事業年度終了の時における価額がその時の帳簿価額のおおむね50%相当額を下回ることとなり、かつ、近い将来その価額の回復が見込まれないことをいうものとする。

9-1-9(上場有価証券等以外)民事再生手続開始決定等の事実が発生したことの他に、当該事業年度終了の日における当該有価証券の発行法人の1株又は1口当たりの純資産価額が当該有価証券を取得した時の当該発行法人の1株又は1口当たりの純資産価額に比しておおむね50%以上下回ることとなったこと。

減損処理の恣意性

減損処理は、どのように恣意的に行われるのでしょうか?

     投資先が少数で、グループ経営部等が一括管理し、統一した基準を継続的に適用する場合は、それ程の恣意は入らないと思います。しかし、多くの投資先をもっている会社は、主管部を定めて投資先を管理します。減損処理が妥当だと思っても、その部の今期業績が低迷しておれば、まだ減損処理は必要ない等と勝手に理由をつけて先送りされます。当該出資の価額が低下しただけで判断される訳ではありません。別の意図が働きます。

・ 「回復する見込があることを合理的な根拠をもって予測」等という事は、実際無理でしょうね。「回復する見込み」というのは判断です。判断の背後に事情があります。その事情は隠されて、表面上はいろいろ理屈をつけて回復するとか言います。昨年なら、景気も上向き、今後も業績好調と見られていました。でも今は一寸先は闇とも言えますし、昨今の状況は一寸先は奈落の底ということも出来ます。

     将来キャッシュ・フローの割引現在価値」=DCF法ですね。DCF等という計算は、前提の置き方で、いろんな金額を算出出来ます。もっとも意図的・恣意的に、減損額を操作出来る方法ですね。最初に、結論の減損額を思い描き、それに合うように数字を作るわけですね。

・ 「中長期の事業計画」ですから、例外を除いて右肩上がりの数字を作ります。事業計画を作った人なら分かると思いますが、そのように事業がうまくいくわけではありませんね。


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