まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

会社法―財産引受と事後設立

2007-11-09 00:38:03 | 商事法務

       会社設立時の規制として変態設立事項が定められています。28条ですね。

28条では、「株式会社を設立する場合には、次の事項は定款に記載・記録しなければ、効力を生じない」として以下を定めています。

 1号 現物出資:金銭以外の財産を出資する者の氏名又は名称、当該財産及びその価額並びにその者に対して割り当てる設立時発行株式の数

 2号 財産引受:株式会社の成立後に譲り受けることを約した財産及びその価額並びにその譲渡人の氏名又は名称

・ 財産引受は、発起人が会社成立前に、その会社の為に、会社の成立を条件として特定の財産を譲り受ける旨の契約を締結することです。「譲り受けることを約し」ですから、通常は売買契約ですね。目的物を過大評価して、発起人と金銭出資の他株主との間の不公平が生じることを防止する規定ですね。

・ 上記趣旨の延長として事後設立の規定がありますね。随分緩和されて検査役の調査を不要として、H2年商法改正前と同じ(20%基準は別)総会の特別決議としました。即ち、46715号では「株式会社の成立後二年以内におけるその成立前から存在する財産であってその事業のために継続して使用するものの取得。(但し、純資産額の20%を超えない場合を除く)」としています。

       財産引受と事後設立の規定はどの程度遵守されているのでしょうか?結構守られていないのではないでしょうか。理由は簡単です。こんな規定があると一般には知られていないからですね。会社の法務担当等が、設立登記申請まで協力するところもありますが、協力せず起案部局の人が司法書士に依頼して設立することもあります。

・ 起案部局は、早く事業を立ち上げたいので、発起人としてその会社の為に、相手方と打ち合わせて会社成立後(登記簿謄本が入手してから)契約を変更(買主の契約上の地位を新会社が承継するとか。発起人が購入した資産を新会社が発起人から購入)するなどして事業を始めようとします。

       財産引受:発起人名義で契約して、これを新会社名義に変更する場合の典型的な例としては、オフィスの賃借契約がありますね。でもこれは「譲り受けることを約した財産」ではないですね。「賃借することを約した財産」ですから、まあこの会社法の規定に抵触していないと考えることもできますね。しかし、例えばサーバー・コンピューター・建物付属設備の発注を発起人名義で契約して「譲り受けることを約する」場合がありますね。しかし、納入前に新会社名義に変更し、代金の支払いは新会社で行う例もあります。まあ、この場合はやはり財産引受の規定に抵触するのでしょうね。

       事後設立:新会社で使用する重要な機械設備等で純資産の20%を越えるものもあるでしょう。その場合は総会の特別決議事項となります。しかし、この規定は曖昧です。「その成立前から存在する財産」の解釈が結構フレキシブルだからですね。例えば、土地などは、まあ成立前から存在する財産でしょうね。しかし、発注して製作してもらうものは、成立前とは言えないから別にこの規定の適用があるとは言えないのではないでしょうか。あるいは一群の什器備品でもまとめれば20%超かもしれません。発注も一括で行いますが、減価償却資産に計上するときは、それぞれ個別に記帳しますね。まとめれば20%超の価額でも、個別ならこれを越えないなら、やはり20%とは言えないのではないでしょうか。

       財産引受・事後設立の趣旨と実態が乖離していると思います。特に、事後設立は、別に遵守していようがいまいが、現実には分からないという事情があります。また新会社が設立され、経営陣が入るわけですから経営陣に任せれば良いのではないかと思いますね。財産引受はまだしも、事後設立の規定は無くても良いのではないでしょうか。

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